ツインテイルズ基地に、緊張が走る。
「強大な
トゥアールが解説するが、俺達にとっては何ら問題ではない。
俺達がすべき事は1つ。
「幹部だろうが何だろうが、力の限りブッ潰す。ただそれだけよ!!」
わーぃ、頼もしい。
愛香---テイルブルーは、拳を握り締めて力強く宣誓する。
前のスタジアム戦では見せ場が無かったらしいから、挽回するうもりなんだろうけれど。
(唯乃…)
俺の頭の中は、まだ彼女の事で一杯だった。
(またお前に会った時、何て話せば良いんだろうな…)
テイルブレスを起動させ、「テイルオン」と叫ぶ時、ふとそんな事を考えていた自分がいた。
まったく、不思議なものだな。
「さぁ、転送しちゃって!」
「お願い致しますわ」
おっと、2人はもう転送装置に入っていたか。
俺もさっさと向かわないと!
「では---転送、スタートゥ!!」
おぃ、何でいつもより乗り気なんだよ?
そんな質問が発言できるわけもなく、俺達は光に包まれた。
そして俺達は基地から文字通り『転送』されたのだ。
(なんだよ、これ。暑苦しい…)
転送後、俺が感じたのは浮遊感と圧倒的な熱量だった。
まるでサウナ室に入ったみたいだ…
そんな合間にも、地上への
「皆、姿勢確保だ」
「「了解(ですわ)!!」」
幸い、高度がかなり高かった。
だからこそ、姿勢を調整する時間ができた。
(あそこにエレメリアンが…)
でも、まだ確信してはいない。
姿を見るまでは。
(あの反応、確かポニーテールの
ならば、唯乃の可能性は否定できない。
何故そんな回りくどい表現をしているかって?
唯乃以外にも、その属性力を持つ存在がいるからだ。
(テイルグリーン、そしてテイルホワイト)
後者は、あの謎のテイルギアと死闘を繰り広げた、猛者だ。
前者は未知数だけれど、彼女も警戒の領域から脱しない。
どちらにせよ、気を引き締めないと。
「そこまでよ、エレメリアンども!!」
ブルーが声を荒げる。
相手を威嚇するには、丁度いいかもな。
「って、あら…?」
「お前ら---!」
「あん時の!?」
高度が下がるごとに、その姿は鮮明になっていく。
俺達は、豆鉄砲を食らったかのような間抜け声を出してしまう。
でも、その姿には見覚えがあったんだから。
「マジかよ…」
ふと彼女達の事がよぎっただけなのに…
この流れだと、『たたかう』以外のコマンドが選択できなくなるぞ!?
「出たわね--- ツインテイルズもどき!!」
この時、ブルーの目が一際輝いていたのは気のせいだと、俺は信じたい…
☆☆☆
「うわちゃ~…」
「これはマズいで」
うん、わかるから。
私達はまさに、絶対絶命の中にいる。
何しろ、ツインテイルズと対峙しちゃったんだから。
「う~ん…」
流石に唸る。
何事も、退き際が大切だ。
タイミングを間違えてしまえば、大惨事は避けられない。
「(どうする?)」
「(これは---)」
ひそひそ話で、隣にいるホワイトと相談する。
戦うか、逃げるか。
「取り敢えず、ドロン!!」
ホワイトは、後ろに空間の裂け目を作ると、その中へ消えてしまった。
あぁっ、逃げた!?
私を置いて行くとか、それは無いでしょ!!
「…ん?」
その裂け目から、何かが出てきた。
この裂け目は、ワープホールみたいなものだから、こういった事もできるらしい。
出てきたのは、一枚の紙切れ。
ご丁寧に、4つ折りにされている。
開けてみると、こんな事が書かれていた。
『人生、何とかなる』
…マジか。
ロックな事が書かれていない。
ショックのあまり、手が震えていた。
絶対、ホワイトは基地で笑い転げているに違いない。
---私、倒れてイイデスカ?
「(ど、どうしたんだ? 何か震えているが…)」
「(たぶん、仲間に裏切られたのがショックなんでしょ)」
「(それは、御愁傷さまです)」
悲報。
私、『かわいそうな子』に認定されました。
項垂れる私を、追撃しないで…
「まぁ、逃がした方は後でとっちめるわ。覚悟は良い?」
見上げれば、ブルーは私のそばまで来ていた。
そして、ウェイブランスの矛先を私の喉元に突きつけていた。
チェックメイト、って奴か…
勿論、大人しく従う私じゃないけれど!!
「!?」
私の周囲に、強力な反重力を発生させる。
重力で敵を沈められるなら、その逆もできるはずよね。
威力は最小限に設定しているから、彼女にダメージはない。
ただ、本能で後退したブルーの顔はいつになく険しい。
けれど、威嚇行為として取られたみたい。
「コイツ、さっきの奴と同種ね」
…まぁ、元・仲間ですけど。
さっきのは、私じゃないから。
そこんところ、履き違えないでほしいな。
「この私に喧嘩売るなんて、良い度胸じゃない」
それは違うんだって。
そう言い返したかったけれど、さっきのがあるからなぁ…
ここは黙った方が正解かもしれない。
「その余裕面が気に入らないわ。速攻で終わらせる!!」
そう言うと、私に突貫してきたブルー。
ただ、ランスを持つ手とは逆側を突き出していた。
殴り合い?
女の子にしては、かなりお転婆ね。
仕方ない、乗ってやりますか!!
「別に、余裕じゃないんだけれど…」
彼女の左ストレートに私の右腕を滑り込ませる。
そして、両者は殴り合う格好となる。
いわゆる、クロスカウンターだ。
「…?」
でも、打点がかなりズレていた。
ブルーの拳が私の頬にめり込んでいたのに対し、私のは彼女の顎を掠めていた。
いや、軽く当ったのかな。
(流し読みした知識、たまには役に立つんだ…)
我ながらビックリ。
こうもすんなりいくなんて。
ボクシングなんかで「顎は守っとけ」とか、よく言うけれど。
それは正しいと、今私の中で証明された。
「---ッ」
「(メッチャ痛---!!)」
ブルーの両足は、生まれたての小鹿みたい。
足をプルプルさせて、まともに動かせていない。
でもそれは、ある種自業自得なんだから。
彼女は猛スピードで私に突っ込んだ。
私は、あの場所に置いただけ。
彼女が今受けているダメージは、彼女自身のパワーなんだから。
「イエロー!!」
ブルーがその場を離れると同時に、機銃掃射の雨が降り注ぐ。
「楽しいショーの始まりですわ!」
ギャーッ、トリガーハッピー!?
直に見ると、滅茶苦茶怖い!!
あぁ、清楚な慧理那は一体どこへ行ってしまったの…?
「正気に、戻してやるか!」
もうツインテイルズにその意志は、無い。
なら、私の手で処すしかない。
「銃弾の嵐を突っ切るなんて…」
「しょ、正気じゃないですわ!?」
慧理那---テイルイエローに言われたくはない!!
そっちがヴォルティックブラスターなら、こっちは…
グラビティハンマーを回転させ、嵐を鉄鎚の防壁で突っ切るまで!!
「お仕置き!!」
届く距離まで近づいて、ハンマーの重みを利用する。
それで、イエローを打撃できた。
でも、彼女は事前に回避行動を取っていた。
後退され、ハンマーは空を切るだけ。
(あっ)
そのまま地面に亀裂を生じるはず。
でも何のミスか、手が汗(?)で滑った。
手にしていたハンマーはすっぽ抜け、飛んでいく。
「はわぅ!?」
ハンマーはイエローの顔面に激突。
イエローを沈黙させることには、一応成功した。
そして、ハンマーは何処かへ消えていった。
「まさか、イエローの回避予測まで見透かすなんて…」
「半端じゃないわ」
レッドとブルーが驚いているけど、私だってそうだから。
まさか、あそこで滑るなんて…
あらゆる意味で不可思議だわ、テイルギア。
「レッド、下がって」
この予感、まさか---!
気付いた時には、私は捕縛されていた。
オーラピラー…いつの間に!?
「エグゼキュート---」
そうか、イエローと交代したあの時に!
「ウェーブ!!」
眼前には、迫る死の槍。
あれが、今私を貫こうとしている。
私の体は、まともに動かせやしない。
そもそも破れたとしても、回避はできやしないけれど。
(兎に角、これじゃまともに話し合いに持ち込めない)
そのためには、力を示す必要があるね。
「---えっ?!」
到達する寸前に、ウェイブランスが制止した。
まるで何かに囚われたかのように。
そして、痛ましい軋みを生み出しながら形を失っていく。
数秒後、ウェイブランスがあった場所には何も残されてはいなかった。
「アンタ、今何を…?」
「ランスを、重力で握りつぶした」
今もそこにウェイブランスはあるんだけれど。
やりすぎて、もう見えないか。
「相手には、面倒ね」
「…」
余計火をつけたみたい。
コイツ、相手が強いほど燃え上がるタイプだ、絶対。
「落ち着け、ブルー」
「でも…」
レッドがブルーの前に出て、それを制した。
オーラピラーの効果時間は短いのか、すぐに解放された。
ずっと締め付けられていたから、ちょっと痛い。
「テイルグリーン、だったな? 俺達と組む気はないか?」
「ちょっ、アンタ本気!?」
レッドの口から、予想内で予想外の提案が出た。
ブルーにとってそれはどちらなのか、皆目見当はつく。
「イエローを一撃でダウンさせたのよ!? 危険よ」
彼女の
一番危険なのは、ある種彼女かもしれない。
「だからこそだ。グリーンの力は、エレメリアン討伐に大いに活用できる。このまま敵として認識されるのは、お互い悲しいだろ」
確かに。
私としても、友と争うのは避けたい。
それに彼らとは共通の敵がいるじゃない。
アルティメギルが。
「俺を信じてほしい。一緒に来てくれ」
差し出されたその手に、嘘偽りは無かった。
彼が信じるツインテールと同じような、純真さ。
自然と、私の手は動いていた。
(そうホイホイ動いて良いの?)
だけれど、彼女の目は笑っていた。
でも、体は私の意思に反している。
もう少しで、手は繋がれる---
「危険ですわ!」
私の手は弾かれていた。
何者かが、私の手を撃ったのだ。
「イエロー? 何で!?」
「何故でしょうか? 今の私は---」
私にヴォルティックブラスターを向けている。
そして、もう片方の手は、何故か顔半分を隠していた。
けれどそれが外されるのを見て、私達は驚愕した。
「猛烈に怒っていますわ」
額から、出血していた。
もしかして、私のハンマーが…!?
「グリーン、ご覚悟を!!」
もうそこからは、乱射しかなかった。
ミサイル、レーザー、弾丸、etc。
全てが出鱈目だったため、収集がつかない。
「だから言ったでしょ、危険だって!」
「でも…」
あちゃ~、これで悪者扱いされたか。
「アンタのせいよ、テイルグリーン! 何とか---」
「何とかする」
ブルーに言われなくたって!!
慧理那の暴走は、親友の私が止めるまで。
(重力障壁、展開。集束開始)
私の正面に障壁が展開される。
同時に
こんな事、本当はしたくはなかった。
だけど…
「落ち着け---!!」
重力の塊を、おもいっ切り打ち込む。
撃ちだされた
それは全ての武器を焼き尽くす熱線。
やがて、イエローの体を飲み込んだ。
「…あれ?」
こんなに、威力あったっけ?
確かに塊は『おもいっきり』叩いたけど。
自分でしておきながら、怖くなった。
「何やってくれたのよ!?」
急にブルーが来て、私の体を揺すり始める。
異常なまでに力強いから、止めてほしい。
景色が歪んで気持ち悪いから…
「何とかしてとは言ったけれど、ここまですることないじゃない!?」
たぶん泣いているだろうけど、私には見えない。
彼女の感情より、私の脳へのダメージが深刻かと…
「ブルー、止めろ!」
えっ、何?
そう思ったとき、私は殴られていた。
「イエローの暴走を止めるには、あれしかなかったはずだ!」
「何よ、唯乃の次はコイツを擁護するの!?」
まだ、意識がふらついてる。
殴られた痛みより、まだ揺さぶられた感じが勝っているようだ。
…気持ち悪い。
「良いわ。イエローの敵討ちよ。観念なさい!!」
…やっぱり、唯乃の言う通り、先に倒すべき相手になったみたい。
☆☆☆
「何じゃ、これは…」
アルティメギル基地の会議室はどよめきに包まれている。
それは、大型モニターに映された映像にある。
「ツインテイルズ同士が決裂だと!?」
「どんな展開やねんて」
ビートルギルディやメガ・ネもまた、驚きを隠せずにいた。
「よく見れば、ツインテールの戦士達がポニーテールの戦士に喧嘩を吹っかけているようにも見えるけれど…」
ただ、スタッグギルディはこの展開を冷静に判断する。
(これが"怨み"の言っていた事なのか…?)
それは誰にもわからない。
しかし、彼の言っていた事は解りそうな気がする。
「ここがツインテイルズの境目だな。皆の者、今回は待機し、観戦に徹底せよ!!」
「応!」と周りのエレメリアンも、賛同する。
そして、皆の意識はモニターに注がれる。
戦いはまだ、序章に過ぎないのだ。
ここで見誤るわけにはいかない。
「面白い。あやつに乗ってみるのも、一興じゃな」
ダークグラスパーも、ふんぞり返りながら流れを見守る事とした。