Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.83【情けないよ】

「---う」

 

ふと、気がついた。

…今まで、何していたんだっけ?

 

「起きたか。随分とお寝坊さんだな」

 

表現とは裏腹に、皮肉が聞こえた。

そうだ、私は---

 

(ユウと、戦っていた!!)

 

寝ていたらしい。

でも、こうしちゃいられない。

そうして体を起こそうとした。

けれど、身体中に走る痛みが妨げになる。

 

「…ぁ…は…」

 

痛みが…

ろくに声も出せない。

 

「まったく。ずっと寝ていれば、良かったのに」

 

そう言って、ユウは私の見えるところまで来た。

彼はしゃがみ込み、私の頭を無理矢理掴んだ。

 

(痛ったたた!! 首がねじれる~)

 

首の可動範囲が増したんじゃ…

そうおもえるくらい、回されたきがする。

 

「ほら、見てみなよ。君のせいで、仲間が苦しんでいる」

 

ぼやけた視界で、頑張ってみた。

そこには、よく知っている姿がチラホラと。

 

(---ツインテイルズ!? どうして)

 

テイルブルー、テイルイエロー、テイルレッドの姿があった。

皆ボロボロに、だけれど諦めずに戦っていた。

 

「どうだい? 仲間が傷ついていく様は。まだ、見たいと思う?」

 

顔は見えないけれど、ユウは笑顔だ。

それも、ドス黒い笑顔で。

 

「君は見たくない。君だって出血多量だ。これ以上は、君自身にとって無意味。そうだろう?」

 

そうか。

ユウは先ず、私を完膚なきまでに叩くことで私の自信を失わせようとした。

そして応援に来たツインテイルズが敗れ行くさまを見せることで、精神的にも…

 

「君が降参するなら、ツインテイルズを助ける。勿論、君自身も回復させる」

 

私は…

私は負けていた。

 

「ただし--- 君とツインテイルズの属性力(エレメーラ)は奪うけれど」

 

ツインテイルズでも、アルティメギルでもない。

この、私自身に!!

 

「…ない」

「ん?」

 

だから、今度は…

私が何とかして見せる!!

 

「させない!!」

 

ユウの拘束を振り払い、よろめきながらも立つ。

もうさっきから肩に刺さった西洋剣が、邪魔で邪魔で…

 

「ぐあああっ!!」

 

無理矢理引っこ抜く。

傷口が広がるとか、懸念は色々とあった。

でもその時は、全く念頭に置いてなかった。

 

「…君って()は」

 

傷口がジクジクと痛む。

けれど地面へ落ちた金属音が、証明する。

もう、自由に戦えると。

 

「確かに私は、弱いよ。ツインテイルズに迷惑はかけてきた」

 

だからこそ、一人で背負ってきた。

名声を、リスクを。

それがツインテイルズを、観束君達を守るためになる。

そう思って、今までがむしゃらにやってきた。

 

「でもそうじゃない。私がそう思い込んでいただけ」

 

何でも一人で。

それは逆に、孤独になるってことだ。

 

「(---馬鹿だね、私)」

 

初めから、頼るべきだったのよ。

変な強情で、突っ走って…

 

「ユウ。悪いけど、貴方の要求は飲めない」

「…仕方ないか」

 

彼等はいつだって、私を信じてくれていた。

『長瀬伊織』として、『テイルグリーン』として。

だから、私は---

 

「今生の別れだ、テイルグリーン!!」

「しつこい男には、本気でビンタが必要ね(怒)!!」

 

戦う。

ツインテイルズの一人、テイルグリーンとして。

 

☆☆☆

 

やっべぇ…

 

「降伏してね、テイルレッド」

 

あの女の子、滅茶苦茶に強い。

ブレイザーブレイドを簡単に壊した。

プレゼント箱で、自在に召喚できる。

このままじゃ、終わりだ。

 

「レッド!!」

 

その声と共に、何かが通っていった。

それは彼女へと飛んでいくが、紙一重でかわされてしまう。

 

「なかなか崩れないわね、貧乳の壁は」

「アタシがそう易々と倒れてたまるか!! それと貧乳うるさい!!」

 

ブルー、イエローも!!

あのもどきを倒せたのか。

 

「遅ればせながら」

 

駆け寄ってきたイエローの装甲は、全てはがれていた。

それだけ、苦戦を強いられていたのか。

 

「レッド、もう大丈夫よ。後はアタシが」

 

俺の前に立っていた。

でも、そうじゃない。

 

「悪い。ここは俺の見せ場なんだ」

「ですが---」

 

イエローは反論を持ち掛けた。

けれど、それをおとなしく聞く俺ではない。

 

「お前らが自力で何とかしたんなら、俺もそうしなきゃ」

 

よろめく体をたたき、ブルーの前に出る。

まだ、俺は本気を出せてないんだ…

 

「じゃあ、サクっとね」

 

彼女は最終宣告かのようにつぶやき、ツリーを再び突き出した。

今度はテイルギア---

でも、その動作は遅すぎる。

 

『!?』

 

彼女も、ブルーもイエローもわからない。

ツリーが俺に当たる直前、姿をかき消したのだから。

 

「な… かくれんぼのつもり!?」

 

かくれんぼ?

違うな、鬼ごっこだ!!

 

「ちょこまかと… うわっ!!」

 

彼女の周囲を猛スピードで走っているんだ。

彼女には、暴風が吹き荒れているようにしか見えない。

 

「これってまさか…」

「そのまさかですわ」

 

彼女には見えてない。

だが、別の衝撃で知覚した。

 

「…猫、かぶってたの?」

「出すタイミングが無かった、それだけさ」

 

彼女には見えないが、俺の姿は変化している。

強化された、このツインテールの拳が効くか!!

 

「…くのっ!!」

 

体をねじり、ツリーを横へ振った。

だが、そんな攻撃は効きはしない。

 

「その姿… 久し振りな気がする」

「まぁな。これは俺の切り札だからな」

 

それだけ、俺達が強い。

だが、これは違う。

俺のツインテール属性が、勝負のカギとなる。

今だって、制限時間との戦いをしているんだ。

 

「私も、切り札見せて、あげる」

 

瞬間、周囲を煙が出てきた。

目くらましのつもりか?

 

(そろそろ、フォーラーチェインへ---)

 

俺も瞬間で結び方を変え、再び翻弄させる。

でも、なんだこの違和感は!?

 

(体にまとわりつく?)

 

というか、寒い。

屋外だってのに、クーラーが効きすぎなくらいだ。

 

「何なのよ、これ?!」

 

水蒸気が、冷たい…

 

「今更遅いのよ♪」

 

そのすぐそばに、彼女はいた。

フォーラーチェインに、追いついたのか!?

 

「おごっごごごご」

 

頭を掴まれ、地面へ叩かれた。

そして地面を引きずる形で、じわじわと。

 

「いくら早くとも、私は追いつけるの」

 

…チートかよ。

何か、裏があるはずだ。

顔がヒリヒリするぜ…

 

(思考も、寒さで駄目になってきた…)

 

もう、まともな事考えられねぇ。

そろそろ限界が---

 

「ぐっ、ぐああああ!!」

「へっ?」

 

ついに、限界時間(タイムアウト)

俺の力の源であるツインテール属性が、逆流を始めた。

それは俺自身に限らず、押さえつけていた彼女をも襲った。

 

「不味いですわ。助けないと!!」

 

近寄ろうとしても、その本流に抗えはしない。

彼女は先程の場所から、ほんの少し近付けただけ。

 

(くっそおおお!!)

 

こんな形で、救われるなんて…

 

☆☆☆

 

(大丈夫、きっと)

 

突如、雷がずっとなっているような様子が見えた。

でも、ツインテイルズなら何とかなる。

私は私の、できることをするんだ。

 

「ふふふ…」

 

だから、今はキモ男の相手をしなきゃ!!

 

(何ニヤついているんだか…)

 

今度は、接近戦へは持ち込ませない。

重力砲(グラビティ・キャノン)を使い、距離を取っていく。

ユウもそれに合わせてきたのか、銃で反抗してくる。

遮蔽物が殆どないから、躱すのに精一杯。

向こうの威力は、完全開放(ブレイクレリース)と同等。

 

(参った参った)

 

近付けたとしても、また剣で弾かれるだろうし…

だったら、無理矢理に---

 

「む」

 

重力砲(グラビティ・キャノン)を最大にまでためる。

当然、球は大きくなる。

それはつまり、引力も増すわけだから…

 

「強引に来たか」

 

ユウは引っ張られてくる。

地面に足を固定しようと、逃れはしない。

お縄、頂戴致す!!

 

「なら、お望みどうりとしよう」

 

ユウは銃をしまい、剣を取り出そうとする。

その瞬間、絶対的な隙はできる。

戻すときに、両手は完全に使えなくなるからね。

 

「そこだ!!」

 

彼の地面が突如、割れた。

そこから何者かが飛び出し。アッパーを決めた。

 

「グリーン、貴様…」

 

どのみち、あれじゃ彼の姿は見えなかった。

それならば、おとりとして使おうと思ったの。

体にひねりを加え、蹴りでユウを飛ばした。

まぁ、蹴るついでに重力操作で重くさせたけれど。

 

「ハンマー、もう一度お願い!」

 

そう言って、再びフォースリボンへ触れる。

一度出したから、もう出ないとは思う。

けれど、それがある場所に行く時間もない。

これは一種の賭けでもあった。

 

(マジか…)

 

すると、手元が光った。

それが収まると共に、ハンマーへと収縮された。

…意外と便利ね、これ。

 

「チィ」

 

舌打ちと同時に、銃で乱射し始める。

そのままじゃ大ダメージだけれど、今は盾がある。

ハンマーの角度を調整することで、上手いこと流す。

 

(でもこれじゃ、さっきと同じだ)

 

また、剣で防がれてしまう。

そして、無限ループへつながる。

だったら---

 

"属性玉変換機構(エレメリーション)双子属性(ツインズ)"

 

私は、仲間の強さを信じる!!

属性玉変換機構(エレメリーション)が、勝負の切り札として使える。

私が選ぶのは、これだ!!

 

「ブレイザーブレイド… あの"オチビちゃん"のか」

 

流石に両手では持てない。

ハンマーを左手に持ち替え、右手に握る。

少し手間取ったけれど、何とかなる。

そうしている間に、間合いが詰めてきた。

 

「そんな即席の力で、僕には勝てない!!」

 

大振りで来た。

やはり、ユウの右手には剣が握られていた。

その剣で、私は斬られてしまう。

 

「即席かどうか…」

 

ハンマーで剣を受け止めた。

その剣では、ハンマーを切ることはできない。

そして空いた右手に、ブレイザーブレイドを突き立てる。

それはうまいこと、腹部に深く届いた。

 

「試してやる!!」

"完全開放(ブレイクレリース)"

 

その認証コードは、終幕を意味していた。

ブレイザーブレイドは剣が真ん中が割れ、炎が噴き出す。

その炎は、彼の体を内外へ移す。

それに巻き込まれまいと、私は少し下がる。

 

「グラビティ---」

 

ハンマーを再び両手で構え、一撃を込める。

 

「ブレイカー---ッ!!」

 

そして、彼を上斜めから叩いた。

それだけにあらず、再び逆側からも叩く。

最後に体をひねり、ブレイザーブレイドを押し出す形で真横へ叩く。

その3回目、私はスンナリとできなかった。。

 

「見事、だ」

 

ハンマーの面とそれを支える手を、抑えられていた。

他ならぬ、ユウに。

手が抑えられているから、離れられない。

 

「だが、忘れるな。君は---」

 

彼の言葉は、当時の私には理解できなかった。

おまけに、その時間すら与えられなかった。

 

(それ、ないでしょ---)

 

結果。

ユウの爆発に、私は巻き込まれた。

 

☆☆☆

 

フォーラーチェインを強制解除され、俺は動けない。

それは、彼女も同類だ。

 

「まさか、隠し玉がまだあったなんて…」

 

それはない。

システム上の不都合って奴だ。

だが幸いにも、変身は解けていない。

 

「楽しいわね…」

 

ツリーを杖に、彼女はゆっくりと立ち上がる。

不味い、俺はまだ時間がかかるぞ…!

 

「あれは---」

 

その時、爆発が見えた。

 

「"怨み"殿!?」

 

動揺している。

なら、今がチャンスだ。

 

「グランドブレイザー!!」

 

まだ痛む体を、無理矢理起こす。

それと同時にブレイザーブレイドを取り出し、一気に完全開放(ブレイクレリース)

威力をいつもより増しで当てようとしたが、彼女に当たることはなかった。

しかし、衣服を燃やすくらいはできた。

 

「(これで、何とか…)」

 

息もたえだえ、疲労感はありまくり。

だけれど、勝てた。

顔を片手で隠す彼女。

 

「こんの…」

 

ふらりと体を揺らすと、凄まじい形相でにらまれた。

 

「よくも、私の愛しい人を…」

 

その顔は、酷く恐ろしい。

ブルーですら、慄いたほどに。

彼女はどこからか、白い袋を取り出した。

よく見る、サンタのプレゼント箱を入れるものだ。

 

(何のつもりだ?)

 

袋の口を開ける。

すると、その中へ勢い良く入り込む。

見れば、先程の爆発の地点から何かが出ている。

入り込むそれは、属性玉(エレメーラオーブ)と同様に輝いていた。

 

「絶対に… 絶対に、復習してやる!!」

 

それが入りきった時、彼女は袋の口を閉じた。

重くなった袋を担ぎ、凄まじい跳躍でこの場を去った。

 

「何なのでしょうか?」

「恐ろしい程の殺気… タダモノじゃない」

 

これから先、とんでもないことになりそうだ。

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