やっぱ、こうなっているよね…
「痛々しいというか… よくこれで再開できたなぁ…」
校舎のところどころに、カバーがかけられている。
恐らく、破壊された箇所を隠すためなんだろうな。
範囲も範囲だから、凄い面積になってる。
一見『お化け屋敷みたい』といわれても、仕方ないくらいだ。
(これも理事長を始めとした、陽月学園スタッフの涙ぐましい努力なのかも…)
「ひっさしぶり、いおりん---♪」
感慨にふけっていると、後ろから思いっ切り叩かれた。
ヒリヒリ痛む頭を抑えながら振り向くと…
「…何でだろう、数日振りなのに。スッゴク懐かしい気がする」
「何寝ぼけてのよ」
「そうそう」
とやかく言われながらも、私は校門へと近付いた。
そしたら、その辺りで何やら騒がしい。
「…?」
「多分、アレよアレ」
「あぁ---」
私には分からないが、2人には見当がついているみたい。
「ま、行けばわかるよ」
まだ?マークがついていたが、取り敢えずついていくしかないか。
更に近付き、声もハッキリと聞こえてきた。
というか、この声って---
「何密着してんの!? これ見よがしにアピールしちゃって!」
「これは愛香さんにはできないでしょう? 精々、そこで歯ぎしりしてなさい!!」
「はぁ!? ふざけんなっての。再教育してあげるから、こっちに来なさい!」
必死に怒っている女生徒と、アッカンべーとした女生徒。
その中心は、少々困り顔な男子生徒。
これはもう、間違いない。
(何で、あんたらが…?)
朝だってのに、眩暈がしてきた。
もう保健室へ行こうかな。
それとも、他人のふりして逃げようか。
「この時間になると、いっつも見られるよ♪」
「今じゃ、この学園の名物なんだ。いおりんは朝早く登校するから、知らなかったでしょ?」
…うん。
知らなかったし、知りたくもなかったよ。
どうでもいい情報、ありがとね…
「(さぁて、見なかった事にしてさっさと---)」
「あ、伊織先輩、助けてください!!」
何やってんのよ、観束君---!?
お蔭で、選択肢がなくなったじゃない。
「…知り合い?」
「取り敢えず、指名されてるし。行ってみれば?」
ただでさえ、頭が痛いってのに…
でも無視はできないし、行きますか。
本当に、渋々といった感じで歩き出す。
しかも、私の周りは引いている感じで、誰も寄り付かなくなったし。
「…むぅ」
「先輩、コイツに一言言ってやってくださいよ!? いっつもアタシのそーじを奪って!!」
何というか、もう…
全く、彼女達は子供ね~
それだけ、観束君が好きって裏返しでもあるけど…
「そんなに所有権を主張するなんて。もしかして、襲っちゃった?」
その言葉に、周囲は凍りついてしまった。
…あれ、変なこと言った?
「ななな…」
「顔に似合わず、結構大胆」
クラスメイトも、もうボーゼン。
「何もせずにに主張するのはどうかと思うわよ。それだけ大切なら、そのくらいの覚悟は必要だと思う」
「えっと、それって…///」
寧ろ、それすら容認できないのならば、始めから主張するなっての。
「『アタシのそーじ』って言うなら、我慢も大切。もしそうなら、いつかは津辺さんのもとに戻ってくる。少しは彼を信じてあげても、良いんじゃない?」
津辺さんの肩を軽く叩き、私はさっさとこの場を去る。
ほんっと、どうでもいいから抜け出したかった。
「ちょっと、収拾はついたの!?」
「待ってよ、いおりん~」
☆☆☆
「…凄いわね、先輩」
「えぇ、私とは別ベクトルに進んでいます」
放心した観束君を放っておきながら、彼女達はそれぞれ感想をもらしていた。
それは伊織に対して、とある変なものを植え付けた結果となった。
だが、それを当人が知ることがあるのか…?
☆☆☆
「ぇ~… それでは---」
(あれ? 足立先生じゃない?)
あんな事態はあったが、それでも日常は変化しない。
折角、授業が減ると思ったんだけれどなぁ。
それでも、幾らかは変化があるみたい。
彼の代わりに、別のクラスを担当していた先生が教壇に立っていた。
「足立先生なんだが… 休暇届を出されたみたいでな。しばらくは、私が担当してもらう」
その先生の報告に、生徒は喚起した。
何しろ、足立先生の授業は厳しいから。
生徒からの評価は、めちゃくちゃに低かった。
「おいおい… そんなに私が嬉しいのか?」
違います。
足立先生に比べれば、貴方の方がマシであるだけです。
その事実、果たして告げて良いモノか…
「だからと言って、授業のペースは下げんぞ。さて---」
そんなこんなで、授業は普段通り進んだ。
僅かながらに、ズレを孕みながら。
まぁ、そんな事どうでもいいけれど。
放課後になったら、部室に顔を出しますか。
多分、皆も同じ気持ちだろうしね。
「---ぁ」
襲撃された時に、想定すべきだったか。
少なくとも、複数の教室が爆破された。
その事実は、確実に私達の生活を崩されたと。
「酷い有り様ね…」
見事に、ツインテール部は破壊されていた。
部室のそばに、焼け焦げた立札が転がってた。
それが余計、悲惨さを物語らせていた。
(何で、こんな辺鄙なところを…?)
そう考えていたせいで、誰かが来ることに気付かなかった。
「やはり、お前も来ていたか」
「桜川先生…」
そっか、顧問だったよね。
「襲撃した部隊については、分からず仕舞いだ。どうやら、裏で手廻していたらしい」
「そうですか…」
ただのテロリストではないとは、思っていたが…
これは、後々響きそう。
「それにしても、何故ここを爆破したんだか… 彼等の目的が明白でない以上、私達が知ることではないがな」
(もしかして彼等は)
そう考えたとき、スマフォが振動した。
それに気付いて取ってみれば、『アドレシェンツァに集まって』とチャットが。
もしかしなくても…?
「にょわっ!?」
今度は違うバイブレーションが。
画面には、『観束総二』と表示していた。
彼からとは、珍しいこともあるもんだ。
とにかく、出なかったら不味いわ。
「はい---」
『助けてください、大至急!! でないと、俺---』
なんとなく、展開は読めた。
別に放っておいても構わないけれどねぇ。
それはそれで、観束君の信頼を裏切るし。
「気は進まないけれど、行きますか…」
「では、私はお嬢様の護衛に戻ろう」
ここで桜川先生と別れ、私は急いで向かった。
☆☆☆
「今回の作戦は成功。これで、ツインテイルズの活動は大幅に制限できたはず…」
「成る程。あれは、お前が内側から引き起こしたもんだったか」
廃工場。
そこは、伊織達ポニーテールのツインテイルズが拠点としていた場所でもある。
ただし、今回は基地へは入らず、錆びた鉄柱にもたれかかる。
リンはそこで、スマフォの画面を見ながら、静かに呟いた。
「足立先生--- どこでウチを嗅ぎ付けたんで?」
それを遮るかのように、彼は割り込んできた。
リンからは若干見えにくいが、声からして誰かはわかる。
そして、彼女は苛立っていた。
気配を無くした上で移動していたはずが、まさか…
「それはどうでも良いこった。それよりも、まだお前には裏がいるだろう?」
「ツインテイルズは予想以上に働いた。これでは、彼等の分も減ってしまうからな。だからこそ、彼女達にチョーカーを付ける必要があったんや」
恐らく、彼には全て筒抜けであった。
そう予測した彼女は、
それは別に言っても構わないという理由が大きいが、別の根拠も存在する。
「随分とおしゃべりだな。まぁ、強迫する手間は省けて助かったが」
予想外な反応に、肩をすくめる足立。
相変わらず、薄気味悪さを浮かばせたままだ。
「さて、俺をどうする? 俺を殺したとしても、既に情報は筒抜けだ。お前には何のメリットがないってこった」
そうして高らかに嗤う足立に、リンは動いた。
右拳に力が入り、認証コードを発動させ---
「…?」
なかった。
確かに口はそれを唱えようとはしていた。
だが、それは形とはならなかったのだ。
「喉元まで出おったけど、倒すにはアカンわ。お前では、小さすぎて手柄にならん」
「なっ…!?」
ガシガシと掻きつつ、リンは吐き捨てた。
そしてそのまま、彼女は去ろうとしている。
「待て待て待て!! 俺を放っておいて良いのかよ!?」
「戦って損するんは、ウチの方や」