今年も、私は一人ですね…(涙)
「「レッド!!」」
ブルーとイエローは、俺に声をかけることしかできない。
状況は変わらない、いや徐々に悪くなってきている。
ライオギルディの腕に力が込められ、俺の身体を締め付けていく。
最終的には、胴体がちぎれてしまうかも…
「レッドを返しなさいよ!!」
焦る気持ちがはやったのか、ブルーが訴えた。
止めるんだ、そんな言葉に彼が従うはず---
「そうだな。まぁ、テイルレッドの身体を締め付けたままってのも、楽じゃねぇからな。返してやるよ!!」
彼は従ってくれた。
しかし、その方法が酷かった。
俺を掴んだまま、ピッチャーの様に投げ飛ばしたのだ。
「ぬおわぁっ!?」
「「キャアアッ!?」」
ブルーとイエローは俺を受け止めようとしたが、その威力で共に吹き飛ばされてしまった。
「ハハッ、ストライク!ってな」
(あの野郎… 俺をボール代わりにしやがって!!)
対するライオギルディは、ガッツポーズで決める。
よろめきながらも、俺は彼を睨みつけた。
「さて、3人仲良く散りな!!」
ライオギルディは息を大きく吸い込む。
またあの技を使うつもりか!?
だけど…
「いてて…腰打った~」
「もう限界ですわ…」
今の俺達では、全く動けない!!
現実から目を反らすかのごとく、俺は強く目を閉じた。
「終わりd---」
「キャアアァァァ~ッ、ちょっとどいて~!?」
まさに止めが刺されようとした時、謎の乱入者が現れた。
俺が声のする方向を向く前に、彼女は着地していた。
ズゴン!!
ズザザザー…
…いや、落下だな。
しかも、顔面からか。
滅茶苦茶痛そうだ。
「「「……」」」
突然の出来事に俺達はおろか、ライオギルディや通信越しのトゥアールも言葉を失った。
何なんだ、このカッコ悪い登場の仕方は。
「…ッ!!」
気がついたか。
見れば、全身が震えている。
「痛った~い!? 顔擦りむいた!! これ絶対鼻血出てるよね? …おっ、大丈夫だ!?」
顔に手を当てて、必死に傷みに耐えようとしている。
そして何処からか手鏡を取り出して、顔の確認をし始めた。
「何あの娘… お笑い芸人?」
ブルーの言葉は、俺達の思っていることを見事に集約していた。
流れるようなボケの連続。
これが狙ってしたわけでなければ、相当な才能があるぞ…!
『これは…! ポニーテールの
トゥアールが注意喚起をしてくれた。
改めて見ると、彼女の髪型はポニーテールでまとめられている。
流れるような髪の毛は、風になびかれることで更に美しさを増している。
その髪の毛をまとめているのは、俺達が使うフォースリボンに酷似したものだ。
(何だあれ? …アーマーか?)
更に一番目立つのが、胸部アーマーだ。
イエローのような重武装ではなく、単に身体を守るためにあるような感じだ。
あれの厚さはかなりある、恐らく俺のブレイザーブレイドでも斬れないだろうな。
アーマーもそうだが、その下にある胸もかなりある。
パッと見て、イエローを軽く凌駕する大きさだ。
「あの娘、無駄にデカい乳を持ちやがって…! 引きちぎってやる!!」
「落ち着けーッ!!」
ふと横を見ると、ブルーが暴走寸前だったため、押さえ込みをしておく。
『いずれにせよ、まだ彼女の正体は不明です! 今は動かない方がよろしいかと』
「…確かにな」
見る限り、俺達と似た格好をしている。
だが味方と判断するには、証拠が少ない。
ブルーだったら、「拳で語り合うまでよ!!」とか言いそうだし。
「テメェ… 何者だ!?」
ライオギルディも気がついたのか、乱入者に問い詰める。
イエローに続いて邪魔されたかもしれない、彼の怒りも更に高まっている気がする。
「私? 好きに呼べば?」
鼻に絆創膏を張り付けた彼女は、そうぶっきらぼうに答えた。
どうやら彼女は、新参者かな。
「…テイルグリーン?」
「そうね」
「それがまともですわね」
ライオギルディが悩んだ末に出した名前に、ブルーとイエローは頷く。
悪いが、俺もそれ以上のネームが思い浮かばない。
「…もう良いわよ、テイルグリーンで」
額に手を当てて、残念そうにグリーンは答えた。
よほどその名前が嫌なのだろうな。
むしろ、格好いい名前をつけてほしかったのか…
「よく見れば、お前は素人だな。なら
その言葉を合図に、残った戦闘員がライオギルディの周りに集まる。
スワンギルディに比べて、明らかに数が少ない。
相手が一人だからか、もしくは別の目的があるのか…
「遊んでやりな」
戦闘員は一斉にグリーンへと襲いかかる。
彼女は別に慌てる様子もなく、ただじっと動かない。
『おじけついたんでしょうかね?』
「あの性格ならあり得そうね…」
ただ殺られに来たのか?
これ程素敵なポニーテールを持つ人が、態々そんなことをするはずがない!!
「…面倒だけど、いっちょ
彼女がポニーテールを形成するリボンに触れると、武器が出現した。
形状は緑色のハンマー、とでも言うべきか。
女性が扱うには、かなり重そうな得物だ。
「よっと」
ギリギリまで戦闘員を引き付けると、グリーンは上空へ高く跳んだ。
空中でバランスを整えつつ、ハンマーを逆手に持ち変える。
「そぉ~れっ!!」
戦闘員の集団の中心地に、ハンマーを投げた。
それはある戦闘員のそばを掠め、地面に着弾した。
「モ、モケェ… モケッ!?」
直撃を回避できたことに胸を撫で下ろすが、すぐに驚愕へと変貌した。
ハンマーの周囲約40mに亀裂が生じ、大崩壊を起こしたのだ。
「何よあれ! 何か特殊な力でも使ったの!?」
『確認した限り、
つまり、ハンマーの重さが地面を割ったってことか!?
なんて重さだよ、もし直撃していれば…
ハンマーの重さもそうだが、それを片手で扱うグリーンも中々の曲者だぞ。
「モ、モケェ…」
あれ程の崩壊でも、何割かは戦闘員は生きている。
「さっさと終わらせるつもりだったけど… あんなアバウトな攻撃じゃ、仕方ないか」
「! モケェーッ!!」
ハンマーの柄頭に着地し、グリーンは飄々としていた。
そのことに戦闘員は気がつき、一斉に彼女に襲いかかる。
リンチを回避するために、彼女は俺達の方向へ跳んだ。
と言っても直接俺達のところではなく、数十m離れた場所にではあるが。
「少しは耐えてほしいわね」
彼女は左手を投げの構えにする。
すると、左手から何やらどす黒い玉が形成された。
「あれは…?」
「不明です。しかし先程の武器を考慮すれば、あれは重力に関係する何かでは…」
「でもおかしいじゃない。重力なら、私達もあるはずよ。なのに、あれも同じだって言うの!?」
トゥアールの説明に、ブルーは納得できないようだ。
体操服属性を使用した場合、緑の小さな玉を形成する。
しかし彼女が扱うあれは、それとは全く異なる。
「どっせぇい!」
「モケ、ケェ…!?」
女の子らしからぬ掛け声と共に、黒球は戦闘員に投げ込まれた。
しかし、それは直接当たらず、少し上へと反れた。
「何考えてるのよ? 敵にぶつけなきゃ意味がないでしょ!?」
『いえ、これは…!』
直接殲滅するかと思っていたブルーは、彼女にダメ出しをした。
だが、トゥアールには思う節があったようだ。
「邪魔なモノは、お掃除しなきゃね♪」
『モケケーッ!?』
その場に似合わぬ軽い台詞をかましつつ、左手を鳴らした。
すると黒球は、周りにいる戦闘員を一人残らず吸い始めたのだ。
直接当てなかったのは、これを行うためだったのか。
「…チィッ」
「これで、残るは貴方だけよ」
戦闘員のいた場所には、激しく壊れた地面とその中心にめり込んだハンマーのみ。
その圧倒的戦力差に、ライオギルディは苦虫を噛み潰したような顔をする。
ライオギルティに対してはそれを使わないのか、彼女はハンマーを消去した。
「…ククク」
「何が可笑しい?」
先程まで不機嫌そうな顔を隠さずにいたが、今度は笑いだした。
豹変した態度に、グリーンも警戒を強める。
「お前、本気で俺を倒せるのか?」
「そうでなきゃ、ここにはいないわ」
相手を卑下するかのごとく、ライオギルディはグリーンを挑発しだした。
対して彼女はあっけらかんと答えた。
無駄に感情がぶれていない。
「悪いが、お前が潰されることは俺には見えている」
「勝手に人の運命を決めないで」
ライオギルディは気味悪い笑みを浮かべながら、足に力を込める。
対する彼女は、面倒くさそうな態度を醸し出す。
「だったら、一瞬でその運命を決めてやるよ!!」
ライオギルディは一気に距離を詰めた。
ブルーのように、本当に一瞬で仕留めるつもりなのだろう。
あまりの速さに、グリーンは回避行動すらしなかった。
「グリーン!?」
気がつけば、俺は叫んでいた。
俺は知らずに、彼女を気にしていたんだ。
まだ敵か味方かわからないってのに。
「危なっかしいなぁ…」
「ぬうっ!?」
ライオギルディは躊躇いなく、顔面を狙って拳を放ったはず。
常人には、そのスピードには反応できない。
だがグリーンは左手で、その拳を止めていた。
「だったら---」
「
両者の力がぶつかり合う。
2人の足下はその力に耐えきれず、荒れ地へと変化していく。
「おおおぉぉぉっ!!」
「うりゃああァァァッ!!」
両者の気迫と共に、更に地面は変貌していく。
その衝撃波は、遠くにいる俺達にも届いている。
地面の小石が、俺の頬を当てる。
それほどまでの強風となって、両者の力は激突している。
「このままでは、周りの一般人にも被害が出ますわ!!」
『相変わらず野次馬が消えませんねぇ… テイルレッドじゃないのに』
腕を前に構えることで何とか視界を保っているイエローがそう叫んだ。
既に重傷者は避難を完了しているが、診察に来た人や軽傷者、挙げ句の果てには看護士や医者まで観戦していた。
病院側としても、これ以上負傷者は出したくはないだろうに。
「…って、ボンヤリしている場合じゃねぇ!?」
見れば、ギャラリーの方へ自動車が飛んでいったのだ。
このままじゃ、本当に負傷者が出てしまう。
「レッド、頼むわよ」
"
ブルーが頼み込む前に、俺はプログレスバレッターを装着した。
頼まれなくても、救って見せる!
俺は迷いもせずに、真っ直ぐ自動車へ跳んだ。
フォーラーのスピードに加え、激突の衝撃による乱気流が更なる加速を生む。
「どぉけぇぇッ!!」
ブレイザーブレイドを横に構え、自動車を切り裂く。
切り口から小さく放電した後、爆発した。
「ありがとうございます」
「鮮やかだわ、待ち受けにしなきゃ!!」
「何言っているの、今こそ生レッドに触れるチャンスじゃない!!」
地面を滑りながら着地した先に、またギャラリーがいた。
というか捕まえる気だ、絶対…
「よっし、レッドたんGET!」
「私にも触らせて~」
「ぜひ、俺のテイルレッドたんコレクションの1つに!!」
ギャラリーの前で止まろうとしたが、加速がキツかったため吸い込まれるように女子高生の胸の中に。
その後はいつも通り、もみくちゃにされてしまう。
「な、何やっているのよ~!?」
「ど、どうすれば…?」
『とりあえず、ここから少しでも距離を離してください。そこもまだ危険なので』
そうは言ってもなぁ…
無理に引き剥がすわけにもいかないし。
そんなことを考えながら、俺はギャラリーのぬいぐるみにされたのだった。
☆☆☆
(
私とエレメリアンの腕力は互角。
いや、私は大方テイルギアによる加護があるので、私以上と見て間違いない。
「ちょっとゴメンね」
私は右腕を狙って、右の上段蹴りを放つ。
それを予見してか、彼は瞬時に後ろに跳ぶ。
「お前も中々の格闘家だな。ぜひとも、俺の
「生憎、私は素人ですから」
私としても、大人しく肥やしにされてたまるかっての。
予め、"あれ"を用意しておきますか…
「素人には見えんがな?」
音速並みのスピードで詰めてくるエレメリアン。
でも、それはある程度予見できたわ!!
「ゲホ…ッ!」
「本当に素人よ。ただし---」
彼の拳が私の頬をかすると同時に、私のは彼のお腹にめり込んでいた。
でも、これで終わらせない!
「徹底的にイジメられただけ」
"
エレメリーションを発動させ、威力を倍増させる。
その力でエレメリアンは吹っ飛び、壁にクレーターを作り出した。
「…それだけか?」
「えっ?」
「今の…間違いない」
何とか壁から抜け出したエレメリアンは、疑問に感じたらしい。
まぁあれ自体、エレメリアンの力を借りているから、少なくとも私自身の力ではない。
「お前…あのユニコーン型エレメリアンを葬ったツインテイルズだな?」
「「!?」」
彼が思っていたのは、どうやらそこだった。
ツインテイルズ側もその事実は知らなかったようで、混乱していた。
「そして我が友、モールギルディをも倒した! 今の力はまさしく彼の物だ!!」
「「!?」」
ツインテイルズすら知らなかったのか、ブルーとイエローはかなり驚いている。
あぁ…
あの変態、彼の友達だったんだ。
だとすると、ちょっと不味かったな。
「---許さぬ!!」
エレメリアンは身体を震わせた後、キッと私を睨みつける。
大きく息を吸い込むと、彼は吼えた。
それは大きく空気を震わせ、私のの方に向かった。
(避けられない!!)
そう判断した私は、顎を守るように両手を交差させ、防御姿勢をとる。
その数秒後、空気の塊をぶつけられたような衝撃を受けた。
空気が震え、腕も軽く痺れがきていた。
(ただの遠吠えが何て威力… 次は無いわね)
"
私は再びエレメリーションを起動させると、それをまとった拳を地面に叩きつけた。
それは地割れを生み出し、エレメリアンのバランスを崩させた。
「今日はここまでだ。次までに、鍛えておけ!」
追撃に出ようとしたが、エレメリアンは待ったをかける。
そう言ってエレメリアンは、後方に出現したゲートに消えた。
☆☆☆
「ゼェゼェ… やっと抜け出せた」
俺はギャラリーのぬいぐるみ状態から何とか脱出した。
「今日はここまでだ。次までに、鍛えておけ!」
俺が遊ばれている間に、グリーンとライオギルディの戦いは終わっていたようだ。
特撮にありそうな捨て台詞を吐いて、ゲートへと消えていった。
「どうなったんだ? グリーンが勝利したのか!?」
『どちらかといえば、向こうから逃げた感じです』
俺もそれが気になった。
ブルーを一撃で倒す程の実力者が、グリーンに対してはそこまで本気を出していないように感じた。
グリーンのデータが無いこともあるが、アルティメギルはそれでも本気で向かってきたはず。
「レッド?」
「…! あぁ、後は警察が何とかするさ。早く戻ろう」
考えに集中していたので、イエローが横にいたことに気付かなかった。
戦闘が終わった以上、長居は無用。
俺とイエローは
「貴女、何者なの…?」
彼女の目線の先には、まだグリーンがいた。
終わったことによる緊張の糸がほぐれたのか、それとも…
「テイルレッド」
「…俺か?」
急に俺を名指しされたので、少し戸惑った。
「貴方が守りたいのは何なの?」
「ツインテール以外、何があるってんだ!?」
そんな質問をされたので、自信げにそう答える。
俺はツインテールが好きだ、その思いは決して揺るがない。
「…そう」
興味なさげに返事すると、建物の向こうへと跳んでいった。
『何だったんでしょうね?』
通信でトゥアールがそう話すが、それは誰にもわからない。
ただ、彼女のポニーテールは美しくも、悲しさを見せていた。
少なくとも、俺にはそう見えた。
最近はバトルばっかりです。
なので、ちっともストーリーが展開していない気が…
いい加減彼女を出さないと、怒られそう。
『俺、ツインテールになります。』8巻読みました。
これで、ツインテイルズ全員が強化しましたねぇ。
さて、伊織はどうなるか?!