Which do you love ?   作:ズケズケ

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今回は短めです。


Episode.56【ドンヨリ】

陽月学園高等部に唯乃が登校しなくなってから、ついに1週間が過ぎた。

外見上は平気な顔をしていても、心配でたまらない。

クラスメイトには、必死で明るいキャラクターを演じた。

でも、それでも限界がある。

 

『…』

 

ツインテール部室には、不穏な空気が立ち込めている。

誰もがこの空間に入れば、違和感に襲われる事は、想像に固くはない。

現に、桜川先生が入ると、華麗なズッコケを見せる。

 

「何だこの空気… まさか、恋患いかっ!?」

 

彼女なりの最上級のボケをかましたつもりだが、誰も突っ込みはしない。

本来ならば、トゥアールや津辺が対応策するはずだが、彼女達はいない。

代わりに、慧理那がわざわざお茶係をかって出ている。

 

「お嬢様、私が」

「いえ、わたくしにやらせてくださいまし。これも、修行になりますので」

 

エリナが自発的になったのは良いが、この状況はマイナスに振りかねない。

誰も説明はしてくれないために、桜川先生は状況把握能力(フィーリング)に頼らざるを得なかった。

 

「(重苦しくてたまらんな。トゥアールと津辺は一体何処へ…?)」

 

周りの部員は皆、暗い雰囲気を出す。

後でお嬢様に聞くとしよう。

そう結論した桜川先生は、最優先として、部員の介抱に専念する事にした。

 

☆☆☆

 

「トゥアール…」

 

あれから、トゥアールの様子がおかしい。

まるで何かにとりつかれたかの様に、彼女は基地に泊まり込んでいた。

それもあの時から、ずっとだ。

津辺はそんな変わり果てた彼女を遠くから観察していた。

 

(最近、皆おかしすぎるわよ!?)

 

観束も伊織先輩もリン先輩も、誰もがおかしい。

観束もあれだけツインテール好きを豪語していながらも、まさかポニーテールの転入生を『彼女』にしてしまうなんて。

それでいて、彼もまんざらではない態度をとるようになった。

リン先輩は伊織先輩も、今まで通りに部活動に参加はしてはいるが、何処かよそよそしい。

伊織先輩は観束の彼女である唯乃の世話もしているから、単なる疲れだろうと思ってた。

でも、明らかにおかしいのは、リン先輩だ。

 

「(はい。こちらでは、特に問題は… はぁ!? 何故そのような事を!?)」

 

たまに誰もいない廊下に行くと、リン先輩が電話している光景に出くわした事がある。

だけれど、それは彼女でありながらそうでない、何とも奇妙なものだった。

普段使わない敬語を、電話越しの相手に使っていた。

 

(もしかしたら、唯乃が消えた事と何か関係があるんじゃ…?)

 

疑うのは、本来なら良くない。

だが、昔から怪しいところはあったのだ。

 

(ショートカットのリン先輩から、何故かポニーテールの属性力(エレメーラ)の反応があったし…)

 

現時点ではリン先輩=テイルホワイトの方程式は成り立っていないため、津辺は疑問に感じている。

がしかし、既に異変が起こりまくりなのは感付いていた。

これは、何か不吉な出来事が起こる前触れではないのか?

そんな考えすら、頭をよぎってしまう。

 

☆☆☆

 

(唯乃…)

 

こうも俺の前から姿を消されてしまうと、俺も寂しさは感じる。

不器用ながらも、俺の事を少なからずは思ってくれた彼女。

 

(何で俺に、話してくれなかったんだよ!?)

 

勿論、最初は嫌々だった。

彼女の正体を知っていた上で、互いを好きになってくれと言ってきたのだから。

おまけに、そうしなければバラすとまで出てきた。

彼女との交際か、俺の世間体か。

どちらかを捕らなければならないならば、俺の選択は決まっていた。

 

(そんなに、信用が無かったのか?)

 

だけれど、彼女の側にいてよくわかった。

直線的で自分の信念は絶対に曲げない。

だからこそ、俺の中にある『ツインテール愛』に気付いてくれた。

そして俺も彼女の『ポニーテール愛』を肌で感じ取れた。

彼女なら、互いに高め合える事ができるかもしれない。

そんな希望さえ、垣間見る事もあった。

 

(---おかしなもんだな、俺も)

 

自然と笑みがこぼれた。

初めは、彼女を毛嫌いしていたはずなのに。

今では俺のもっとも信頼できる()となっている。

 

(だからこそ---)

 

だからこそ、彼女は今どうしているのか?

今までにない不安が、俺を襲ってくる。

それに、前に見たあの映像。

 

「(まさか、な…)」

 

俺の中の予感が、出来れば外れてほしい。

そう切に願った。

 

☆☆☆

 

「ふぁ…」

 

思わず、欠伸が出ちゃった。

ここ最近、満足に熟睡できなかったからなぁ…

 

「ねぇリン---」

 

退屈しのぎに彼女に話しかけるも、無視される。

いや、気付いていないのか。

リンは、モニターに映る(ポイント)を見張っている。

 

(リン…)

 

唯乃がいなくなってから、彼女は変わってしまった。

やっぱり、『TYPE-P』との死闘が追い打ちしたのかな?

戦闘の合間の会話でも、激突していたし。

 

「(私ができる事はないのかな…?)」

 

そんな事をふと洩らすと、基地全体に警報(アラート)が鳴る。

 

「っしゃあ、キタァ!!」

「何喜んでいるのよ!?」

 

指を鳴らして喜ぶ彼女に、思いっきりチョップをかます。

あまりにも、不謹慎でしょうが!

 

「とっとと出撃や、行くで!!」

 

言うが早いか、リンはテイルブレスを起動させた。

テイルホワイトへと変身した彼女は、テイルブレスの転送機能を発動させた。

モニタールームから彼女の姿は消え、残されたのは私一人。

 

(私に選択権は無いのね…)

 

内心泣きながらも、仕方なくテイルブレスを起動させる。

うん、今日も平常運転ね。

そして、転送機能を発動させ、ホワイトの後を追った。

 

 

 

 

「「なっ…!?」」

「よぉ」

 

そこにいたのは紛れもない、唯乃だった。

テイルギアに酷似した鎧、『TYPE-P』を装備している。

左手には、彼女の愛用の武器、フェニックスラッシュ―ターが握られている。

 

(唯乃…)

 

武器を装備しているって事は、戦う覚悟はあるという裏返しを示す。

それはつまり、戻る意志はない、ってこと?

そんな…

 

「敢えて言うで。ウチらと戦う気はあるんか?」

「それは、こういう事か?」

 

リン---テイルホワイトの呼びかけに、唯乃は冷たい反応を示した。

なんと、私達に銃口を向けてきたのだ。

思わず私は、臨戦態勢を取ってしまった。

だけれどホワイトは、頭を掻きつつ弁解を取る。

 

「ぁ~… スマン。ウチらとアルティメギルを倒さんか、って言う意味や」

 

あ、そっか。

さっきの言葉じゃ、そんな捉え方もあるよね。

あれじゃ、勘違いされても仕方ないか。

 

「早とちりってわけか。だが、ここからは俺様一人で戦わせてもらうぜ」

 

頑として銃口は降ろさない。

でも、彼女の顔には笑みが浮かんでいた。

あれは、戦いを求めている顔に間違いない。

 

「…ホンマか?」

「俺様に、二言はねぇ!!」

 

ホワイトが最後に質問するも、彼女の姿勢は変えられない。

ここまでか---

気が付けば、私の手にはグラビティハンマーが握られていた。

 

「---決裂ね」

 

私がハンマーを構えると、唯乃は逆にフェニックスラッシュ―ターを戻した。

どういうこと?

 

「何時でも俺様を倒しに来な。だがそれは、今じゃねぇ。お前らが先に倒すべき相手も、ようやく来たことだしな」

「ちょっ、それって---」

 

問い直す前に、唯乃から凄まじい熱風が襲ってきた。

サウナ室の熱気が、一気に外に出たような感じだ。

喉が渇きそう…

それに、目が開けられない!?

 

(…?)

 

しかし、それも数秒間でしかない。

目を開くと、そこに唯乃の姿は無かった。

逃げられた---

 

「そこまでよ、エレメリアンども!!」

 

…はい?

声の聞こえた方を向いてみると幾つかの影が。

それも、絶対どこかで見たような---

 

「って、あら…?」

「お前ら---!」

「あん時の!?」

 

よく見れば、お馴染みの信号機野郎・ツインテイルズだったし。

…もしかして、唯乃の言ってた倒すべき相手って、彼女達?

 

「うゎ~」

「どないせぇって言うんや…?」

 

これは、『にげる』のコマンドってあるのかな…

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