Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.81【願いたくない再開】

熱い…

周りは炎で囲まれていたっけ。

でも、冷たい。

私は今、地面にうつ伏せになっているからか。

…何で、こんなことを考えているの?

 

「まだだ。君は僕を、失望させる気かい?」

 

---そうだ、私は。

起き上がらなきゃ。

でも、体に力が入らない。

それに、頭がボーっとして…

 

「うおおおおっ!!」

「このっ…!?」

「つ、強い!?」

 

遠くからでも、ハッキリと聞こえてくる。

テイルギアで拡張されているからか。

ツインテイルズも、頑張っているんだから。

 

「でも無理か。その体じゃ」

 

視界が上手く効かない。

それでも無理に動かしてみる。

横の地面には、異なる色で染められている。

地面の茶色や、草の緑色とは違う。

周りを照らす炎よりも、黒い。

 

(これは、なに…!?)

 

ここでようやく、痛みが襲い来る。

それに何とか耐えながらも、意識は飛ばされないようにした。

 

(左肩が、熱い!?)

 

炎で焼かれるような痛み。

それに、傷口を広げられるかのような痛みが追い打ちをかける。

 

「さぁ、立ってくれ。さもなければ---」

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

(メール? 珍しいわね…)

 

そう思いながらもポケットからスマフォを取り出す。

最近になって、ようやく通話アプリを使いだした。

あのメールでのもどかしさから、やっと抜け出したからねぇ。

でもって、メールで来ることは殆ど無くなったわけ。

 

(また、メルマガ登録の類かしら…)

 

内容を確認してみると、差出人がメールアドレスだけ。

これって、電話帳に登録していない人からよね…

 

(でも、直接アプリで登録している場合もあるし…)

 

取り敢えず、スルーは不味い。

疑いを持ちつつ、メールを開封してみる。

 

『今日の夜、○○山中で待っている』

 

これだけ。

…これだけえええっ!?

 

(なんというか、その…)

 

あまりにもそっけなさすぎ。

送り主も分からない以上、どうしようもない。

やっぱり、スルーすべきだったか…

 

「どした、いおりん?」

「んにゃ、何でも…」

 

でも、削除するには…

 

「急がないと、間に合わないよ~?」

「ゴメンゴメン!!」

 

もう、スルーしていっか。

そう思って、ポケットに入れ直した。

 

 

 

 

『メールは、もう読んでくれたかい?』

「---」

 

…で、これだ。

 

『夜になったのに、一向に来ないからね。こうして、連絡したわけだ』

「はぁ…」

 

これは、悪質なストーカーだわ。

最も、私のメールアドレスを知っていた時点で気付くべきだったけれど。

 

『それよりも---』

 

それよりも、凄く気になっている。

それは…

 

「あの、どちら様で…?」

『…え?』

 

電話主が誰か、ってこと。

私は思いっ切り忘れた(かもしれない)。

 

『いや、冗談で---』

「本当にすみません」

『嘘だろ…』

 

男性が話しかけているのはわかる。

だけれど、その中で心当たりがあるのは…?

 

「…誰だっけかな?」

『…いかに僕が大事にされていないかが、よくわかったよ』

 

いかん。

相手を怒らせてしまったか。

 

「すみませんでした。すぐに思い出しますので---」

 

何とかして、謝ろう。

そう、思っていた。

けれど、それができなかった。

 

「…あ?」

 

さっきまで、繁華街にいたはず。

なのに、急に暗くなった。

まだ、目がそれに追いついていない。

 

(寝ぼけたのかな…?)

 

そう思って、瞼をこする。

 

「やれやれ。あの返答では来ないと思ってね。強硬手段を使った」

 

声が聞こえた。

方角からして、私の正面かな。

でも、真っ暗闇であることに変わりない。

 

「あの、これは一体---」

 

その時、背後から誰かが近づいてきた。

と同時に腕を抑えられ、肩に体重をかけられた。

 

「まったく… 何で貴女が」

「えっ!?」

 

その声は、全く聞き覚えがない。

淡々と話してはいるが、所々に怒気が孕んでいる。

 

「それ以上は止めておけ、"ウィッシュ"」

「…了解」

 

これ以上の痛みを、感じない。

彼女が途中で、加減してくれたからか…

正面から来た人は、私の顎を掴み、上げる。

 

 

「これで、分かってくれるだろ?」

「---ぁ」

 

相手の顔を、マジマジと見てみる。

これで私は、ようやく誰かわかった。

ほんっと、素で忘れていて、ごめんなさい。

 

「"ユウ"、さん…?」

 

私が出した()()に、彼はようやく笑顔になった(気がする)。

 

「僕がこれ程のヒントを出して、ようやっとか」

「こんな女に、何故執着するのです?」

 

うん。

私が悪かったから。

精神的なダメージを、追い打ちでかけないでほしい。

 

「彼女は、僕にとっての"お姫様"だからさ。そして、アルティメギルにとっても、必要不可欠な部品(パーツ)となる」

 

部品(パーツ)…?

色々と問い詰めたいことはある。

けれど、この姿勢は…

 

「あの、そろそろ解いてほしいです… あ、足が」

「貴女が言うことではない!!」

 

座らされた際に、正座させられたから。

慣れていない私にとっては、苦痛でしかない。

地面が直接当たるから、なおさらだよ。

あぁ、砂利が…

 

「だが、いつまでもこのままではよくはない。開放してくれ」

「---」

 

ユウがそう優しく諭すと、彼女は渋々開放してくれた。

押さえつけられた時についた土埃を払いつつ、立ち上がる。

 

「さて--- 僕が君を呼んだ理由、わかるかい?」

「…わからない」

 

わからないし、知りたくない。

私はまだ、何かを知るべきでもないかもしれない。

 

「簡単に言えば、僕と付き合ってほしい。友人としてではなく、恋人として」

 

だけれど、わかっていた。

そんなきがする。

 

「私と貴方は、友達としては最高かもしれない。けれど---」

 

けれど、違う。

私を思ってくれている人は別にいる。

 

「貴方を、恋人としては、見れない」

 

ここでハッキリと示さなきゃ。

私は、後悔する。

 

「---そうか」

 

彼は首をうなだれ、すごすごと去っていく。

でも、ある程度の距離を取った後、急に振り返った。

 

「では、力尽くでいくしかない」

 

その時の彼の顔は、怒っていた。

暗い上に距離があったけれど、それでもわかるくらいに。

いや、そうだとわかったのはそのオーラが押し寄せたからかな。

 

「くっ…」

 

同時に暴風も押し寄せて来るから、吹っ飛ばされないようにする。

でも、徐々に後ろへ押されてる…!

 

「あぁなった時の彼は、もう止められない。私でさえもね」

 

そんな様子を、ウィッシュは冷めた目で見てた。

こんな時でも、冷静ね。

 

「(なんで、私を見てくれないの?)」

「…?」

 

暴風で、彼女が何を言ったのかは聞こえない。

でも、悲しげな表情をしていたことは記憶している。

 

「どうして、私を---」

「言ったはずだ。私のお姫様だと。僕には、貴女が必要なんだ!!」

 

あぁもう、言わせておけば…

 

「しばらく会わない間に、随分とキザったらしいわね!! 少なくとも私は、そういう男は嫌いよ!!」

 

私は右手に光る、テイルブレスをかざす。

ここまで来ると、もう直接フるしかない。

 

「そういうことなら、仕方ない。はぁ…」

 

私の言い分に納得してくれたのか?

でも、彼にそんなそぶりは見えない。

むしろ、右手に剣を取って、臨戦態勢に---

 

(臨戦態勢?!)

 

ちょっと待って。

てことは、本気で…?

 

「本気で行かせてもらうよ---!!」

 

一瞬で間合いを詰め、私へ切りかかる。

寸でのところで、躱せたけれど。

 

「なんで、って!?」

 

何で切りかかるか、一瞬疑問に思った。

けれど、確かに彼は言ったじゃない!!

 

『彼女は、僕にとっての"お姫様"だからさ。そして、アルティメギルにとっても、必要不可欠な部品(パーツ)となる』

 

---まさか!?

 

「そうさ。君にこの世界を教えたのは、僕。ならば、薄々でも正体は分かっているはず」

 

その瞬間、彼は炎に包まれた。

これが普通の人間なら、私はあわてふためくかもしれない。

でも。

 

「僕は"怨み"のエレメリアン。君に素質があると思って、ここまで来させたんだ」

 

禍々しいまでの雰囲気。

殺気に混じって、狂気をも臭わせる。

 

「意地でも、僕の物にするよ」

「…」

 

やっぱり、エレメリアンか。

こんな形での再会は、私は望んでいない。

 

「それで、コードネームは"ユウ"ね。少しばかり、ひねりがないと思うよ?」

「これでも、頑張って作ったんだけれど…」

 

それでも、隙は見せてはくれない。

私が動くのを待っている?

 

「テイルギアを纏わないのかい?」

「貴方はその方が好みなの?」

 

そう軽口で話す。

けれど実際には、テイルギア無しで勝てるほど弱くない。

これは本気でかかる必要があるなぁ。

 

「テイルオン!!」

「さぁ、始めよう!!」

 

テイルブレスに輝きが増すと共に、彼は剣を構えながら突っ込んでくる。

剣が私に当たる直前に、ハンマーで受け止める。

 

「流石は、重力の戦士。そう簡単には吹っ飛ばないか」

「伊達に、死地を潜り抜けては、いませんから!!」

 

押されそう…

ユウって、こんなに強かったんだ!!

反重力を活用して、ここは何とか乗り切ろう。

 

「それにしても、ハンマーが出るのは久し振りだね」

「最近は、素手での殴り合いだったから…」

 

ははは…

最近の私の行動がバレテル。

まぁ、マスコミにも映っていたみたいだし。

 

「感覚を取り戻すわ!!」

「僕は、練習台ってことかな?」

 

口調とは裏腹に、私への攻撃は一切手を緩めはしない。

当たれば不味いけれど、きっとそれだけではないはず…

 

(ハンマーは絶対に離さない!!)

 

そう、本能が告げていた。

 

「ひっ!?」

 

今度は足元に狙いを定めてきた。

バック転でかわそうと思ったけれど、中途半端にできなかった。

う~ん、テイルギアのバックアップがあっても駄目か。

 

(普段から運動はしているけれどな…)

 

その僅かな隙を、彼は見逃すわけはない。

いつの間にか、剣は銃へ置き換わっていた。

しかも、銃口は私へ向けていた。

 

「げっ」

 

地面がえぐられるのと、私が逃げるのはほぼ誤差は無かった。

コンマ数秒でも遅れていれば、ハチの巣になってたろうな。

 

(逃げなきゃ---!!)

 

彼との距離を取る必要がある。

だからこそ、私はそう行動した。

 

(森へ消えたか。木々を盾にしたみたいだが---)

 

軽く息切れしている。

あの銃の威力は厄介でしかない。

今は時間稼ぎをして、策を---

 

「かくれんぼのつもりかい?」

 

ユウは乱射し始める。

でも、乱反射が起こるような威力が弱いモノじゃない。

太い木々を、いとも簡単に破壊していく。

 

(探す努力すらしないの!?)

 

またも私は、逃げ回り続けることとなる。

これじゃ、圧倒的に不利じゃない!?

 

「(あぐっ…!)」

「! そこか!?」

 

どうやら、かすったらしい。

声は極力抑えたはずだけれど、聞こえたか。

私のいる方向へ、銃弾の雨が通り過ぎていく。

大半は私の体に当たることはない。

でも、明らかに私へ飛んできたものは、ハンマーで弾く。

 

(このおぉ…!)

 

もう必死だった。

単体ではかすり傷だけれど、数が圧倒的。

体に、細かいダメージを蓄積させる訳にはいかない。

 

「…ふむ。これではらちが明かない、か」

 

銃撃が止んだ…?

彼は銃を収めた。

かと思えば、再び腰へ手を回す。

まるで、剣を抜くかのように…

 

「先ずは一撃。受けてもらうか!!」

 

抜かれたのは、蝋燭のような西洋剣。

さっきは銃だったのに、どんなマジックよ?

そんな心のツッコミは、ガン無視。

まるで、居合切りのように抜かれた剣。

そこから、三日月状のエネルギー波が飛んできた。

 

「ちょ、聞いてないけどー!?」

 

始めはハンマーで受け止めたけれど、そのパワーに耐えきれはしなかった。

ハンマーを弾き飛ばされ、私は宙を舞った。

 

「ガッ!?」

 

地面への強い衝撃が、私を引き戻した。

そっか、私は---

 

「まだ…」

 

でも、どうする?

何かしらの奇策がない限り、勝てっこない。

ゆっくりと立ち上がりながら、そんな事を考えている。

 

(もう少し、試すか)

 

完全に立ったところへ、剣撃が襲う。

両手でガードはするが、厳しい。

手がしびれる。

ユウの動きが見えない。

 

(それでも、耐えなきゃ!!)

 

耐えて耐えて、耐え抜く。

きっとその先に、活路を見いだせるはず!!

 

「ペプシ?!」

 

でも、先に腕に限界が来た。

腕のガードを弾かれ、体の前面に空きができた。

そこへ、彼の袈裟切りに襲われた。

思ったよりも深く入り込んで、痛い。

更に、横一線を仕掛け、私を再び弾き飛ばす。

 

(思った以上に痛い。おまけに熱い!?)

 

やっぱり、何かある。

ただの西洋剣じゃないとは、思っていたけれど…

追加効果かも。

 

「やっぱり、テイルギアは固いなぁ。いつかの、リヴァイアギルディの高速連撃に耐えられたわけだ」

 

ユウは刃こぼれのない西洋剣を眺めながら、そう呟いた。

完全に、私を見下してる…!

 

「でも、それだけじゃない。君には、別の力があるはずだ」

 

別の力?

そんなの、私が知りたいんですが…

 

(もしかして、属性玉変換機構(エレメリーション)の事かな?)

 

考えつくとすれば、これしかない。

まだ彼の前では、見せてはいない。

それに、属性玉(エレメーラオーブ)によって効果が違う。

言ってみれば、私も知らないビックリ箱のみたいなもの。

 

「だったら、見せてあげようじゃない? その力!!」

"属性玉変換機構(エレメリーション)双子属性(ツインズ)"

 

形勢逆転を生み出す、奇跡の力。

その中で、最も私が使いやすいものを選び出した。

 

「その武器… テイルレッドと同様のものか」

「悪い? でも、ハンマーの次に使いやすいからね!!」

 

それに、ユウの西洋剣に対処できるとすれば、これしかない。

ブルーのウェイブランスだと、柄の長さでハンマーとの接触は避けられない。

イエローのヴォルティックブラスターだと、ハッキリとめんどくさい。

それなら、重力砲(グラビティ・キャノン)の方が早い。

ホワイトのディメンションクローは、使った事がない。

 

(正直に言えば、消去法なのよね…)

 

やれやれといった感じで、リンが呆れていた。

そんなイメージが、頭をよぎる。

 

「しかし、ハンマーとの2刀流とはね。それは無謀と呼ぶんだ!!」

 

剣をハンマーで受け流し、ブレイザーブレイドで切り付ける。

でも、ユウはそんな甘い動きはしてくれない。

躱されては受け、躱されての受けを繰り返し。

 

(普段はハンマーを両手で持ってたっけ。即興で肩手持ちはきつかったか…)

 

テイルギアの中で、最大の重量を誇る武器。

ツインテイルズでも持ち上げることは不可能らしい。

(リンが言うには)

 

「遅い」

 

下からの振り上げは、私の右手を当てた。

その衝撃はハンマーをこぼす。

続けざまにタックルをされ、またも吹き飛ばされる。

 

「ぐぎゅ!?」

 

突如、肩に刺さったような痛みが襲う。

そして、背中に強烈に当たったかと思うと、その反動で地面に倒れた。

 

「痛いか?」

 

痛みにこらえて、顔を上げる。

正面にいるユウ。

その手には、何も持っていない。

彼はしゃがみ込むと、私の肩に手を伸ばした。

いや、刺さっている何かに向けて、だ。

 

「ぐあああ!!」

「やはり。この程度では、僕は満足できない」

 

その何かをいじくらないでほしい。

痛みがぶり返すから…

 

「怨まないのなら、悲鳴を聞かせてくれ」

 

まるで、ユウがユウでなくなったみたい。

でもそうか、彼はエレメリアンだった。

 

(この…)

 

反撃に出たい。

でも、体が言うことを効かない。

そして、徐々に視界も効かなくなった。

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