Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.69【友達だと思ってた】

「…今、何て?」

 

警備員さんによる尋問から、ようやく解放された私。

全身に倦怠感を感じながらも、何とか前に進んでいた。

そんな時、鳴かず飛ばずだったリンから通信が入ってきたのだ。

…というか、今まで何やってたのよ。

 

『またエレメリアンの反応が出おったで』

「おぃ、マジか」

 

流石に私の反応はかなり薄い。

だって、あの警備員さんコワイんだもの!!

あれはアルティメギルよりも遥かに手ごわいわ。

その地獄から解放されたばかりだから、疲れがどうしても優先しちゃうんだよね。

 

「帰って寝たいのに… それにそっちはツインテイルズがいるから平気でしょ?」

 

たぶん。

最近はツインテイルズの活躍はめっぽう減った、だけどあれでもかなり強い。

だから私は彼女達に、ある程度の信頼はしていた。

いずれにせよ、私は関係ないや。

 

『相手が唯乃でもか?』

 

その言葉に、思わず硬直した。

今、『唯乃』って…?

 

『位置情報は送ったで。行くか行かんかは、自由や』

 

一方的に切られちゃった。

相変わらず、仕事第一なのね…

それより、リンが残した言葉が気になる。

あの時から行方知らずだった彼女は今、そこでツインテイルズと戦っている。

場所は---

テイルギアでフルに飛ばせば、何とか届く。

 

(上手く担ぎ出されたわね…)

 

確かに唯乃は、私の友達。

だけれど、そんな彼女とは今は会いたくない。

でも、行かなきゃ彼女達は救えない。

だからこそ、私が…

 

☆☆☆

 

「やっぱし、張り合いがねぇな」

「ぐっ…」

 

唯乃との戦いは、延長戦にまでもつれ込んだ。

でも、俺にはこれ以上戦う力は残っていない。

それでもブレイザーブレイドは落とさず、彼女に向けてはいる。

 

「何だよ、足がガクガクしてるじゃねぇか。まるで産まれたての羊だな!」

 

見透かされたか。

確かに、今の俺じゃ敵いはしない。

だけれど、刃を向かないわけにはいかないんだ!

俺の後ろではイエローとブルーがいる。

 

「(早く交代するべきです)」

「(そうよ。あんたじゃ、勝ち目ないって)」

 

自分を戦闘に出せと、2人は言う。

だが---

 

「(お前らは離脱してくれ。後は俺が、何とかするから)」

 

そうさり気なく諭すが、聞いちゃいない。

それどころか、余計に心配そうに見つめる4つの目が…

未だ危険が去らない事態に、頭を抱えた。

ったく、どうすりゃ良いんだ!?

 

「相談は終わりか?」

 

欠伸交じりに、唯乃は待ってくれていた。

余程余裕があるらしい。

 

「なら--- いい加減、終わらせる!!」

 

彼女はフェニックスラッシュ―ターを構え、引き金を引いた。

当然、俺は動けない。

イエローとブルーは、俺を庇うために前に出た。

もう、止めてくれ---!!

 

「…れ?」

 

来るはずの、熱さが来ないな。

それに、ブルーやイエローも負傷した感じはない。

2人の顔は確認できないが、恐らく俺と同じはずだ。

 

「っち~!? 滅多に割り込みはするもんじゃないわ…」

 

ふと、焦げ臭いのを感じた。

その根源は俺の斜め前にあり、地面が抉られている。

その焦げ臭さは、熱によって焼かれた地面の草だろうな。

それよりも---

 

「「「誰だ(よ)(なんですの)!?」」」

 

突っ込みが、ハモった。

…まぁ、窮地を救ってくれたのが誰かは知りたいしな。

 

「ひっどいなぁ…」

 

頭を掻きながら、割り込み戦士は俺達の方へ向いた。

その正体は、

 

「テイルグリーン?!」

 

そう、かつて俺達を追い詰めた緑の悪魔であった。

でも何でここに…?

 

「手ごたえを感じねぇと思ったら… お前の拳で、軌道を無理矢理捻じ曲げたのか。大した野郎だぜ」

 

さっきまで相対したいた唯乃は、顎に手を当てながら推理していた。

あの熱線を、拳一つで捻じ曲げたのか!?

俺がブレイザーブレイドで防ぎきれなかった、あの攻撃を…

呆然とするしか無かった。

 

「まぁ、選手交代の時間はやるぜ。するかしないかは、そちらさんの自由だがな」

「---で、どうするの?」

 

唯乃とテイルグリーン、両者から提案を出された。

ようは、テイルグリーンに戦わせろって事だろ。

正直、俺達では敵いはしなかったし、これ以上戦うこともできない。

 

「断固反対よ! 敵に任せるには、信用ならないから!」

 

テイルブルーは猛抗議するが、テイルグリーンには届かない。

恐らく求めているのは、俺なのだろう。

なら、俺の選択肢は---

 

「頼む。俺達の代わりに、アイツを止めてくれ」

「りょーかい」

 

俺の判断に満足したのか、テイルグリーンはそう返事した。

そして、彼女は唯乃の方へと向き直した。

 

☆☆☆

 

「さぁて… どうしたもんだか」

「私に聞かないでよ…」

 

久し振りの、再開。

本来ならば、互いに抱き合って喜び合うんだよね。

でも、こんな事になるなんて。

そんな思いにふけっているけれど、もうできない。

唯乃はフェニックスラッシュ-ターを構え、私に向けている。

既に戦う覚悟を決めろ、って事よね…

 

(回避、って選択は… 無理か)

 

私を中心に、唯乃とツインテイルズは直線上にいる。

もし私が回避しようとすれば、彼女達は巻き添えを喰らうに違いない。

まぁ、彼女の事だから、そうならないように気を付けるだろうけど。

熱線を弾く事も考えて、(あらかじ)属性玉変換機構(エレメリーション)を起動させておく。

 

「突っ走れ!!」

「他人事だと思って~!!」

 

出るタイミングを窺っていたら、ブルーに怒鳴られた。

同時に、唯乃のフェニックスラッシューターが襲ってくる。

私はもう、泣く泣く突っ込むしか無くなった。

手属性(ハンド)の効果で、フェニックスラッシューターの熱線を弾く事はできる。

でも()()じゃない。

弾く熱線も多いけれど、分母と比較すればそんなのは微々たるもの。

テイルギアを通して、熱を感じる。

 

「久し振りの挨拶は、かなり手荒いのね」

「その割には、嬉しそうだが?」

 

そうなのかな?

でも、そうなのかもしれない。

模擬実験として、戦うことは何度もあった。

だからこうして本気で戦うことに、喜びを感じたのかもね。

拳と剣が交じり合い、世界が隔絶されていく---

 

「だったら、もう一度仲間にならない? もっと楽しいかもね」

「それは、俺様にそれだけの力を見せてからにしな!」

 

そう簡単にはいかないよね。

フェニックスラッシュ-ターを完全に剣として扱い、高速で斬りつけにかかる。

私はそれを、()で躱していく。

時々、肌を掠める事が何度もあったけれど、ダメージにはなっていないはず…

それよりも、攻撃に転じることができない。

 

「そうまでして、力を求めたいの!? 私達を裏切ってまで!!」

「…裏切る?」

 

少なくとも、私は信じていた。

共にアルティメギルを滅ぼす、仲間として。

でもその答えは、悲しいものだった。

 

「グッ?!」

「それはない」

 

突如回し蹴りを決められた。

私のお腹にクリティカルヒットし、抉り出すかの様にめり込む。

それも一瞬で、気が付けば私は地面を削る様に飛ばされた。

お腹の痛みに耐えながらも、何とか顔は唯乃へと向ける。

 

「俺がアルティメギルを滅ぼすのは、親友の復讐だ。そのためなら、何でも利用する。裏切るなんて、へでもねぇ。最初から、仲間はいねぇのさ、俺様には」

 

最初から、だって…?

その告白に、驚きを隠せないでいた。

それじゃ、私が彼女と共に過ごしてきた日々は…

観束君と恋人同士になった、あの青春も…

全て、幻だったって言いたい訳!?

 

「---で」

「は?」

「ふざけないでよっ!? 私を--- 私達との思い出を否定しないで!!」

 

完全にブチ切れた。

それと同時に、私の中から何かが高まってくるような感覚を得る。

でも、その先は覚えてはいない。

 

☆☆☆

 

世界は、もう一度切り替わる。

 

(何だ… なんだなんだナンダ!?)

 

目の前に映るは、テイルグリーン。

そのはず、だ。

しかし、今の彼女はどうだ?

感情を爆発させると同時に、彼女を纏うオーラが変化する。

彼女自身を表すものが変化した事をも、示したという事だろう。

 

「…テイルグリーン?」

 

ゆっくりと起き上がり、テイルグリーンは真っ直ぐ唯乃を捉える。

だがそれは、人間ではなく獣。

いや、もしかするとそれ以上の何か。

その様変わりに、いつになく動揺を隠しきれない。

 

「ぐぼっ!?」

 

気が付けば、唯乃は懐に潜り込まれていた。

恐らく唯乃がテイルグリーンが叩き込んだ蹴り以上の、破壊力。

それを、彼女のストレートによって生み出されたのだ。

しかし、それだけでは終わるはずもない。

テイルギアの出力遥かに超えたスピードで、腹部への集中攻撃を行う。

それはまさに、全てを振り切っての『疾走』。

明らかに、彼女が行っている様には思えない。

 

「!」

 

最後の一撃の際、手元の輝きがいつもと違う。

手属性(ハンド)を発動させた際に生じたのは、白色。

だが、今繰り出されるのは黄金に輝いている。

それに唯乃が気付くも、一瞬で拒否されたが。

体ごと吹き飛ばされ、満足に受け身を取れないままに地面を転がる。

 

「何だよ、今のは---?!」

 

テイルグリーンを改めて見て、初めて気付いた。

彼女を纏うオーラが、黄金に輝いている。

それだけでなく、左眼も黄金色となったことでオッドアイになっていた。

その事実に、唯乃はある仮説が浮かんだ。

 

(成程、何者かが介入しているとは思っていたが…)

 

事実、唯乃はテイルグリーンとよく似た相手と相対したことがある。

それ故に、更なる喜びを得る。

 

「それが本性か--- "黄金の拳闘士"!!」

 

かつてアルティメギルに所属していた頃、首領に次いで『No.2』と呼ばれたエレメリアンがいた。

だがその彼は、突如アルティメギルを脱退したのだ。

当然彼は『裏切り者』として追われる身となった。

そして唯乃---フェニックスギルディは彼を追跡し、遂に発見したのだ。

しかし、当時の彼女では適う事はなく、5分で片付けられてしまう。

ここまで来れば、フェニックスギルディは完全に属性玉(エレメーラオーブ)となっているはず。

彼はそうしなかった。

 

(何故、アイツの力がテイルグリーンに?)

 

だが、そう悠長にはできない。

すぐさまフェニックスラッシュ-ターを構え、引き金を引いた。

今度こそ手加減のない、一撃で倒されるような威力で。

だがテイルグリーンにはそれをも見越したかの様に、軽く躱してみせる。

そして彼女が虚空から取り出したのは、グラビティハンマー。

彼女の得物だ。

 

「けったいのぉ!?」

 

唯乃は上空へと避難し、熱線の雨を降らそうとした。

一気に加速し、彼女の重力砲(グラビティ・キャノン)の射程圏外へと移る。

そして、最大火力で彼女を狙い---

放った。

だがテイルグリーンには、動揺した様子は窺えない。

むしろ「乗った」とでも言うのか、ハンマーを構える。

…いや、槍投げの如くハンマーを飛ばす構え?

そう疑問に感じた瞬間、彼女はその得物を投げた。

ハンマーはテイルグリーンの代わりに、熱線を受ける。

 

(それで防げるわけが--- はぁっ?!)

 

グラビティハンマーが、押し返して、いる…?

フェニックスラッシュ―ターの威力は、依然衰えてはいない。

ならば、ハンマーの威力を底上げしているのは何か。

目を凝らせば、ハンマーの後ろには、左拳を模したエネルギーがハンマーを押し出している。

 

「あれはまさか、空裂---」

 

唯のがそのからくりに気付く前に、彼女はその威力に倒れる。

フェニックスラッシュ―ターの熱線は飲み込まれた。

そして彼女に向かってハンマーごと進み---爆発した。

唯乃には、それに抗う手段は無かった。

爆発による広域の煙から、一つ弾き出される。

それは、まともに攻撃を喰らい、満足に体制を取れない唯乃である。

 

(俺様が言うのも、何だが…)

 

無論、傍観するほどテイルグリーンは素人ではない。

素早く落下地点へと走り、直上へと飛んだ。

唯乃と彼女の距離が無くなると同時に、終結への準備を始める。

テイルグリーンの右肩に、唯乃の首筋を乗せる。

空いた両手は、唯乃のふくらはぎを掴み取り、両側に開いて固定。

所謂、ブレーンバスターだ。

その姿勢が完成するのは空中での、こと。

ならば、彼女が次にする事は限られている。

テイルギアによる重力付加を最大へと上げ、落下時の威力を上げる。

 

(何もんだ、てめぇ---)

 

唯乃がそう感じた瞬間、両者は地面へと激突した。

筋肉バスター、が決まった。

地面へと放った容赦ない一撃は、周囲一体を震撼させる。

それは周囲に人間がいようと構わない、獣の如く。

まさに破壊しか、考えてない。

技が決まった後、唯乃を放り投げるとテイルグリーンはその場に倒れてしまう。

 

「お、覚えてやがれ…」

 

唯乃は体を動かせる程の力は残ってはいなかった。

体を燃やす様に、地面へと溶け込んでいく事で離脱したのだ。

当然、テイルグリーンはそれを認知できない。

後に残るは激戦を象徴するかの様な残骸と、虚しく倒れるテイルグリーン。

それだけのはず…

 

「---さて、回収するとしますか」

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