Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.72【私はよく声をかけられる】

「そろそろ、行動を起こすべきではないかね?」

 

暗闇が支配する空間に、年配男性の声が響く。

 

「落ち着きなさい。彼等は既に準備を整えているが、舞台がまだではない。これでは、劇ができないではないか」

 

制止をかけるは女性。

行動すべきだと判断した、男性を諭した。

一見すれば、女性は慎重で後手に回す。

もう一方は、猪突猛進で先手を討つ。

 

「何度も言うようだが、これは失敗は許されないのだ。決行する以上、戦果を挙げねば軍人の名が廃る」

「そうは言うが、手配は整えておるのか?」

「無論です。日本政府に手出しは致しませぬ。警視庁も自衛隊も、全て我が手に」

 

その報告に、賛同者は驚く。

今まで日本政府に対して、特に圧力を加える様な真似はしなかった。

しかしその切り札(トランプ)を切り出した事は、一つ。

この作戦は、世界を巻き込む覚悟を得たことを示す。

 

「不安ならば、我々が手を貸しても良いぞ?」

「手出しは無用です。必ずや、ツインテイルズを我が手に---」

 

☆☆☆

 

「観束君は…?」

「それがねぇ、私が言っても言う事聞かないのよ。困ったわね」

 

アドレシェンツァ店内。

私は店長特性のカレーライスの作り方を学ぶために、ここへ来た。

厨房で作業している間、私は彼の様子について聞いてみたの。

 

「目にクマまで出来てね。あんな総ちゃんは、初めてよ」

「…」

 

やっぱり、無理していたんだ…

私は直接彼を見たわけではないが、何処か焦燥感に駆られている感じがした。

あんな事を続ければ、いずれ彼はどうなるか…!

 

「ちょっと、様子を見てきます」

「えぇ、伊織ちゃん!?」

 

あまりにも心配になったので、厨房を飛び出した。

未春店長に、彼がどこにいるか聞くのを忘れたけれど、大体何とかなる。

恐らく、自室だ。

階段を駆け上がり、2階へと辿り着くと…

 

「…何やっているの、2人共?」

 

茫然自失となった、トゥアールさんと愛香さんが座り込んでいた。

何というか、居たたまれない気分にさせられる。

 

「総二様らしくないです…」

「何で、あたし達を拒絶するのよ…」

 

そうまでして、部活動の出し物を一人でする必要があるの?

皆で作成してこそ、部活動の意義があるのに…!

私は観束君の部屋へと向かい、ドアをノックする。

 

『…伊織先輩?』

「聞こえているようね」

 

話はできる状態みたい。

もしこれで完全に沈黙だったら、どうしようと思ったから。

 

「何故、私達を無視するの? 何か悪いことでもしたかしら?」

『…いえ』

「伏し目が無いのなら、私の顔を見なさい!! この根性なし!!」

 

彼を怒らせる。

それは私が思いつく、最大限の方法だ。

テイルレッドとして活躍してきた彼なら、ここまで罵倒されて黙っているわけがない。

怒って余計にこじらせる可能性をあるけれど、できる限りは…

 

『そうでしょうね』

 

だけれど、返ってきたのは私の予想外だった。

随分と弱弱しい。

 

『先輩は--- テイルグリーンは強いから、そう言えるんです。唯乃をたった一人で追い込ませて、エレメリアンを瞬殺して。強いから、俺に『根性なし』って…』

 

強い?

まさか。

それよりも、このまま引きこもりになるつもり?

 

「修理費は払うわ」

「「…はい?」」

 

予め彼女達に断っておく。

そうしなきゃ、何をしでかすか分からないもの。

私は拳に力を込めて、ドアを破壊した。

 

「んなぁぁぁ!?」

「何やってんのよ--!?」

 

取り敢えず突入してみると、観束君は机にいた。

特に驚いた様子はなく、落ち着いていた。

部屋の明かりはついていたので、彼の顔はハッキリわかる。

髪はボサボサ、目にはクマができている。

 

「私にとって、強いか弱いかなんてどうでも良いの。戦いはね、何時だって命懸けなの」

 

襟元を引き寄せ、威圧ぎみに話す。

無理矢理にでも捕まえなければ、逃げ出しそうだったから。

 

「もし観束君一人で駄目なら、構わず私達を頼りなさい。私達は部活動の部員で、仲間でしょ?」

 

私だって、1人で戦っているわけじゃないもの。

リンのサポートが無いと、私はここまで来れなかった。

今彼が陥っている時こそ、私達が支えなければ…!

 

「本当に必要がある時に、頼ります。今は大丈夫ですので」

 

襟元を掴む手を払い、彼は私から背を向ける。

依然、彼は協力する気ははなからないようだ。

 

「…そう。それなら構わない」

 

説得するには、力不足だったか。

これ以上の策も無いので、私は諦めて部屋を後にした。

 

「やはり無理でしたか…」

 

部屋を出た直後、トゥアールさんがそう嘆息する。

愛香さんも予測通りか、と言った表情ね。

 

「直接手助けできないなら、陰でするべきね」

 

その真意を、2人は察知したみたい。

トゥアールさんと愛香さんは、頷いてくれた。

 

「何かと思って来てみれば… そういう事なら、私も協力するわ」

「「未春おばさん(義母様)!?」」

 

相変わらず、趣味が悪いねぇ。

私が部屋に突入する時には、既に階段の影に隠れていたんだけれど。

気配察知の能力が向上した辺り、私も武人となったか。

いや、彼女の存在をワザと言わないからか。

厭らしいな、私は…

 

「方針は決まった。こうなれば、するべき事は一つ---」

「その前に、ドアの修理費お願いね♪」

 

…はぁ。

彼の前に、私がしっかりとしなきゃ。

 

☆☆☆

 

「正気ですか!?」

『そうでなければ、どうと言う?』

 

電話越しに、信じられない内容が飛び込んで来た。

普段は冗談交じりにしか対応していない彼女も、流石に驚く。

 

「いくら上からの圧力とは言え---」

『それだけではない。こちら側も、ある程度の報酬は約束されている』

 

流石の彼女も、唇を噛んだ。

彼女は従うしかない存在とは言えど、ここまでは…

 

『お前も組織の人間である以上、分かっているはずだ』

「…御意」

 

本当はしたくはなかった。

だが、それを言えるほどの力はなかった。

 

『だが、それだけでは些か興がない。少しばかり、サプライズとやらを渡そう』

「…!?」

『六道学園高等部に、文化祭の招待状を送った』

 

もう、これは混沌(カオス)でしかない。

彼女の顔は一気に青くなる。

 

『お前はただ、見ているだけで良い。自分が可愛いならな』

 

電話はそこで切れた。

 

☆☆☆

 

さぁさぁ、忙しくなってきた。

本格的に出店の出店計画を練らねば…

 

「焼きそばの具材についてだが---」

「コストをなるべく削減しないと。でなきゃ、破産するぞ!?」

「トッピングは、アタシの自由で♪」

『それは却下だ!!』

 

焼きそば一つでここまで熱くなれるのは、かなり珍しい。

確かウチのシステムでは、売り上げが1位になったら食券がクラス全員に渡されるらしい。

トロフィーも理事長から貰えるが、それは些細なものでしかない。

 

(そうだ。私が求めるのは---)

「長瀬。お前は客の対応と、宣伝に任せる」

 

酌量の余地は無いのか、文化委員。

勝手に人の役割を決めて、それで良いのか?

 

「どうせ、焼きそば一つできやしない。ならばせめて、バイトで培った経験を活かしてもらう」

 

なんか、見透かされた感じ…

でも、カレーライスで手一杯の今、余計な事はできない。

ここはお言葉に甘えさせてもらうが。

 

「ありがと。よく見ているじゃない」

「そうでなければ、クラスを纏められるわけがない」

 

私がそう素直に礼を言うとは思っていなかったらしい。

彼はもっともらしい言い分を残すも、顔が少し赤くなった。

…可愛いじゃない。

 

「待て、何処に行く?」

「決まっているでしょ、部活動よ」

 

 

 

 

「皆、いる?」

 

ツインテール部へと、急いで走ってきた。

途中先生に見つかって、注意されたけれどね。

部室のドアを開けると、まぁまぁ居た。

 

「まぁね」

 

そこにいたのは、愛香さんとトゥアールさん、慧理那と桜川先生だった。

ここにいないのは、観束君とリンだね。

そう言えば、長らくリンの姿を見ていないなぁ。

どうしたんだろ?

 

「トゥアールが、インターネットを通してツインテールに関する情報を集めているわ。あたしも、そのサポートに回っているの」

 

思い返せば、観束君が集めていたのは雑誌を含む書籍関係。

だとすれば、インターネット関係の情報は薄い。

それを補う形での調査は、理にかなった方法かもしれない。

 

「成程。それなら、私は観束君のフォローに入るわ」

「私も是非---」

「お嬢様には、生徒会長としての仕事があります。無理は禁物です」

 

慧理那も私と共に手伝おうとしたけれど、桜川先生に止められる。

それに気付き、彼女は項垂れてしまう。

ただでさえ、忙しいもの。

確かリンは書記に配属されたんだっけ…

最近はそんな話題が無かったから、忘れそうだった。

 

「それにしても困ったものだ。部活動の数が多いというのも、考え物だな」

「というと?」

「お前たちがツインテール部を発足させた後、部活動の登録数が増えたのだ。概ね、ツインテイルズを応援する事を目的としたものが大半だ」

 

そう言えば、観束君がツインテール部を発足させたのは単なる『ツインテール馬鹿』だったわね…

ソーラ事件でも、色々と騒動が。

思い返すだけで、頭痛が…

 

「文化祭が終われば、整理する必要があるな。ただでさえ部費は嵩む一方だからな」

 

でしょうね。

これ以上の大騒動は、御免被りたいので。

 

「それじゃ、私はまだ手伝いがあるので」

 

私はそう言い残して、部室を出ていった。

私の行き先は、教室ではない事を、先に言っておこう。

その道中、妙な人達にからまれてしまったが…

 

「おぉ、長瀬先輩!! ツインテール部から出られたんですか?」

「うぇ?」

「ならば、我ら陽月学園コスプレ部を手伝ってくださいな!!」

 

そう、最悪な人達に。

このコスプレ部も、ツインテイルズが本格参入してから発足されたようだ。

人数はそこそこいるものの、その看板広告たる女子部員は少ない。

…いるだけ、凄いとも思えるが。

 

「…何で?」

「手作りではあるんですが、ツインテイルズの衣装は揃いまして。ですが、テイルグリーンの衣装に合う人がいなかったんですよ」

 

テイルレッド、テイルブルー、テイルイエローのコスプレをする部員はいる。

だが、テイルグリーンを完全に着こなせる部員はいないらしい。

そこで私に、白羽の矢が立ったわけか。

 

「てなわけで、お願いします」

 

そりゃあ、合うでしょうね。

なんたって、本人だし。

それよりもテイルホワイトがいない事が気がかりだ。

 

「それよりも、一人足りないような…?」

「そうでしょうか? 確認したか?」

「あぁ。これで間違いないはずだぞ」

 

…リン、ご愁傷様。

人々の記憶から、欠落されております。

 

「ウチ以外もコスプレする生徒は多い。確か軍隊(ミリタリー)部も、何らかのコスプレを披露するらしい」

 

へぇ、そんなにコスプレするんだ。

もしかしたら当日は、メルヘンチックになりそうね。

でも、そうまでして強調する必要があるのかな…?

 

「で、長瀬先輩、コスプレを---」

「却下」

 

話を逸らしても尚、懇願するのでバッサリ切っておいた。

そうしないと、しつこく食い下がるでしょうからね。

 

☆☆☆

 

「ようやく出番が回ってきそうね」

「…誰に言っているんです?」

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