Which do you love ?   作:ズケズケ

67 / 89
Episode.67【暴れ過ぎたか。】

「調査ァ!?」

 

私、ま~たまたとんでもな騒動に巻き込まれたみたい。

ツインテール部に顔を見せるとすぐに、津辺さんが袖を引っ張った。

よっぽど聞かれたくない事案なんだろうな、とその時は気楽にしか考えていなかった。

でも、先に集まっている観束君やトゥアールさん、慧理那の顔を見てハッとする。

薄々感づいていながらも、尋ねてみるとこれである。

 

「そう。そのために、先輩の協力は必須です」

「だからって、これはないと思うけどな~」

 

私も協力はするけれどさぁ…

いつか観束君がされた様に、私もパイプ椅子に座らされた上で縄で締められている。

これじゃ拷問じゃないの!?

しかも3人とも凄いジト目で見て来るからさぁ、怖いのよ…

 

「体育祭の日、先輩は部対抗リレーの途中で抜け出しましたよね。何か重要な出来事でもあったんですか?」

 

ストレートに来たなぁ…

まぁ、遠回しに質問されてもしょうがないよね。

拷問で尋問だし、諦めるしかないか。

 

「隠してもしょうがないか。ブレザーの右ポケットから、ちょっと取り出して」

「えっと… これかな?」

 

津辺さんにお願いして、ポケットから取り出してもらった。

彼女の手にあるのは、あの時私を襲った硬貨の1つ。

私だけではわからなかったけれど、もしかしたら---

 

「何これ、硬貨…?」

「ですが、日本のではないようですわ」

 

津辺さんと慧理那は持っている効果をじっくりと見るが、首を傾げてばかり。

クラスメイトと同じ反応だね…

やっぱり駄目か。

 

「これは、中国の1元硬貨ですね」

 

だけど、トゥアールさんはそれが何か分かったみたい。

というか、中国!?

 

「ホントなの、トゥアール?」

「大部分が掠れている上に製造年が古いために判別し難いですが… このデザインは、間違いありません」

 

あっさりと解決しちゃった…

でもあの人が使っていたのが、中国の硬貨。

だとすれば、あのカップルは中国人!?

 

「な~んか、1人で解決した顔になっているわよ…」

「この硬貨の事も含めて、説明をお願いしますわ」

 

うゎ~、どえらい事になりましたわ…

動けない私に、威圧感を隠そうともせずに与え続ける2人。

離しますので、その怖い顔を止めてくださいお願いします…

 

 

 

 

「成程、陽月学園に侵入した輩がいたとは…」

 

3人は私の話を聞いて、神妙な顔つきになった。

対して私はゲッソリした顔になっちゃった。

だって、私が1の割合で話すと、5で質問が飛んでくるんだもの。

しかもそれをちゃんと答えないと、罵倒や追求までするし。

これが、先輩に対する扱いか---!?

 

「しかも、足立先生もそれに関わっている。先生にも聞いてみるのが、一番ね」

「はい」

 

足早に津辺さんと慧理那はドアへと走っていく。

そしてドアノブを回そうとしたら、そのドアが勝手に開いてしまった。

開けようとしていた津辺さんは、ドアに飛ばされる結果となる。

南無…

 

「足立先生に会おうと思っても、それは無駄や」

 

鼻頭を押さえてうずくまる津辺さんに、リンは冷徹な言葉を下した。

相変らず容赦ないなぁ…

 

「…っ、どーゆー事よ!?」

「出張、とでも言えばええんかいな? 兎に角、校内にはおらん」

 

マジカ!?

それじゃ、あの時の証人がいないじゃないの。

 

「となれば、監視カメラが---」

「あの場所は、監視カメラが動いてへん。管理室に聞いてみたわ」

 

ぐむ…

常に先手を打ってくるなぁ。

案を出す度に、皆のテンションが駄々堕ちしているのが目に見える。

 

「トゥアール… お前がせんで、誰ができるんや?」

「---へ?」

 

流石にこれでは駄目だと判断したリン。

唯一の存在であるトゥアールに呼びかけるも、彼女はポカンとした表情で顔を上げた。

 

「ハッキング、クラッキング… お前さんの十八番やろ?」

「私は開発がメインであって、そういうことは…」

 

リンが学校のサーバーを通しての違法行為を促すも、トゥアールさんは渋っている。

そんな行為、普通は拒むわな…

私は違法行為はおろか、パソコン操作すらままならないんだよね。

あぁ、タイピングとか出来たらなぁ…

 

「まさか… 私達を襲った相手とは」

「それぐらいの敵や、本気出さな」

 

その言葉で、緊張が部室を覆った。

理事長が言っていた事もそうだけど、私も一歩間違えれば大変な目に会うところだったんだ。

それ相応の覚悟は、必要だもんな。

 

「---とはいえ、俺達は役立たずになりそうだな」

 

電子機器関係は、全く扱えない仲間もいたようだ。

特に私は、機械オンチだもの。

えっ、それじゃ何でテイルギアを扱えるかって?

…知らんがな。

この後私達は、今後の調査について軽く話し合いしたくらいで部活動は終了した。

 

☆☆☆

 

「---で、何の用なの?」

 

今の私は、スッゴク機嫌が悪い。

家に帰ってきてすぐに連絡があったのよ。

「エレメリアンが現れおった」ってね。

精神的に疲れたのに、誰の差し金なのよまったく…

 

「私は逆転属性(ツンデレ)のワスプギルディ。貴女を待っておりました」

「それはご苦労様でした」

 

目の前にいるのは、蜂そのもの。

左手にはかなり大き目の針が、右手には籠手のような物が装備されている。

右手は兎も角、左手のあの針の餌食にはなりたくないなぁ。

 

「貴女を見て、確信した。やはり貴女は、私の--- 運命の人だ!」

「…?」

 

私の耳が悪くなったのか?

今ワスプギルディは、私を『運命の人』だって。

…それとも、テイルギアの異常か?

いずれにせよ、何かがおかしい。

 

「あの映像で感じた、感情。あれは間違いではなかった…!」

 

一人呟いては、勝手に感動しているし。

どうしよう、もう帰って良いですか?

数学の補修での課題、まだまだあるんだけれど…

 

「おぃ、そこの変態」

「変態ではない、紳士だ!?」

 

流石エレメリアン、変態というフレーズには敏感ね。

話が続かないからさっさと終わりたいのよ。

 

「私にも予定があるんだから、用件は手早くしなさいよ」

「そうか… では、手早く終わらせるとしましょうか?」

 

右手の装甲が発行すると、ワスプギルディの周囲に無数の光球が発生した。

それは形を纏っていき、普通サイズの蜂となった。

 

「我がツンデレの極意、是非とも受けてもらいたい!!」

 

その瞬間、私の周囲に蜂の群衆がいた。

滅茶苦茶速い…!

その蜂は臀部の針にエネルギーを集束させ、ランダムに放った。

私だけを狙うより、遥かに性質(たち)が悪い。

 

(空気が冷たい…?)

 

それに、呼吸がし難い。

あの蜂の攻撃は冷凍光線、それも周囲の熱を吸収するタイプの。

だけど、そう悠長なことは言っていられないな。

足場がドンドン凍って行く。

 

「これはまだ序の口。これから芸術的にしていきますので」

 

言い忘れてたけれど、ここはアウトレットモールの中。

出鱈目に冷やされたせいで、お客さんの一部が逃げられないでいる。

もし彼の言う通り芸術にされたら---

 

(ツインテイルズは頼れない。私一人で片付けるしかないか)

 

グラビティハンマーを構える。

逃げられない要因の1つとして、この氷にある。

お客さんは体の一部が凍らされ、思うようには動けない。

まだ手だけなら、良い。

不幸にも両足に当たり、その場から動けない人が少なからずいる。

ハンマーを使うのもアリかもしれないが、微妙な力加減がいる。

 

(そんな時間はないし、何よりめんどくさい)

 

内心、私はそんな事を思っていた。

細かい作業はできない。

それに、敵の前で無防備を晒すという事でもある。

 

「動かないのであれば、結構。創作の邪魔になりませんし、プレゼントにも最適です」

 

ワスプギルディめ…!

凄く余裕そうに嗤って。

だけど、そんな考え事の間に氷海ができていく。

 

「アンタ、最ッ低ね!」

「ツンデレとは、好きな相手に敢えて冷たくするもの。それを言われたとて、私は動じぬ!!」

 

もう考えるのは、止めた。

アイツをぶち壊す、それに全力を出そう。

 

☆☆☆

 

「…何だって!?」

 

俺達はエレメリアンが現れたと思われるショッピングモールへ向かおうとしていた。

だがその直前で、トゥアールから連絡が来た。

 

『その場所には、既にテイルグリーンが居ます。戦いは彼女に任せましょう。それに---』

 

あっけらかんと戦いをテイルグリーンに押し付けるトゥアールが、一瞬悪女に思えた。

ま~だ、俺の事怒ってんのかな…

 

『そこよりも強大な属性力(エレメーラ)が検知されました。ツインテイルズには、そこに向かってもらいましょうか?』

「臨むところよ!」

 

その言葉に、テイルブルーががっついた。

すげー気合い入っているなぁ、彼女。

 

☆☆☆

 

「---っくしゅ!!」

 

モーレツに寒いです。

ワスプギルディは、思った以上に変態で、強者でした。

彼の周りの蜂を倒しても、すぐに再生するし。

わざと狙いを絞らないせいで、気温はマイナス成長。

体が段々と鈍ってしまう。

 

(確か昆虫って、冬はいないのよね…)

 

ワスプギルディはこんな状況でも、全く動じない。

エレメリアンだからなの!?

…羨ましい。

 

「もう少し何とかなりませんかねぇ? これでは、芸術に魅力が生まれない」

 

両手を上げ、やれやれと言った感じ。

それが余計に腹立つ…!

反撃に出たいけれど、体のあちこちが凍てついたまま。

まともに動かせるのは、左手くらいか。

 

「まぁ、これで完全に凍ればいいでしょう。では---」

 

左腕のぶっとい針にエネルギーを集束させる。

もしあれが当たれば、私は終わり---!?

まぁ、このままより賭けに出るしかないか。

 

「フィナーレ!!」

 

その掛け声で、冷凍光線は放たれた。

同時に、私は左手を前に開いた。

 

「それでも、抵抗のつもりですかねぇ?!」

 

…うざっ。

それに、ただ抵抗(レジスト)しているわけじゃないから。

 

"属性玉変換機構(エレメリーション)被虐属性(マゾヒスティック)"

 

そう、何でこれを出したのかは、自分でも分からない。

ただ、この属性玉(エレメーラオーブ)がある事はリンから聞いていた。

その効果は、知らないけれど。

でも、使わなきゃ損でしょ、絶対。

 

「うぐぅ!?」

 

冷たさを通り越して、痛みが…

でも、負けていられないから。

イメージするんだ。

このエネルギーを、1つの塊にしていくんだ。

 

「ぬぐぐ…」

「…?」

 

エネルギーが暴れる。

でも、少しずつ纏まってきたな。

 

「…何のつもりです?」

「ちょっとした、サプライズよ!」

 

ワスプギルディは当然、私の狙いなんて分からない。

ハンドボール程になったエネルギーを、美味しく戴くとしよう。

私は、それを握り潰すことで体内に取り込んだ。

 

"掌握(アブソープション)"

 

もう寒くない。

寧ろ、私の中で落ち着きを取り戻した。

私のテイルギアを、凍らせていた氷がドレスの様に纏っている。

グラビティハンマーも、凍りついたことで、鋭さを増した。

 

「---トレビアン!!」

 

これなら、ワスプギルディとも対等に戦える。

この姿、表現するならば---

 

「強化武装--- 『氷界の魔女』」

 

かっこつけ。

自分でもそう思うよ。

でも、これぐらい良いじゃない!!

ようは、ノリよノリ。

 

「どれ程の芸術か、試させてもらいましょうか!」

 

ワスプギルディは護衛に、攻撃の指示を出した。

その護衛は、一斉に冷凍光線を吐き出す。

最初は速かったし、目が慣れていなかった。

でも、今はハッキリ見える。

 

「てぃ」

 

その雨を、私は猛然と突っ込んだ。

勿論、光線は私に来るものだけを弾いたけれど。

そしてすぐ、ワスプギルディの懐へと潜り込む。

 

「何!?」

「飛んでけぇ!」

 

ハンマーを握っていない左腕で、彼の腹部を叩く。

氷の威力を上乗せしたその拳は、十二分に破壊力がある。

彼は吹き飛ばされ、ショップを何軒も貫いていった。

でも、肝心なこと忘れていた。

 

「ありゃ?」

 

キラーンと効果音が付きそうなくらいに、警戒心剥き出しな蜂。

私の全方位から狙える場所に配置していた。

しかも、臀部にエネルギーを集束させたまま。

まともに回避することもできないまま、私はその餌食になった。

 

「なんてね♪」

 

冷凍光線は私にダメージが通らず、寧ろテイルギアの装甲へ移った。

その光景に蜂は驚いた(かもしれない)。

私がグラビティハンマーを払うと、周囲に冷気を纏う暴風が生じた。

それによって蜂は瞬く間に凍りつき、地面へと落ちていった。

 

「よもや、私の放蠱(ファングー)を蹴散らすとは…!」

「まだまだ貴方の芸術、見たいんだけれど」

 

左腕を押さえてこちらに近付いたワスプギルディ。

彼の顔からは、完全に余裕が消えていた。

多分私は、その顔を見て頬が緩んでいる。

今になって、ようやく取り戻した気がする。

 

「では… 最大の芸術を、披露しましょう!!」

 

周囲から再び蜂を放出させ、左腕の針にエネルギーを集束させる。

最大火力で、撃とうってわけか。

面白い、ケリをつけようじゃない!

 

「私もそれに、答えるわ!!」

 

グラビティハンマーを天上へ、掲げる。

その上では、ワスプギルディ以上のエネルギーが塊として固定されている。

一世一代の大喧嘩、ここで引くもんか…!

 

「いっけええ!!」

 

私がグラビティハンマーを振り下ろすのと、ワスプギルディが放つタイミングは同時だった。

彼の冷凍光線と私の氷の竜巻、それがぶつかり合う。

でも、それらが拮抗することが無かったなぁ。

すぐに私の攻撃が冷凍光線を打ち消し、そのまま飛んで行ったんだから。

 

「な、馬鹿な---」

 

ワスプギルディは最後まで言えずに、それをまともに喰らった。

後に残るのは、護衛の蜂と共に氷塊と化した彼だけ。

氷の鉄槌で砕かんと、私はゆっくりと近付いた。

 

「---ゥキャァ!!」

 

突如フィールド内に響く、猿の鳴き声。

上空から聞えてきたので、上を向いてみた。

 

「…ハァ!?」

 

それはまるで、流星群。

燃える無数の弾が、こちらに向かっていた。

しかも猛スピードで。

その流星群が私やワスプギルディごと、ショッピングモールを襲った。

私は咄嗟に重力障壁を張っていたので無事だが、中には怪我を負った人も出たらしい。

私の周囲に蔓延しているのは、氷が蒸発したものか、爆炎によるものか。

その時の私では、明確に判断する事はできない。

 

「…ぅ」

「ザマぁねぇな。あれだけ粋がっておいて、それかよ!?」

 

誰かがワスプギルディを助けに来たのか?

多分、出鱈目な破壊力を持った流星群も彼の仕業だろうな。

目を細めて、その姿を一目見ようとしたら。

 

「…おサル?」

「誰がサルだ?! 俺様はエイプギルディ!! もう一度その言葉を言ってみろ! 挽き肉にしてやっからな!?」

 

…怖ッ。

見た感じが孫悟空っぽいから、余計にそう見えるのに。

キレキャラなのかしら。

 

「もう十分だ、ワスプギルディ。撤退しようぜ」

「待ちなさい!」

 

エイプギルディと名乗ったおサルさんは、ワスプギルディの腕を肩に回す。

私としては第2ラウンドかと思ったけれど、それはないらしい。

でもここで逃がすわけにもいかない。

そう判断した私は、エレメリアン達を呼び止める。

 

「お前さんも限界だ。これ以上の泥試合は、無意味だぜ」

 

エイプギルディに指摘されて、改めてテイルギアを見る。

テイルギアは既に『氷界の魔女』としての効果を失っていた。

まさか、あの一撃で全部使い切ったのかな。

 

「テイルグリーンよ。もう一度会ったら、ツンデレについて語ってやる!!」

 

キラーンって付きそうなくらいにイケメンオーラで、ワスプギルディは私にそう言い残した。

無意味な宣言、ご苦労様です。

私としては、ご遠慮願いますがね。

精神的にも身体的にも疲労が蓄積した私を後目に、エレメリアン達は何処かへ飛び去ってしまった。

 

「さて、私も---」

「ちょっと」

 

私もここから去ろうと思ったら、誰かに呼び止められた。

振り向いた先にいるのは、警備員さん。

 

「壊された建物やその被害、その他諸々。色々と話がありますので、御同行願いますよ?」

 

言い方は凄く丁寧だけど、エレメリアン以上の威圧感が…

そのドスに効いた感じに、私の選択肢は残ってはいなかった。

警察官に連行される犯罪者の様に、私は管理室へと向かわされたのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。