Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.51【苦労するわ、色々と】

「アテテ…」

 

リンのやつ、わざとでしょ!?

どうせなら、あのドームの中に転送してくれても良かったのに…

お陰で、私はまた死にそうだったんだから。

---まぁ、生きてるからいいけど。

 

「馬鹿な!? あの暴風の障壁を突破しただと?」

「にしては、カッコ悪い登場だけどね」

 

うるさい。

私だって、こんな地面に強烈なキスはしたくなかった。

全部、リンのせいだからね!!

 

「て、テイルグリーン!?」

「何でこんなところに…」

 

かなり離れた場所、壊されたスタジアムの壁付近にイエローとブルーがいた。

でも、何で寝そべりながら?

もしかして、敵---エレメリアンの攻撃を受けた後だからかな?

 

(…ん?)

 

ここでようやく、私はエレメリアンの姿を見た。

頭が2つ、首周りには何かが巻き付いている。

よく見ると、それは無数の蛇だ。

『長いものには巻かれろ』という(ことわざ)があるけど、もしかしてそれかな…?

それにしても、何処かで見たことがあるのよねぇ…

 

(顔が犬っぽいな)

 

そういえば、複数の頭を持つエレメリアンが他にもいたような。

---あっ、

 

「ケルベロスギルディ!」

 

そうだそうだ、思い出した。

何処かで見たことあると思ったら、あのライブ会場か。

でも確か、既にツインテイルズに倒されたはずじゃ…

 

「違う!!」

「どうして、こう何度も間違えられるのかしら…?」

 

いきなり、本人からの否定が入ったし。

というか、複数のツッコミ?

 

「我々はオルトロスギルディ」

「なめていると、痛い目に合うわよ」

 

なるほど、オルトロスギルディね。

別に舐めているわけでは無いけれど、どうもねぇ…

 

(面倒だな)

 

目の前の敵に話しかけているはずなんだけれど、2倍話さなきゃいけない感じがする。

別に話すのは構わないよ、慣れているし。

ただストーリーの進行が遅くなる、そんな気がする。

 

「何をブツブツ言っているの?」

「動かぬならば、こちらからっ!!」

 

しまった、口に出していたか。

集中していると、無意識に何かをすることはよくある。

でも、こうも怪しまれるほどだなんて…

気をつけていこう。

 

「って、そんな場合じゃなかった!?」

 

気がついたら、目の前にはオルトロスギルディがいた。

私よりも慎重派高いから、見下ろされている感がMAXなんだけど。

彼、いや彼らは左手を手刀の形にして、私を狙って振った。

あの爪で切り裂くつもり?

 

「そんなもの---」

 

爪の餌食にならない場所、つまり左腕を抑え込む。

同時に左腕に力を込め、思いきりお腹を狙う。

身長が彼らより低いから、見事なストレートになる。

 

「何度も喰らってきたんだから!!」

 

正直、もういいかな。

モールスギルディの時に、嫌と言うほど受けたし。

爪の傷って、案外残りやすい。

私は、テイルギアによるフォトンアブゾーバーの加護で何とかなった。

 

「もういっちょぉッ!!」

 

体を時計回りに捻らせ、右裏拳を脇に叩き込む。

拳は体にめり込むけれど、それは一瞬の出来事。

その威力によって、オルトロスギルディは見事に吹き飛んだ。

 

「な、なんで動けるの!?」

「この環境下では、まともに動けないはず…」

 

何でかって?

…そう言えば、なんでだろう。

ツインテイルズはどうしたのかな。

そう思って、彼女らを探した。

 

「何故こうもケロッとしているのでしょう?」

「あれは人外レベルね」

 

ちょっと外野、聞こえているんだけど?

更に言えば、バーカーサー女には言われたくはない!!

しかし、這いつくばっていてはその暴言もいささか惨めに見えてくる。

 

(というか、レッドがいない)

 

私にツッコミをしてのは、ブルーとイエローのみ。

ここで、レッドが何らかのリアクションを取ってくれるはず。

しかし彼女がいないせいで、いまいちノリがない。

 

(まぁ、向こうの事情ってやつか)

 

考えるのは一時休止、今は集中しよう。

追撃が来るかもしれないんだから。

そう思って、私は構えようとしてみる。

 

「あ、あら…?」

 

急に動きがぎこちなくなっていた。

右腕が重く、足も思うように上げられない。

これじゃまるで、錆びついたロボットだ。

さっきはあれだけ軽快な攻撃ができたのに…

 

(まさか、ハンマーと何か関係が---)

『あぁスマン、重力設定間違えてしもうた』

 

---水差すの、止めてくれない?

折角の私の見せ場が…

 

「---って、リン!? どーゆーことか、色々聞きたいんだけれど!!?」

『どうどう。深呼吸や、グリーン』

 

あまりの怒りに、凄まじい声でリンを怒鳴り散らす。

もうあれほどの声量は、初めてなのかもしれない。

気圧されたリンは、兎に角私を落ち着かせようとした。

 

「な、なんて大声な!」

「耳がキーンってするよぉ…」

 

あら、聞こえてた?

見ればオルトロスギルディは、耳に指を突っ込んで栓をしていた。

怒鳴るときには、周りに注意しよう。

 

「---なるほど」

 

小一時間、オルトロスギルディの猛攻を凌ぎながらリンの説明を聞かされた。

いつもツインテイルズの戦いを見ていて感じていたけど、よく話ながら戦えるなぁ…

私なんかは、息切れするよ。

だから私は、適当に相づちを打ちつつ聞き手に集中した。

そして、相手が間合いを取ってくれたために、ようやく私は答えることができた。

 

「全ては、リンの差し金か」

『せやから、スマンて言うとるがな!?』

 

リンの説明では---

まず私は、自在に重力操作ができるらしい。

その効果範囲は、私の周囲10km前後。

修業次第では、その範囲は拡がるみたい。

そして、その操作はテイルギア開発者もある程度できること。

 

「もしかして、ハンマーや私の重さを変えたのって…」

 

リンの解析によれば、この暴風のなかでは満足に動けないそうだ。

普通の人間はおろか、ツインテイルズでさえも。

到着時からブルーとイエローが瓦礫に寝そべっているのは、そのせいか。

じゃあ、それと同等である私は、なぜ平気なのか?

 

「私のテイルギアの能力なの!?」

Exactly(その通り)

 

思い返すと、そんな節があったなぁ…

転送された時、急にハンマーが重くなった。

そして、今も私の体は満足に動けず、防戦一方だ。

まるで生身の体に、鉛の甲冑を着ている感覚。

 

「あの鎧、なんて固さなの?!」

「こちらが持たぬ!!」

 

---誰か、助けてください。

もう、足が重さで震えてきた。

彼らのマシンガンパンチも、滅茶苦茶痛い。

アーマーがあるから、ある程度は軽減できるよねって?

冗談じゃない、むしろアーマーの振動が余計に痛いの!

 

「なんて防御力… 私には出来ませんわ」

「どうかしらねぇ…」

 

ふと視界に入ったブルーとイエローは、呑気に談話していた。

動けないのは仕方ないにしても、せめてアドバイザーとして働きなさいよ!!

 

(腕の感覚がもう…)

 

痺れを通り越して、腕が無くなったと言った方が適切かな。

顎を守るために両腕を交差させてはいた。

だけど彼らはその隙間を狙い、何発かは胸部アーマーを振動させた。

 

「だったら---」

「こうしちゃえ♪」

 

オルトロスギルディは地面に両手を叩きつける。

その瞬間、地面が揺れた。

通常よりも重力に影響を受ける私には、十分に威力を発揮する。

私は続く揺れに耐えきれず、地面に両手を着きそうになる。

だけど、彼らはそれを許してはくれなかった。

 

「にゃああぁぁッ!?」

 

地面から無数の蛇が出てきて、私の体を拘束する。

この蛇、どれだけ長いの?!

完全に私の身長、超えている気がする。

動きを封じることより、蛇のザラザラした感触が嫌なんだけれど…

 

(長いものに巻かれろとは言っても---)

 

蛇はやだ。

下手すると、トラウマになっちゃう。

しかも、何気に拘束の仕方が上手い。

そのせいで、まったく動けない。

 

「「フィナーレだ(よ)!!」」

 

オルトロスギルディの双頭を見れば、何かを溜め込んでいた。

その口に何かが漏れ出ると同時に、吐き出した。

その正体は、高密度にまで練られた鎌鼬(かまいたち)

風を編んで作られた刃は、かなり鋭いだろうね。

---なんで、こう冷静になれるんだろうな…

 

「「グリーン!!」」

 

ブルーとイエローは声をかけるだけで、何もできなかった。

私はなす術もなく、鎌鼬に切り刻まれてしまった。

そう、思っていた。

鎌鼬が途中で進路を変えてしまったのだ。

 

「…はぇ?」

 

思わず私は気の抜けた声を上げてしまう。

鎌鼬は左に大きく逸れていく。

その先には、切れ目が存在している。

それも軽く浮いている感じで。

そして、鎌鼬は定められたかのように吸い込まれていく。

そこから生じた流れは、今までとは違うことを肌で感じた。

 

「乱気流… でもこれは…!?」

 

やたらめったらに吹いていたものではなく、常に一定方向に吹いている。

それに、過重力状態の私ですら引き寄せられるなんて…

これ、余計に跡が付きそうだよ。

でもその心配はなかった。

すぐに何かの力によって消されたからだ。

跡が残っていないか、体をくまなく確認する私に誰かが問いかける。

 

「はぁい、真打ちの登場や!!」

 

現れたのは、白いツインテイルズ。

いや、髪型はポニーテールにまとめられているから、厳密には違うな。

体のスタイルは、まぁまぁか。

胸に関しては、若干ブルーに勝っている。

伸長はテイルレッドより少し高め。

 

両腕には、大型のクローを装備している。

そのせいか、テイルブレスは見当たらない。

代わりに首輪みたいなものが取り付けられている。

その武器も、両腕を覆うように籠手のようなものから刃が出ている。

 

(これはツッコむべきか…?)

 

確か、認識攪乱装置(イマジンチャフ)はテイルギア装着者に親しい存在には効果は薄いんだっけ。

だからこそ、私は彼女の正体はすぐにわかった。

というか、最初の関西弁でわかっていたけれど。

 

「取り敢えず、ありがと」

「おおきに」

 

助けられたからには、真っ先に彼女に礼を言っておいた。

だけど、かなり気にしていた事があったから、私は彼女に耳打ちをする。

 

「(---で、何でここにいるのよ?)」

「(ええやん、別に)」

 

ええやん、で済む事じゃないと思うけど。

 

「感謝はするわ。けど、貴女が戦えるような相手じゃ---」

「黙っとけ」

 

私は彼女に非難するように説得を試みた。

けれど、その前に何かが鳩尾に入った。

入れられた感覚からして、おそらく左拳。

下からの突き上げだから、何かがこみ上げてきそうなほどの威力だった。

 

(ま、待ちなさいよ…)

 

勝手に進んでいく彼女を止めようとした。

けれど膝を付き、地面に倒れこんでしまった私ではどうにもできなかった。

彼女の後ろ姿を見ながら、私は戦闘による疲労と鈍痛に耐えるだけ。

徐々に視界が狭くなっていく。

もう、意識が保てないな---

 

☆☆☆

 

テイルグリーンが意識を手放した事を脇目で確認した。

乱入者は再び専用武器"ディメンション・クロー"を装着する。

 

「…何者だ?」

 

オルトロスギルディの片側が彼女に問い掛ける。

テイルグリーンが手負いの状態だったことを差し引いても、彼女をダウンさせた威力は脅威だ。

先ほどの亀裂も、恐らく彼女が作り出したのだろう。

彼女には、不明点が多すぎる。

それだけでも、エレメリアンを畏怖させるに足るものだ。

 

「ウチは、テイルホワイトや」

 

単調に答える。

クローを合わせ、削ぎながらで。

既に彼女は戦闘体制に入っている、ということか。

 

「気持ち悪いわね…」

「先手必勝!!」

 

女性の頭が感想を呟く。

それに対し、男性は攻撃を仕掛ける。

先程打ち消された鎌鼬。

テイルホワイトはこれをどう凌ぐか、試そうとしたのだ。

 

ホワイトは右腕のクローを前面に空を斬るだけだ。

期待外れだったか---

だが、その直後異変は起こった。

ホワイトの前に、3本の鋭い爪跡ができる。

そこには再びあの妙な空気の流れを生み出し、騒がせる。

 

(あら…)

(やはりか)

 

吐き出された鎌鼬は、その流れに遊ばれ、爪跡の中へ消えていく。

テイルグリーンを狙うはずだった攻撃が殺がれた原因は、あの両爪にある。

オルトロスギルディは、そう結論づける。

 

「だが、この暴風吹き荒れる中では容易に動けまい」

近接格闘(インファイト)ぉ~」

 

接近戦ではこちらが有利だと判断し、すぐさま戦闘スタイルを変更する。

拳を握りしめ、足元の地面を踏み砕いた。

それは、爆発的な加速を生み出した証である。

常人にはもはや、オルトロスギルディの姿は見えてはいないはずである。

 

「スマンなぁ---」

 

テイルホワイトは冷静だ。

直接的な攻撃とはいえ、高速過ぎて見えないオルトロスギルディに対して。

彼女はその小柄な体を低くさせる。

頭が下がる、そのすぐ後にオルトロスギルディの拳が通り過ぎる。

すれ違いざまに、ホワイトはクローを縦に構え、彼らのお腹を切り裂いた。

 

「ワザワザ教えてもろうて」

 

オルトロスギルディに苦悶が窺える。

見れば、強固な体を深く削られていた。

振り向き様に彼らは回し蹴りを仕掛けるも、クローに備え付けられた大きめの籠手に遮られてしまう。

足を戻すと同時に、両腕をフルに行使して殴りかかる。

しかしホワイトは、両腕の籠手を体の前で縦にガードする。

先程グリーンもこのように防戦に応じたが、彼女とは明らかに異なる点がある。

グリーンは両腕を交差させて、防御姿勢を取っていた。

これは腕を交差させた部分は2重の壁となるため、防御力は高い。

しかしこの方法では、交差した際に『隙間』が生じる。

グリーンが少なからずダメージを受けたのは、この欠点にある。

 

(まるで手応えがない)

(この子、何処で戦いを学んだのかしら)

 

打てどまるで響かぬ鉄壁に、オルトロスギルディは素で評価を上げた。

両腕の籠手を平行に構えた防御姿勢は、一点の防御強化がない。

その代わりに、前面に拡がる攻撃に対して多大なアドバンテージを得る。

グリーンの防御を『点』と例えるならば、ホワイトは『面』。

 

(耐えて耐えて、耐え抜くんや!!)

 

だからこそ、彼女は耐久性に優れているのだ。

しかし、辛抱強く待っていたが我慢できなかったようである。

気迫を出し、ホワイトはオルトロスギルディごと周りを吹き飛ばした。

彼らが地面に着地した時、彼女は好機を得る。

 

「捕えたで」

 

瞬間、オルトロスギルディの周りに無数の切れ目が出現する。

それは密度の高い乱気流を生み出し、結果的に相手を拘束した。

 

完全開放(ブレイクレリース)

 

彼女の籠手は展開を始め、間から凄まじいブーストを生み出した。

そしてホワイトが跳躍した。

 

「って、あれ…?」

「どれが本物だ!?」

 

空中で幾つもの分身を生み出し、オルトロスギルディに向かって行く。

そして、すれ違いざまに両腕に備え付けられたクローにて、無慈悲に切り裂く。

それはある意味、数の暴力とも言える光景でしかない。

 

「"シュレーディング・ストライク"」

 

何故そのような名前となったか。

その真意は、あの攻撃にある。

分身を生み出した際、本体を含めてその中には実体を持つ者と、そうでない者がいた。

すれ違う際、どの分身体が彼らを切り裂くのかは知らない。

オルトロスギルディはおろか、ホワイトでさえも、だ。

切り裂かれるか、ただ通り抜けるか。

その選択肢は決して交わることは、本来ない。

しかし、この必殺技はこの矛盾に当てはまる。

両者の結果を交えた、矛盾の攻撃。

それは"シュレーディンガーの猫"と類似するのかもしれない。

だから彼女は、あえてこの名前を付けたのだろう。

 

「見事…!」

「完敗、ね」

 

無数の切り傷を付けられたオルトロスギルディは、ただ一言称賛した。

その後爆発し、スタジアム内に荒れる暴風も収まった。

ホワイトは属性玉(エレメーラオーブ)を回収する。

後はグリーンを連れて帰るだけ、だったのだが---

 

「待ちなさいよ」

「---何や?」

 

途中、テイルブルーに呼び止められた。

仕事を終えたホワイトにとって、これは機嫌が悪い。

彼女の応答は、何処かぶっきらぼうに見える。

 

「あんたたち、結局何なの?」

 

それはツインテイルズの味方か敵か、それを明確にしたいのだろう。

アルティメギルに楯突きながらも、ツインテイルズとは一線を引く存在。

どっち付かずの状態だからこそ、彼女は問い掛けたのかもしれない。

 

「競争相手、やな」

 

そう言い残すと、グリーンを肩に乗せる。

抱える方とは反対側のクローで切れ目を作り出すと、その中へ消えていった。

 

「途方もない強さ… 油断は出来ませんわ」

 

ようやく起き上がったイエローは、そう洩らす。

確かに、彼女達に対して油断はできない。

だがこれ以上、ツインテイルズの邪魔をするなら、容赦しない。

ブルーは沸き上がる苛立ちを、抑えきれなかった。




実はこのタイトル、テイルホワイトの「クロー」と「苦労」を掛けたものなんです。
いい加減テンポよく行きたい…
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