『
トゥアールの知らせは、いつも通り。
ここまではそうだ。
でも、これがいつものじゃないと気付いていれば…
「分かった。俺も後から行く!!」
俺は外にいた。
とはいえ、買い出しではあるけれど。
先に買っておいた食材を家に持って帰らなきゃ。
『え? 何ですこれ…』
「どうした!?」
急に彼女のトーンが変化した。
『テイルグリーンが、既に交戦を開始してます。しかも、ピンチです!!』
「…チッ」
なんでこうも、先輩は先回りしている?
俺達には、何も言ってくれなかったのに…
仲間じゃないのか!?
『ブルーとイエローは基地内にて、準備完了です。先に向かわせますか?』
「いや、もうすぐ家に着く。それまで待ってろ!!」
ったく、何で先輩はこうもトラブルメーカーなんだよ!!
どういう体質なんなんだ…
「---」
「現在確認しているのは、2体のみ。うち1体がテイルグリーンと交戦しています」
「もう1体は護衛か、それとも援軍を抑えるための駒か…」
「いずれも倒すまでですわ」
ツインテイルズ基地。
そこで、トゥアールからの詳細を聞かされた。
画面には、テイルグリーンとエレメリアンが戦闘している。
でもそこには、有利な状況は無かった。
(スタジアムで見た、あのエレメリアンか…)
ダークグラスパーとは異なる、黒さをまとうツインテイルズ。
そいつと、互角に渡ったあのエレメリアンだ。
(万が一、俺が戦うとなれば---)
勝てるのか?
俺自身の、ツインテールに賭けて。
きっと、奴はそうじゃない。
もっと強い、何かを---
「聞いてるの、そーじ!?」
「うわあっ!?」
いかん、没頭していたか。
「まったく… いい? あたしとイエローが取り巻きを抑えるから、アンタはボスをお願い」
「…了解」
ズイズイと人差し指で鼻を押しながら、そう
俺には、凄まじい威圧感しか感じられなかったが…
あの時は、了承するしかなかった。
「今日も張り切って倒すわよ!!」
「愛香さんは、それだけが取り柄ですから」
「何ですってぇ~!?」
「早く行かないと、いけないのでは…?」
転送装置の前は、混雑していた。
ちゃんと、人数分あるのにな…
「ほれ、とっとと入って」
「わかったから、押さないでよ、その胸で!!」
目の前の光景を見ていると、緊急事態だってこと忘れそうだ。
(…何かを忘れて?)
その時、違和感の正体に気付いた。
さっきから重いと思ったのは、買い物袋か!!
「ゴメン、ちょっと待って!! 買い物袋を母さんに渡してから---」
「私がどうかして?」
なんつータイミングだよ。
しかも、
「頼まれてた食材、買ってきたから」
「あぁ、ありがと♪ これで何とかなるわ」
それはそれで構わない。
…けれど。
「母さん… まさかそれで店内を?」
「意外と好評だったのよ、これ。もう、明日からウチの制服にでもしちゃおうかな」
勘弁してくれよ。
いつからウチは、コスプレ喫茶になった!?
「そう言えば、総ちゃんの学校にもコスプレがあるんだっけ?」
「正確には『コスプレ部』だけどね」
それがなんだってんだ。
正直、襲撃事件で忘れたいんだが…
「総ちゃんに是非、入部させたいって。名刺もらったの」
「マジかよ…」
そう言って手渡された名刺には、ちゃんと記されていた。
所属する部活や部長の名前が。
てか、来てたのは部長かよ!?
「…あれ?」
やけに分厚いと思ったら、名刺が複数も。
ちゃんと数えたら、もう1枚あった。
「これは?」
「伊織ちゃんにも渡してくれって。一度見て、気に入ったらしいのよ」
先輩はともかく、俺に名刺を渡すとは?
よくわからん。
「戦闘が終わったら、連絡しても良いんじゃない?」
しまった。
俺達は今、向かおうとしていたんだ!!
あの戦場へ…
「兎に角、行ってくる!!」
「頑張ってね~」
俺は急かされる形で、転送装置へ飛び込んだ。
テイルブレス、ちゃんと軌道もさせなきゃ。
(伊織先輩を助けなきゃ)
帰る理由もある。
言わなきゃならないこともある。
それらを果たすためにも、俺は---
☆☆☆
「ウチが行きゃええやん、って思うやろ? それはできん相談や。何でやって? そんなん、手助けしたら、アイツのためにならんわ。それに、手助けできるほど暇かって言われたら、そうでもないんよ。森の茂みでわからんけれど、人がぎょーさんおるわ。それも、武装した奴らがな。テイルグリーンだろうがエレメリアンだろうが、戦闘が終了すれば、そのどちらかをかっさらうつもりなんやろ。ウチは知らんけど。まぁ、その人らが同グループやったらええんやけれど。見てみぃ、ウチと向かい側と斜め右、斜め左と全部が違う。絶対に同じグループなわけあらへん。こんなん、後が滅茶苦茶なるんは見え見えってわけ」
「あぁ、一気にしゃべってすまん。結局、ウチが何をしているか、っちゅう話やろ? 別にボケーっとはしてへん。けど、動きもせん。向こうに何か動きがあれば、話は別やけど。つまりは監視や。ここがアンタの見せ所や、って言う奴もおるかもしれん。けれど、ウチは意地でも動かん。まだや、まだ---」
☆☆☆
「おや、お客さんようだ」
「…ふん」
そこにいたのは、エレメリアンと人間。
そして---
「グリーン!?」
倒れていた、テイルグリーンがいた。
深く肩に剣が刺さり、動けないでいる。
「やぁ、いらっしゃい」
「アンタ… 何のつもりよ? アルティメギルは、人間に危害を加えないんでしょ!?」
そうだ。
事実、エレメリアンがあそこまで攻撃したところは見たことがない。
「抵抗しなければ、だ。やはり貧乳を有するものは、理解度もないんだな」
「なんですって…」
ブルーは、やはり『貧乳』というワードには敏感だ。
「そもそも、これだけエレメリアンを滅ぼしておいて、君たちが報いを受けないわけないだろう? 幹部たちもそろそろ痺れを切らしている」
並のエレメリアンが放つオーラじゃない。
それに、言葉の節々に威圧感を乗せている。
「こうでもしなきゃ、アルティメギルは真の意味で覚醒はしない」
「そうでしょうよ」
彼の言葉を遮るように、女性は割り込んだ。
「私達は
そうして彼女は、感情を爆発させると共に、変化した。
いや、変身と言った方が良い。
「エレメリアンにも感情がある。いいえ、人間の心から生まれた以上、人間よりも感情は高いわ。だからこそ、私達は多くの
それは、サンタ服。
しかも女性用だし。
人間態に殆ど近い、いや人間じゃないの?
スタイルも良いから、目のやり場に困る。
「えぇ?! 結局はアタシに喧嘩を売ってんのね!?」
勘違いしているぞ、ブルー。
「もういいわ。アタシがあの女をぶっ飛ばす!! イエローとレッドは奥の奴をお願い」
「「わかった(わかりましたわ)」」
ともかく、これで構図はできた。
俺はアイツを倒す---
「では、私からプレゼントをあげましょう」
急にテンションを変えてきた。
キレ気味だったのに、今度は子供に接するような明るい感じだ。
どこからか取り出したのは、プレゼント箱。
よくクリスマスで渡されるものだ。
それが空中で破裂した。
「…え?」
「嘘ですわ」
その煙から出てきたのは、意外だ。
まさか…
「リヴァイアギルディ?! クラーケギルディまで!!」
かつて、俺達が倒したはずのエレメリアンだ。
しかも、よりによって幹部。
「残念だけど、彼には--- "怨み"殿には近付けはしない」
不味い。
よりにもよって、3 on 3かよ!?
「テイルレッドは私が。後はよろしく」
そう彼女が告げると、幹部エレメリアンは前線へ動いた。
リヴァイアギルディは、テイルイエロー。
クラーケギルディは、テイルブルーへと向かう。
「邪魔なの。だから死んで」
「お前に倒されてたまるかってんだ!!」
まっすぐに拳を叩き込む。
その威力は俺を弾くほどだ。
地面を深く削って、ブレーキをかける。
「俺は仲間を助ける。だから、そこをどけ!!」
ブレイザーブレイドを取り出し、最大速度で切り付ける。
だが、それはふさがれてしまう。
「その力で? よく大それた事を」
クリスマスで飾られる、モミの木?
それに似た感じの武器を手にしている。
「出直してちょうだい」
押し返すと同時に、前蹴りで押される。
よろめいていた隙を、彼女は武器の先端で突いてくる。
ブレイザーブレイドを構え直し、滑らせて回避させた。
「へぇ。小さいのに、かなりの腕前ね」
随分と軽口なんだな。
俺は密かに、怒っていた。
「でなきゃ、ここまで生きてねぇよ」
でも、何も反論するわけにもいかない。
こちらも軽口で返す。
「そんなちっぽけなプライドじゃ、すぐに負けるわ」
今度も突きで来るのか。
だが、こんな見え見えの攻撃は---
(速ッ!?)
一瞬で間合いを詰まれた。
躱せるまでの余裕が、もうない。
横に構えていたブレイザーブレイド。
それで突くしか、咄嗟には思いつかなかった。
「だから、弱いの」
ブレイザーブレイドとモミの木。
通常ならば、俺の武器が勝つはずだ。
だが、現実は違った。
(嘘だろ…)
ブレイザーブレイドの先から砕け、その勢いは止まらない。
反射で横へ躱して、難を逃れた。
手元にあるのは、剣の意味をなさないブレイザーブレイドのみ。
「これでわかった?」
ニヤリと微笑む彼女。
確かに、武器といい動きといい。
これまでのエレメリアンとは一線を引く。
だからといって…
「いいや、まだだ!!」
諦める俺じゃない!!
☆☆☆
「わたくしなりの、おもてなしですわ!!」
イエローは全弾をリヴァイアギルディへ放つ。
しかし、彼は巨大な触手を器用に使い、全て防いでしまう。
更にその触手を伸ばし、彼女をなぎ払う。
「気持ち悪いけど… 黄泉返りは更に気持ち悪いのよ!!」
ランスで刺突を繰り返すが、クラーケギルディは華麗に躱す。
しかし、ただ躱しているだけではない。
「待ちな--- ガフッ!?」
クラーケギルディを追いかけようとする。
だが、突如地面から触手が無数に生え、彼女を貫いた。
「こんなの… あるかぁ!!」
だが、ブルーは無理矢理体を動かしてちぎった。
身体中に刺さった触手が、動く度に叩くが気にしてはいられない。
遠距離攻撃がない以上、ブルーは接近戦へ持ち込むしかない。
それを知ってのか、クラーケギルディは再び無数の触手を向けた。
(…使いたくはなかったけれど---)
"
かつて、異世界で見せた『青き悪魔』。
その再現が、今なされようとしていた。
「でりゃあああ!!」
口元にエネルギーを集中させ、一気に放つ。
その威力は触手を全て空中で焼くほどに、だ。
そして、一刀両断するがごとく地面へ叩き付ける。
しかし、そこにクラーケギルディの姿は無い。
エネルギー波は過ぎた後に、幾つもの穴が生じていた。
「まさか… 潜った!? イカなのに!?」
気付いた瞬間に、地響きが。
周りに気配を感じるが、本体は見えない。
そして、クラーケギルディは彼女の真下から、体当たりをかました。
「生意気な…」
弾き飛ばされさイエローは体制を整えられない。
リヴァイアギルディに抑えられ、身動きが取れないでいた。
それでは飽きたか、彼はテイルイエローを片手で持ち上げる。
フルアーマーである、彼女をだ。
(今更ですけど、本物のリヴァイアギルディなのかしら!?)
未だに話そうともしない。
ウィッシュの命令を、ただ忠実にこなす。
まるで、
(このような奇術、まさかエレメリアンは---)
急に離したかと思えば、腹部に強烈な痛みが。
リヴァイアギルディの触手によって、再び弾かれたのだ。
その先には、テイルブルーがいた。
「イエロー、大丈夫?」
「これは思ったよりも… 厳しいですわ」
倒れていたイエローを、ブルーは支える。
互いの背を預け、ブルーとイエローは警戒していた。
ブルーの正面にはクラーケギルディが、イエローはリヴァイアギルディがいる。
かつては逆の立場として、彼女達は撃破していた。
(アタシの槍じゃ、あの触手は防げない)
(私の武器では、貫通さえ困難ですわ)
互いの武器は長所でありながら、短所ともなっていた。
ウィッシュが作り出した存在というのも、大きい。
彼女が投げたプレゼント箱は、渡す相手の思考を読み取る。
そして、それに応じた『プレゼント』を与えるのである。
「ここは、1つ交換してみる?」
「ナイスアイデアですわ!!」
何故その思考が出なかったのか。
そう決断するや、互いの反対側へ駆ける。
「お返しよ!!」
リヴァイアギルディの触手での刺突を紙一重で避け、オーラピラーを放つ。
「不味いですわ--- なんて嘘です」
クラーケギルディの無数の触手により、テイルイエローは粉々にされた。
だが、彼女は全武装を外し、それを回避。
ホルスターには、しっかりとヴォルティックブラスターが備え付けられている。
「"エグゼキュートウェーブ"!!」
「"ヴォルティックジャッジメント・クレッセント"!!」
両者の一撃、は確実にエレメリアンを捉えた。
エレメリアンはその威力に、耐えきれないようだった。
体が白く発行して、氷が砕けたかのように消えた。
「やったわ」
「上手くできましたわね」
これで、彼女達を塞ぐ存在はない。
急ぎテイルレッドの援護へ---