あの怪物集団―――アルティメギルの宣戦布告があったのは、昨日のことだ。
あの映像は、空中にスクリーンとして映し出されただけでなく、テレビなど電波放送をもジャック公開していたらしい。
そして、映像に映っていた亀野郎は、テイルレッドによって始末された。
今日の朝。
私はいつもどうりの時間に起き、テレビをつける。
普段ならば、政治がどうだの芸能がどうだの騒いでいる。
だが、テレビに映っていたのは、
『名前を! 名前を教えてください!!』
『あ……テ、テイルレッドでs……うわ、ちょっと!』
『素敵です! お姉さまと呼ばせてください!!』
『妹に決まってるでしょ! ハァハァ、一緒に着替えっこしましょう!!』
『わーっ帰るぅ~道あけてぇ―!!』
なぜか大勢の女生徒に揉みくちゃにされている、テイルレッドの姿であった。
(………)
こんな場違いな映像を見せられたら、呆然とする。
実際、口が半開きだ。
(なんで、この映像にしたんだろう…)
女生徒のスマホによる動画か、若干のブレはあるが、ばっちり撮れている。
怪人とテイルレッド、両方の戦闘シーンと、揉みくちゃシーンが、である。
しかし、大量に使用されているのは後者だ。
昨日はアルティメギルによる被害も出たのだから、そっちに集中するはずなのに。
だが、そんなことはオマケ程度に扱われ、テイルレッドの特集がメインになっている。
そりゃまぁ、朝から辛気臭いニュースを流されるよりは良いけど。
『自分、あの幼女マジリスペクトっス』
サングラスをかけたドレッドヘアのスーツ男がインタビューされていた。
襲撃を受けた女子高の関係者らしい。
何だろう、実際に関わったのは一度きりなのに、巻き込まれた感を感じる。
『警視庁はこの少女に関しての情報を引き続き求めていく方針で―――』
この国の将来がマジでヤバいと、私の中で警鐘を鳴らしている。
警視庁、アルティメギルの情報をもっと集めようよ…
「朝っぱらから、テイルレッドばっかりや」
お昼休み。
一緒にお弁当を食べているリンから、そんな言葉が出た。
「もうウンザリやねんて、ホンマ」
「辛気臭いニュースよりはマシだよ?」
「せやけど…」
今朝のリンは、かなりお疲れ気味だった。
なんでも、家族全員で朝食の際そのニュースを見て、弟がテイルレッドのファンになったらしい。
「またロリコンが増えてもうた…」と悲しげにつぶやいていた。
テイルレッドの登場は、良くも悪くも世間に影響を与えているようだ。
「まぁ、テイルレッド一人にすごい人気なのは確かや」
「マスコット的な感じだからねぇ」
「しかし、ホンマに一人なんか?」
「どういうことなの?」
リンの疑問に、私は首をかしげる。
「いや、慧理那の話にもあったけど、バックに誰かが居るはずやろ?」
「あぁ、支援のこと?」
全校集会で、慧理那がそんな爆弾発言をしたな。
でも、それがどうつながるんだ?
「きっと、もう一人くらい新戦士が現れるんとちゃうか?」
「新戦士!?」
あんなのがまだいるってこと?
正直、勘弁してほしいョ…
もう関わりたくないのに。
「せや、一人で戦っとるとどうしても限界が来るしなあ」
「うん…」
それもそうだ。
今思えば、敵の規模は全く不明なのだ。
ずっと一人で戦い続けるには、厳しいはずである。
「それに、あいつはツインテールのために戦ってるようなもんや。きっと、それが
リンも、あの時感じた違和感を持っているのか?
いずれにせよ、とっとと終わってほしいものだ。
帰り道、とはいっても普段使っているコースでは無い。
今日は、学校が終わってからバイトなのだ。
バイト先は、住んでいるところからかなり離れている。
その上、家とバイト先は正反対の方向なので、面倒である。
こんなことなら、家から近いバイト先を選ぶべきだった…
まぁ、勤務条件と高収入に釣られた、私のせいだけど。
誰もいない道。
さっさとバイト先に行こうとしたとき、よく知っている人がいた。
(何なの、この高確率での遭遇さは)
テイルレッドが、いたのだ。
相手は、狐のようなシャープな姿。
あれも、アルティメギル…?
しかし、距離があるせいか声は聞こえてこない。
「直ぐに終わるでしょ」
そう言って、立ち去ろうとしたけど、両者に変化があった。
狐は長いヒモを出し、何かを作り出した。
ツインテールができ、徐々に形をとっていく。
できたのは…
(…テイルレッドの人形?)
そう、テイルレッドによく似た人形だった。
それも、等身大サイズの。
だが、次の狐の行動によって激しく混乱することになろうとは…
テイルレッドの人形が出来上がった後、狐はダンスを始めたのだ。
しかも、何気に上手い。
そして、テイルレッドは何故か
音声が無いので会話は想像するしかないが、絶対想像しない方がいい気がする…
(なんで人形を破壊しないんだ…?)
錯乱状態になったのは、狐があの人形を作りだしてからだ。
そして、あの人形は狐がずっと持っている。
人形を攻撃手段として使わない以上、攻撃するチャンスはいくらでもある。
ならば、その人形をさっさと破壊してしまえば、狐を始末できるのに。
『それに、あいつはツインテールのために戦ってるようなもんや。きっと、それが
ふと、脳裏にリンの言葉がリフレインする。
まさか… 人形がツインテールをしているから攻撃できないってこと!?
でも、リンの推測通りなら、ツインテールを破壊するという選択肢は無いはずだ。
まさか、こんな早くにピンチが訪れようとは…
(あわわ… どうしよう)
そのとき、突然雷が落ちたような轟音が鳴り響く。
「キャッ!?」
思わず、耳をふさぐ。
この距離でも結構聞こえるもんだな、と無意識に感じていた。
その轟音と共に現れたのは、
「青い…戦士?」
テイルレッドはフォルムカラーが赤がメインであるのに対し、その戦士は全体が青い。
背丈も、レッドよりずっと高い。
年齢で見れば、高校生…か?
なぜ疑問詞が付いたかといえば、
(女の子…だよね?)
そう判断したいけど、はっきりとはできなかった。
何故ならば、女性ならあるはずの胸が、ほとんど無いのだから。
レッドのような幼児ならまだわかるが、あれはどう見ても…
真っ平である。
しかし、そんなことはお構いなしと新戦士―――青いので、テイルブルーにしよう―――は左手から何かを取り出した。
その後、ブルーの身体が薄緑色に発光する。
狐が持っていた人形は、その光を浴びてダサくなっていく。
(どういう原理!? あの光で人形が変化するなんて)
私の
ブルーは、狐が持っていた人形をあっさりと破壊する。
そして、慣れた手つきでどこからか槍を取り出す。
狐を青色の円柱で捕縛した後、それごと貫いて倒した。
騒動が一段落したと思えば、今度は向こうから報道陣が。
テイルブルーは報道陣に向けて、ピースみたいなものをして何か言った後、背中から羽を出して飛び去った。
恐らく、「私を紹介して」と言ったのだろう。
新しい戦士は、マスコミにとっていい情報のはずだ。
(……)
しばらくその場にいたけど、バイトに行く途中だったのを思い出した。
まずい、早く行かなきゃ。
そう思って、着けている腕時計に目をやる。
「あ…」
もうとっくに、遅刻は決定していた。
伊織は遠くで見ていたため、戦闘シーンはかなり抜けた感じですね。
戦闘シーンは書きたいけど、主人公が本格的に戦うようになるのはまだまだ先です。
引き続き、コメント募集しています。