「…今、何て?」
警備員さんによる尋問から、ようやく解放された私。
全身に倦怠感を感じながらも、何とか前に進んでいた。
そんな時、鳴かず飛ばずだったリンから通信が入ってきたのだ。
…というか、今まで何やってたのよ。
『またエレメリアンの反応が出おったで』
「おぃ、マジか」
流石に私の反応はかなり薄い。
だって、あの警備員さんコワイんだもの!!
あれはアルティメギルよりも遥かに手ごわいわ。
その地獄から解放されたばかりだから、疲れがどうしても優先しちゃうんだよね。
「帰って寝たいのに… それにそっちはツインテイルズがいるから平気でしょ?」
たぶん。
最近はツインテイルズの活躍はめっぽう減った、だけどあれでもかなり強い。
だから私は彼女達に、ある程度の信頼はしていた。
いずれにせよ、私は関係ないや。
『相手が唯乃でもか?』
その言葉に、思わず硬直した。
今、『唯乃』って…?
『位置情報は送ったで。行くか行かんかは、自由や』
一方的に切られちゃった。
相変わらず、仕事第一なのね…
それより、リンが残した言葉が気になる。
あの時から行方知らずだった彼女は今、そこでツインテイルズと戦っている。
場所は---
テイルギアでフルに飛ばせば、何とか届く。
(上手く担ぎ出されたわね…)
確かに唯乃は、私の友達。
だけれど、そんな彼女とは今は会いたくない。
でも、行かなきゃ彼女達は救えない。
だからこそ、私が…
☆☆☆
「やっぱし、張り合いがねぇな」
「ぐっ…」
唯乃との戦いは、延長戦にまでもつれ込んだ。
でも、俺にはこれ以上戦う力は残っていない。
それでもブレイザーブレイドは落とさず、彼女に向けてはいる。
「何だよ、足がガクガクしてるじゃねぇか。まるで産まれたての羊だな!」
見透かされたか。
確かに、今の俺じゃ敵いはしない。
だけれど、刃を向かないわけにはいかないんだ!
俺の後ろではイエローとブルーがいる。
「(早く交代するべきです)」
「(そうよ。あんたじゃ、勝ち目ないって)」
自分を戦闘に出せと、2人は言う。
だが---
「(お前らは離脱してくれ。後は俺が、何とかするから)」
そうさり気なく諭すが、聞いちゃいない。
それどころか、余計に心配そうに見つめる4つの目が…
未だ危険が去らない事態に、頭を抱えた。
ったく、どうすりゃ良いんだ!?
「相談は終わりか?」
欠伸交じりに、唯乃は待ってくれていた。
余程余裕があるらしい。
「なら--- いい加減、終わらせる!!」
彼女はフェニックスラッシュ―ターを構え、引き金を引いた。
当然、俺は動けない。
イエローとブルーは、俺を庇うために前に出た。
もう、止めてくれ---!!
「…れ?」
来るはずの、熱さが来ないな。
それに、ブルーやイエローも負傷した感じはない。
2人の顔は確認できないが、恐らく俺と同じはずだ。
「っち~!? 滅多に割り込みはするもんじゃないわ…」
ふと、焦げ臭いのを感じた。
その根源は俺の斜め前にあり、地面が抉られている。
その焦げ臭さは、熱によって焼かれた地面の草だろうな。
それよりも---
「「「誰だ(よ)(なんですの)!?」」」
突っ込みが、ハモった。
…まぁ、窮地を救ってくれたのが誰かは知りたいしな。
「ひっどいなぁ…」
頭を掻きながら、割り込み戦士は俺達の方へ向いた。
その正体は、
「テイルグリーン?!」
そう、かつて俺達を追い詰めた緑の悪魔であった。
でも何でここに…?
「手ごたえを感じねぇと思ったら… お前の拳で、軌道を無理矢理捻じ曲げたのか。大した野郎だぜ」
さっきまで相対したいた唯乃は、顎に手を当てながら推理していた。
あの熱線を、拳一つで捻じ曲げたのか!?
俺がブレイザーブレイドで防ぎきれなかった、あの攻撃を…
呆然とするしか無かった。
「まぁ、選手交代の時間はやるぜ。するかしないかは、そちらさんの自由だがな」
「---で、どうするの?」
唯乃とテイルグリーン、両者から提案を出された。
ようは、テイルグリーンに戦わせろって事だろ。
正直、俺達では敵いはしなかったし、これ以上戦うこともできない。
「断固反対よ! 敵に任せるには、信用ならないから!」
テイルブルーは猛抗議するが、テイルグリーンには届かない。
恐らく求めているのは、俺なのだろう。
なら、俺の選択肢は---
「頼む。俺達の代わりに、アイツを止めてくれ」
「りょーかい」
俺の判断に満足したのか、テイルグリーンはそう返事した。
そして、彼女は唯乃の方へと向き直した。
☆☆☆
「さぁて… どうしたもんだか」
「私に聞かないでよ…」
久し振りの、再開。
本来ならば、互いに抱き合って喜び合うんだよね。
でも、こんな事になるなんて。
そんな思いにふけっているけれど、もうできない。
唯乃はフェニックスラッシュ-ターを構え、私に向けている。
既に戦う覚悟を決めろ、って事よね…
(回避、って選択は… 無理か)
私を中心に、唯乃とツインテイルズは直線上にいる。
もし私が回避しようとすれば、彼女達は巻き添えを喰らうに違いない。
まぁ、彼女の事だから、そうならないように気を付けるだろうけど。
熱線を弾く事も考えて、
「突っ走れ!!」
「他人事だと思って~!!」
出るタイミングを窺っていたら、ブルーに怒鳴られた。
同時に、唯乃のフェニックスラッシューターが襲ってくる。
私はもう、泣く泣く突っ込むしか無くなった。
でも
弾く熱線も多いけれど、分母と比較すればそんなのは微々たるもの。
テイルギアを通して、熱を感じる。
「久し振りの挨拶は、かなり手荒いのね」
「その割には、嬉しそうだが?」
そうなのかな?
でも、そうなのかもしれない。
模擬実験として、戦うことは何度もあった。
だからこうして本気で戦うことに、喜びを感じたのかもね。
拳と剣が交じり合い、世界が隔絶されていく---
「だったら、もう一度仲間にならない? もっと楽しいかもね」
「それは、俺様にそれだけの力を見せてからにしな!」
そう簡単にはいかないよね。
フェニックスラッシュ-ターを完全に剣として扱い、高速で斬りつけにかかる。
私はそれを、
時々、肌を掠める事が何度もあったけれど、ダメージにはなっていないはず…
それよりも、攻撃に転じることができない。
「そうまでして、力を求めたいの!? 私達を裏切ってまで!!」
「…裏切る?」
少なくとも、私は信じていた。
共にアルティメギルを滅ぼす、仲間として。
でもその答えは、悲しいものだった。
「グッ?!」
「それはない」
突如回し蹴りを決められた。
私のお腹にクリティカルヒットし、抉り出すかの様にめり込む。
それも一瞬で、気が付けば私は地面を削る様に飛ばされた。
お腹の痛みに耐えながらも、何とか顔は唯乃へと向ける。
「俺がアルティメギルを滅ぼすのは、親友の復讐だ。そのためなら、何でも利用する。裏切るなんて、へでもねぇ。最初から、仲間はいねぇのさ、俺様には」
最初から、だって…?
その告白に、驚きを隠せないでいた。
それじゃ、私が彼女と共に過ごしてきた日々は…
観束君と恋人同士になった、あの青春も…
全て、幻だったって言いたい訳!?
「---で」
「は?」
「ふざけないでよっ!? 私を--- 私達との思い出を否定しないで!!」
完全にブチ切れた。
それと同時に、私の中から何かが高まってくるような感覚を得る。
でも、その先は覚えてはいない。
☆☆☆
世界は、もう一度切り替わる。
(何だ… なんだなんだナンダ!?)
目の前に映るは、テイルグリーン。
そのはず、だ。
しかし、今の彼女はどうだ?
感情を爆発させると同時に、彼女を纏うオーラが変化する。
彼女自身を表すものが変化した事をも、示したという事だろう。
「…テイルグリーン?」
ゆっくりと起き上がり、テイルグリーンは真っ直ぐ唯乃を捉える。
だがそれは、人間ではなく獣。
いや、もしかするとそれ以上の何か。
その様変わりに、いつになく動揺を隠しきれない。
「ぐぼっ!?」
気が付けば、唯乃は懐に潜り込まれていた。
恐らく唯乃がテイルグリーンが叩き込んだ蹴り以上の、破壊力。
それを、彼女のストレートによって生み出されたのだ。
しかし、それだけでは終わるはずもない。
テイルギアの出力遥かに超えたスピードで、腹部への集中攻撃を行う。
それはまさに、全てを振り切っての『疾走』。
明らかに、彼女が行っている様には思えない。
「!」
最後の一撃の際、手元の輝きがいつもと違う。
だが、今繰り出されるのは黄金に輝いている。
それに唯乃が気付くも、一瞬で拒否されたが。
体ごと吹き飛ばされ、満足に受け身を取れないままに地面を転がる。
「何だよ、今のは---?!」
テイルグリーンを改めて見て、初めて気付いた。
彼女を纏うオーラが、黄金に輝いている。
それだけでなく、左眼も黄金色となったことでオッドアイになっていた。
その事実に、唯乃はある仮説が浮かんだ。
(成程、何者かが介入しているとは思っていたが…)
事実、唯乃はテイルグリーンとよく似た相手と相対したことがある。
それ故に、更なる喜びを得る。
「それが本性か--- "黄金の拳闘士"!!」
かつてアルティメギルに所属していた頃、首領に次いで『No.2』と呼ばれたエレメリアンがいた。
だがその彼は、突如アルティメギルを脱退したのだ。
当然彼は『裏切り者』として追われる身となった。
そして唯乃---フェニックスギルディは彼を追跡し、遂に発見したのだ。
しかし、当時の彼女では適う事はなく、5分で片付けられてしまう。
ここまで来れば、フェニックスギルディは完全に
彼はそうしなかった。
(何故、アイツの力がテイルグリーンに?)
だが、そう悠長にはできない。
すぐさまフェニックスラッシュ-ターを構え、引き金を引いた。
今度こそ手加減のない、一撃で倒されるような威力で。
だがテイルグリーンにはそれをも見越したかの様に、軽く躱してみせる。
そして彼女が虚空から取り出したのは、グラビティハンマー。
彼女の得物だ。
「けったいのぉ!?」
唯乃は上空へと避難し、熱線の雨を降らそうとした。
一気に加速し、彼女の
そして、最大火力で彼女を狙い---
放った。
だがテイルグリーンには、動揺した様子は窺えない。
むしろ「乗った」とでも言うのか、ハンマーを構える。
…いや、槍投げの如くハンマーを飛ばす構え?
そう疑問に感じた瞬間、彼女はその得物を投げた。
ハンマーはテイルグリーンの代わりに、熱線を受ける。
(それで防げるわけが--- はぁっ?!)
グラビティハンマーが、押し返して、いる…?
フェニックスラッシュ―ターの威力は、依然衰えてはいない。
ならば、ハンマーの威力を底上げしているのは何か。
目を凝らせば、ハンマーの後ろには、左拳を模したエネルギーがハンマーを押し出している。
「あれはまさか、空裂---」
唯のがそのからくりに気付く前に、彼女はその威力に倒れる。
フェニックスラッシュ―ターの熱線は飲み込まれた。
そして彼女に向かってハンマーごと進み---爆発した。
唯乃には、それに抗う手段は無かった。
爆発による広域の煙から、一つ弾き出される。
それは、まともに攻撃を喰らい、満足に体制を取れない唯乃である。
(俺様が言うのも、何だが…)
無論、傍観するほどテイルグリーンは素人ではない。
素早く落下地点へと走り、直上へと飛んだ。
唯乃と彼女の距離が無くなると同時に、終結への準備を始める。
テイルグリーンの右肩に、唯乃の首筋を乗せる。
空いた両手は、唯乃のふくらはぎを掴み取り、両側に開いて固定。
所謂、ブレーンバスターだ。
その姿勢が完成するのは空中での、こと。
ならば、彼女が次にする事は限られている。
テイルギアによる重力付加を最大へと上げ、落下時の威力を上げる。
(何もんだ、てめぇ---)
唯乃がそう感じた瞬間、両者は地面へと激突した。
筋肉バスター、が決まった。
地面へと放った容赦ない一撃は、周囲一体を震撼させる。
それは周囲に人間がいようと構わない、獣の如く。
まさに破壊しか、考えてない。
技が決まった後、唯乃を放り投げるとテイルグリーンはその場に倒れてしまう。
「お、覚えてやがれ…」
唯乃は体を動かせる程の力は残ってはいなかった。
体を燃やす様に、地面へと溶け込んでいく事で離脱したのだ。
当然、テイルグリーンはそれを認知できない。
後に残るは激戦を象徴するかの様な残骸と、虚しく倒れるテイルグリーン。
それだけのはず…
「---さて、回収するとしますか」