Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.49【考えても仕方ない、か】

(結局、言い出せなかった…)

 

俺は普段通り、登校している。

その道中でも俺は、何度か死にかけたが…

トゥアールが寝ている俺の横で何かを仕出かそうとしたが、隣に住む愛香によって未然に防がれる。

だがその回数を増す毎に、俺の部屋が酷く損壊するようになった。

その度に、トゥアールの形容し難い技術で綺麗に修復されるがな。

 

「アンタねぇ、毎日総二の部屋に忍び込むのは止めなさいよ」

「総二様のお部屋を毎度ぶち壊す貴女よりは、まだマシです!!」

 

愛香とトゥアールは、いつものようにじゃれあっている(?)。

俺の隣にはエリナが寄り添うが、彼女達のやり取りを見ては俺に火照った顔を向ける。

…彼女がMだって事は、既に知っている。

「おしおき」してほしそうに、目で訴えている。

俺だって、慧理那の希望なら叶えたいが---

 

「観束、貴様ァ…!」

 

後ろから物凄いオーラを放つ桜川先生がいる。

下手に慧理那に「おしおき」すれば、彼女に何をされるか…

いかん、考えただけで寒気がしてきた。

 

(でも、これが見納めなんだよな?)

 

今まで鬱陶しいと思っていたけれど、そう考えるととても寂しく感じる。

 

「総二様、何処か具合でも悪くされました?」

「アンタの変態的アプローチで、おかしくなったんでしょうが!?」

 

トゥアールが俺の様子に感付いたのか、近付いてくる。

のは良いが、さりげなく俺のズボンに手をかけるな。

後ろから気配を殺して接近した愛香から、無慈悲な踵落としを貰うのは明白なんだから。

 

「あんな痴女はほっといて、早く教室に行くわよ!」

「おい、そんなに引っ張るなって!?」

 

頭から地面にめり込み、微動だにしないトゥアールを無視して、愛香は俺の手を掴んだ。

そのまま俺を連れて行こうとしたが、手応えが違う事に彼女はすぐ気付いた。

 

「観束君、まだおしおきしておりませんわ! さぁ早く!!」

 

案の定、連れて行かれそうな俺の腕を体で捕まえる慧理那がいた。

変態の象徴とされるトゥアールに感化されたのか、未発達な胸をさり気なく腕に当てている。

…これは言うべきか?

 

「これは私にとって、最高のシチュエーションです。さぁ総二様、お早く!!」

「アンタは一生寝てろ!」

 

鼻血を出しながら興奮ぎみに催促するトゥアールを、愛香は彼女の首を絞めていく。

ここまで聞こえる程に、骨が折れる音が…

朝っぱらから、ちょっとしたホラーものだ。

 

「…ッ」

「オッハヨ~ッ!」

 

俺が決意してエリナの頬を叩こうとしたが、その前に誰かに背中を叩かれた。

手加減なしに叩かれたために、かなり痛む。

背中に手を当てて膝立ちになる俺に、容赦ない罵声が飛び交う。

 

「何をするのです!! 折角の御褒美が」

「シャキッとしろよ、だらしねぇ」

 

愛香達が抗議しつつも、当人はしらを切る。

むしろ、俺がだらしないとまで言われる始末だなんて。

…まず、俺を叩いた奴は誰だ!?

痛みに耐えながら、俺は後ろを振り返る。

 

「大体、アンタ誰なのよ!?」

「そうですよ。私の許可なく総二様に安々ボディタッチするなんて、許せません!!」

「お前らこそ、暴挙だろうが?」

 

愛香とトゥアールの猛抗議に対応しているのは、結翼(いわばね)唯乃(ゆの)だった。

彼女は2人、いや3人に対しても決してひるまない。

 

(俺は物扱いかよ…)

「大丈夫か、観束」

「ぁ、ありがとうございます、先生」

 

蚊帳の外となっていた桜川先生が、俺を心配して駆け寄ってくる。

俺は彼女に対して素直に礼をしようと思った。

 

「構わん。将来お前の嫁となるものなら、当然のことだ。なので早速、ここにサインを---」

「それはお断りします」

 

湿布と同時に懐から婚姻届を取り出してきた。

だが、俺は即刻で断っておいた。

彼女もいつも通りか…

 

「---総二、誰か知ってる?」

 

おっと、話がこっちに向いたか。

一応知らない間柄では無いため、俺から話すべきだな。

そう思って立ち上がろうとしたが、唯乃が俺の手を取ってくれた。

 

「あぁ、コイツは---」

「俺様は、観束総二の彼女だ」

 

俺が答える前に、唯乃が答えてしまった。

お前、なんちゅうことを…!!

一瞬の沈黙の後、3人の驚きの声が通学路に響いた。

 

 

 

 

「さて、説明してもらうわよ」

「ハイ…」

 

俺は正座をさせられている。

現在進行形で、だ。

 

「聞きたい事は山ほどあります、が---」

「大丈夫です。生徒会はありませんので、ユックリタップリできますわ」

 

トゥアールが横目で慧理那に目配せをするが、彼女は笑顔で答える。

だが、俺には凄まじく怒っているようにしか見えない。

 

「---なんで俺様までここに?」

 

俺から少し離れた場所で、椅子に縛られている唯乃がいた。

彼女としては、何故自分がこんな仕打ちをされているのかはわかっていないはずだ。

 

「何故、貴女が"彼女"を名乗る必要があるのです?」

「そもそも、貴女は誰ですか?」

 

エリナに説教され、トゥアールが質問を投げかける。

一見穏やかに見えるが、愛香を含む3人からはどす黒い何かを感じる。

同じ空間にいて、ずっと冷や汗が止まらない。

 

「誰、か。当人を縛りつけてまでの質問じゃあねぇが---」

 

そのプレッシャーに臆せず、唯乃は余裕有りげに答える。

本来ならば、こんな状況なんて簡単に切り抜けられるはず。

 

結翼(いわばね)唯乃(ゆの)だ。お前らに覚えてもらう筋合いは、ねぇ」

 

彼女達に吐き捨てるように、名乗る唯乃。

まぁ、まともな初対面があれでは仕方ないか。

 

「そう余裕があるのも今のうちです」

「これからミッチリ質問するんだから」

 

拷問の間違いでは…?

現に、愛香の方からやたらと骨を鳴らす音が聞こえてくる。

後ろ姿しか見えないのであくまでも、憶測であってほしい。

あぁ、ここがもうすぐ殺戮の場と化すか---

 

「---!!」

「…どうしたのよ?」

 

だが、それは無かった。

突然唯乃が上を向いたまま動かそうとしない。

その様子に、愛香とトゥアールは近付くのを止める。

トゥアールも電車に乗り遅れた時のような、気まずい顔をしている。

 

☆☆☆

 

とあるスタジアムにて。

ここでは、サッカーの試合が行われている。

試合も終盤に差し掛かり、会場はヒートアップしていく。

だが試合時間が終了し、ロスタイムに突入しようとした時---

 

「ここで、エキストラの登場でーす☆」

「此処にいる人間の属性力(エレメーラ)、すべていただく!! 惜しくば、直ちに去れ!!」

 

突如、空から何かが飛来してきた。

その姿は異形そのもの、エレメリアンである。

凄まじい速度で落ちてきたものの、他のエレメリアンとは異なりクレーターや砂塵を作りはしなかった。

サッカーエリア内に乱入してきたのは、2つ首を持つエレメリアンだった。

一見すれば、ライブ会場に突如現れた(本当はスタンバイしていた)ケルベロスギルディに酷似している。

 

「…あれ?」

「何故逃げぬ?」

 

この緊急時に誰も逃げようとはしなかった。

観客はおろか、エレメリアンの近くにいる選手ですらだ。

不思議に思っていたが、エレメリアンはその原因を耳にする。

 

「(エレメリアンだ)」

「(だとすれば、すぐにテイルレッドが駆けつけるはず)」

「(早くキテ… ハァハァ)」

「(ムフフ。カメラは万端、今度こそテイルレッドたんを撮る!!)」

 

彼らの目的はテイルレッド、ただ一人。

誰もアルティメギルに畏怖を感じなかった。

むしろ、彼女の呼び水としか彼らは思っていない。

 

「舐められたモノだ…」

「再認識してもらうわ、私達の恐ろしさを!!」

 

そう呟いたオルトロスギルディは、右足で地面を蹴った。

瞬間、フィールド全体にヒビが入り、それはスタジアムに手を延ばす。

このエレメリアンは本当に、人間を襲うつもりだ。

そう人間に思わせるには、十分な余興となる。

 

「もう一度言うわ…」

「此処にいる人間の属性力(エレメーラ)、すべていただく!! 惜しくば、直ちに去れ!!」

 

その言葉に、ようやく人間は動いた。

彼らはパニックに陥り、満足な非難ができずにいる。

 

(ここまで人間が我らアルティメギルを見下すとは---)

(少し、お灸を据えようかしら)

 

今人間たちが、こうして過ごせているのも『ツインテイルズ』による活躍があってこそ。

何の力も持たぬ人間に、嘲笑される筋合いは無い。

アルティメギルの作戦としては、彼らツインテイルズのお膳立てである。

ツインテール属性を最高潮にまで高め、一気にかっさらう。

そのはずだった。

 

(今頃ポニーテールの戦士が現れるなど…)

(むしろ、遅すぎたくらいね。私には関係ないけど)

 

ポニーテール属性を(コア)とするツインテイルズ。

彼女の登場により、事態は狂い始める。

まず、アルティメギルは作戦変更を命じた。

 

『"ツインテイルズの抹殺を命ずる"』

 

彼女が言う通り、遅すぎたかもしれない。

このまま彼らを放っておけば、こちらが食い尽くされるだろう。

---ようやく、動き出した。

 

(終わらせる)

(何もかも)

(ただ他者を卑下するしかない、人間を)

(我ら誇り高きアルティメギルを愚弄する、彼らを)

 

それぞれの意志は、自身に新たな決意をする。

それと同時に、空が騒がしくなる。

オルトロスギルディが顔を上げれば、空に一点光を放つものがある。

彼らは動かず、じっと見ていた。

 

「破壊する---」

「この世界を---」

 

☆☆☆

 

「このスタジアムか…」

「まだ、脱出できていない人がいますわ」

 

現場に駆けつけてきたのは、ブルーとイエローだ。

普段のツインテイルズとしては、何か足りない。

 

「今思い返すと、アイツに上手く乗せられた感じがするわ…」

 

ブルーはしゃがみ込んで、頭を抱えて振り回している。

傍からみれば、かなり危ない人にも見えかねない。

 

(しかし、愛香さんをここまで焚き付けるなんて… もしかしたら彼女、かなりの策士ではないのでしょうか?)

 

実際に口車に乗せられた以上、彼女の指摘は間違いではない。

 

 

 

 

「(エレメリアンです)」

「(よりによって…!)」

 

彼女達がツインテール部・部室にいた頃、運悪くエレメリアン反応を感受した。

まだ唯乃には聞きたいことはあるが、エレメリアンを野放しにはできない。

それに、唯乃はアルティメギルとは関係のない一般人。

どう切り抜けるか、愛香は焦っていた。

 

「(急用ができた、とでも言う?)」

「(苦しいですが、それ以外には…)」

「(ですが、観束君はどうするのです!?)」

 

ツインテール部員でのミニ会議が行われるも、あまり上手くはいっていないようだ。

何しろ、エレメリアン討伐にはテイルレッド---観束総二が必要だからだ。

いや戦闘要員でなくとも、彼女達のムードメーカーとして必要なのだ。

 

「何話しているかは知らねぇが---」

 

そこに、先程まで口を閉ざしていた唯乃が割り込む。

この顔には、何処か悪だくみを思いついたような雰囲気が(うかが)える。

 

「お前らは、総二がいなきゃ何もできないのか?」

「何ですって---!?」

「たまには総二なしで、やってみろよ。依存しすぎは良くねぇ」

 

そう言って、さり気無く総二の腕を引き寄せる。

その腕には慧理那のとは違う、適度な接触(ボディタッチ)がある。

 

「俺様は、総二と"デート"するぜ」

『な、何ですとぉ!?』

 

総二が付き合いの浅い女とデート、だと…!?

その言葉に、ツインテール部女子は阿鼻叫喚した。

 

「それを邪魔したけりゃ、早く用事を終わらせるこった」

「ぉ、オノレェ…」

 

そう高笑いする唯乃は、まさに勝者そのものだ。

そんな彼女に対して、愛香は掴みかかろうとした。

だがエレメリアンの出現という緊急事態、そんな余裕はなかった。

 

「覚えておきなさいよ!!」

 

ただ彼女にできたことは、唯乃に対して捨て台詞を残して部室を去るだけだった。

目尻に涙を浮かべ、泣き叫びそうな勢いで。

 

「…今の、悪役が言うべき決まり文句だよな」

「愛香さんには、ピッタリな台詞だと思いますよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「---思い返していても、仕方ない。さっさと終わらせてあのバカ女を止めなきゃ」

"属性玉変換機構(エレメリーション)兎属性(ラビット)"

 

話を切り上げたブルーは属性玉変換機構(エレメリーション)を機動させ、高く跳んだ。

スタジアム内は、既にヒビは外側にまで走っている。

入った途中で崩落に巻き込まれるのを、彼女は危惧したのか。

 

「ま、待ってくださいまし」

"属性玉変換機構(エレメリーション)紐属性(リボン)"

 

対してイエローはを機動し、緩やかに上昇する。

ブルーとは異なり、武装解除していない分、上手く動けない。

ブルーは照明の頂点で一呼吸起き、今度は上空へ跳ぶ。

上昇が無くなると同時に彼女は姿勢調整し、蹴りの体勢を取る。

 

(あれか!!)

 

フィールドの中央に立つ、異様な殺気を醸し出す獣。

ここからでもプレッシャーを感じるが、一撃をもって仕留めれば…

 

「行っけぇぇぇ!!」

 

加速をつけ、一気に蹴り抜く。

狙うはただ一点、エレメリアンの正中のみ。

だが---

 

(えっ…?)

 

外した。

エレメリアンは体を僅かにずらすことで、致命傷を回避する。

それだけではなく、彼の周りに流れる空気が彼女の勢いを弱めた。

そして彼は足に手をかけると、その威力の方向を転換させた。

ブルーはまともに受け身もできず、地面を何回もバウンドし、スタジアムの壁を大きく陥没させた。

 

「ブルー!?」

 

エレメリアンとは十分に距離を置いて着陸したイエロー。

助けには行きたいけれど、ブルーとの間にはエレメリアンがいるためにできない。

 

「貴方… まさか、ケルベロスギルディ?」

「---えっ?!」

 

イエローがそのエレメリアンの姿を確認するやいなや、驚愕の顔をする。

それもそのはず。

かつて、善砂(いいすな)闇子(あんこ)のライブ会場にて、撃破したエレメリアン。

その証拠に、今もその属性玉(エレメーラオーブ)はこちらが所有している。

 

「でやぁぁぁ!!」

「ほぃっと」

 

その僅かな隙を狙うも、簡単に躱されてしまう。

後ろからの攻撃、彼には全く見えなかったはずだ。

空振りに終わったブルーは、地面を抉りながらもイエローの横でブレーキが止まる。

 

「ケルベロスギルディ、か」

「ほんと、よく間違えられるわね」

 

ポリポリと頭を掻くエレメリアン。

だが彼とは違う、もう一体のエレメリアンの声が聞こえた。

気のせいか、もう一体いるような気がする。

そう踏んだ彼女達は、周りの警戒を強化する。

 

「何処を見ている」

「ここ、ここ」

 

しかし、エレメリアンは自分を指している。

観察してみると、左右の顔から別々の声が聞こえる。

 

「あやつとは姿形こそ似ている」

「けれど、彼とは関係ないから」

 

最初に聞こえるのは、渋めなオッサンの声。

次に聞こえたのは、若い女性のものである。

それらは、どちらも正面にいるエレメリアンから聞こえる。

 

「まさか…」

「1体に複数の人格があるなんて…!」

 

彼女達の推測は正しい。

エレメリアンでなくとも、どの生物には複数の人格は持ち合わせてはいない。

あるとしても、別の人格が表側に出ることはまずない。

エレメリアン自体異常な存在ではあるが、今直面しているこの生物も異常だ。

 

「ど、どうしましょう…?」

「……」

 

この事実にイエローはうろたえてしまう。

ブルーも平静を装ってはいるが、混乱している。

しばらく2人は動けずにいた。

 

(---でも、私が色々考えても仕方ない、か)

 

しかし、ブルーは迷うことを止める。

目の前の事実を、そして総二に対する気持ちを。

そう切り替えると、彼女の力は自然と抜けていた。

今まで、気を張りすぎていた。

総二を守りたい、その一心で。

そのために今、彼女がすべきことは---

 

「いずれにせよ、私達の仕事はただ1つ」

 

ブルーはウェイブランスを構えると、徐々に重心を後方にずらす。

十分に絞りきったところで、体を一気に前に持っていく。

足場を踏み砕き、音速の速さを持って相手を貫く。

これが、ブルーにとって"エグゼキュートウェーブ"に次ぐ必殺技。

 

「エレメリアンを倒す、ただそれだけ!!」

 

しかしその速さは、同時に脆さをも併せ持つ。

全力で走ったランナーは、急には止まれない。

それはブルーにも当てはまる。

 

「またぁ?」

「通じぬ」

 

またエレメリアンは、彼女の動きを読み最低限の動作で捌いた。

その結果、ウェイブランスは弾かれ宙を舞う。

ブルーは勢いを利用され、またも新たな穴を形成する。

 

「相変わらずのワンパターン… 学習しないのかしら?」

「なるほど、まさに獣同然だな」

 

後ろを確認せず、ただ感想を漏らす。

その言葉には呆れをも含めている。

 

「ワンパターン、ね…」

 

一方、ブルーは痛みに耐えながらも何とかほふく前進する。

先ほどの言葉を反芻しながらも、まだその顔には絶望していないと示していた。

 

「それはどちらかしら?」

 

ウェイブランスは、未だ宙を舞う。

しかし、それは偶然ではない。

 

「まったく、ブルーは---」

 

スタジアムの最上段には、イエローがいた。

既に全ての武装は解除され、ユナイトウェポンとして彼女の背後に待機している。

チャージされた右手をオルトロスギルディに狙いを定めた。

 

「世話が焼けますわね!!」

 

オーラピラーは、まっすぐオルトロスギルディへ向かう。

だが、それを大人しく食らう彼ではない。

着弾点を予測し、彼は後方に飛ぶ。

 

「臆病者め」

「せめて、慎重とでも言いなさい!」

 

その先に、オルトロスギルディは着地するはずだった。

空中でまたオーラピラーを撃たれ、今度は彼を捕縛する。

先程の攻撃はイエローのもの、ならばこれは---

 

「さぁ、一気に決めちゃって!!」

 

うつ伏せ状態のブルーのものである。

伸ばされた右腕には、何かを発動させた証として淡く光を点している。

 

「"ヴォルティック・ジャッジメント"!!」

 

イエローが飛ぶと同時に、ユナイトウェポンは砲撃を放つ。

そのエネルギーは彼女と同化し、雷の砲弾として撃ちだされる。

しかし、それだけではない。

飛ばされたウェイブランスは、ちょうどオルトロスギルディに矛を向いた。

そのタイミングで、イエローはランスの柄頭に蹴りを入れる。

 

「貫きますわっ!!」

 

そしてそのまま、ウェイブランスごと突貫する。

ランスの鋭さも相乗し、イエローの威力は格段に増す。

これならば、オルトロスギルディにダメージが通るはずだ。

その予測通り、雷の砲弾は彼を貫く。

しかしまたも彼は位置をオーラピラーごとずらすことで、致命傷を免れた。

 

「まるで手応えがありませんわ」

「コイツ… チートね」

 

常識を覆す様々な出来事に、ブルーとイエローは理不尽を感じていた。

こちらの攻撃は回避されるか、流される。

しかもまだ、オルトロスギルディは攻撃をしていない。

手の内がここまで読めない敵は、恐らく初めてだろう。

 

「ふぅ… 驚いたわ」

「もう少しずれていれば、左腕は無くなっていたな」

 

オルトロスギルディは、表では冷静にしていながら、内申肝を冷やしていた。

その左腕には、一筋の切り傷が深くできていた。

イエローの攻撃の際に、ウェイブランスが削り取ったものだ。

その傷をさすりながら、彼らはツインテイルズを賞賛したのだ。

 

「まぁまぁ、ってところね」

「こやつらには、相応しい戦いをする必要があるな」

 

そう言うと、オルトロスギルディの周りが騒々しくなる。

彼らの周りに、突如空気に乱れが生じたのだ。

それも自然なものでなく、無理矢理起こされたかのような不自然さをもって。

そう、オルトロスギルディがこの不自然な乱れを起こしているのだ。

その乱れは激しさを増し、やがてスタジアムを包み込むほどの暴風となった。

倒れていたブルーと着地していたイエローは共に立ち上がろうとしても、上手く立てない。

 

「何ですの、この風は!?」

「まともに立てないなんて…」

 

普通の人間ならば、風速30mほどで立っていられなくなる。

だが今、ここに吹き荒れる暴風はそれをはるかに上回るものだ。

 

「やっとバトルフィールドができた」

「これで気兼ね無くやれるわね」

 

オルトロスギルディはこの暴風の中、まるで平気でツインテイルズに向かってくる。

その距離は、ジリジリと狭まってしまう。

万事休す---

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