Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.63【夢の中へいらっしゃい】

私は吹き飛ばされているところである。

急に呼び出されたと思えば、まさかダークグラスパーと戦えだなんて。

無茶でしょ、リン…

 

『万が一の事もあるから、テイルオンしとき』

 

基地でそう言われた時、何が何だかわからなかった。

---一応、従ったけれど。

でもそうしなかったら、確実に『テイルグリーン』の正体バレてたわね。

 

(ガフッ!?)

 

背中に衝撃が来た。

どうやら、壁に激突したらしい。

だけどそれで勢いが止まるわけもなく、壁ごと吹っ飛ばされる。

落下した先は、観客席があった場所。

そこには椅子は無かったため、受け身を取ることができた。

 

「しぶといのぅ。これならば、噂は多少は信憑性アリじゃな」

 

できた穴から顔を出してきたダークグラスパー。

その余裕っぷり、かなり腹立つんだけれど…

 

「ツインテイルズを葬ったその実力、見せてもらう!!」

(えぇ~…)

 

勘弁してほしいんだよ。

確かに、私はツインテイルズを一時戦闘不能にはした。

だからと言って、これはないと思う。

ダークグラスパーは大きめの鎌を振り回すも、ある程度は軌道が読める。

あまり大きい回避さえしなければ、何とかできる。

 

「執拗にツインテイルズを狙っているね?」

「わらわが討つはずの獲物を横取りされたのじゃ。獲物を奪った貴様を倒すことで、わらわの鬱憤は晴らせるはずじゃ!!」

 

…これ、完全に当て付けじゃない?

私を倒したって、良い事何一つないと思うけれど。

いい加減避けるのも飽きてきたし、反撃に移りますか!!

 

「迷惑よっ!?」

 

大鎌を横に振り切った後、逆立ちの応用でダークグラスパーの顔面に蹴りを入れる。

勢いで体を起こし、後ろへ跳ぶ。

その反動で、彼女には更なるダメージが入ったはず。

何しろ、顔面に足跡をつけた上に、更に入れたもの。

 

「おのれ… 愚弄するか、貴様!?」

 

ヤバい、やりすぎたかも。

私の跡をつけられたダークグラスパーは怒り心頭、すぐに私との距離を詰めてきた。

今度は大振りではなく、柄を短めに持つことで隙をなくそうとする。

なら、私はこれで十分かな。

グラビティハンマーを取り出し、迎え撃つまで。

 

「愚弄も何も、私はリンの実験に巻き込まれただけよ!?」

「テイルレッドに並ぶ、強大な属性力(エレメーラ)を持つ貴様が、何をほざくか!?」

 

属性力(エレメーラ)、か…

私の持つポニーテール属性は、観束君のツインテール属性と同等。

トゥアールさんやリンから、何度もそう聞かされた。

でも私は、好きで持っているわけじゃない。

確かにポニーテールは、私が幼い頃からしていたよ。

 

(私は---)

 

私はいつから、ポニーテールにしていたんだろう?

そんな僅かな疑問に、私は迷う。

無論、ダークグラスパーは見過ごしはしない。

 

「し、しまった?!」

 

黒の大鎌が、グラビティハンマーを弾き飛ばした。

それによって私は劣勢へ、いや最初に戻っただけか…

再びダークグラスパーは、私を切り裂かんと振り回す。

 

「貴女、人間なんでしょ? アルティメギルに味方したって、良いことは---」

「わらわには、遂行せねばならない個人的な使命がある。そのためならば、エレメリアンとて手を組む」

 

やっぱり説得は無理か。

彼女の確固たる使命、そこまで彼女を引き付ける物って…?

 

「だったら---」

"属性玉変換機構(エレメリーション)手属性(ハンド)"

 

迫り来る、死の大鎌。

それをただ待つほど、私は愚かではない。

属性玉変換機構(エレメリーション)を起動させ、最大威力で殴りつける。

 

「そんな使命、私がぶっ壊す!!」

 

正確には、裏拳だったか。

私の首を狙おうとした大鎌は、その柄を私の拳によって砕かれる。

慣性の法則により鎌の刃が私の首元を掠めるが、傷をつけるほどまでには至らない。

内心、ひやひやしたけれど。

その現実に、ダークグラスパーは大層驚いている。

今まで折れたことがないのかな…

 

「それに---」

 

逆の手は、さり気なくダークグラスパーの腹部に当てる。

手の平に溜めておいた、属性玉(エレメーラオーブ)の力を集中させる。

呆気に取られていた彼女は、ようやくその事実に気付いた。

でも、もう遅い。

 

「貴女のそれは、多分エゴ(わがまま)だから」

 

溜められた力は、ダークグラスパーを弾き飛ばす。

それこそ、私が『ホームラン』された時の何倍もの威力で。

彼女は地面を大きく削りながらも、後ろへ引きずり出されていく。

やがてダークグラスパーは、止まる。

 

(壁にぶつかると思ったけどな)

 

地面には引きずられたのとは、明らかに異なる跡が。

恐らく、吹き飛ばされながらも踏ん張りを見せたのだろうな。

だからって、それを許すわけはない。

戦場に、ルールなんて無いんだから。

 

「元・アルティメギル首領直属戦士を舐めるなぁ!!」

 

ダークグラスパーは再び闇の大鎌を形成、エネルギーの刃を乱舞させる。

狙いが甘いので、重力砲(グラビティ・キャノン)で相殺させる。

爆発による煙で向こう側が見えにくい。

でも、向こう側で集束している光が見えている。

これ明らかに、必殺技だよね…!?

 

「堕ちろ、非道が!!」

 

不味い、いくら私のテイルギアでもこれは防げない!!

慌てた私は、天井を重力砲(グラビティ・キャノン)で破壊する。

使用されていない会場では、天井は閉まりきっている。

それを破壊することで、即席の瓦礫を作りだしたのだ。

 

「ふははは、それしきのことで倒せるわらわではないわ!!」

(面倒くさい…!)

 

今思ったけれど、彼女無理してキャラ作りしてない?

正直、話すのが面倒と本気で思ったもの。

ダークグラスパーは瓦礫の上を、器用に上っていく。

上空からじゃ、私の姿は丸見えじゃない!?

狙いを絞った彼女は、ついに引き金を引いた。

 

「ダークネスバニッシャー!!」

 

あの威力じゃ、重力砲(グラビティ・キャノン)は絶対に役立たずだ。

それを上回る威力があるとすれば、これしかない!!

 

"属性玉変換機構(エレメリーション)手属性(ハンド)"

 

私は上空へ飛んだ。

このままじゃ、私どころか周囲10kmは消し炭になっちゃう!?

ここは一か八か、人生はギャンブルぞい!!

 

「重力爆砕拳」

 

テイルギアの重力操作能力(プラス)手属性(ハンド)の相乗効果なら、きっとできる。

そう信じて、最高の威力でダークネスバニッシャーに叩き込む。

押し切られそうになるけれど、返せなくもない、かな…?

 

「人間は万事、気合いが大事ィ!!」

 

返すことは諦め、弾くことで何とかできた。

ダークネスバニッシャーのエネルギーは、別方向の空へ飛んでいったけれど。

まぁ、上空に飛行機が飛んでいない限りは大丈夫でしょ。

しかしダークグラスパーは、口元に不適な笑みを浮かべる。

 

「終いじゃ、カオシックインフィニット!!」

 

幻術系か!?

そう気付いた時には、既に勝敗は決していた。

技後硬直により、回避もできない私に防ぐ手立てはない。

カオシックインフィニットと呼ばれるそれは、私を機能不能にさせる。

追撃としてダークグラスパーは、私のお腹に蹴りを入れることで地面へ叩き付けた。

 

(ぃ、意識が---)

 

蹴られた痛みさえ、感受できない。

この幻術は、相当な厄介物らしい。

やがて、私は視界を失った。

 

☆☆☆

 

「---あれ?」

 

生きてる。

カオシックインフィニットを受けた時、死んだと思った。

でも、今の私は意識があるし、動ける。

視界もあるんだろうけれど、正直真っ暗闇で何も見えはしない。

 

(夢の中、なのかな…?)

 

それにしては、ハッキリし過ぎだと思う。

試しに私の頬を思いっきりはたいてみる。

何故か、滅茶苦茶痛かった。

ということは、これは現実!?

 

「ようやく会えたね」

 

---誰!?

私の脳内でできた、妖精さんか何かかな?

だとしたら私は、相当な残念な人だわ。

 

「違うから!!」

 

じゃあ誰よ。

さっきから姿も見せないで。

薄気味悪いんだけれど…

 

「もぅ、しょうがないなぁ」

 

そう誰かが言うと、急に周りが明るくなった。

同時に焼けるような臭いが、私を包んだ。

これって---

 

「ほら、これでわかるでしょ?」

 

正面に、私に話しかけてきた奴がいた。

見た目は4~5才ってところか。

でも何で、こんな幼女が私に話しかけてきたんだろ?

 

「---誰だっけ?」

「いいょ、誰でも」

 

何それ、対応に困るんだけれど…

それよりも、気になることがある。

 

「ここは、夢の中。あの根暗魔女のインチキ魔法で、閉じ込められているの。本当なら、ここは楽園のはずなんだよね」

 

なるほど、夢の中か。

それならこの現実離れした環境も、いささか納得できる。

楽園と言っていたけれど、これはどう見ても地獄絵図では…?

というか、熱過ぎる。

サウナ室じゃないですか、これ。

 

「それにしても、魔女も酷だよね。お蔭で私が出る破目になるんだもの」

 

---よく分からん。

それよりも、脱出する方法があれば教えてほしい。

 

「まぁ、任せてょ。私があの根暗魔女をやっつけてあげる!!」

 

何だか知らないけれど、勝手に盛り上がっても…

幼女は勝手に向こう側へ走っていく。

私も追いかけようとしたけれど、周りの炎が消えていく。

やがて周りはまた、真っ暗闇へ戻ってしまった。

私は、囚われの身となったのだ。

 

☆☆☆

 

「手こずらせおって…」

 

瓦礫の上では、テイルグリーンが仰向けに倒れている。

ダークグラスパーは肩で息をしながら、何とか地上へ降り立つ。

今頃彼女は、楽園の中であろう。

 

「わらわを相手に、よくここまで戦った。手向けとして、息の根を完膚なきまでに止めようぞ」

 

ゆっくりと歩むダークグラスパー。

その手に、死の大鎌・ダークネスグレイブを持って。

笑みが自然と零れる彼女は、すぐに変貌する。

 

(なんじゃと…?!)

 

テイルグリーンが起き上がったのだ。

まるで、逆再生したかのように。

その気味悪さは、ダークグラスパーに気配察知として認知される。

しかし彼女はそれだけで、何も仕掛けてこようとはしない。

 

「もう一度、地獄の深淵に堕ちろ!!」

 

ダークネスバニッシャーが再びテイルグリーンを狙う。

だが彼女は、それを避けようとはしなかった。

 

"属性玉変換機構(エレメリーション)被虐属性(マゾヒスティック)"

 

テイルグリーンは左手を向ける。

そして、ダークネスバニッシャーを受け止めたのだ。

 

「なっ…!?」

 

それだけではない。

ダークネスバニッシャーのエネルギーは集束する。

それはやがて、ハンドボール程にまで縮小する。

そして---握り潰した。

 

"掌握(アブソープション)"

 

瞬間、テイルグリーンの体を黒い放電が纏う。

悶え苦しみながらも、自身の体とダークネスバニッシャーのエネルギーを同調させているのだろう。

やがてそれは、最高潮に達する。

 

「なんじゃ、この禍々しいオーラは…!?」

 

放出される、ダークネスバニッシャー以上のエネルギー。

それは会場の天井を貫き、天空へ上る。

テイルグリーンはどうなったか?

 

「なっ…!?」

 

全身を黒く染め、ラインが緑に発行する。

彼女はもう人間ではなく、怪物である。

獣の如く咆哮し、狙いをダークグラスパーへと定める。

 

「面妖な、成敗してくれよう!!」

 

ダークネスグレイブを取り出し、刃を幾つか放出するも、全て無効化されてしまう。

テイルグリーンであった化け物は、口にエネルギーを集中させる。

もしあれが放たれれば、彼女はひとたまりもない。

 

「ダークグラスパー!!」

 

化け物の周囲に、弾丸の雨が降り注ぐ。

その元をたどれば、戦闘機形態(メガネウインガー)となったメガ・ネが。

そしてその操縦席には、テイルホワイトがいた。

 

「やれやれ、手助けは必要かいな?」

「---ふん」

 

テイルホワイトの軽口に、ダークグラスパーは無視した。

しかし内心は、助かったと言っているのだろう。

ホワイトはメガ・ネから降りて、ダークグラスパーの隣に立つ。

 

「あ~ぁ、情けない」

「お前が招いた結果であろう?」

「兎に角、この化け物を抑えなアカンわ」

 

メガ・ネは通常形態に戻り、銃口を構える。

化け物は獣の如く、警戒心剥き出しである。

だが、その姿はすぐに消えた。

 

「!?」

「メガ・ネ!?」

 

メガ・ネは腕を前に構えることで防御するも、化け物のストレートには敵わない。

瞬時にその巨体は、吹き飛ぶ。

その先を見れば、片肘を失った彼女がいた。

 

「ウチは大丈夫やから、早よテイルグリーンを抑えや!!」

 

その指示に、ダークグラスパーとテイルホワイトは互いに頷いた。

そして、化け物へと体を向ける。

 

「試練は失敗のようじゃな」

「なら、ウチらの手で---」

 

ダークグラスパーは、ダークネスグレイブを。

テイルホワイトは、ディメンションクローを装備する。

これが、最後になるかもしれない。

それを胸に秘め、立ち向かう。

 

☆☆☆

 

『総二様… 属性力(エレメーラオ)反応をキャッチしました。これは、最大規模です』

 

抑揚のない、トゥアールの声。

それが逆に、俺達の緊張を高める。

今度は死ぬかもしれない。

そんな予感が、俺の頭をよぎった。

トゥアルフォンを一旦切った後、俺は言った。

 

「俺1人だけで、行かせてくれ」

 

愛香と慧理那は驚く。

今まで一緒に戦ってきただけに、俺がこんな事を言うのは珍しいだろう。

 

「そーじ一人に任せておけない。私も行くわ!!」

「わたくしも、ご一緒します」

 

2人は急いで支度するも、もう一度俺は止める。

何故か、2人を連れていく気が起こらないんだ。

だから---

 

「テイルオン!!」

 

そう叫ぶと、俺は転送装置へと急いだ。

 

☆☆☆

 

「うぅ…」

 

会場は、更に過酷さを増していた。

ダークグラスパーは、既に戦闘不能となっている。

メガ・ネは片腕ながらも、相棒を守り続けている。

テイルホワイトも、片方のディメンションクローが破壊され、劣性である。

それに対してテイルグリーンの化け物は依然ダメージがない。

 

(こりゃあ、色々と失敗したんとちゃうか…)

 

内心、後悔している。

テイルグリーン---伊織には、潜在能力がある。

それを無理矢理引き出すための、この作戦であった。

しかし、結果はどうだ?

テイルホワイトは、パンドラの箱を開けてしまった。

 

「どないしましょう…?」

 

化け物は三度エネルギーを集束させた。

今度こそ、会場ごと吹き飛ばす算段であろう。

ダメージが蓄積したこの体では、メガ・ネとダークグラスパーを救う事はおろか、満足に動けはしまい。

それは集束し終え、焼き尽くしにかかる。

 

(もうアカン---!!)

 

そう思ったテイルホワイトは、顔を伏せた。

死という現実が迫ることから、逃れるために。

だが、その衝撃は来ない。

代わりに、爆風が両側から吹いた。

 

「危ないなぁ」

 

テイルホワイトの前には、誰かがいた。

その影はゆっくりと立ち上がる。

彼女には、その影に見覚えがあった。

 

「ユウ!?」

 

間違いない。

彼の右手には、蝋燭を模した西洋剣が握られている。

恐らく、それでエネルギーを断ち切ったのだろう。

 

「お久し振りです、姫様--- と呼ぶには、まだ遠いですね」

 

ユウはテイルグリーンに向かって、華麗な挨拶をする。

しかし、彼はそれを一部訂正した。

それでもテイルグリーンは、警戒を怠らない。

 

「ユウ、何で---」

「君はそこで休んでいて」

 

テイルホワイトが質問するも、ユウはそれを弾いた。

そして剣先を、テイルグリーンへ向ける。

 

「さぁ、僕達の剣舞(ブレイドダンス)を開幕しよう」

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