Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.68【悲しき運命(さだめ)】

「待ってたぜぇ」

 

そこは、閉山した鉱山の一角。

俺達を待っていたのは、思わぬ人物だった。

 

「これほど属性力(エレメーラ)を放出して、放って置かれでもしたらつまんねぇよな?」

 

余裕綽々に話す彼女は、()()()()()を纏っていた。

だがそれは、テイルブルーよりも鋭さを表現して、何より色が紫で占めている。

右肩に乗せているのは、大剣の様にも見えるが、持ち方からしてスナイパーライフル型。

それだけじゃない、この威圧感。

それに、俺はよく知っている。

 

「なぁ、テイルレッド?」

「……」

 

結翼(いわばね)唯乃(ゆの)

俺の()彼女で、俺の正体を見破った人物。

そして、エレメリアンでもある。

まさか彼女と、こんな形で再開するなんて…!

 

「レッド、知り合い…?」

「まぁな」

 

ブルーの問いには、短く返答する。

あまりクドクド言って、ボロは出したくない。

それに彼女達は、唯乃の正体を知らない。

下手に混乱するわけにはいかないからな。

 

「危険な香りがしますわ!?」

「それは、同族って意味でか?」

 

同族っちゃあ同族だよな。

変態同士だからか…

 

「いずれにせよ、ツインテイルズを倒せるってわけだ。心置きなくなぁ!!」

「待ってくれたのは有難いけれど、速攻で終わらせるから!!」

 

唯乃の言葉に、テイルブルーは激しく反応した。

すぐさまウェイブランスを取り出し、投擲すれば確実に貫ける様に準備をしている。

喧嘩っ早いのも、どうかなぁ…

 

「血の気が多いなぁ、流石は『蛮族』テイルブルー。だけどよ---」

 

唯乃は一足で、距離を縮めた。

テイルブルーのすぐ前に辿り着き、下から彼女の顔を覗き込む。

テイルブルーが唯乃の顔を見ようとしたが、その顔は見ることはできなかった。

彼女が気付かない間に、腹部に手を当てられていたのだ。

そこから発せられた何かの力によって、テイルブルーはいとも容易く飛ばされてしまう。

俺とテイルイエローは、ただそれを眺める事しかできなかった。

 

「状況把握は大事、だぜぇ?」

 

その言葉で、ようやく我に返った俺達。

俺はブレイザーブレイドで、テイルイエローはヴォルティックブラスターで応戦する。

慌てていたからか、少し手元が危うかったのも原因かもしれない。

すぐに唯乃に躱され、互いに攻撃を喰らってしまった。

 

「クハハ… それが天下のツインテイルズか。まだ、テイルグリーンの方がマシだな」

 

着地して振り返った唯乃の顔からは、多少の失望が窺えた。

俺はテイルイエローの銃撃で、しばらくは動けなかった。

ヴォルティックブラスターによる、電撃のせいで体が麻痺したらしい。

それでも何とか立ち上がった俺に、更なる恐怖が押し寄せる。

 

「…えっ?」

 

俺の横を、何かが横切ったよな…?

恐る恐る頬を触ると、血が。

どうやら何が飛んできて、俺の頬を切ったらしい。

気付いた時には、唯乃は何かを握り締めている。

 

「ここで良いところ見せずに、いつ見せるのよ!?」

「まぁまぁ。落ち着けや」

 

唯乃が握り締めていたのは、ウェイブランスだった。

俺がいるところから、大体40mはあるはず。

狙いが定かだとすれば、もう少し被害の少ない手段でして欲しかった…

呆然とする中、俺はそう呑気に思った。

 

「では、私がお持て成しを致しましょう!!」

 

今度こそ出番だとばかりに、テイルイエローはお得意の一斉射撃を行う。

それで当たってくれたら、良かったんだが…

並大抵のエレメリアンより性質が悪い事を、俺は知っている。

 

「俺様が、本物の射撃を見せてやるぜ!」

 

テイルイエローの射撃をかいくぐると同時に、ウェイブランスで弾く。

そして唯乃は銃を構え、引き金を引いた。

弾道はまっすぐに彼女を狙い---

 

「ゴフッ!?」

 

腹部、右肩、左太ももを撃ち抜いた。

イエローの弾丸とは違って熱線である以上、貫通力があった。

その激痛に耐えられず、テイルイエローは膝を着いてしまう。

 

「当てずっぽうも良いところだな。まるでド素人だ」

 

失望を表現するかの様に、オーバーリアクション。

相手を挑発しているとしか思えない。

 

「遠距離が駄目なら---」

「当たる距離まで、詰めるだけよ!」

 

俺が思案する間に、テイルブルーはまた突貫を試みる。

唯乃以上の技量を持って、距離を詰めていく。

ウェイブランスを敵に取られた、圧倒的に不利な状態の中で彼女は己の拳だけで立ち向かう。

かつて浜辺で見たシーラカンスギルディとの戦いで見せた高速の拳撃を、唯乃へとぶつけるテイルブルー。

テイルイエローの一斉射撃よりは面が広く、何よりも重みが違う。

唯乃は反応が鈍かったせいか、その大半を喰らっていく。

 

(何だって、受けているんだ…?)

 

テイルブルーの戦力を計っているのか?

でも、それならば攻撃を受けすぎな気がする。

この前に遭ったライオギルディも、属性玉(エレメーラオーブ)の影響なのかやけに好戦的ではあった。

考えるとそれだけ謎が深まっていくな…

テイルブルーはそんな俺に構わず、ひたすらに打撃していく。

 

「ハッ、そんな弱弱しいパンチじゃ、俺様は倒れねぇぜ!?」

「勝手に言ってなさいよ!!」

 

…盛り上がっているなぁ。

誰か、あいつらをクールダウンしてくださいな。

 

「…レッド」

「イエロー、無事か!?」

 

そこへテイルイエローが戻ってきた。

テイルギアによる防御で致命傷は免れたものの、まだ思うようには動けない。

倒れそうになった彼女を、俺が反射で受け止めた。

彼女は俺を見ると、ほんの少し頬を染めた。

 

「それよりも、ブルーを止めてくださいまし」

「…どういうことだ?」

「私にはわかります。私と同じ被虐属性(マゾヒスティック)を持っている可能性があるかと…」

 

被虐属性(マゾヒスティック)か…

確か、テイルグリーン戦で奪われたんだっけ。

そのせいで、まともに属性玉(エレメーラオーブ)の効果を知らない。

だから俺は、テイルイエローの言っている事が理解できなかった。

 

「…! 不味い」

「えっ?」

 

テイルイエローは血相を変えた。

俺はそれに気付き、視線を再びテイルブルーへと向けた。

彼女は依然、攻めの体制を崩さずにいる。

だが---

 

(おいおい。あれって…)

 

唯乃には、明らかに変化があった。

いや、彼女を纏うテイルギアが、と言った方が良い。

そのテイルギアは熱を帯びている。

まるで今までのダメージを熱エネルギーとして変換しているかのように。

まさか彼女は…?

 

「止めろ、ブルー!!」

「五月蠅いっ!!」

 

俺はテイルブルーに声をかけるが、当然聞く耳はない。

もう完全に、自分の世界に入り込んでいた。

その間にも唯乃のテイルギアは、熱を限界まで溜め込み---

 

「うりゃあああ!!」

 

今までのダメージを跳ね返すが如く、唯乃を中心に衝撃波が放たれた。

当然、至近距離にいたテイルブルーはその衝撃波をまともに浴びてしまう。

物凄い勢いで弾かれた彼女は、俺達を通り過ぎた。

 

「ブルーッ!?」

 

俺の叫び声も虚しく、テイルブルーは退場処分(リングアウト)となった。

俺達も追い掛けたいところだが、それは敵に背を向けることを指す。

彼女を迎えに行けない自分の無力さを、痛感する。

 

「…」

「ようやく、ヤル気になったか?」

 

テイルイエローをどかせ、俺はゆっくりと立ち上がった。

自然に拳に力が入り、そこから血が流れ出る。

その動作に唯乃は、嬉しさを垣間見せた。

 

「だが無駄だな。テイルブルーの力を得た俺様に、勝てると思っているのか?」

 

その言葉に耳を傾ける必要はない。

無言でフォースリヴォンに触れ、右手にブレイザーブレイドを握らせる。

剣を下に向けたから、流れ出る血はそのまま伝っていく。

 

(俺にとって唯乃は、大切な仲間だ…)

 

でも、今は違う。

俺の前にいるのは、『敵』としての彼女だ。

もう迷っている自分は、いない。

 

「俺の仲間を傷つけた怨み… ここで晴らさせてもらう!!」

「そぉ来なくっちゃあ♪」

 

ブレイザーブレイドの剣先を唯乃へと向け、改めて宣戦布告する。

唯乃もそれに対して、ニタリと笑う。

 

☆☆☆

 

「うにゅう…」

「ほれ。しっかりしろってんだ」

 

アルティメギル基地の格納庫にて。

そこでは、あるエレメリアンの介抱が行われていた。

 

「油断大敵、っつったろ? 最初から、俺と組んでりゃこんな事にならなかったっての」

 

ぶつくさと一人文句を垂れながらも、エイプギルディはしっかりと手当てを行っている。

その手当てをされているワスプギルディは、未だ気絶したまま。

彼はワスプギルディを手当てしながら、その体にできたおびただしい数の傷を見る。

 

(そう言いながら、俺がいても変わらねぇかもな…)

 

エイプギルディが到着する前、彼は凄まじい衝突を目撃した。

それはワスプギルディの冷凍光線と、テイルグリーンの攻撃によるもの。

そしてワスプギルディの攻撃は押し返され、彼ごと周囲一体を凍りつかせた。

 

(思い返すだけで、身震いするぜ)

 

彼のそばで見てきたが、ここまでの威力を見ることは今まで無かった。

遠距離攻撃を主体とする彼は、実は接近戦でもかなりの強者である。

ワスプギルディの放蠱(ファングー)をかいくぐる猛者は偶に現れるが、それで彼にダメージを与えられるかと言えばそれは別の話。

彼は敵との距離を一定に保ち、常に相手のペースを奪っていく。

近距離では無理だが、遠距離ではどうだ?

彼が放つ無数の蜂は兵士でもある。

彼らはワスプギルディの指示で、槍にも盾にもなる。

 

「そのどちらも、意味をなさなかったのか」

 

最後に見せた、特殊な形態変化(フォルムチェンジ)

あれは一体…?

彼に残されたのは、その様な疑問のみ。

だが1つ、ハッキリしている。

 

「放っておくには、危険すぎる。---ツインテイルズ以上に化けるぜ、ありゃ」

 

☆☆☆

 

ブレイザーブレイドと銃剣・フェニックスラッシュ-ターがぶつかり合い、火花を散らす。

 

「俺達ツインテイルズに固執する理由は何だ!?」

「お前が知っても意味はねぇ! それよりも、楽しもうじゃねぇか」

 

未だに妖しい笑みを浮かべる唯乃。

その言葉の通り、本当に楽しんでいるかのように見える。

俺にはそれが、余計に恐怖に感じた。

 

(今はブルーもイエローも満足には動けない。ここは撤退するのが得策なんだが…)

 

チラッと2人を見る。

テイルイエローは、まだ貫かれたダメージの回復に時間がかかる。

ブルーも打撃攻撃の疲れが出ている。

ここでは、俺が唯乃の注意を向かせて、その間に---

 

「無駄だな」

「?!」

 

だが、俺の視線の先---ブルーとイエローに銃撃が襲った。

いつ、俺の思考が読まれた?

それよりも、これでトゥアールに応援を呼ぶことができなくなった。

 

(絶望的だな)

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