Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.66【ツインテール部、どうなったっけ?】

体育祭では、色々と酷い目にあった。

勝手に部を存続の危機に陥れたり、そのために私がリレーに参加せざるを得なかったり…

更には誰かの妨害で、その勝利を得られなかった。

私は、その妨害した犯人と接触した。

けれど、それが誰だったかまではわからなかった。

分かるとしたら、相当な強者だってことかな…

 

「ん~…」

 

その体育祭が終わってから、数日が経った。

観束君が勝手に挑んだ部対抗リレーの結果は、審議入りのまま。

その原因として、あの妨害が偶然でないからだ。

私が握っていたバトンが突然横にすっ飛ぶなんて、有り得ないんだから!

しかも、そのバトンが大きくへしゃげていた。

誰かが狙ってやったとしか、思えないもの。

 

(これ、何だろ…?)

 

私がさっきから唸っているのは、これにある。

私が掴んでいるのは、硬貨。

でもそれはただの硬貨じゃない。

体育祭当日、私に向かって放たれた物体の正体だ。

加えて、硬貨に刻まれている模様が日本の物じゃない。

 

「相当古いけれど… どこのだろ?」

 

私はまだ唸っている。

そんな私を心配してか、クラスメイトが声をかけてくれた。

 

「大丈夫? ま~たあのツインテール馬鹿がやらかしたって聞いたけど」

「そのせいで、部活動が休止なんだって?」

 

うっ、痛いところを…

実はツインテール部は、その真偽が判明するまでは活動休止を命じられているのだ。

お蔭で、観束君達とは廊下で擦れ違う程度にしか会えない。

まぁ、別にベッタリいる必要もないけれど。

 

「心配ないって。その代わり、バイトでがっぽり稼ぐから」

「ほぇ~」

「ポジティブシンキングだね…」

 

そうでもしなきゃ、やってられないのよ…

たとえツインテール部は廃部になったとしても、それでツインテイルズが無くなるわけじゃないから。

とどのつまり、私の精神的/身体的疲労は、減らないのだ。

 

「それ、何? コインっぽいよ」

「あぁこれ? 多分、外国のだと思うけれど…」

 

クラスメイトが私の硬貨を奪い取ってしまった。

幾つか持っているから、別に困りはしない。

全く見た事がない物に興味津々で、裏返したりしてじっくりと見ている。

 

「滅茶苦茶掠れてるなぁ。もぅ、読めないー!!」

(げっ…?!)

 

やがて文字の解読ができなかったのか、硬貨を放り投げてしまった。

私は慌ててそれを、スライディングキャッチ!!

そのせいで、制服がかなり汚れちゃった。

 

「いちち… 何とかセーフみたい」

「---そんなに大切な物だった?」

 

大切かと言われると、ちょっとねぇ…

でもなんだろう、凄くキーアイテムな感じはある。

取り敢えず、これがどこのなのか調べていくか。

 

☆☆☆

 

「---ふむ」

 

陽月学園とは異なる高等学校。

その屋上には、一体のエレメリアンがいる。

 

「やはり、テイルグリーンはこの近くに…」

 

その名は、ワスプギルディ。

先日ふと感じた鼓動の原因を探るため、隠密行動を取っている。

それを感じたのは、あの時のみ。

それ以降は、体に異常は感知しなかった。

 

「よぉ、ワスプギルディ」

 

そんな彼に、思わぬ再開があった。

ワスプギルディがその声に振り向くが、同志はいない。

その代わり、彼よりも身長が低い女子高生がいた。

 

「その属性力(エレメーラ)… フェニックスギルディか」

「おぅ」

 

ワスプギルディは彼女を直接見ず、その属性力(エレメーラ)で正体を見抜いた。

彼女はエレメリアンに軽く手を挙げ、挨拶する。

 

「テイルグリーンの件、貴様が関与しているのか?」

「あぁ。アイツ、色々とやらかしたな」

 

彼女はクツクツと厭らしく笑う。

テイルグリーンは生み出したのは自分だが、それがこんな展開を生むとは…

そんな予想外が、彼女に笑みを浮かばせたのだ。

 

「それでどうする? 彼女に喧嘩を売るのか?」

 

そんな彼女に対して、ワスプギルディは相談を持ち掛ける。

彼女が態々こんな場所にまで現れた以上、何かがあるに違いない。

 

「それは、俺様の仕事だ。お前が口出しするもんじゃねぇ」

「ぬ…」

 

その一言で、彼女が何を考えているのかを大方把握できた。

彼女は、テイルグリーンを倒すのだ。

それができるほど、彼女は強い。

何せアルティメギルの首領直属戦士を圧倒した、最強のエレメリアン。

 

「だが、どうしても相手したいのならテイルホワイトが適役だな」

 

彼女から、思わぬ意見が寄せられた。

まさか彼女がリスペクトするツインテイルズがいたとは…

 

「どういう風の吹き回しだ!? お前がそこまで言うほど、ソイツは強いのか?」

「あぁ。先ずは、彼女で小手調べすると良い…」

 

その応答に、ワスプギルディは唸ってしまう。

ツインテイルズの抹殺は、アルティメギルの意志。

しかし、テイルグリーンとテイルホワイトも重要人物で間違いない。

 

「それは無謀な挑戦か、それとも栄光なる試練か」

「お前次第だな」

 

それだけを残し、彼女はワスプギルディから離れていく。

しかし、彼は彼女を呼び止める。

 

「お前… 本当に、ツインテイルズの仲間か!?」

「それは、すぐにわかるさ」

 

今度こそ、彼女は彼から離れた。

背中から不死鳥の翼を展開して、茜色の空へと消えていった。

 

☆☆☆

 

「……」

「何か?」

 

この場には、気まずい空気が流れていた。

楊をただ白い目で睨み続ける劉に、それを何とも思わずに首を軽く傾ける彼女。

仕草だけならば、楊はかなりの美女に入る。

しかし実際は、部下を罵倒しまくるサディストである。

 

「何で俺が、こんな目に会わなきゃなんないんだよ?!」

「おや、何の事で?」

 

机を叩きながら、そう怒り散らす劉。

だがそれでも、楊は知らぬ顔である。

 

「一昨日の学校騒ぎ、何であんな面倒な事をしたんだよ!? お蔭で、折角の休暇がおじゃんになったじゃねぇか!!」

 

劉の顔は、凄まじいまでに赤い。

もしこれがマンガならば、血管が浮き出ていたであろう。

 

「あぁ、あれですか。それに関しては申し訳ないと思います。後日改めてお詫びをしましょう」

(お詫び?! とすると、まさか---)

 

抑揚のない謝罪に劉は落胆はするが、同時に淡い期待も寄せていた。

彼は今彼女はおらず、妄想癖があった。

彼の顔は、その妄想で緩みきっている。

 

「何を考えているのですか、気色悪い」

 

だが、楊にはその一言でバッサリと放たれた。

その言霊は、劉をのけ反らせるに足る。

 

「---ったく。あれなら、お前一人でも十分だったろ? 俺がいる必要があったのか!?」

 

それは、真っ当な意見である。

あの時、彼は一般人に足止めを喰らい、任務遂行は果たせなかった。

それに対して彼女は、その任務を遂行したのだ。

何故女子高生を引き連れてきたのかは、不明なままではあるが。

 

「---そうですね。後日とは言いましたが、訂正します」

 

諦めの表情で嘆息すると、楊は一枚の書類を取り出した。

A4用紙にはびっしりと文字が埋め尽くされ、一度だけで把握できる情報量ではない。

軍の命令書ですら、もっとスタイリッシュである。

その異様さに、劉は呆けている。

 

「…何じゃこりゃ!?」

「私も、始めは目を疑いました」

 

驚きの声を隠せない劉に、楊も同意した。

これが指令ならば、まだ流し読みもできたであろう。

だがこれは『命令書』である。

それ故、軍人は流すわけにはいかない。

 

「しかもこれは、わが軍の幹部からの機密文書。どんだけな命令書なんだよ…」

 

そう、これはただの命令書ではない。

決して外に漏れてはならず、その上で完遂せねばならなかった物。

今思い返せば、結果オーライだったろう。

 

「---で、今回はこの文書の最初ってわけか」

「はい。この機密文書は、精密な企画を元に作製されたのでは… それが何故私に手渡されたのかは、未だに不明ではありますが」

 

苦い顔で文章を手に取る。

あの出来事は、劉にとっては悲惨な休暇だった。

だがそれは、この文書によって絶望の序章に過ぎないと知った。

 

「その上、幾つもの伏せ字も見受けられます。余程知られたくないのでは?」

 

2人しか居ない、密室空間。

その言葉だけならば、品は有りそうだ。

だが、実際はその光景からはかけ離れている。

彼らが軍人である以上、その世界とは常にかけ離れているのだ。

 

「にしても、目標(ターゲット)が狭いな… これ、個人的な怨みが見え隠れしている」

 

そう。

今回陽月学園高等部の体育祭に潜入した様に、範囲が狭すぎる。

それに加え、政府の重要施設でもない、ただの高校。

誰がどう考えていたとしても、デメリットが大きすぎるのだ。

 

「…これ、まだまだ続くの?」

「この文書を全てこなさなければ、社会的にも抹殺されるそうです。お付き合い願います?」

 

これは長い航海をしそうだ。

逃げ場のない、逃れられない展開に、劉はぎこちなく笑うしかなかった。

 

☆☆☆

 

「もうやりたくないわ…」

 

テーブルに突っ伏しながら、愛香はそう話した。

まぁ、俺が原因でそうなったんだよな…

 

「インドア派の私を引っ張り出すとは…」

 

トゥアールも相当に疲労したのか、パイプ椅子に体を預けている。

 

(今思い返すと、結構迷惑かけたよな…)

 

理事長の挑発に乗ってしまった、俺が一番悪い。

愛香やトゥアールだけじゃなく、伊織先輩やリン先輩をも巻き込んだんだから。

…お詫びに、何かできないのか?

 

「---まぁ、ツインテール部は存続できるわけだし。良かったと思うぜ」

「「黙れ(ってください)!!」」

 

俺がフォローしたら、これだよ。

こりゃ、しばらくは機嫌が悪いな。

 

(でも、アピールはできた、よな…?)

 

あの体育祭の後、ツインテール部を見学させて欲しいと何人も来た。

もちろん、ツインテイルズの証拠とかはカモフラージュしてある。

えっ、何で続いているのかって?

 

(皆のお蔭で、何とかやれたんだよな)

 

それは体育祭の後、理事長室で会談した時の事だ。

 

 

 

 

「婿殿。ツインテール部の活躍、しかと拝見致しました」

「……」

 

理事長の言葉に、俺は焦っている。

どの様な事を言い渡されるのか、不安だった。

俺のツインテールに対する愛、そしてツインテール部が本当に必要とされるのか。

 

「先ず、ツインテール部についてですが---」

(頼む、消えないでくれ…!)

 

俺は祈るしかなかった。

俺が勝手に買ってしまったとはいえ、皆の場所を危うくさせてしまった。

こんな事で、消えてほしくない…!

 

「今回は、伊織さん達の活躍に免じて、廃部を取り消します」

 

その言葉を、皆は待っていた。

俺達はハイタッチで喜びを表現した。

 

 

「しかし、私は完全に貴方を認めたわけではありません」

「それはどういったわけで…?」

 

理事長の言葉に、トゥアールは反応する。

確かに部活動対抗リレーでは、俺達は勝利を手にすることはできなかった。

なのに理事長が、そんな結果をスルーするとは思えない。

何かあると踏んでいた彼女は、それを問い詰めたのである

 

「最終走者である伊織さんは、何者かによる妨害行為によって棄権という扱いになりました。それは本来生徒を守る立場である職員にとって、少なからず影響を与えました」

「そういえば、不自然なまでにバトンが飛んだわよね…」

 

俺もその光景は目撃した。

ゴールテープまであと数mのところで、突然バトンが横へいったのだ。

長瀬先輩が手を滑らせたにしては、明らかに方向が違いすぎる。

 

「そこで貴方達に提案があります。ツインテール部を存続させる代わり、その件について調査を願います」

「成程、交換条件ということでしたか…」

 

俺もようやく腑に落ちた。

そんな簡単に、結果オーライになるわけないよな。

 

「しかし、ただの妨害行為にそこまで危惧する必要は---」

「本当ならば、スタッフが調べるべきですが。そこまで私も暇ではありません。それに、有耶無耶のまま終わらせるわけにもいきませんよね?」

 

理事長が言いたいことは、解った。

俺達がその事件を真相究明することで、初めて認めるということか。

 

「わかりました。俺達が、その事件を明らかにします!!」

 

今度こそ、俺が皆を守ってみせる---!!

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