Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.71【文化祭へ向けて】

「ふゎ~…」

 

かなり眠い。

昨日はトゥアールさん達にからまれて、酷い目に会った。

身体的にも、精神的にも疲労が…

私、怪我人なんですけれど。

そのせいで、未だに包帯はとれていない。

 

「おぃっす。えらい落ち込んどるねぇ」

「リン…」

 

後ろから、来ないでほしい。

一瞬、ビクッてしたじゃないの!

 

「よう見たら、クマが---」

「ほんっと、誰のせいかしら?」

 

兎に角、今の私は機嫌が悪い。

私の顔を覗き込むリンに、少しばかりお仕置きをしておく。

頬を引っ張られる形となった彼女は、ジタバタしだした。

彼女があの現場に言っていれば、私は苦労することは無かった。

そう思うと、心のそこから苛立ちが---

 

「っと、そんな事している場合じゃない! 早く行かなきゃ!!」

「ウチのほっぺた、どないしてくれるねん!?」

 

頬を引っ張る手を離し、足早に校舎へと入った。

リンが文句言っているけれど、そんなのは無視に限る。

ただでさえテイルグリーンとして活躍しているから、勉強時間が削れるのだ。

自分の机にかじりつく覚悟でしないと、留年の危険もある。

さぁ、自分を取り戻しに行こう!!

 

 

 

 

「陽月祭の季節だったわね…」

 

思い返せば、季節は秋。

普通の高等学校では、この時期に文化祭が行われるのよね。

最近戦闘ばっかりだったから、そんな事すっかり忘れていた。

というか、文化祭である以上、所属するツインテール部も何か出し物する必要があるよね…?

 

「さて、ウチのクラスの料理についてだが---」

 

この場を仕切る文化委員が、教壇にて話をしている。

この陽月学園では、学年ごとに大体出し物が決められている。

確か1年生が展示品、2年が出店、3年が劇だったはず。

それで私のクラスは料理を出すことが決まっているが、何を出すかでまだ決まっていないのだ。

 

(定番メニューなら焼きそばとか、たこ焼きなんだけれど…)

 

何処か奇抜なアイディアが欲しい。

文化委員から、そんな見えない圧力があった。

 

「他に出したい料理はないか!?」

 

黒板に書かれているのは、定番メニューばかり。

もう、他に案はなさそう---

 

「長瀬、何か良いアイディアはないか?」

 

わ---っ、なんでこっちに来るのよ!?

折角現実逃避しようと思ったのに-!!

でも何か言わないと、この雰囲気からは逃れることはできない。

あわわ…

 

「えっと… チヂミなんて、どうかなぁ?」

「チヂミぃ?」

 

やっぱり駄目か。

咄嗟に出たとはいえ、これは流石にどうかと思う。

 

「まぁ、案の一つには加えておく」

 

そう言って、文化委員は私のそばを離れた。

でもその顔からは、少し満足していると感じられる。

…良かったのかな、これで?

そんな私を置いてきぼりにしたまま、文化祭の出し物は着々と進んだ。

 

「それじゃ、これで完全に決まったか。準備等は、明日以降決めていく」

 

結局は『焼きそば』に決定した。

その文字入には、白いチョークの○で囲まれている。

両脇を挟む様に、お好み焼きやたこ焼き、クレープが…

そして、私が咄嗟に提案した『チヂミ』はある。

 

「そりゃ無理でしょうね」

 

私は一人、そう零した。

基本的には多数決、皆の意思を纏める必要があった。

そんな私に皆は賛同するわけはない。

無理がある、よね…

 

「長瀬」

 

振り返れば、そこには文化委員が。

何の用で御座る?

まさか、嘲笑しにでも来たのか?

 

「私の案は見事に砕けた。流石は民主主義ね」

 

そうだ、私は完敗した。

例え私個人が幾ら強くとも、数の暴力には勝てない。

それに無益な争い事は避けようとする、日本人の性質だ。

私も日本人である以上、それには心の奥底で理解している。

 

「俺はそうは思わん。皆が消極的に活動する中、長瀬は個性を貫いた。少なくとも、他のものよりは優れている」

 

個性ねぇ…

 

「俺は長瀬の様に、自由になれない。羨ましいよ」

 

…何を言っている?

文化委員なりのポエムか?

予想外な発言に、私は戸惑うばかり。

 

「自由? まさか。貴方に指名されて、咄嗟に出ただけ」

 

皮肉に聞こえるかもしれないけれど、それが私の本音でもある。

 

「…そうか」

 

彼はそれだけを言い残し、教室から出ていった。

もしかしたら、彼は『自由な発想』を羨ましいと思ったのかな?

取り敢えず、次の授業があるので黒板を綺麗にしておくか。

日直じゃないけれど。

 

☆☆☆

 

「~♪」

 

アルティメギル前線基地にて、何やら陽気な鼻歌が…

 

「何をやってんねん」

「っと、メガ・ネか」

 

彼の後ろから声をかけたのは、メガ・ネプチューン。

廊下を歩いていた際に、鼻歌が聞こえたのだろう。

気になった彼女は、こうしてその元を辿ってきたようである。

 

「態々人間の姿に化けて、何処へ行くんや? まだ作戦は決行してへんやろ」

「確かにね… でも、僕らがそうじゃなくても、ツインテイルズを狙う連中は沢山いるはずさ」

 

アルティメギルとして、今は休戦状態に再び入るかもしれない。

そんな噂が各地で広まっている。

理由として、メガ・ネが話したように作戦が決行されない事にある。

ツインテイルズと交戦するも、ほぼ戦果は得られていない。

寧ろ同胞は減る一方で、彼らエレメリアンを纏め上げるには今は相応しくない。

更に、テイルグリーンやテイルホワイトによる存在が大きい。

彼女達は幹部クラスを軽く片付けてしまう。

その実力はツインテイルズを遥かに凌駕するだろう。

そしてその事実は、まだアルティメギルには伝わってはいない。

 

「ウチら以外に、誰が狙うんや? 地球ではツインテイルズはマスコット的存在。そんな危険(リスキー)な事を態々するとは思えんわ…」

 

それは、彼女にとっては真実のはずである。

現在地球では、ツインテイルズを擁護する活動がなされている。

裏社会でもそれは同じであり、寧ろ反対派はいないはず。

だからこそ、彼の話は何処か腑に落ちないのだ。

 

「人間だろうとエレメリアンだろうと、全てを寄せる事はできない。オセロの様に、決して白か黒で統一することはないようにね。僕らアルティメギルがツインテイルズを毛嫌いする様に、人間にもいるはず。それを利用せずに、ツインテイルズに打ち勝つことはない」

 

至極真っ当な答え。

それにメガ・ネが反論する隙は、どこにもない。

だが---

 

「…何が言いたいねん?」

 

メガ・ネにはわからなかった。

彼がこれからする事が。

何故、人間へと化ける必要性があるのか。

いや、これは『溶け込む』と意訳した方が適切か。

 

「これから『文化祭』とやらを見物しに行くのさ。良かったらどうだい?」

 

すがすがしい顔でそう誘われるも、メガ・ネは辞退する。

意図が不明である以上、同行するには危険であると判断したのだ。

そして彼女は、イースナ---ダークグラスパーに極秘情報として報告すべきだと。

 

「残念♪ また機会があれば、デートを申し込むよ」

 

彼は舌をチロッと出し、それでも落胆した様子は見られない。

人間に模した姿見だからこそ、この様な仕草を行える。

…余計に、彼の思考を読めなくさせる。

メガ・ネはただ、彼を見送るしかできなかった。

人間ならば皮膚をくい込ませ、血を流す程に拳に力を入れて。

 

「…アホが」

 

☆☆☆

 

出店の方針が決まった。

後は部活動について、だ。

それについては、一体どうするのか?

それを聞くために、私は部室へと向かう。

 

「観束君、いる---」

「勝手にでしゃばるなー!!」

「あででで?! 私の可動範囲が広がるぅ~!!」

 

ツインテール部のドアを開けると、そこは修羅場だった。

愛香さんがトゥアールさんに、キャメルクラッチをかけている。

ドアを開けた瞬間から、骨がミシミシする音が聞こえるのだ。

これをホラーと呼ばずして、何がホラーなのだろう。

 

「あぁ、伊織先輩ぃ、この蛮族を何とか…」

「せいっ!!」

 

私の存在に気付いたトゥアールさんが私に助けを求めるも、愛香さんに決められた。

かけていた首を更に上へと持ち上げる事により、腰へのダメージが来たのだろう。

数秒ほど震えた後、意識を奪われた。

 

「えっと… 観束君は?」

「まだ来ていませんよ」

 

先程までの寸劇を忘れようと、私は愛香さんに尋ねてみた。

しかし、答えは私の予想とは異なっていた。

折角勉強の合間を縫って来たのに…

 

「まいったなぁ… 部の出し物について、聞きたいのに」

 

ツインテール部だからこそ、困るのだ。

ツインテイルズの活動をカモフラージュするためとはいえ、流石に活動しないわけにもいかない。

まぁ、恐らくツインテールについての調査発表会だろうけれど。

 

「それなら決まっていますよ。ツインテールについてあらゆる調査を発表するって」

 

マジか、予想が当たっていた!

適当に考えていたんだけど。

…それにしても、ツインテールか。

調べるにせよ情報量は少ないだろうな。

 

「了解。それで、私はどうすれば良い?」

「…」

 

愛香さん、何処か歯切れが悪いなぁ…

どうしたのかしら?

 

「ナニモナイ」

「…?ぇ」

「何もしないで良い。私にも、そう言われたの」

 

どういう事?

私のみならず、愛香さんにも『厳命』されたの?

そうなるとトゥアールさんは…

 

「私も同様です。まぁ、大人しく引き下がる性分ではないですが」

「そうよ。今まで命懸けで戦ってきた仲間だもの。これしきの事でへこたれるあたしじゃないわ!!」

 

皆、メンタル強いわぁ…

私なんて、それを聞いた瞬間、動揺しちゃったもの。

そうなると、後は慧理那と桜川先生か。

 

「相変わらず、盛り上がっているなぁ」

「長い間空けてしまい、申し訳ありません」

 

…タイミング、良すぎない?

何、この狙いすましたかの様な。

 

「部長さんからの話は?」

「えぇ、聞き存じておりますわ」

「観束の奴、無茶しなければ良いが… こういう時こそ、将来の妻たる私の出番だ!!」

 

やっぱり、彼女達についても同様か。

この様子じゃ、リンもだね。

しかしながら、いつもの観束君らしくない。

思い返せば、心あたりが…

アドレシェンツァでの際、彼は終始笑っていたが、何処か悲しそうな感情が見え隠れしていた。

私、何かやったのかな?

 

「(…後で謝るべきかな)」

 

小声で、私はそう言う。

 

☆☆☆

 

『久し振りだな、少年』

 

…本当に、久し振りだ。

ここへ来たのは、アラクネギルディ戦以来だ。

俺はまた、境地へと来たらしい。

 

『お前はツインテールと共に歩む、私にそう誓った。だがその決心に揺らぎが生じている』

 

揺らぎ。

恐らく、唯乃とテイルグリーンの戦闘を見てからだ。

いや、あれは戦闘ではなく一方的な破壊としか表現できない。

俺が見たかつての彼女に近く、しかし最も遠くなった。

もうツインテールやポニーテールを、超越した何かになっていた。

俺は、それに『恐れ』を抱いてしまったのだ。

 

『お前の信じるツインテールは、確かに強大で届かない存在だ。それを得るには、更なる修羅の道を歩まねばならない』

 

わかっているさ。

アラクネギルディに打ち勝ったけれど、それはまだスタートラインにようやく立てた程度。

俺が手にするツインテールは、まだその先にある。

 

『だがそれは、ほんの些細なことだ。私が危惧しているのはテイルグリーン、彼女だ』

 

テイルグリーン…

伊織先輩についてか?

だがそれは、テイルレッドである俺以上だと?

 

『彼女のテイルギアには、予想以上の負荷がかかっている。これ以上の稼働は、危険性を増大させるだろう。最悪、彼女諸共爆発するかもしれない』

 

馬鹿な?!

トゥアールの話では、特に異常はないって---

 

『それだけではない。彼女の体には、私でも分析できない何かを内に秘めている。もし君達がこれを放置するならば… いずれ彼女は人間を超え、エレメリアンとなる』

 

おい、嘘だろ!?

先輩が、エレメリアンに…

 

『その将来を決めるのは、間違いなく君の決断次第だ。君がツインテールを信じるならば、道は必ず開かれん---』

 

待ってくれ、ツインテール!!

俺はどうすれば良いんだ!?

俺が彼女に出来ることって、一体何なんだよ!

 

 

 

 

「---待ってくれ!!」

 

呼吸が荒い。

俺は、夢を見ていたのか。

ったく、どんな悪夢だよ…

 

(おっと)

 

ここは市立図書館だった。

周りは勉強している人で、埋め尽くされているんだ。

彼らを邪魔するわけにはいかない。

俺は再び席に座り、本を開いた。

調べるのは、ツインテールに関することだ。

 

(俺が不甲斐ないばっかりに、仲間を傷つけてしまった。だからこそ俺は、ツインテールをもっと調べなきゃ---)

 

それに、もうすぐ文化祭だ。

ツインテール部の出し物として、最良のはず。

部長としても、ツインテイルズのリーダーとしてもしっかりしなければ…!!

頬を思いっ切り叩き、奮い立たせる。

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