「待ってたぜぇ」
そこは、閉山した鉱山の一角。
俺達を待っていたのは、思わぬ人物だった。
「これほど
余裕綽々に話す彼女は、
だがそれは、テイルブルーよりも鋭さを表現して、何より色が紫で占めている。
右肩に乗せているのは、大剣の様にも見えるが、持ち方からしてスナイパーライフル型。
それだけじゃない、この威圧感。
それに、俺はよく知っている。
「なぁ、テイルレッド?」
「……」
俺の
そして、エレメリアンでもある。
まさか彼女と、こんな形で再開するなんて…!
「レッド、知り合い…?」
「まぁな」
ブルーの問いには、短く返答する。
あまりクドクド言って、ボロは出したくない。
それに彼女達は、唯乃の正体を知らない。
下手に混乱するわけにはいかないからな。
「危険な香りがしますわ!?」
「それは、同族って意味でか?」
同族っちゃあ同族だよな。
変態同士だからか…
「いずれにせよ、ツインテイルズを倒せるってわけだ。心置きなくなぁ!!」
「待ってくれたのは有難いけれど、速攻で終わらせるから!!」
唯乃の言葉に、テイルブルーは激しく反応した。
すぐさまウェイブランスを取り出し、投擲すれば確実に貫ける様に準備をしている。
喧嘩っ早いのも、どうかなぁ…
「血の気が多いなぁ、流石は『蛮族』テイルブルー。だけどよ---」
唯乃は一足で、距離を縮めた。
テイルブルーのすぐ前に辿り着き、下から彼女の顔を覗き込む。
テイルブルーが唯乃の顔を見ようとしたが、その顔は見ることはできなかった。
彼女が気付かない間に、腹部に手を当てられていたのだ。
そこから発せられた何かの力によって、テイルブルーはいとも容易く飛ばされてしまう。
俺とテイルイエローは、ただそれを眺める事しかできなかった。
「状況把握は大事、だぜぇ?」
その言葉で、ようやく我に返った俺達。
俺はブレイザーブレイドで、テイルイエローはヴォルティックブラスターで応戦する。
慌てていたからか、少し手元が危うかったのも原因かもしれない。
すぐに唯乃に躱され、互いに攻撃を喰らってしまった。
「クハハ… それが天下のツインテイルズか。まだ、テイルグリーンの方がマシだな」
着地して振り返った唯乃の顔からは、多少の失望が窺えた。
俺はテイルイエローの銃撃で、しばらくは動けなかった。
ヴォルティックブラスターによる、電撃のせいで体が麻痺したらしい。
それでも何とか立ち上がった俺に、更なる恐怖が押し寄せる。
「…えっ?」
俺の横を、何かが横切ったよな…?
恐る恐る頬を触ると、血が。
どうやら何が飛んできて、俺の頬を切ったらしい。
気付いた時には、唯乃は何かを握り締めている。
「ここで良いところ見せずに、いつ見せるのよ!?」
「まぁまぁ。落ち着けや」
唯乃が握り締めていたのは、ウェイブランスだった。
俺がいるところから、大体40mはあるはず。
狙いが定かだとすれば、もう少し被害の少ない手段でして欲しかった…
呆然とする中、俺はそう呑気に思った。
「では、私がお持て成しを致しましょう!!」
今度こそ出番だとばかりに、テイルイエローはお得意の一斉射撃を行う。
それで当たってくれたら、良かったんだが…
並大抵のエレメリアンより性質が悪い事を、俺は知っている。
「俺様が、本物の射撃を見せてやるぜ!」
テイルイエローの射撃をかいくぐると同時に、ウェイブランスで弾く。
そして唯乃は銃を構え、引き金を引いた。
弾道はまっすぐに彼女を狙い---
「ゴフッ!?」
腹部、右肩、左太ももを撃ち抜いた。
イエローの弾丸とは違って熱線である以上、貫通力があった。
その激痛に耐えられず、テイルイエローは膝を着いてしまう。
「当てずっぽうも良いところだな。まるでド素人だ」
失望を表現するかの様に、オーバーリアクション。
相手を挑発しているとしか思えない。
「遠距離が駄目なら---」
「当たる距離まで、詰めるだけよ!」
俺が思案する間に、テイルブルーはまた突貫を試みる。
唯乃以上の技量を持って、距離を詰めていく。
ウェイブランスを敵に取られた、圧倒的に不利な状態の中で彼女は己の拳だけで立ち向かう。
かつて浜辺で見たシーラカンスギルディとの戦いで見せた高速の拳撃を、唯乃へとぶつけるテイルブルー。
テイルイエローの一斉射撃よりは面が広く、何よりも重みが違う。
唯乃は反応が鈍かったせいか、その大半を喰らっていく。
(何だって、受けているんだ…?)
テイルブルーの戦力を計っているのか?
でも、それならば攻撃を受けすぎな気がする。
この前に遭ったライオギルディも、
考えるとそれだけ謎が深まっていくな…
テイルブルーはそんな俺に構わず、ひたすらに打撃していく。
「ハッ、そんな弱弱しいパンチじゃ、俺様は倒れねぇぜ!?」
「勝手に言ってなさいよ!!」
…盛り上がっているなぁ。
誰か、あいつらをクールダウンしてくださいな。
「…レッド」
「イエロー、無事か!?」
そこへテイルイエローが戻ってきた。
テイルギアによる防御で致命傷は免れたものの、まだ思うようには動けない。
倒れそうになった彼女を、俺が反射で受け止めた。
彼女は俺を見ると、ほんの少し頬を染めた。
「それよりも、ブルーを止めてくださいまし」
「…どういうことだ?」
「私にはわかります。私と同じ
確か、テイルグリーン戦で奪われたんだっけ。
そのせいで、まともに
だから俺は、テイルイエローの言っている事が理解できなかった。
「…! 不味い」
「えっ?」
テイルイエローは血相を変えた。
俺はそれに気付き、視線を再びテイルブルーへと向けた。
彼女は依然、攻めの体制を崩さずにいる。
だが---
(おいおい。あれって…)
唯乃には、明らかに変化があった。
いや、彼女を纏うテイルギアが、と言った方が良い。
そのテイルギアは熱を帯びている。
まるで今までのダメージを熱エネルギーとして変換しているかのように。
まさか彼女は…?
「止めろ、ブルー!!」
「五月蠅いっ!!」
俺はテイルブルーに声をかけるが、当然聞く耳はない。
もう完全に、自分の世界に入り込んでいた。
その間にも唯乃のテイルギアは、熱を限界まで溜め込み---
「うりゃあああ!!」
今までのダメージを跳ね返すが如く、唯乃を中心に衝撃波が放たれた。
当然、至近距離にいたテイルブルーはその衝撃波をまともに浴びてしまう。
物凄い勢いで弾かれた彼女は、俺達を通り過ぎた。
「ブルーッ!?」
俺の叫び声も虚しく、テイルブルーは
俺達も追い掛けたいところだが、それは敵に背を向けることを指す。
彼女を迎えに行けない自分の無力さを、痛感する。
「…」
「ようやく、ヤル気になったか?」
テイルイエローをどかせ、俺はゆっくりと立ち上がった。
自然に拳に力が入り、そこから血が流れ出る。
その動作に唯乃は、嬉しさを垣間見せた。
「だが無駄だな。テイルブルーの力を得た俺様に、勝てると思っているのか?」
その言葉に耳を傾ける必要はない。
無言でフォースリヴォンに触れ、右手にブレイザーブレイドを握らせる。
剣を下に向けたから、流れ出る血はそのまま伝っていく。
(俺にとって唯乃は、大切な仲間だ…)
でも、今は違う。
俺の前にいるのは、『敵』としての彼女だ。
もう迷っている自分は、いない。
「俺の仲間を傷つけた怨み… ここで晴らさせてもらう!!」
「そぉ来なくっちゃあ♪」
ブレイザーブレイドの剣先を唯乃へと向け、改めて宣戦布告する。
唯乃もそれに対して、ニタリと笑う。
☆☆☆
「うにゅう…」
「ほれ。しっかりしろってんだ」
アルティメギル基地の格納庫にて。
そこでは、あるエレメリアンの介抱が行われていた。
「油断大敵、っつったろ? 最初から、俺と組んでりゃこんな事にならなかったっての」
ぶつくさと一人文句を垂れながらも、エイプギルディはしっかりと手当てを行っている。
その手当てをされているワスプギルディは、未だ気絶したまま。
彼はワスプギルディを手当てしながら、その体にできたおびただしい数の傷を見る。
(そう言いながら、俺がいても変わらねぇかもな…)
エイプギルディが到着する前、彼は凄まじい衝突を目撃した。
それはワスプギルディの冷凍光線と、テイルグリーンの攻撃によるもの。
そしてワスプギルディの攻撃は押し返され、彼ごと周囲一体を凍りつかせた。
(思い返すだけで、身震いするぜ)
彼のそばで見てきたが、ここまでの威力を見ることは今まで無かった。
遠距離攻撃を主体とする彼は、実は接近戦でもかなりの強者である。
ワスプギルディの
彼は敵との距離を一定に保ち、常に相手のペースを奪っていく。
近距離では無理だが、遠距離ではどうだ?
彼が放つ無数の蜂は兵士でもある。
彼らはワスプギルディの指示で、槍にも盾にもなる。
「そのどちらも、意味をなさなかったのか」
最後に見せた、特殊な
あれは一体…?
彼に残されたのは、その様な疑問のみ。
だが1つ、ハッキリしている。
「放っておくには、危険すぎる。---ツインテイルズ以上に化けるぜ、ありゃ」
☆☆☆
ブレイザーブレイドと銃剣・フェニックスラッシュ-ターがぶつかり合い、火花を散らす。
「俺達ツインテイルズに固執する理由は何だ!?」
「お前が知っても意味はねぇ! それよりも、楽しもうじゃねぇか」
未だに妖しい笑みを浮かべる唯乃。
その言葉の通り、本当に楽しんでいるかのように見える。
俺にはそれが、余計に恐怖に感じた。
(今はブルーもイエローも満足には動けない。ここは撤退するのが得策なんだが…)
チラッと2人を見る。
テイルイエローは、まだ貫かれたダメージの回復に時間がかかる。
ブルーも打撃攻撃の疲れが出ている。
ここでは、俺が唯乃の注意を向かせて、その間に---
「無駄だな」
「?!」
だが、俺の視線の先---ブルーとイエローに銃撃が襲った。
いつ、俺の思考が読まれた?
それよりも、これでトゥアールに応援を呼ぶことができなくなった。
(絶望的だな)