Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.77【ハッキリ言ってくれ】

「…参ったなぁ」

 

相変わらず、私の運は悪いなぁ。

これ程歩き回っても、誰とも会わない。

皆がまだ出歩けないってのもあるが…

 

「校舎でも駄目なら、どうすればいいのよ…」

 

思いっ切り肩を落とす。

津辺さんなら、きっと会えるだろうと踏んだのに…

 

(…ん?)

 

その時、ふと目に入ってきた。

あそこは確か、理科室だっけ。

そこから、妙に黒い煙が出ている。

 

「って、火事!? 不味い不味い!?」

 

慌てて辺りを見回した。

すると、運よく消火器があるではないか。

 

「(でも、ここで慌てたら駄目)」

 

だけれど何故か、この時は妙に冷静になった。

 

「(内側からロックはされていないけれど… 気配が殆どないのが気になる)」

 

どうも、これ自体が胡散臭いと思った。

なので、荒っぽく試してみようか。

そっとテイルギアの一部開放を行い、重力砲(グラビティ・キャノン)をドアにぶつけてみた。

ドアが嫌な音を立てて内側に倒れた瞬間、閃光が起きる。

 

「やっぱり--- ってこれはマズいでしょ~!?」

 

だけれど、逃げ出すにはもう時間切れ(タイムアウト)だ。

容赦なく爆炎は、私を通り抜けて行く。

そして、理科室は爆発した。

 

 

 

 

「…ぷはっ。これ、私じゃなきゃ死んでたわよ」

 

制服がボロボロになりながらも、何とか生き延びた。

今日ほど、生きている事に感謝することはないだろう。

 

「さっきのは、もしかして---」

 

取り敢えず、理科室には何かがある。

そんな気がして、迷わずに飛び込んでみる。

まだ爆炎が残り、視界が凄く悪い。

 

(まだ何かいる可能性が高い。気を引き締めていこう)

 

薄目だし、本当に視界が効かない。

いつ襲われても分からないからなぁ…

 

「---!!」

 

途端、殺気が。

それに警戒し、距離をとる。

だが距離は詰められ、首筋に冷たい感触が。

 

「無謀だな」

(その声---!?)

 

やがて、視界がハッキリしてきた。

その顔は、かなり久し振りだった。

 

「---ユウ!?」

「なっ、何故君が!?」

 

思いがけない再開。

互いに動揺しながらも、動けない。

 

「…これは失敬」

「もしかして… 遊びに来たの?」

 

そうでなきゃ、ここへ来る用はないからねぇ。

晴れた視界の先に、もう一人いた。

私よりは小柄で、お洒落なワンピースを着ている。

 

「奥にいるのは、彼女?」

 

その言葉に、彼女は凄く期待の顔をしている。

まるでそうだと言わんばかりに。

 

「いや、連れだけどそこまでじゃない」

 

ユウが補足すると、今度はがっかりした。

えらく、感情の起伏が激しいなぁ。

 

「彼女の名はウィッシュ。『希望』という名だ」

 

ユウは首筋に当てていたものを収めると、そう紹介してくれた。

 

「へぇ… その割には、満更じゃなさそうだけれど?」

「長い付き合いだからかな?」

 

そう答えるユウの顔は、平然としている。

これは、本気でそう思っているに違いない。

 

「---速く逃げなきゃ!?」

 

そうだ、再会に喜ぶ暇は無いんだ。

いつ壊れてもおかしくないし、まだ敵がうろついている可能性があるんだ。

ここに居座り続ける選択肢は、ないんだ。

 

「その力、まだ使い続けるんだ」

「…はぁ?」

 

折角逃げようと思ったのに。

意味深な言葉を、発さないでほしい。

余計、気になるじゃない。

 

「随分と、あの娘に執着心がおありで」

「半分正解で、半分間違いだ」

 

ウィッシュに諭されるも、軽く流す。

そんな彼女からは、凄まじいまでの嫉妬のオーラが…

この娘、案外ヤンデレに近いぞ。

 

「その力は強大だ。君がそのままでいれば、君で無くなる」

「「何それ?」」

 

あまり遠回しな表現は、理解を遠ざける。

今の言葉ですら、理解できない。

と同時に、ウィッシュさんもできなかったらしい。

 

「もう少し、解かりやすい言葉でお願いしますよ。私が一番苦労するんですから」

「安易に表現すれば、知能の低さを曝す事になる。君達だって、よく知っているはずだ」

 

相変わらず、分かりにくいなぁ。

もったいぶった言い方というか、

 

 

「もし君が生き残れば---」

 

ドアの前で一旦立ち止まる。

私に振り向かず、こう言い残した。

 

「僕の全てを、教えよう」

 

ウィッシュもその後を追う形で、理科室を出ていく。

炎も弱くなり、出るにはもってこいのタイミング。

だけれど、私はまだ出られなかった。

 

(不思議な人だとは思っていたけれど… また会えるのかな?)

 

その時、大きく地揺れが起きた。

というか、ここは元々不安定な場所だよね…

あの爆発で酷く壊れたとなれば---

 

「逃げるべきじゃない!?」

 

本来の目的は、それだし。

急いで行動に移すが、本当にギリギリだった。

ドアの近くにいた事が、幸いなのかも。

転がる感じで外に出ると同時に、理科室が崩壊した。

 

「た、助かった…」

 

この短時間に、何度ヒヤヒヤさせるのよ。

寿命が縮んだわ!

 

(ユウたちはもういないか…)

 

まぁ、彼等だって暇じゃないか。

私の安全ですら、保証がないし。

今は、その確保を優先するべきか。

 

「それよりも、あの侵入者たちを何とかしなきゃ」

 

まだ戦力について、把握しているわけじゃないから。

この様子だと、本当に警察が来ないみたいだし。

 

(先ずは、誰かと合流したいわね。リンなら、恐らく---)

 

当てずっぽうな感じだけれど、彼女が行きそうな場所はなんとなくわかる。

兎も角、ずっと一人は危険だからね。

 

☆☆☆

 

「さて、キッチリ精算してもらおか」

 

リンがいる場所は、荒れ果てたグラウンド。

地面はもう、使い物にならないだろう。

そんな環境の中、ジッと睨み付ける。

 

「---!!」

 

彼女に対するのは、先程の襲撃者の一部。

恐らく、外からの襲撃を懸念しての事であろう。

だが、ここまで狂わされたことは想定外らしい。

銃を構えるその手には、僅かに震えが見える。

この部隊に配属されて、まだ浅いのか…?

 

「ショボイけど… まぁ、ええか」

 

彼女が偶然見つけ出したのは、陸上競技で使われる槍。

そこそこに突貫力はあるが、武器を貫通することはないはず。

だが彼女は、あえてそれを選んだ。

彼女は構え、彼に向けて投げた。

 

「…狙い通り」

 

だが、彼には当たらない。

まあかすりはしたが。

かれの横を通り抜け、当てた場所---

襲撃の際に使用したトラックの後輪である。

刺さったタイヤの空気は、勢いよく抜け始めていく。

これで少しは、敵の足止めとなるだろう。

 

「とんでもない事、してくれた」

 

その時、彼女の背後に誰かがいた。

言葉の抑揚から、学校関係者ではない。

振り返れば、容赦の良い女性がいる。

だが雰囲気からして、良くはなさそうな展開である。

 

「…ッ」

 

それだけでなく、彼女の仲間も集まってきた。

多勢に無勢、このままでは厳しい。

この場に陽月学園の関係者は彼女だけとはいえ、派手に暴れるわけにもいかない。

リンは渋々、降参を示そうとしたが---

 

「やっと見つけたわよ、リン!!」

 

なんとも空気を読まない、馬鹿がいた。

散々探し回ったのか、息が少し荒い。

軽くしゃがみながらも、声だけはリンや襲撃者たちには聞えている。

 

(あのドアホウが。何で今やねん…)

 

リンは内心、呆れていた。

タイミングが悪すぎる。

彼女の考えでは、最悪自分だけを犠牲にするつもりであった。

だが、これではご破算だ。

 

「…お邪魔でした?」

 

ここでようやく、伊織もこの事態に気付いた。

銃を彼女に向け、臨戦体制に入ってしまった。

 

「何で来たんや、伊織!?」

「だって--- 心配だったんだから!!」

 

通常ならば、手放しで喜んでいた。

だが今は、正解ではない。

 

(ここでグズグズしてたら、アカンわ。そろそろ別の部隊が来る頃やろうし…)

「成程、仲間か。ならば、容赦なく殺せるな」

 

リーダー格の女性はそう呟き、伊織へと歩み始める。

もう完全に、逃れることはできなかった。

 

「---?」

 

それを合図に、リンの周囲一体を軍人が囲っていた。

言葉で制するのは、放棄するということか。

 

「人数では、我々が勝っている。無事に帰れるとは思わないことだ」

「寝言は寝て言いなや」

 

ニヤリと笑うリーダー格だったが、それはすぐに変貌する。

振り返れば、囲んでいた戦闘員h全て倒れていた。

 

「…お前、何者だ?」

 

戦闘員が問いかけるが、リンはそこまで親切じゃない。

兎も角、これで初めて有利に立てた。

 

☆☆☆

 

「校内の56%まで安全圏を確保できました」

「体育館も奪還したようです!」

 

生徒会室は騒然としていた。

校内各地に向かわせたメイド達から、トランシーバーを通して情報が入ってくる。

聞こえてくるのは、吉報ばかり。

 

「何とかなりそうですわ」

 

慧理那は安堵していた。

だが、桜川先生はそうではなかった。

 

「まだだ。まだ、愛香と総二の確認が取れていない」

「そういえば…」

 

その事実に、慧理那は焦り出す。

 

「大丈夫でしょうか…?」

「まだ、報告がない。恐らくは---」

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