Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.78【落ち着いたか?】

一言で言えば、硬直状態。

リーダー格に、私とリンが挟み込む感じ。

 

『…』

 

周りは、リンが一瞬で叩き伏せた軍人達。

彼女にとっては、孤立無援の状態だ。

 

「どないする? 逃げるんなら、今のうちやで」

 

リンがさり気なく、逃げ道を提案する。

だけどそれって、相手は聞かないと思うよ。

彼女なら、後ろからそっと撃つかもしれないし…

 

「なるほど。貴女の指揮ならば、我々が手玉に取られるのは道理です」

 

閑念したのか、彼女は深く溜め息をついた。

日本語、話せたんだ…

てか、

 

「リン… 知り合い?」

「いや、ウチは初めてやけれど…?」

 

私も知らないしなぁ…

じゃぁ、『貴女』ってだれ?

 

「今回は我々のメインに失敗した。こうなった以上、待機は危険と判断した。」

 

彼女上空へ、別の銃の引き金を引く。

それは派手に飛んで行った後、凄まじく発行する。

 

「これは… 信号弾!?」

「では、失敬する」

 

言うが早いか、リーダー格はすっ飛んでいた。

既にトラックに乗り込み、アバよとでも言うかのごとく手を振った。

 

「待たんかい、ゴルアぁ!?」

 

ギャアああ、やあっぱり銃を隠し持ってた---!?

そして容赦なく、車体にキズをつけていった…

 

(容赦ねぇわ、やっぱり…)

 

改めて、リンの裏側を見た気がする。

 

「ここにいましたの!?」

 

その声は---

 

「慧理那? 津辺さんまで!?」

 

何で来た!?

まだ敵が襲ってくるかもしれないのに。

 

「光の元を辿って、ようやく追いついたわ」

「お怪我はごさいませんか?」

 

心配そうに、私とリンに尋ねてくれる。

その優しさが、今は痛い。

 

「しっかし、荒しまくっただけで、何がしたかったんだ? ただの破壊活動でもなさそうだし…」

 

リンが冷静に分析してくれた。

確かに、彼らは『何か』を探していたような…?

 

「まぁ、後でわかるか」

 

…何でそう、楽観的なんですかねぇ?

でも、これで終息したから良しとしますk---

 

「---!?」

 

何をわめいているかはしらないが、迷彩服を来た者がまだいた。

何と言うか、絶望感が表情豊かに表現された感じ…

 

「御愁傷様です」

 

思わず、合掌してしまった。

 

「そんな場合じゃないでしょ!? 早くとっちめないと」

 

向こう側も気付いたのか、銃を抜き出し発砲した。

咄嗟に防御に徹した私は、全面に過重力を生み出す。

勿論それは、弾丸の威力を殺すためである。

 

「大丈夫、みんな---?」

 

後ろを確認すると、誰かいない。

えっと、慧理那に津辺さん、私。

リンがいないか…

 

「遅いで」

 

気がついた時には、もう終わっている。

リンが拳銃を、思い切り蹴とばした後、物凄いスピードの連続蹴りを披露した。

 

「非道ですわね…」

「流石のあたしも、このスピードは出せないわね…」

 

うゎぁ、2人はドン引きじゃないの。

殺戮の現場を見てしまったわ、私達。

これを見たから、リンに殺される可能性が…

 

「ふぅ、始末完了♪」

 

そう汗を拭くリンの顔は、とてもすがすがしく。

同時に恐ろしさを増大させていた。

後ろで倒れている彼は、迷彩服がボロボロにされていた。

 

「今、一体何を---」

「一気に敵の懐に潜り込んで、叩き伏せただけや」

 

そんな事、一般人にはできないから…

あんたやっぱり、何処かおかしいよ!?

 

「で、のびている奴はどうします?」

「んなもん、縄でグルグル巻にすればええ」

「あ、でも拘束するなら---」

 

私の知らないところで、更にえげつない事になりそう…

折角、丸く収まりそうだったのに。

 

 

 

 

「---で?」

 

嘆息する桜川先生。

両手をはたき、更なる一仕事を終えたみたい。

 

「亀甲縛りにしたコイツは、一体誰だ?」

 

彼女が指すのは、気絶したボロボロ迷彩服の男性。

意識は飛んでるはずだけれど、何故か喜びの顔に満ちている…

すんごい、気色悪いわ。

 

「この学園を襲撃した部隊の一人です」

「私も対峙したが、かなりのやり手だった。もしあのままだったら、我々の敗北は決していただろう」

 

確かにねぇ。

私でも、かなり危うい状態だった。

彼らは一応、本気で制圧にかかっていたんだ…

 

「その上、これ程までの手際の良さ… 裏に何かあるかもしれん」

「つまり--- 共犯者が外部にいる、と?」

 

それは…どうだろうか?

確かに、これだけの人員を導入するには何らかの手続きが必要だ。

いきなり来るにしたって、この数は卑怯だったし。

 

「そもそも、警察や機動隊が抑えに来ないのも変ですね」

「人質となったウチらの被害を考慮したか、それとも---」

 

いまだこの学校は神堂家のメイドさん達が巡回することで、何とか平静を保ってはいる。

本来ならば、これは警察の役目なんだよね…

それに、ボロボロになった校舎も何とかしてほしい。

 

「まぁ、死亡者が出ないだけでも良かったじゃない!?」

 

津辺さんがすかさずフォローしてくれた。

言い忘れてはいたが、本当に死者はいなかったのである。

(神堂家のメイドさんが報告するには)

破壊された教室は、辛うじて人はいなかった。

そもそも、狙われた場所が殆ど使用されていないからってのもある。

銃を使用した割には、直接生徒に当たらないように配慮もしてくれたらしい。

まぁ、必死だった私たちは、気付くわけないけれどね…

 

「それにしても… よく無事でしたね、お2人とも」

「そうですよ!! 勝手に出ていくし、それに敵もぶっ飛ばすし」

 

今頃気付いたか…

勝手に出ていった私も悪いが、結構怖かった。

敵のリーダー格と対峙するわ、ユウと思いがけない再開だったのに殺されそうだわ…

もう散々!!

最後は相手が勝手に逃げてくれたから、本当に助かったわよ。

 

「ともかく、2人と愛香さんは無茶しないように!!」

『はぃ…』

 

そりゃあ、怒られるよね。

 

「でも、それなら観束君も同罪だよね? 彼はどこに…?」

「それでしたら---」

 

私が素朴な疑問をぶつけると。

トゥアールさんは、何やら機械を操作した。

そしたら、何にもない場所から降ってきたのだ。

 

「襲撃者同様に、縛っておきました♪」

「どうりで、話に入ってこないわけだ…」

 

トゥアールさんは、やっぱりトゥアールさんだったか…

見れば、されている当人は苦しそう。

ドMでないところ、少し安心した。

 

「何一人で突っ走ってんのよ!? 本当なら、アタシがするべきだった---」

「仕方ないでしょう? 私以外に自由な人がいませんでしたし」

 

津辺さん、怒るところ間違ってます…

でも、結論からして、無事は確認できた。

 

「とはいえ、これからが大変ですわ。校舎の修繕費の見積もり、生徒の安全確認、etc…」

「いや、恐らく慧理那の出番はないで」

 

…何で?

恐らく、皆が初めに感じた疑問。

でもそれは、後々分かってきた。

 

☆☆☆

 

『---では、貴女には事前に情報を得ていなかったということですか?』

『私達は何も知りませんでした。まさか、生徒たちの楽しみを、あのような形で踏みにじられるとは…』

『何も知らないわけないでしょう? それに、学校側の安全性にも問題があるのでは?』

 

陽月祭後の、登校日。

休日でさえ話題となった襲撃騒ぎは、今日も熱が冷めない。

 

『確かに、生徒数を見れば問題がなかったとは否定できません。ですが、私達とて最大限の努力はしました』

『あの学校の敷地面積を考慮すれば、警察に頼っても良かったのでは? もしそうすれば、今回の大事件は多少抑えられたはず』

 

陽月学園の理事長・神堂絵夢は画面におり、記者たちの執拗な質問に耐えていた。

冷静沈着な彼女の顔からは、薄く汗が流れている。

 

「事件の責任追求にしては、穏やかじゃないわね」

「母さん…」

 

同じリビングで見ていた母さんも同意見だ。

少なくとも、慧理那のお母さんは俺達を影から守ってくれたはず。

その応酬かこれじゃ、割に合わないじゃないか!!

 

『学園祭の企画書では、何かしらのサプライズを提供する予定が組み込まれていました。もしそうならば、あれが---』

『あれは私のサプライズではなく、招かれざるお客様にすぎません。あれ程散らかした上で、何も言わずに立ち去れられたのですから』

 

聞いているうちに、悲しくなってきた。

イベントってのは、皆で楽しむものだってのに…

なんでここまで---

 

「今回の事件が不安を煽り、神堂家が所有している会社の株価が下落しています。それも偶発的とは考えがたいですが…」

 

トゥアールも起きだした。

だが、目下にクマができていることから、一晩中情報を集めていたのか…

 

『神堂理事長。最後に一言』

『…』

 

記者会見もいよいよか。

依然として、彼女の顔は揺るがない。

 

『陽月学園の理事長として、生徒を守れなかったことについて謝罪します。この件を反省し、今後このような事態を招かぬよう、対処いたします』

 

その言葉を最後に、理事長は席を立った。

お約束のごとく、記者たちは執拗に彼女に求めていく。

非常に、辛すぎる…

 

「私達も用心すべきです。理事長ほどでなくとも、白い目で見られるでしょうし」

 

そうは言っても…

授業がある以上、向かわねばならない。

 

「皆さんはどうしているんでしょうか?」

「あ~… 一応、聞いてみるか?」

 

皆も学校へは来るだろうからな。

その時に聞けば良いだろ。

 

「では、私が総二様ぼボディガードとして同行致します」

「そう言って、思い切りくっつきたいだけだろ!?」

 

久し振りすぎて、慌ててしまった。

こうもスキンシップが過激だと、そろそろアイツが---

 

「落ち込んでいると思えば--- 何やってんのよ、アンタラは!?」

 

愛香が飛び降りてきた。

それも、自分の家の2階から。

 

「別に構わないでしょう? 私は総二様の嫁ですし」

「いつお前が、そーじの嫁になったあああ!?」

 

あぁ、そうだよ。

この騒がしいが、懐かしい光景。

 

「そーじも何か、ツッコミなさいよ!?」

「別にスルーしても大丈夫ですから!」

「お前ら… どっちなんだよ!?」

 

これを見ていると、少しだけ安心できる。

これなら、学校も大丈夫かもな。

 

☆☆☆

 

「…本気ですか!?」

 

生徒会室。

朝日に照らされた部屋だが、何処か冷たさを感じさせる。

その場にいるのは、慧理那のみ。

彼女はスマフォを通話状態にし、誰かと話し込んでいる。

 

「あなたには、少なからず恩恵は受けております。ですが、それはあまりにも急では…?」

『---』

「その条件であれば、承諾致しましょう」

 

その言葉を最後に、通話は途切れた。

慧理那は嘆息し、彼女の座高には高すぎる椅子にもたれかかる。

陽月学園の生徒会長として、責務は全うせねばならない。

その重荷は今、最大のものとなった。

 

「観束君… 私はどうすれば…」

 

虚無感にさいなまれてもなお、彼女は頼れる人に、救いを求めていた。

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