「---う」
ふと、気がついた。
…今まで、何していたんだっけ?
「起きたか。随分とお寝坊さんだな」
表現とは裏腹に、皮肉が聞こえた。
そうだ、私は---
(ユウと、戦っていた!!)
寝ていたらしい。
でも、こうしちゃいられない。
そうして体を起こそうとした。
けれど、身体中に走る痛みが妨げになる。
「…ぁ…は…」
痛みが…
ろくに声も出せない。
「まったく。ずっと寝ていれば、良かったのに」
そう言って、ユウは私の見えるところまで来た。
彼はしゃがみ込み、私の頭を無理矢理掴んだ。
(痛ったたた!! 首がねじれる~)
首の可動範囲が増したんじゃ…
そうおもえるくらい、回されたきがする。
「ほら、見てみなよ。君のせいで、仲間が苦しんでいる」
ぼやけた視界で、頑張ってみた。
そこには、よく知っている姿がチラホラと。
(---ツインテイルズ!? どうして)
テイルブルー、テイルイエロー、テイルレッドの姿があった。
皆ボロボロに、だけれど諦めずに戦っていた。
「どうだい? 仲間が傷ついていく様は。まだ、見たいと思う?」
顔は見えないけれど、ユウは笑顔だ。
それも、ドス黒い笑顔で。
「君は見たくない。君だって出血多量だ。これ以上は、君自身にとって無意味。そうだろう?」
そうか。
ユウは先ず、私を完膚なきまでに叩くことで私の自信を失わせようとした。
そして応援に来たツインテイルズが敗れ行くさまを見せることで、精神的にも…
「君が降参するなら、ツインテイルズを助ける。勿論、君自身も回復させる」
私は…
私は負けていた。
「ただし--- 君とツインテイルズの
ツインテイルズでも、アルティメギルでもない。
この、私自身に!!
「…ない」
「ん?」
だから、今度は…
私が何とかして見せる!!
「させない!!」
ユウの拘束を振り払い、よろめきながらも立つ。
もうさっきから肩に刺さった西洋剣が、邪魔で邪魔で…
「ぐあああっ!!」
無理矢理引っこ抜く。
傷口が広がるとか、懸念は色々とあった。
でもその時は、全く念頭に置いてなかった。
「…君って
傷口がジクジクと痛む。
けれど地面へ落ちた金属音が、証明する。
もう、自由に戦えると。
「確かに私は、弱いよ。ツインテイルズに迷惑はかけてきた」
だからこそ、一人で背負ってきた。
名声を、リスクを。
それがツインテイルズを、観束君達を守るためになる。
そう思って、今までがむしゃらにやってきた。
「でもそうじゃない。私がそう思い込んでいただけ」
何でも一人で。
それは逆に、孤独になるってことだ。
「(---馬鹿だね、私)」
初めから、頼るべきだったのよ。
変な強情で、突っ走って…
「ユウ。悪いけど、貴方の要求は飲めない」
「…仕方ないか」
彼等はいつだって、私を信じてくれていた。
『長瀬伊織』として、『テイルグリーン』として。
だから、私は---
「今生の別れだ、テイルグリーン!!」
「しつこい男には、本気でビンタが必要ね(怒)!!」
戦う。
ツインテイルズの一人、テイルグリーンとして。
☆☆☆
やっべぇ…
「降伏してね、テイルレッド」
あの女の子、滅茶苦茶に強い。
ブレイザーブレイドを簡単に壊した。
プレゼント箱で、自在に召喚できる。
このままじゃ、終わりだ。
「レッド!!」
その声と共に、何かが通っていった。
それは彼女へと飛んでいくが、紙一重でかわされてしまう。
「なかなか崩れないわね、貧乳の壁は」
「アタシがそう易々と倒れてたまるか!! それと貧乳うるさい!!」
ブルー、イエローも!!
あのもどきを倒せたのか。
「遅ればせながら」
駆け寄ってきたイエローの装甲は、全てはがれていた。
それだけ、苦戦を強いられていたのか。
「レッド、もう大丈夫よ。後はアタシが」
俺の前に立っていた。
でも、そうじゃない。
「悪い。ここは俺の見せ場なんだ」
「ですが---」
イエローは反論を持ち掛けた。
けれど、それをおとなしく聞く俺ではない。
「お前らが自力で何とかしたんなら、俺もそうしなきゃ」
よろめく体をたたき、ブルーの前に出る。
まだ、俺は本気を出せてないんだ…
「じゃあ、サクっとね」
彼女は最終宣告かのようにつぶやき、ツリーを再び突き出した。
今度はテイルギア---
でも、その動作は遅すぎる。
『!?』
彼女も、ブルーもイエローもわからない。
ツリーが俺に当たる直前、姿をかき消したのだから。
「な… かくれんぼのつもり!?」
かくれんぼ?
違うな、鬼ごっこだ!!
「ちょこまかと… うわっ!!」
彼女の周囲を猛スピードで走っているんだ。
彼女には、暴風が吹き荒れているようにしか見えない。
「これってまさか…」
「そのまさかですわ」
彼女には見えてない。
だが、別の衝撃で知覚した。
「…猫、かぶってたの?」
「出すタイミングが無かった、それだけさ」
彼女には見えないが、俺の姿は変化している。
強化された、このツインテールの拳が効くか!!
「…くのっ!!」
体をねじり、ツリーを横へ振った。
だが、そんな攻撃は効きはしない。
「その姿… 久し振りな気がする」
「まぁな。これは俺の切り札だからな」
それだけ、俺達が強い。
だが、これは違う。
俺のツインテール属性が、勝負のカギとなる。
今だって、制限時間との戦いをしているんだ。
「私も、切り札見せて、あげる」
瞬間、周囲を煙が出てきた。
目くらましのつもりか?
(そろそろ、フォーラーチェインへ---)
俺も瞬間で結び方を変え、再び翻弄させる。
でも、なんだこの違和感は!?
(体にまとわりつく?)
というか、寒い。
屋外だってのに、クーラーが効きすぎなくらいだ。
「何なのよ、これ?!」
水蒸気が、冷たい…
「今更遅いのよ♪」
そのすぐそばに、彼女はいた。
フォーラーチェインに、追いついたのか!?
「おごっごごごご」
頭を掴まれ、地面へ叩かれた。
そして地面を引きずる形で、じわじわと。
「いくら早くとも、私は追いつけるの」
…チートかよ。
何か、裏があるはずだ。
顔がヒリヒリするぜ…
(思考も、寒さで駄目になってきた…)
もう、まともな事考えられねぇ。
そろそろ限界が---
「ぐっ、ぐああああ!!」
「へっ?」
ついに、
俺の力の源であるツインテール属性が、逆流を始めた。
それは俺自身に限らず、押さえつけていた彼女をも襲った。
「不味いですわ。助けないと!!」
近寄ろうとしても、その本流に抗えはしない。
彼女は先程の場所から、ほんの少し近付けただけ。
(くっそおおお!!)
こんな形で、救われるなんて…
☆☆☆
(大丈夫、きっと)
突如、雷がずっとなっているような様子が見えた。
でも、ツインテイルズなら何とかなる。
私は私の、できることをするんだ。
「ふふふ…」
だから、今はキモ男の相手をしなきゃ!!
(何ニヤついているんだか…)
今度は、接近戦へは持ち込ませない。
ユウもそれに合わせてきたのか、銃で反抗してくる。
遮蔽物が殆どないから、躱すのに精一杯。
向こうの威力は、
(参った参った)
近付けたとしても、また剣で弾かれるだろうし…
だったら、無理矢理に---
「む」
当然、球は大きくなる。
それはつまり、引力も増すわけだから…
「強引に来たか」
ユウは引っ張られてくる。
地面に足を固定しようと、逃れはしない。
お縄、頂戴致す!!
「なら、お望みどうりとしよう」
ユウは銃をしまい、剣を取り出そうとする。
その瞬間、絶対的な隙はできる。
戻すときに、両手は完全に使えなくなるからね。
「そこだ!!」
彼の地面が突如、割れた。
そこから何者かが飛び出し。アッパーを決めた。
「グリーン、貴様…」
どのみち、あれじゃ彼の姿は見えなかった。
それならば、おとりとして使おうと思ったの。
体にひねりを加え、蹴りでユウを飛ばした。
まぁ、蹴るついでに重力操作で重くさせたけれど。
「ハンマー、もう一度お願い!」
そう言って、再びフォースリボンへ触れる。
一度出したから、もう出ないとは思う。
けれど、それがある場所に行く時間もない。
これは一種の賭けでもあった。
(マジか…)
すると、手元が光った。
それが収まると共に、ハンマーへと収縮された。
…意外と便利ね、これ。
「チィ」
舌打ちと同時に、銃で乱射し始める。
そのままじゃ大ダメージだけれど、今は盾がある。
ハンマーの角度を調整することで、上手いこと流す。
(でもこれじゃ、さっきと同じだ)
また、剣で防がれてしまう。
そして、無限ループへつながる。
だったら---
"
私は、仲間の強さを信じる!!
私が選ぶのは、これだ!!
「ブレイザーブレイド… あの"オチビちゃん"のか」
流石に両手では持てない。
ハンマーを左手に持ち替え、右手に握る。
少し手間取ったけれど、何とかなる。
そうしている間に、間合いが詰めてきた。
「そんな即席の力で、僕には勝てない!!」
大振りで来た。
やはり、ユウの右手には剣が握られていた。
その剣で、私は斬られてしまう。
「即席かどうか…」
ハンマーで剣を受け止めた。
その剣では、ハンマーを切ることはできない。
そして空いた右手に、ブレイザーブレイドを突き立てる。
それはうまいこと、腹部に深く届いた。
「試してやる!!」
"
その認証コードは、終幕を意味していた。
ブレイザーブレイドは剣が真ん中が割れ、炎が噴き出す。
その炎は、彼の体を内外へ移す。
それに巻き込まれまいと、私は少し下がる。
「グラビティ---」
ハンマーを再び両手で構え、一撃を込める。
「ブレイカー---ッ!!」
そして、彼を上斜めから叩いた。
それだけにあらず、再び逆側からも叩く。
最後に体をひねり、ブレイザーブレイドを押し出す形で真横へ叩く。
その3回目、私はスンナリとできなかった。。
「見事、だ」
ハンマーの面とそれを支える手を、抑えられていた。
他ならぬ、ユウに。
手が抑えられているから、離れられない。
「だが、忘れるな。君は---」
彼の言葉は、当時の私には理解できなかった。
おまけに、その時間すら与えられなかった。
(それ、ないでしょ---)
結果。
ユウの爆発に、私は巻き込まれた。
☆☆☆
フォーラーチェインを強制解除され、俺は動けない。
それは、彼女も同類だ。
「まさか、隠し玉がまだあったなんて…」
それはない。
システム上の不都合って奴だ。
だが幸いにも、変身は解けていない。
「楽しいわね…」
ツリーを杖に、彼女はゆっくりと立ち上がる。
不味い、俺はまだ時間がかかるぞ…!
「あれは---」
その時、爆発が見えた。
「"怨み"殿!?」
動揺している。
なら、今がチャンスだ。
「グランドブレイザー!!」
まだ痛む体を、無理矢理起こす。
それと同時にブレイザーブレイドを取り出し、一気に
威力をいつもより増しで当てようとしたが、彼女に当たることはなかった。
しかし、衣服を燃やすくらいはできた。
「(これで、何とか…)」
息もたえだえ、疲労感はありまくり。
だけれど、勝てた。
顔を片手で隠す彼女。
「こんの…」
ふらりと体を揺らすと、凄まじい形相でにらまれた。
「よくも、私の愛しい人を…」
その顔は、酷く恐ろしい。
ブルーですら、慄いたほどに。
彼女はどこからか、白い袋を取り出した。
よく見る、サンタのプレゼント箱を入れるものだ。
(何のつもりだ?)
袋の口を開ける。
すると、その中へ勢い良く入り込む。
見れば、先程の爆発の地点から何かが出ている。
入り込むそれは、
「絶対に… 絶対に、復習してやる!!」
それが入りきった時、彼女は袋の口を閉じた。
重くなった袋を担ぎ、凄まじい跳躍でこの場を去った。
「何なのでしょうか?」
「恐ろしい程の殺気… タダモノじゃない」
これから先、とんでもないことになりそうだ。