「よく戻ってきた、2人とも」
アルティメギル基地。
その会議室にて、報告が行われている。
地球侵略部隊隊長・ビートルギルディが議長席に座り、帰ってきたエレメリアンに労いの言葉をかけた。
対して報告に来たエレメリアンは、方膝を着き
「ツインテイルズは、前回以上に戦力が増強されておりました。特にテイルレッドは新たな力を完全に使いこなしており、更に容易にツインテールを奪えぬかと」
先に答えたのはスワンギルディ。
彼は「修行の成果を見せる!」と豪語するも、レッドに全く歯が立たず、もう少しでブルーに倒されるところであった。
加えて、中継に残した者を除いて
武功を挙げたというには、程遠い結果となった。
隊長からどのような罰を言い渡されても、甘んじて受け入れる覚悟でこの場に参上している。
「そうか? 俺が掴んでいたとき、彼女は態々あの状態を手放したのだ。少なくとも、
スワンギルディの報告にケチをつけるのはライオギルディ。
彼はスワンギルディのピンチを華麗に救いだすことに成功した。
おまけに、どのエレメリアンも破れなかった捕縛陣・オーラピラーの打開策を見出だし、ブルーを一時的に戦闘不能にさせるなど、数々の功績を出した。
戦闘員の被害も、最小限に留めたことも大きい。
「誰も折ることができなかった私のレイピアを、彼女はたった一撃で折ったのだぞ!! それで使いこなしていないわけがない!」
「俺はむしろ、あのような細身の剣で今までよく折れなかったと感心したぞ。今度は大剣を扱えばどうだ?」
必至でスワンギルディは彼女の力を説明するが、ライオギルティは逆に彼を批判した。
それは彼に同じ過ちを繰り返してほしくはないという意味で扱ったが、彼のプライドを傷つけてしまったようである。
「今回は私の技量が低かっただけだ。今度こそ、私のレイピアでレッドに勝ってみせる!」
「ハッ、勝手にほざいてろ! その前に俺がツインテイルズを葬ってやるさ」
彼は激昂し新たな誓いを立てるも、ライオギルディは軽くあしらってしまう。
これから先、たとえ些細な事でも内輪揉めをしている場合ではないというのに…
「まぁまぁ。それより『テイルグリーン』はどうだったんだい、ライオギルディ?」
このままでは空気が悪くなると予見してか、スタッグギルティは話の方向を変えた。
今回アルティメギルで彼女と接触したのは、彼しかいない。
一応映像として残されてはいるが、直に触れた者の意見を聞きたいのであろう。
「…彼女は恐らくツインテイルズとは異なる派閥かと」
「何故に?」
「一瞬新たなツインテイルズかとも思えました。しかし彼女の髪形は、頭部の正中に束ねる形。すなわち、ポニーテール属性を持つ戦士だと直感しました」
「…やはりか」
ライオギルディの説明にビートルギルディは静かに頷いた。
ライオギルディの離脱後、改めて映像を解析したところ、彼女はツインテールではなかった。
つまり彼女はツインテールと双璧をなす存在、ポニーテールの戦士であった。
「どういうことだ!? まさか、我々アルティメギルを滅ぼす第3勢力ができたのか…」
「いずれにせよ、次に会ったら倒す。それだけだ」
狼狽するスワンギルディに対し、ライオギルディは更なる闘志を燃やしていた。
「それにしても、よくツインテイルズを相手にここまで… 何処で修行したんだい?」
スタッグギルディは、ライオギルディの強さに興味を示していた。
ブルーに対して、あそこまで苦しめた者はいない。
だからこその、この質問である。
「若い頃、"師範"のもとで修行をしていました。そのお陰で、今の俺があると思っています」
「中々良い師範だったようだな」
彼ほどの猛者を育て上げる指導力、ならばその"師範"は彼以上の実力者に違いない。
ビートルギルティは、直感的にそう感じた。
「スワンギルディ。しばらくその"師範"のもとで鍛え直したらどうだ?」
「…ハッ」
スワンギルディも今回の戦いで感じた物があったのか、ビートルギルディの『提案』に従うことにした。
「これより、また修行をやり直す。ただし、前回は精神の鍛練であった。今回は体術の練り直しである。皆、心してかかれ!!」
『オオオッ!!』
ビートルギルディによる修行ということで、エレメリアンの士気は更に高まった。
打倒ツインテイルズ、そしてテイルグリーンを目指して。
☆☆☆
『今回エレメリアンはS県の記念病院に現れましたが、見事ツインテイルズがこれを退けました』
ツインテイルズ基地で、俺達はあの戦いを振り返っていた。
俺達は何とか勝ったが、どうも釈然としないものだった。
「最初に現れたスワンギルティは兎も角、後のエレメリアンは桁違いだったな」
「まさか、愛香さんを倒してしまうなんて…」
「まさしく
ライオギルディと言っていたな。
あれほどの強者が、アルティメギルにいたのか…
「愛香さん、大丈夫ですかねぇ…」
トゥアールが心配そうに、彼女をみていた。
彼女は今、祖父の道場で修行している。
『今回勝てなかったのは、私に弱さがあったからよ。出直してくる』
出掛ける前、愛香はそう答えていた。
俺達の前では何事もないかのように振る舞っていたが、その頬には涙の渇いた跡が残っていた。
(愛香…)
肩肘をテーブルに着け、部室の窓から見える景色を眺めている。
愛香のいない日常。
それはいつ以来なんだろうか。
「愛香さんを倒したライオギルディもそうですが、私達が気にすべきは緑のテイルギアです」
トゥアールは、テーブルの上にあるプロジェクターを操作する。
やがて映し出されるのは、その戦士であった。
エレメリアンに名付けられた名は、テイルグリーン。
「私と同じ重量級のテイルギアを装着していますわ」
「それでありながら、近距離戦をメインとする… 面倒ですね」
彼女の胸部に装着されたのは、アーマーか?
イエローのように内部に武器が装填されていないので、そう感じた。
「まさか私の知らないところでテイルブレスが量産されていたなんて…」
確かドラグギルディは、アルティメギルが意図的にその技術を流出させたと言っていた。
それでトゥアールは戦士となって、アルティメギルと戦った。
しかしツインテール属性は奪われ、世界は滅亡した。
「でもそれはおかしいですわ」
「「えっ?」」
「テイルブレスは、アルティメギルが流出させた情報を元に製作された。ですが、この世界ではその前にブレスが存在しているので、流出させる
慧理那の仮説で、俺にもようやくこの違和感の正体がわかった。
アルティメギルが欲するのは、英雄たるツインテールの戦士。
そしてその英雄に憧れ、ツインテールを拡散させる。
そのために、エレメリアンを倒すための技術を提供し、倒させる。
「確かに、ここでポニーテールの戦士を作り出したとなれば、アルティメギルの目的を阻害する形となります。既にテイルレッドがいる以上、彼らは戦い、ツインテール属性を奪うしかないはず…」
…嫌な予感がする。
俺達は既に、アルティメギルの手のひらで踊らされている。
だがこれは、それ以上の何かがある。
(だけど、俺には何もできない)
歯ぎしりをしつつ、いまだ総二は外の景色を眺め続けていた。
☆☆☆
道場にて、愛香はただ一人黙想している。
彼女の前には、揺らめく蝋燭がが1つ。
(あのエレメリアン---ライオギルディに勝てなかったのは、鍛練不足が原因なはず。なら、鍛え直さなきゃ)
彼女はあの戦いを思い返していた。
今までのエレメリアンには無かった、純粋な闘志。
音や気配すら感じさせぬ動き、そしてその体に秘められし力。
(心身共にまだまだよ。これ以上、総二や皆に心配はかけたくないから…)
あのツインテール馬鹿を守るためにも、今は努力するしかない。
そして、いつかは---
「ハアッ!!」
すぐに立ち上がり、正拳突きを放つ。
蝋燭の炎は、風圧により消えた。
(まだ駄目。これじゃ、駄目なのよ…)
正拳突きを繰り出した右手を見つめ、そう思案した。
☆☆☆
『いや~、相変わらずテイルレッドは可愛いですねぇ』
『あの緑の戦士---テイルグリーンは何なんでしょうか? 笑いを取ることで、レッドの人気を奪い返すつもりなのでしょうか…』
メディアって、どうしてテイルレッドを擁護するんだろう…?
あの場にはブルーやイエローもいたはず。
そのけなげ組に、とうとう私も加わることになったのか。
「クソッ!! 俺様のレリーフが完全なら、ライオギルティを倒せたってのに」
「女の子が『クソ』とか使ったらアカンて。言葉使いをもう少し勉強やな」
「勘弁してくれよ~!」
唯乃は自身が助けにならなかったことを悔やんでいたが、私もその言葉使いは不味いと思う。
日本語って、様々な表現の仕方があるから難しいけれど…
「ツインテイルズでも手こずった相手を、よぉ退けたな」
「いや、今思い返すと何でそんな事ができたんだろう…?」
たぶん、テイルギアの能力によるところが大きい。
あのエレメリアンは完全な近接距離を得意にしていた。
私は防御力が高かったので、あそこまで戦えたのだろう。
「いずれにせよ、課題が山ほどある。少しずつ片付けせなアカンわ」
「…えぇ」
リンの正当な言葉に、私は力なく頷く。
というか、『課題』というキーワードでで思い出した事が1つある。
(バイト、1週間丸々働かなきゃいけないんだった…!)
オープンキャンパスに加え、アルティメギルとの戦闘のせいで休まざるをえない事が多かったのだ。
何度スタッフルームで店長に土下座したことか…
なんとか得た許しの代わりに、フルで働くことを命じられた。
その期限は、明日から夏休み終了まで。
---考えただけで、頭が痛い。
ズゴンッ!!
「なっ…!」
気がついたら、テーブルに頭をぶつけていた。
頭突きを受けた場所からヒビが広がるけれど、私には当然見えない。
ある意味アルティメギルとの戦い以上の地獄が待っていたことに、私は絶望した。
(---後はツインテイルズに任せようかな)
「ぃ、伊織…?」
フラフラと立ち上がり、席を後にする。
額に傷は付いていなかった。
「もう寝る。後はよろしくね」
明日から始まる地獄に備え、休息が必要だと私は判断した。
「ぁ、あぁ…」
「おやすみ~」
☆☆☆
会議室には、唯乃とリンの2人のみとなった。
既に戦闘データは共有しているので、本来ならばこのまま解散しても構わない。
だが、残る理由はまだあった。
「---頼みたいことがある」
「何やねん」
態々この環境を作り出したからには、相応の『頼み』なのだろう。
リンはじっと相手を窺う。
「雨宮鈴音。お前だからこそ、できることだ」
「早く言えっての」
せっかちなリンは、唯乃を急かせる。
唯乃はずいと身を乗り出し、顔をリンへと近づける。
そして頭を深く下げた。
「俺を陽月学園に編入させてくれ」
「---なるほそ。しかし、何でまたそんな事を?」
会議中、彼女が何かを考え込んでいた理由がようやく判明した。
夏休みもそろそろ終わりを迎える頃である。
編入するタイミングとしても、ギリギリ間に合うだろう。
だがリンは、その動機が分からなかった。
「少しばかり気になる事があってな。それを調べてぇんだ。勿論、伊織の護衛も兼ねているがな」
「う~ん…」
彼女の真の狙いは不明なままである。
しかし、ポニーテールの戦士が生まれた以上、更なるバックアップは欲しいところ…
「わかった、ウチがなんとかしたる」
「…頼むぜ」
そして両者は、固く握手をした。
「スマンけど、彼女の戸籍と身分証を作ってほしいんや」
密会が終わった後、リンは誰かに電話をかけていた。
話口調から推測すると友人か、または親族か。
「ハァ、できたとしても1週間後? んな悠長にしとられへんがな!! なんとか編入させな、タイミング的に不味いねんて」
どうやらかなり難航しているようだ。
まぁ、一介の高校生ができることなど限られているが。
「それぐらい1日でできるやろ? えぇ、しばらくウチがおらん間に、腑抜けになったなぁ…」
相手側はかなり怯えているようだ。
何か弱みを握られているのかもしれない。
「編入先か? それはやな---」
そこから先は小声での通話となった。
誰もいないはずだが、念を入れてのことか。
「あぁ、頼んだで」
そしてリンは、静かに携帯を切った。