Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.74【来ないで、お願い】

「これより、陽月学園高等部制圧作戦を行う」

 

その言葉を皮切りに、武装した軍人がトラックから出て来る。

数は…大体40人程度かな。

その中には女性も複数いて、男性と遜色の無い武装を担いでいる。

手にはアサルトライフル。

そして、標準は陽月学園の生徒だけでなく、一般人にも向けられている。

 

「のわぁ~!?」

「…何やってんのよ?」

 

私の隣では、コスプレ部の元部長が騒いでいる。

ただでさえ厚着である執事服に、汗が染み込んでいく様子がまるわかりだし。

何を騒いでいるかと思えば、答えは意外と近くにあるもので…

 

「貴様らには、無駄な抵抗だ。両腕を頭に構え、跪け!!」

 

私の後頭部には、固い金属音がコツンと当たる。

もしかしなくても、銃だよね、これ。

…兎に角、状況が読めない。

ここは従うが先決だね。

周りは喚き散らし、混乱が生じている。

 

「仕方あるまい」

 

その瞬間、凄まじい銃声が鳴り響く。

案外、アサルトライフルの連射って五月蠅いのね…

その聞き慣れない音に、お客さんはまた混乱する。

その銃声は刹那か、永遠か…

 

「わかっただろう。大人しく従わないのならば、こうなると」

 

地面には、無数の穴が。

そのアサルトライフルの脅威を、目の当たりにした人々は声を失う。

あ~ぁ…これの修繕費って、どうなるんだろうか。

まぁ、一介の高校生である私が知る現実じゃないけれど。

 

「この学校の周囲一体を封鎖しろ」

「ハッ!!」

 

あら、一気に制圧作戦を行うんじゃ…?

でもこれで、ここの戦力は少しは減った。

現に、複数ある校門へ向かう一派がいる。

 

「(まぁ、それでも方針は変えないよ…)」

 

ここにはまだ、多くのお客さんがいる。

下手に動けば、巻き添えを喰らう可能性が高いのだ。

ここはジッと我慢の子、だね。

 

「…?」

 

そんな中、私に近付く軍人がいた。

身長は私よりも少し高めで、胸は私よりもかなり小振り。

ボブカットの20代の女性が、私の顔を覗き込んだ。

 

「お前…何者?」

 

少し片言だけれど、ちゃんと聞き取れる。

もしかして---

 

「私は、ここの高校生よ」

「果たして、そうかな…!」

 

一目見ただけでわかる。

彼女は、とてつもない何かを持っている。

そんな予感が、私を駆け巡る。

 

「まぁ良い。彼女に拘束具を」

「了解!!」

 

拘束具って、これまた厳重な…

そんな事を言っている合間にも、私の両手は手錠をかけられる。

しかも体をチェーンでグルグル巻にされてしまう。

どんな拘束の仕方よ、それ。

 

「ぷぎゅる」

「おぃ、長瀬-!?」

 

滅茶苦茶に重い…

そうか、普段はテイルギアの出力に頼り切りだったから。

今日は使わないだろうと、OFFにしてあるんだった。

 

「動かない方が良いぞ、高校生」

 

うん、随分と前から選択肢をミスしたっぽいね。

 

☆☆☆

 

「動くな、生徒ども!!」

 

この陽月学園の警備を兼ねている風紀委員が、何で…?

何で俺達に牙を向ける!?

 

「ここ、東校舎は封鎖された。もう逃げ場は無いぞ!!」

 

それも、リボルバー式拳銃で。

俺達を、撃とうってのか…?

 

「それであたし達を脅そうっての?」

 

不味いぞ愛香、煽るんじゃない!!

そう思っても後の祭り。

風を切る音が走り、窓ガラスに亀裂が生じる。

そして、彼女の頬には薄く鋭い切り傷が付けられた。

 

「我々は本気だ」

 

間違いなく、彼が撃った。

その証拠に、彼が持つリボルバー式拳銃の銃口からは硝煙が出ている。

 

「何故、この様な真似を…?」

 

愛香を支えるトゥアールが質問をするも、彼はそれを無視する。

だが、恐らく混乱を生じているのはここだけじゃないはずだ。

恐らく伊織先輩やリン先輩、慧理那の周りも---

 

「(兎に角、ここの制圧を開放するのが先決!!)」

 

それを感じたのか、2人も頷いてくれた。

さて、どうやって流れを変えるか…

 

「封鎖ですか… その割には人員が少ない気もしますねぇ」

「お前達が知る必要はない。すぐに開放されるだろうからな」

「ほぅ。ではその汗は何でしょうか?」

 

トゥアールの指摘に、風紀委員の動きが見られた。

少しばかり、動揺を示した。

だけれどそれは、愛香にとって十分な隙だ!

 

「悪いけれど、ジッとしていられないから」

 

愛香は教卓を蹴飛ばし、風紀委員を攻撃。

当然、彼には躱すことができずにまともに喰らってしまう。

そして、彼女は、教卓ごと彼を再び蹴とばした。

その勢いは留まる事を知らず、ドアをもへし折る。

しかも、金具ごと破壊して、密閉空間を開放したのだ。

 

「急いで脱出しなきゃ!」

 

そして、愛香は安全確認のためにドアから顔を出す。

しばらくして彼女は振り返るが、その顔は恐怖している。

 

「不味い… アイツの言ってた事、本当ね」

 

俺とトゥアールも、信じられない。

そんな訳で、俺達も確認してみる。

右方向には、小銃を携帯した男性が。

左方向には、各クラスごとに同じように存在している。

 

(マジかよ…!)

 

本当に、封鎖されたのかよ!?

これ、大人しくしていた方が良かったんじゃ…?

急いで首を引っ込める事で、彼らに怪しまれずには済んだ、はず…

 

「何だって、こんな事を?」

「あたしが知るわけないでしょ!?」

 

その事実が明確化されたことで、俺達もようやく事態の深刻さを理解した。

 

「普通ならば、警察が動きを見せても良いんですが」

「静か過ぎるわよね…」

 

そうなんだよな。

時間はあれから20分ほど経っているはずだが、学校の周りではそういった騒ぎすら聞こえない。

これには、流石の俺もおかしいと感じた。

 

「ここがこんな状態じゃ、本当に不味い。一刻も早く、生徒を退避させなくちゃ」

 

だったら、あたしの出番ね。

そう言って愛香は教室を出ていく。

 

「何するつもりだ!?」

「アタシが引き付ける。その隙に、、皆を逃がして!!」

 

そう簡単に言うなよ!?

アイツ、目の前の事に精一杯になって、状況を忘れていやがる。

これをどうやって、突破するんだ…?

でも、彼女の陽動は幾らか効果はあったようで、何人かは彼女の後を追って行った。

 

「本気で乱射してますよ。大丈夫ですかね…?」

「あぁもう! ごちゃごちゃ言っても仕方ない。兎に角、ここを取り戻すしかないだろ!!」

 

そうだ、俺達には一発逆転の奴がある。

変身はできなくても、確か身体強化はできるはずだよな。

 

「愛香のバックアップをする。トゥアールは、皆を」

「わかりました。では、御武運を」

 

ここでは不用意に動かない方が、良い選択なのかもしれない。

だけれど、あの馬鹿のせいでそれもできなくなった。

 

(もしかしたら、テイルレッドの正体がバレるだろうな)

 

そんな一末の不安を抱え、俺は愛香とは別方向へと向かった。

彼女と同じ方向へ行けば、別の道は危険性が増す。

一人でその場所へ向かうことはかなりリスクは高くなる。

 

「まだいたのか!? 大人しくしてろと言ったはずだ!」

 

見張りの人に見つかり、銃を乱射されてしまう。

もう少し上手く隠れられたらとは、思っている。

だけれど、見つかってしまった以上は仕方ない。

俺なりにこの学校を護って見せる!!

 

☆☆☆

 

(始まってしもた…)

 

突然の乱入から、既に1時間は経過しようとしている。

その間に、ほぼ全ての教室は占拠され、校門も封鎖された。

アクセスについても、手際の良さが見える。

外界のラインは全て遮断され、ネットも圏外。

つまり、助けを求める事はできなくなったということである。

 

(この様子やと、メイド部隊を抑えたみたいやな)

 

陽月際の間は神堂家のメイドが、監視役を務める話である。

事実、襲撃が行われるまではメイドが校舎内外を監視していた。

だがしかし、廊下を見ると、いるのは武装した軍人のみ。

恐らく、彼らがメイド達を無力化したのだろう。

 

「(何とかしたいけれど、上から押さえつけられたらなぁ…)」

 

彼女とて、こうして静観するしかない状況に苛立ちを隠しきれない。

本当ならばすぐさま行動に移し、事態を上手く収めたい。

 

「あぁ…どないすりゃええねん!?」

 

自身の無力さ、そして決断の無さに厭きていた。

 

「さっきから、何ウジウジしてるの?」

「む…」

 

そこに、クラスメイトが寄ってくる。

その手には、一本の刀が収められている。

 

「コレ、雨宮が持ってきたんだよね? 本当に偽物?」

 

彼女がそう疑うのは、無理もない。

リンのクラスは、体育館をステージとした劇。

その際、どうしても刀が必要となり、代表してリンが家から持ってきた。

 

「偽物にしちゃ、かなり重いし… 確かに本物と似た物が欲しいとは言ったけれど」

 

何で今更?

リンにも、そう思う節はあった。

本当の事を言えば、それは本物である。

だが、それを言ってしまえば余計なものを引き寄せかねない。

だが今は、そのような時ではない。

 

「スマン、貸して!!」

「へっ?!」

 

リンはクラスメイトから強引に、刀を奪った。

いや本来は彼女の所有物であるから、返してもらった方が適切な表現か。

そして刀を手に、彼女は教室を飛び出していった。

クラスメイトもその後を追うとしたが、危険性を考慮して立ち止まる。

 

「…これ、ヤバくない?」

 

 

 

 

「何故、貴様が?」

「ジッとはしてられへんわ。スマンけれど、お邪魔するで」

 

ダブルブッキング。

やはり、非常時はむやみやたらに動くべきではない。

そう後悔するリンである。

 

「邪魔なら、立ち去れ!!」

 

そう言って軍人は、容赦なく引き金を引く。

その弾丸はリンを中心として、廊下中を荒らしていく。

その煙の量は尋常ではなく、彼女の姿は隠れてしまう。

 

「…む」

「周りに注意せぇよ」

 

だが、リンの体に傷が付くことは無かった。

彼女に当たるはずの弾丸を、全て流したのだ。

無理に切り落としたり、弾こうものならば、弾丸は流れ弾と変化する。

それは直線状に走る弾丸とは異なり、どの軌道を描くのか全く予想できない。

だからこそ、彼女はこの選択肢を選んだ。

 

「大した技術だ。是非ともウチの軍にスカウトしたい」

「お生憎様、あんたらのところは興味ないから」

 

既に刀は、鞘から抜かれている。

リンが彼を攻撃する事に、躊躇いを覚える必要もない。

彼女は下ろした刀を振り上げる。

それだけならば、ただの素振りとしか映らない。

現に、彼は何の警戒をもしなかった。

だが---

 

「?!」

 

本能は『何か』を察したらしい。

彼は咄嗟に、廊下の端ギリギリに寄る。

その直後、突風が通り過ぎた。

それは突風と呼ぶには、段違いかもしれないが。

危険性がない事を確認するために、彼は待った。

謎の突風が通り過ぎて数秒後、爆弾による爆発とは異なる爆発が生じた。

恐る恐る後ろを振り返れば、壁に大穴が空けられていた。

 

「な…?!」

「加減間違えたわ、スマン」

 

彼が驚きを見せている間に、リンは間合いを詰めた。

それに気付き、彼は銃を構えるも既に遅い。

 

(…?)

 

彼は斬られた。

だが、そう表現するには違和感があった。

彼女は確実に、彼の体を捉えていたはず。

だが、その肝心の痛みが来ないのだ。

よく見れば、斬られたのは、迷彩服の上に来ていたアーマーのみ。

 

「邪魔や」

 

間髪入れず、リンは追撃を試みる。

刀を横に構え、彼の腹部に押し付けた。

その重みは凄まじく、ろっ骨を幾つか折る程に威力があった。

そしてそのまま、彼を吹き飛ばした。

彼は遠心力に振り回され、突風で出来た穴へ吸い込まれていった。

 

「この様子やと、どえらい目になるわなぁ…」

 

確認のため、リンは穴から外の世界を覗き見る。

そこは悲惨なもので、あちこちに武装した軍人がいる。

これを打開する策は---

 

(頼むから、下手な事はせんでよ… ツインテール部!)

 

状況は依然、最悪。

外部との連絡は寸断され、助けはない。

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