Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.76【翻弄して、されて】

「どういう事ですの、これは!?」

 

生徒会室。

ここでは、緊急事態への対応に勤しんでいた。

最も、殆どが機能不全に追い詰められた状態で、どうすべきか。

放送も使えず、役員の半数は拘束されたらしい。

 

(誰がこんな事を…?)

 

神堂慧理那は、持てるべく全てを使う。

今は理由を詮索するよりは、この事態を打破すべきだと。

だが、自分一人ではどうする事もできない。

 

「観束君なら、どうすべきでしょう」

 

右手首に付けられた、テイルブレスを撫でる。

『神堂慧理那』としては、何もできない。

だが『テイルイエロー』なら、できる。

彼女ならば、恐らく一個中隊でも相手にできる。

 

『お前は生徒会長だ。なら、慧理那にしかできない事をすべきだ』

「…そうですよね」

 

観束らしい台詞を思い浮かべ、微笑みが出る。

そして、何かを決意した。

 

「先ずは教師達に連絡が取れるか、確認を! その上で生徒の安全確認をお願いします」

「了解!!」

 

生徒会室に残る僅かな役員に指示を出す。

だが、それを制する者が横やりを入れた。

 

「お前さんはマスコットなんだよ、神堂慧理那」

「足立先生…? 一体何処におられたんです!?」

 

見れば、空いた窓から腰かけている。

かなりの高所であるはずだが、どうやってここまで来たのか。

 

「お前は何もできない。もう全ての手は、封じられたも同然なんだ」

 

窓から降り、慧理那を見据える。

その目は、明らかに降参しろと訴えていた。

 

「私はそうかもしれません。ですが、私と私の仲間はまだ諦めてはいません」

 

彼女も負けじと、彼を睨み返す。

両者はお互いに譲りはしない。

この場にいる役員は、ただ見守るしかなかった。

 

「側近のメイド達はどうした? それどころか、役員も殆どいない。これで諦めていないだと?! 馬鹿馬鹿しいにも程がある」

「離れていても、皆を守りたい気持ちは同じ。だからこそ、ここで投げ出すわけにはまいりません!!」

 

それどころか、ヒートアップ。

とてもではないが、話し合いという雰囲気ではない。

むしろ不味い方向に行ってはいないか…!

 

(ひ~ん、誰か助けて---!)

 

役員はただ、静観するしかなかった。

 

「成程。言葉で制せないなら---」

 

足立は限界に来ていた。

教師として、なるべく言葉で抑えようと努力はした。

だが、これ以上の会話は無用と判断した。

 

「現実を見ろ、神堂慧理那!!」

 

突如後ろを向き、何かを投げる。

その方向は、先程彼が侵入してきた窓だ。

そこにはテロリスト達の仲間が居座り、アサルトライフルを構えていた。

 

「なっ…!」

 

だが、放たれない。

否、放てないのだ。

彼の右手に深く万年筆の先が突き刺さり、反応を鈍らせたのだ。

 

「ここでお前達が動けば、こうなる。だからこそ、ジッとしてもらいたい」

 

そう冷たくあしらうと、足立は侵入者に近付き、蹴り飛ばした。

彼は振り向き、出入り口の方へ足を運ぶ。

 

「お前は今まで通り、マスコットであれば良い」

 

クツクツ笑い、華麗に出ようとした足立。

だが、そう上手く決められないのが人生とうもの。

突如ドアが開いたと思えば、彼は蹴り飛ばされたからだ。

 

「マスコットだと? お前はお嬢様を何だと思っている!?」

「尊? 無事でしたの!」

 

桜川尊、帰還。

そしてお嬢様を守るために、足立を攻撃したのだ。

何故彼女がここにいるのか、彼には理解できない。

 

「本当なら、アタシが蹴るはずなんだけれど… まぁいっか」

 

そのドアから、ひょっこりと津辺が顔を出す。

 

「お嬢様はマスコットではない。我々の、次の指導者となるものだ!!」

 

倒れている足立を無理矢理引き寄せ、そう強く言い放つ。

掴んでいる拳には、力が込められているのか震えている。

 

「そうか。それじゃ、お手並み拝見としますか」

 

彼はその手を弾く。

そしてゆっくりと立ち上がると、今度こそ生徒会室を出る。

 

「待ってくださいまし。今はテロリスト達で危険なんですよ!?」

 

慧理那が彼を制するが、既に外に出ている。

 

「彼女達が平気なら、俺だって大丈夫だろ。余計なお世話だ、生徒会長さんよ」

 

嫌味たらしく言い残すと、彼は廊下へと歩く。

生徒会室から彼の姿は、完全に消えたようである。

 

 

 

 

「それよりも、そーじはどうしたのよ?」

 

津辺の一言で、皆は気付いた。

まだ、危険な状態にある人物がいることに。

 

「まさか、観束君!」

「多分、アタシを追って教室を出た可能性が高いわ」

 

それを聞いて、更に絶望した。

 

「今は大丈夫だろうが、あの時は---」

「不味いですわ、尊!!」

 

☆☆☆

 

「(瓦礫ばっかり。どうやったらこうも酷くできるのかねぇ…?)」

 

小声でそんな事を呟きながらも、私は校舎へ戻ろうとしていた。

校舎の周りは無視するのかって?

校外は人員削減がなされていると推測できるからだ。

理由としては、校舎の所々で起きている火災。

それが陽月学園高等部の重要拠点を爆発したものであり、そこに動員させているかもしれない。

 

(下手すれば、そこにいる関係者諸共爆発するつもりで…!)

 

だからこそ、急いでいたんだ。

そう、最悪を目にするまでは。

 

「---? ----!?」

 

外国語で話す、迷彩服を来た女性が校舎前にいる。

左手に握られたのは、通信機か。

 

「…?」

 

しかも、運悪く通信が終わった。

そして、私の存在に気付いた。

彼女は今何も握られてはいないが、体術で来られるとかなり不味い。

 

(人生、詰んだわ)

 

彼女は素早く何かを取り出し、私に向けた。

直感で危険を感じた私は、横に飛ぶ。

その直後、地面が砕けた。

私が居た場所、正確には右足を狙ったんだ。

もしあのまま突っ立ってると、確実にやられていた…?

 

「Be gone !!」

 

英語でそう問われる。

私はその質問に、答えられない。

 

(…何て?)

 

数学が致命的なら、その他もあまり出来はよくない。

そんな私が、理解できると思った?

 

「Don't get in the way」

 

そう言って、彼女は本気で私を狙う。

ただでさえ状況把握できていないのに、これはないでしょ。

兎も角、遮蔽物が多い場所まで移動するしかない。

 

(むやみにテイルギアの力を使うのは良くない。節約しなきゃ!!)

 

必死に走りながらも、思考はクリア。

私が戦場慣れしている証拠だね。

私が通り抜けていく場所に着弾してくる。

立ち止まることも、引き戻すこともできない。

 

「…?」

 

そしてようやく、ゴミ収集所まで辿り着いた。

校舎の裏手にあるから、多少は遮蔽物がある。

私が急いで隠れると同時に、彼女も追いついた。

だけれど、見失ったのか拳銃を構えて前進する。

 

(打開策があるとすれば---)

 

隙をついての、攻撃。

だけれど、それを許す程相手は甘くない。

何しろ、本物の軍人なんだから。

ただの女子高生が、敵う相手じゃない。

真正面から突っ込めば、確実に蜂の巣だ。

 

「(もう一度、無茶するよ!!)」

 

意を決して、飛び出した。

それを感知した彼女は、引き金を引く。

だけれどそれは、一発も当たることはない。

小休止を挟む彼女だが、それはすぐに変わる。

別方向から飛び込み、その脇を通り過ぎる。

 

「!?」

 

そりゃ驚く。

私が瞬間移動したのかって、思ったでしょ?

 

「さぁ、イリュージョンの始まりよ!!」

 

幾つもの私が、彼女の周りを駆け抜ける。

彼女はあらゆる方向へ乱射するが、狙いが甘く外す一方だ。

これで、予想以上の隙ができた。

私はそこを突き、徐々に削っていく。

膝・腰・肩・首。

要所要所を叩き、バランスを崩してみる。

 

(分身体は全部、意識共有している。私が見る限り、確実にダメージはある)

 

何でこんな芸当ができるかって?

ふふふ、そろそろネタばらしとしますか。

 

"属性玉変換機構(エレメリーション)手属性(ハンド)"

 

そう、属性玉変換機構(エレメリーション)

一応変身せずとも、何故かこの機能は使えるのだ。

いらないと思っていたが、今は感謝している。

 

「捕まえた!」

 

銃口を掴み、思いっ切り握り潰した。

嫌な音を立てながら、武器は使い物にならなくなった。

慌てて彼女はサバイバルナイフを立てつけるも、無駄。

私の腕に刺さるどころか、途中で折れた。

 

右ストレートで当てようとしたけれど、彼女にギリギリで躱された。

その後、軽く風が薙いだ。

そしてゴミ箱をころがし、コンクリート片を生成する。

逆に腕を掴まれ、私の視界は逆転した。

 

「うぐぅ…」

 

そして、固め技を仕掛けてきた。

これならどんな馬鹿力も、無力化できる。

この臨機応変に、戸惑うだけだ。

流石、軍人ってか…

 

「その辺にしておけ」

 

途端、体にかかる重みが減った。

それに加えて、固め技も解けたから痛みもない。

どういう事?

 

「アイツに誘われて来てみれば… まさか、鼠退治をする破目になるとはな」

 

体を動かして、その人を見る。

私よりも遥かに背が高い男性。

でも、迷彩服は来ていない。

それどころか、私服だわ。

ガタイも良いし、体育系かも。

 

「大丈夫か? あまり無茶はするな」

「す、すみません…」

 

襲った女性を片手で持ち上げながら、私に叱咤する。

なんちゅう怪力…!

 

「ここは俺に任せて、さっさと避難しろ」

「はあ…」

 

この男性が誰か分からないけれど、このままよりはずっと良い。

いつまで相手をしなければならないかよりは。

お言葉に甘えて、ここを去るべし。

 

「(誰なんだろねぇ…)」

 

そんな疑問を、ふと漏らしつつも合流を目指した。

恐らく生徒会室に行けば、慧理那くらいはいるでしょ。

 

☆☆☆

 

「これはこれは… 何とも」

 

ユウはピンチの場にいた。

彼の周囲一体を武装した軍人が取り囲み、蜂の巣にせんとばかりに構えている。

彼には緊張感というものがないのか、飄々とした態度を取るばかり。

ウィッシュが居る事も、お忘れなく。

 

「(彼等は我々に、アダを返す気ですね)」

「(折角の良い関係だったのに…)」

 

彼等は背中を互いに預け、状況を窺っている。

できれば、このまま逃げられたら良かったが。

ユウには、ここを去るには些か惜しい気がしたのだ。

 

「ここで我々を討てば、関係は水の泡だぞ?」

「お前達には、これ以上の価値は無くなった。」

 

言葉をオブラートに包まず、ストレートに言い放った。

同時に、軍人が一斉に構え直した。

 

「やれやれ。こうなれば---」

 

ユウは嘆息する。

できる限り、穏便に済ませたかったが仕方ない。

だがこうなれば、実力行使しかない。

 

「燃え尽きてもらうか」

 

瞬間、彼等を業火が襲う。

それは自然界で生じるものでは、ない。

その証拠として、彼等の迷彩服が燃えているのだ。

 

「馬鹿な!? 特殊なコーティングで燃えないはず…!」

「僕を敵に回した事、後悔させるよ」

 

業火は留まる事はなく、更に広がり続ける。

苦しみ悶える軍人達。

最早、収集の着く状態ではない。

 

「こうも人間同士で争う必要があるのか、甚だしい。この様では、恒久和平など夢のまた夢だな」

 

ユウの呆れ顔は、人間に対する悲哀感を示した。

 

「君たちでは、属性力(エレメーラ)は得られない。精々、この惨劇を盛り上げるエキストラとして、散ってくれ」

 

燃え盛る炎に囲まれるユウ。

しかし、暑がる様子は未だない。

 

「さぁ、君も送ってあげよう」

 

隊長格の軍人にそう告げると、彼はその場を離れた。

あの現象から、彼がタダモノでない事を認識したらしい。

 

「文化祭どころじゃなくなりましたね」

「それ以上だ。まだまだ、楽しませてもらおう」

 

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