Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.54【晩御飯は、朝のおかずへ】

「えっ、リンもですか?!」

『えぇ、そうなのよ』

 

結局、翌日になっても唯乃は帰宅することはなかった。

流石に心配になったので、リンに聞こうと思った。

彼女、唯乃について絶対心当たりがあるはずよね。

でも、リンは携帯に出なかった。

妙だと思い、今度はリンの家---雨宮家に連絡してみた。

 

『夜になって、急に友達から誘いの連絡が入ったらしいのよ』

「はぁ…」

 

そして今、リンの母親から事情を伺っているわけ。

まさか、親にすら詳しい説明をしていないなんて…

 

『私もちょうど、伊織さんに連絡しようと思っていたところなのよ。ありがとうね』

「いえ、こちらこそ」

 

丁寧な挨拶に、こちらも相応の対応をする。

…初めて会ったときから、片隅に感じていたことがある。

何でリン以外、関西弁じゃないの?

 

(こっちでの生活に対応するため、なのかな?)

 

なら、なんでリンは関西弁を使い続けているんだろう。

---今、考える事じゃないよね。

 

(リンが寄りそうなところと言えば---)

 

彼女の手で一から造り上げた基地、そこしかない。

時間はかかるけど、行くか。

 

 

 

 

「ちょっと、どうしたのよそれ!?」

 

私達の基地にて。

到着した私を出迎えてくれたのは、リンだった。

でも、損傷が凄まじい。

装甲は全て剥がれ落ち、アンダースーツは汚れていた。

壁にもたれ、彼女は座り込んでいる。

 

「しっかりして!!」

 

リンの側まで急いで近寄り、彼女の頬を何度も叩いた。

だけど目は虚ろで、呻き声しか聞こえない。

一体、何があったのよ?!

 

(そうだ。確か、データバンクがあったはず---)

 

リンの側から離れ、私はモニターを操作する。

いくら機械の操作が苦手でも、ゆっくりやればできる。

たどたどしくキータッチしながら、目的のファイルを見つけ出した。

 

(…あれ?)

 

画面左端には、属性力(エレメーラ)反応が(ポイント)として表示されている。

それ以外、は発生時の現場を中継していた。

 

「(唯乃…)」

 

点は1つ。

その現場では、よく知っている者がいた。

だけど、後ろ姿しか見えない。

だからどの様な表情をしているのか、私ではわからない。

 

『唯乃!?』

 

そこにもう1つ、反応が。

声からしても、リン---テイルホワイトなのは明白だ。

既に得物を装備している。

どうやら説得しようと来たみたいだけど、どうもそんな雰囲気ではない。

結局、説得は失敗。

互いの意地を賭けた、死闘が始まってしまう。

ここまで一気に観たので、休憩も兼ねて一時停止する。

そこで気付いた事が1つ。

 

(げっ、丸一日かかったの…?!)

 

どんだけ長丁場な戦いなのよ…

流石に全部は観れないので、戦況に変化が出るまではスキップ×2。

あの2人、凄いとは思っていたけれど、とんだ底抜けね。

知らなかったとはいえ、彼女達にあんな態度をとっていた自分が末恐ろしい。

やがて視界は青色から、緑色や茶色へと変化する。

空中から地上へ、戦場を移したらしい。

 

『自分の感情(ポニーテール)だけで戦っているわけじゃなさそうだな』

 

唯乃がそんな事を話すと、明らかにテイルホワイトの動きが変わった。

一気に終わらせるかのごとく、積極的に攻撃を仕掛けていく。

その力は、唯乃を凌駕していた。

止めを刺しに行こうとしたが、唯乃の能力(?)に阻められてしまう。

それは敵の偽者(デコイ)を生み出すものだった。

追いかけようにも、その偽者が道を阻む。

ホワイトが片付ける間にも、唯乃は戦場から距離を離していく。

そして、唯乃の反応が消えた。

 

(ど、どうしよう…!?)

 

内心慌てきっていたが、今ではどうしようもない。

唯乃の反応を探そうにも、この機械についてはほとんど操作方法がわからない。

今までリンに頼ってばかりだったからなぁ…

 

「うぅん…」

 

すっかり忘れておりました。

リンを介抱するのが先なのに、何で別の事やってたんだろう?

って、起きた!?

 

「ぁー… ウチ、何やっとった?」

 

頭をガシガシと掻きながら、起きた。

まだ焦点が合わないのか、全体的にぼへ~っとしていた。

少し間抜けに見えたけれど、可愛くも見える。

 

「(えっと、唯乃を見つけて。ほんで、ボッコボコにしたけど、尻尾巻いてトンズラしおって。それから---)」

 

順に記憶を思い返しているみたい。

今は、声をかけるのは止めておいた方が良いね。

普段でも、何かに集中している時に声をかけられると、

 

「黙っとれ!!」

 

と、一喝。

何故か、声をかける側が怒られる始末なんだよね。

別に悪いことをした覚えはないけれど…

 

「取り敢えず、休めば?」

 

先行き不透明感がありありだけど、休憩も大切だからね。

 

☆☆☆

 

アルティメギル前線基地にて。

会議室は、再び騒乱に包まれた。

 

「相変わらず、落ち着きがないな」

「いや、ウチが居るからやろ」

「考えれば、ここのメンバーと顔を合わせるのは初めてだったか」

 

3者3様に、何とも緊張感のない会話を続ける。

自席に居座るエレメリアン達に、冷徹な視線を送るダークグラスパー。

自分こそ騒動の元凶だと、自分に指差しするメガ・ネプチューンmk.Ⅱ。

顎に手を当て、冷静に状況把握する"怨み"。

今ここに最強クラスの戦士が現れて、動揺しない者はいない。

 

「これはこれは、ダークグラスパー様に"怨み"様。態々ここへお越しになるなど、忌々しき事態となったので?」

「いや、書類審査に飽きたのでな。戦況の確認も兼ねているがな」

 

スパロウギルディの挨拶に、久し振りの友達に話し掛ける様な気軽さで答えるユウ。

要は暇潰し。

そのような軽い気持ちで、この死地に来たのか。

 

「にしても、随分と淋しくなったものじゃ。何しろ、わらわ達を出迎える者すら居ないのじゃからな」

「皆忙しいんや、察したり」

 

ダークグラスパーも残存部隊に対して、かなり辛口コメントを寄せる。

その鋭い指摘に、皆は沈黙してしまう。

慌ててメガ・ネがフォローするも、皆の気持ちは容易に回復できるものではない。

 

「(僕がいない間の戦闘記録を)」

「(直ぐにご用意致します)」

 

スパロウギルディに手招きするユウ。

彼が近付くと、そっと耳打ちをする。

ユウは前線から引いてかなり時間が経ったはず。

またここで戦闘指揮を執る以上、情報を得ることは必然であった。

 

「僕は資料室に行くよ。適当に時間潰しておいて」

「わかった」

 

ダークグラスパーに言づけして、会議室を出る。

彼が去った後、新参者であるメガ・ネの周りにはエレメリアンが多数寄ってきた。

そんな彼女に嫉妬の眼を向けるダークグラスパーであったが、ユウが知ることはない。

 

 

 

 

「「……」」

 

ユウとスパロウギルディ、2体は微動だにせず。

ユウは、部下達が作成した報告書を全て通す。

スパロウギルディは、時々補足説明するために割り込むことはある。

だが、基本的には彼に介入はしなかった。

 

「---なるほど」

 

ようやく、ユウは報告書に目を通しきった。

流石に彼のブランクが長かったために、その枚数は膨大ではあった。

それを休憩なしに読み進めたので、目に疲れが出てきた。

 

「『テイルグリーン』が登場してから、明らかに状況に変化が起きているな」

 

目頭を押さえつつ、ユウは単調な回答をした。

単純明快、だからこそスパロウギルディは何も反論はしなかった。

 

(恐らく、美の四心(ビー・テイフル・ハート)だけでは手に負えない。せめて()がいてくれれば、この様な面倒にならずに済む物を…)

 

ここにはいない誰かに、ユウは文句をつける。

厳しい戦況の中、手持ちのカードはあと僅か。

もし1つでも間違えれば、総崩れとなる可能性が高い。

 

(それに、他の三神も騒がしくなってきた。僕の獲物を横取りされるかもしれないな。なら、すぐに始末するのが最善か)

 

彼の中に焦りが陰り始める。

 

計画(プラン)を再考する必要がある。ビートルギルディとスタッグギルディを招集し、緊急対策を練る」

「仰せのままに」

 

スパロウギルディに指示を送り、ユウは早々に資料室を出る。

その歩きは、自然と早くなる。

事態は大事に成りつつある。

だからこそ、速攻で終わらせる必要がある。

 

(何としても、シナリオは変えてはならない---)

 

 

 

 

「---で」

 

再び会議室。

だが、いつにない静寂が辺りを包む。

何しろ、エレメリアンが普段以上に居ないのだから。

ここには美の四心(ビー・テイフル・ハート)の隊長と副官、加えてスパロウギルディが。

そしてダークグラスパーとメガ・ネがいるだけ。

 

「何故、主催者がおらぬのだ?!」

「ぉ、落ち着いてよ、兄さん」

 

声を荒々しく挙げて、不満を撒き散らすは美の四心(ビー・テイフル・ハート)隊長のビートルギルディ。

そんな彼を落ち着かせるのは、その副官・スタッグギルディ。

彼等の苛立ちは、既に頂点に達していた。

 

「既に1時間も過ぎているのだぞ!? 一体何をしているかっ!!」

 

彼が気にしていたのは、"怨み"が未だにここへ着ていないことだ。

重要な会議とはいえ、ここまで待機されては待つ側が寂しくなる。

 

「確かに遅いのぅ。マイペースな性格ではあるがな」

「あぁ見えて、完璧者やないの? 案外、手こずってたりして…」

 

ダークグラスパー陣からも、とやかく声が上がる。

最初は談話して時間を潰していたが、話のネタも尽きた。

 

(早く溜めている恋愛マンガの続きが読みたいのだ---!!)

(僕はアニメがまだ…)

(テイルレッド… 妄想しただけでうずうずします)

(とっとと帰りたいわぁ)

 

それぞれの心境はこんなもの。

表ではアルティメギル幹部らしく振る舞ってはいるが、裏では個人の欲望が丸出し状態。

いや、これが普通か。

 

「遅れてスマヌ」

 

ようやく姿を現したユウ。

待たされた彼らは、彼に文句を言おうとした。

だが、脇に抱えられた物を見て、それは控えることにした。

妙に分厚いのだ。

まるで、コミケの戦利品を抱え込んだかのように。

 

(コミケの戦利品、にしては薄すぎるな…)

 

皆の視線を無視し、"怨み"は席に着く。

それと同時に、抱えていた物を取り出した。

 

「これは…?」

「資料だ」

 

ダークグラスパーの質問に、ユウは淡々と答える。

彼の指す『資料』の表紙には、何も書かれてはいない。

彼のミスか、それとも別の何か、か…

兎も角、中身を確認しないことには始まらない。

 

「では、会議を開いても…?」

「構いませんよ」

 

それを合図に、空気は緊迫したものへと変貌を遂げる---

 

☆☆☆

 

「どう、落ち着いた?」

「うぃ~…」

 

…だめじゃん、これ。

絶対、回復できてないよね。

 

「兎に角、じっとしてなさい!!」

「…」

 

めっ、と注意をすると、リンは頬を膨らませながらも了承はしてくれた。

普段からこう、素直だったら良いのに…

彼女の額に濡れタオルを置き、反応を窺う。

 

(あれだけ暴れば、当然の結果ね)

 

ため息をつく。

親に何も連絡をせず、全部一人で片付けようだなんて…

 

(何で私に相談しなかったのよ…)

 

すっかりぬるくなったタオルは、風呂桶に戻す。

何やらウニウニ言ってるリンを見てると、心配でたまらない。

どう表現すれば良いか、わからないけれど。

何となく、蚊帳の外に放り出された感じはする。

 

「(そんなに私、頼りなかったっけ?)」

 

そりゃあ、元エレメリアンの唯乃に比べれば弱っちいのはわかる。

だけれど、いやだからこそ、死に物狂いで努力した。

リンと唯乃の、地獄の特訓にも何とかついてきた。

エレメリアンだって、少ないけれど倒した実績はある。

戦闘ではズブのド素人だけれど、それなりの覚悟はあったんだよ…?

 

(あれ? 目が霞んできた…?)

 

もう視界がぐちゃぐちゃだ。

一体、どうしたんだろう、私!?

 

(---ッ!!)

 

もう訳がわからなくなった。

何かに駆られるように、私はリンがいる医務室を飛び出してしまう。

そして、医務室のドアが完全に閉まったことを確認すると、すぐそばの壁に寄り掛かる。

 

(私はまだまだ頼りないのかな…)

 

誰も慰めては、くれはしない。

焦燥感と無能感、様々な感情が入り雑じる。

私が私を超えるには、何が必要なのか。

その答えを得られるのは、もっと先なのかもしれない。

 

☆☆☆

 

会議も終盤。

彼の計画が全貌となった時、皆は驚愕した。

 

「正気か、貴様!?」

 

猛然と抗議するは、ビートルギルディ。

 

「もし我々がそれを実行に移せば、首領様に何をされるか…」

「わらわ達だけでなく、部下達も重い処罰が下されるぞ」

「…」

 

ダークグラスパーも、追撃を行う。

皆がその提案は控除すべきだと提案するも、彼はその姿勢を崩す事はない。

 

「ツインテールの属性力(エレメーラ)はもう十分なはずだ。もう彼女達には、これ以上の進化(エヴォルブ)は臨めまい」

 

この発言に、皆の怒りは頂点へと達する。

 

「言わせておけば… コヤツを牢に入れよ!!」

 

その指示を皮切りに、エレメリアンが乱入する。

そして目立った抵抗もせずに、彼は捕らえられてしまった。

 

「フェンリルギルディ以上に、ツインテールを見下しておるな。ツインテイルズの真価を知らぬ者が軽々しい!!」

 

ダークグラスパーも、彼に落胆した。

頼もしいと感じていた彼が、まさかこの様な事を立案しようとは…

 

「まぁ、黙って見ておけ」

 

彼は呟く。

 

「僕の言った事は事実となる。そしていずれ、僕の力は必要となるのさ」

 

負け惜しみではなく、高笑い。

それは明らかに、彼らに対する軽蔑、そして挑発。

だがそれしかできなかった彼は、やがて会議室から追放されたのである。

 

 

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