Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.84【なんか変わった?】

辺りは閑散としていた。

彼女---ウィッシュが去り、残っているのはツインテイルズだけだ。

だが、テイルグリーンはエレメリアンの爆発に巻き込まれた。

未だ燃えている地面に、彼女はうつぶせに倒れていた。

 

「グリーン!!」

 

ブルーとイエローは、彼女の安否確認に走る。

だが俺は動けない。

ダメージの蓄積と、完全開放(ブレイクレリース)のせいだ。

 

(やっべぇ… もう限界だわ)

 

ここまで無茶をしたのは、初めてかもしれない。

全身が筋肉痛以上だ。

これは、テイルギアの力でも治りは厳しいかもな。

俺も早く、彼女のところへ---

 

『不味いですよ!? 周囲に、敵が』

 

何!?

いつの間にか囲まれた、って事か?

 

「ブルー、イエロー!!」

 

俺は叫んだ。

彼女達に、危険を知らせないと。

だが、既に攻撃にさらされていた。

全身に火花が飛び散っている。

これは、エレメリアンじゃない!?

 

「(まさか… 人間が)」

 

だが、何故今だ?

俺達が弱ったところへ、一気に叩くつもりか。

 

「十字砲火!? なんで」

「ふ、防ぎきれませんわぁ~」

 

イエローは相変わらず喜んでる。

マゾッ気も、ここまで来ると称賛するぜ。

 

「回収してくれ、早く!!」

『ダメです、これでは---』

「ほな、ウチの出番や」

 

トゥアールの通信を遮るかのように、誰かが出てきた。

 

「テイルホワイト!?」

「せや、久し振り」

 

彼女はエレメリアン出現ですら、滅多に見ない。

メディアですら、彼女の存在は全く公表されることもない。

そんな彼女が、なんで!?

 

「ほな、さっさと終わり」

 

上空に幾つもの空間の裂け目が。

それに生じて、突風が吹き荒れる。

というか、吸い込まれるぞ…

 

「んなああ!?」

 

森に隠れていたと思われる、武装した人々が上空へ飛ばされていく。

どこに、これだけの人が…

そしてある程度の人々が吸い込まれると、裂け目は閉じた。

どうやら、役目は終えたらしい。

 

「…何で先輩が?」

「積もる話は後や。さっさと転送しい」

 

俺の質問を後回しにして、トゥアールへ通信する。

随分と後味の悪い戦闘だが、何か理由があるのか?

 

 

 

 

「お疲れ様です、皆さん」

 

ツインテイルズ基地。

そこへ転送されると、トゥアールに出迎えられた。

勿論、テイルホワイトもいる。

ちなみに倒れたテイルグリーンは、ブルーに担がれていた。

しかも片手で。

 

「グリーン---伊織を医務室に移してからや」

 

ホワイトも彼女の容態を察したのか、グリーンの回復を優先させた。

ブルーはトゥアールにグリーンを預け、彼女は指令室から出た。

…その間、何で司令官が座るべき椅子に座ってんだ?

 

「説明しなさい。さもなくば---」

 

ブルーは臨戦態勢だ。

ウェイブランスの切っ先を、ホワイトの喉元に突きつける。

だが、ホワイトは動揺しない。

 

「力押しできるほど、ウチは弱くはないで」

 

ウェイブランスに異変が起きた。

先端から曲がり始め、槍の意味を失い始めた。

ブルーがそれを手放すと、更に曲がる。

遂には、1つの塊へと変貌を遂げる。

 

「---何をしたの?」

「その槍を、クシャッと潰しただけのこと。人に頼む態度やないわ、ホンマ」

 

力の差は歴然。

それを知覚するに、値するものだった。

ブルーも、それ以上は加圧するのを止めた。

 

「この空気はアカン。ここは、ティータイムと洒落こもうや」

 

テイルホワイトはテイルギアを解除、リン先輩へと戻った。

彼女は俺達以上の力は持つが、今は争う意思はないと示しているのか…

 

「そうですわ。優雅にしましょう」

 

イエローはいつの間にか、慧理那へと戻っていた。

それに習い、俺と愛華も解除する。

それぞれ席に着き、ようやくティータイムができる。

まぁ、お茶やお菓子はないけれど。

 

「ウチとしては、エレメリアンの件について追求したいとこやけど---」

 

リン先輩は、虚空をぼんやりと眺めた。

彼女は確か、スタジアムで出会ったくらいだもんな。

 

「わけわかんない! 何で守るべき人間が、アタシたちを襲うわけ!?」

 

愛香は癇癪を起してきた。

無理もない、エレメリアンを倒した直後だったからな。

今まで俺達を援護するんじゃなかったのか?

 

「あんなぁ… アンタらみたいな存在、いつまでも放っておくか? 珍しい動物やったら、普通はコレクションしたいやろ?」

「宝石とかでしたら、確かにそうですが…」

 

コレクション、か…

確かに、エレメリアンに対抗できる存在としては珍しい。

諸外国も擁護してはいるが、本来ならばそうはしないはずだ。

 

「今、こうしてティータイムができるんは?」

「---わたくし達の正体が、露呈されていないからですわ」

 

リン先輩は、慧理那に目配せして答えを促せた。

恐らく誰でも推測できたことだが、敢えて俺達に言わせたって感じだ。

…でも、回答者が俺でなくて良かった。

正直、答えられる自信がない。

 

『普段はツインテールを推していないからか?』

『おのれは何を、言うてんねや(怒)』

 

俺だったら、こうやって回答していた。

そして、絶対に突っ込まれただろうね。

 

「それでなくとも、テイルギアと言う存在は危険や。パンドラの箱と差し支えない」

「…あの~」

 

得意げにリン先輩は説明する。

だが、それに付いていけるのは慧理那だけ。

俺や愛香には、突拍子すぎる。

 

「全然わかんない」

 

その言葉に、思いっ切り椅子から転げ落ちた。

 

「ったく… ええか? 多分、最初にトゥアールに説明を受けたと思うわ。そのテイルギアの各要所要所は、現代科学を大幅に増進させることができる。競争が支配する現代社会、その技術は誰もが喉から手が出るほど欲しいねん。それが戦争スレスレの方法でも。今回の奇襲は、その一例。多分あれが成功してたら、どっかの国に"ご招待"されてたはず」

 

すげー早口。

でも、これで言いたいことがわかった。

 

「狙いは、俺達のテイルギアか…」

「トゥアールさん以外に生産できない以上は、それが最善の方法ですわ」

 

慧理那の言葉に、俺達も納得できる。

 

「むしろトゥアールさんの様に、1人の科学者が独占できるとは思えません」

「そこらへんは、アルティメギルの作戦の一環としてやろな。だからこそ、トゥアールの星は潰れたんやから」

 

…そうだったのか。

でも、何でその事に疑問が浮かばなかったのか。

 

「となると… 最後にわたくし達を襲ったのは、テイルギアを狙う第三者?」

 

愛香は、話には割り込んでいない。

こういった話は、彼女は理解し難いからな。

リン先輩は、慧理那の推測に否定や肯定はしない。

ただ黙認を続けていた。

 

(でも、当たりって言っているようなもんか。でも、正体がわからないんじゃ…)

 

俺だけじゃ、これが限界か。

リン先輩は知っているようだが、答えてはくれないし…

後でトゥアールに確認してみるか。

 

「いずれにせよ、エレメリアン幹部を倒したんや。アルティメギルにも何かしらの動きは出るはずや」

「そ、そうね。第三者も注意は必要だけど、アルティメギルもまだいるんだから!!」

 

それ以降は、話題を変えた。

流石に暗いままでは、気分が悪いからな。

 

☆☆☆

 

「う~ん…」

 

エレメリアン、ユウとの戦いから数日経った。

その反動は、私の体に少なからず影響を与えていた。

ユウとの戦いの直後、"ちょっとしたドタバタ"があったらしい。

そこについて私は説明を要求したけれど、上手いこと躱された。

あと、ツインテイルズ基地まではテイルブルーが運んでくれたらしい。

そこはキチンと感謝しておいた。

 

「いおりん、なんか変わった?」

「そうそう、顔つきも前とは違うし」

「でも、綺麗になったと言うよりは… 凛々しくなった?」

 

で、戦闘の翌日はずっと医務室に監禁?

というか、動けなかった。

テイルギアを極限まで使い果たし、体にまでダメージが通っていた。

…まさか、この年齢で寝たきりを味わうとは。

その日が休日で助かった。

 

「えぇ、そうかな?」

「絶対そうだもん!! 身体中に傷だらけだし」

 

それでも、完全回復とはいかなかった。

この包帯やガーゼ、絆創膏がそれを示している。

ハイソックスを履こうと思っても、巻いている包帯でできないしね。

顔にも付いているから、隠しようがない。

教室に着くまでに、同級生や先生に何度言われたか…

 

「なんだか、カッコイイよ!?」

「そうかな…? ありがと」

 

カッコイイ、か…

こんな自分でも、そう言ってくれるんだ。

そう思うと、ちょっと照れくさい。

 

「まぁ、カッコイイのは今に始まったことじゃないけれど?」

「そうだよね… 部活動を始めた辺りからかな」

 

そうなの?

自分の顔って、そう意識はしないかな。

ニキビがないとかのチェックはするけれど。

顔つきまでは、普通は気にしない。

 

「もしかして… 何かあった? 彼と」

 

…はぃ?

観束君のことかな。

 

「…無いと思う。」

「嘘ォ!?」

 

正直に答えただけなんだが…

そこまでのオーバーリアクションはひどすぎない?

 

「有り得ないでしょ、それ!? もしかしたら、できちゃってたと思ってたのに」

「いおりん、相当な奥手…?」

 

そう言われましても…

部活仲間としては、大切に思ってはいる。

そして、ツインテイルズの頼れる仲間だとも。

でも、彼女達が聞きたいのは"恋愛"に関してなんだろうね。

 

「奥手も何も、これまでに何の変化もないってば!! できちゃったと思われても困るから!!」

 

これはまた、こじれそうだ。

そう思っていたら、丁度チャイムが鳴る。

 

(あり? 足立先生じゃない!?)

 

数学なんだけれど、別の先生だ。

たしか、別のクラスを担当していたはず。

 

「(知らない? 足立先生、数日前から行方不明なんだよ)」

「(マジすか!?)」

 

それは初耳だ。

まぁ、あの厳しい授業が受けなくて済むのは助かる。

 

(悪い意味で、有名になってるからねぇ…)

 

だけどそれで、数学の成績が良くは---

 

「ならんわな」

 

☆☆☆

 

アルティメギル。

その一角、王室の茶会(ロイヤル・ティー・パーティ)にて。

 

「久々に戻ってみれば… 閑散としておるのぅ」

「まぁ、皆は闘技場にでもおるやろ」

 

全体会議などで使用される広い空間。

古参のエレメリアンは、ここを"魔窟"と呼ぶ。

中心には円状の機会が置かれており、ここから立体映像が出せる。

そして、この空間の奥に長い階段が。

それは果てしなく長く、先が見通せないほどにだ。

 

「皆が自らの責務を全うするならば、良いのだが…?」

 

ダークグラスパーがそう呟く。

その時、地揺れが起こった。

 

「何じゃ、敵の襲撃か!?」

「それやったら、何かしらの警報が鳴ってるはずや!!」

 

メガ・ネの言葉通り、警報は発令しない。

その不審さに、彼女はますます困惑する。

地面に四つん這いとなり、収まるのを待つエレメリアンもチラホラといる。

 

(どういうことじゃ? まず、ここで"揺れる"という感覚自体は起こらぬはず…!)

 

そう、彼女達がいる場所は現実世界とは少しずれている。

人間が容易に入り込めない、特殊な空間に存在する。

即ち、この空間にて異様な出来事が起こりつつあるということである。

 

「な、なんやコレ!?」

 

地面に目を落とせば、紫に光る線が地面を走る。

それも一本だけでなく、十数本の規模で。

それが向かう先は、階段。

いや、正確にはその左側である。

その光が、左側へ集束を始める。

それと同時に、地面から巨大な水晶の柱が生えてきた。

完全に出で来ると、水晶は紫色を示す。

 

「…何じゃアレは!?」

 

ダークグラスパーの一言が、この場にいるエレメリアンの意見を総意させていた。

あれが何かは、誰もわからない。

エレメリアン達は互いに、その正体について話し合う。

騒然とした空間に、突如雷鳴が走る。

 

「ガハハハハ!! 遂にやりやがったか、あのキザ野郎!!」

「お主は、確か…」

「あぁ、"怒り"やったわな、確か」

 

その姿は、まさしく雷の神。

身体中に帯電させていることが、雷鳴を打ち出した当人である証拠だ。

 

「やりやがった、って?」

「決まってんだろ、"怨み"が死んだのさ」

 

その驚愕の言葉に、更に動揺するエレメリアン達。

無理もない。

今までに幹部エレメリアンは倒されたものの、彼なら心配ないと言われた逸材である。

その彼が倒されたとなれば、今まで以上の疑心を招く恐れがある。

 

「だがそうと、何故わかる? 報告も何もないのに」

「あの柱がそうさ」

 

ダークグラスパーに問い詰められ、"怒り"は水晶を指す。

 

「俺達『感情の四神』は、エレメリアンが持つ属性玉(エレメーラオーブ)とは異なる。その力は、来るべき時のために、あぁして形として残すのさ。それよりもだな---」

 

サラッと重大なことを話す"怒り"だが、話題をダークグラスパー達へ向ける。

 

「そのことによって、俺の部隊が本腰を上げた。今頃、前線基地へ死の二菱(ダー・イノ・ランヴァス)が激励しているはずだ。いよいよ美の四心(ビー・テイフル・ハート)も後が無くなったって訳だ」

 

これは予想以上の事態になった。

アルティメギルの首領直属部隊の2つが、同じ場所にいる。

それはつまり、片方の部隊は用済みであることを指す。

 

「ダークグラスパー、てめぇもだ。"怨み"という後ろ盾が無くなった以上、どうするかは俺次第って訳だ。今のうちに、身の程をわきまえるべきだな」

 

そう言い残して、高笑いと共に彼は雷となってこの場を去る。

行き場のない怒りを、ダークグラスパーはこらえるしかない。

 

「イースナちゃん…」

 

この時、何をかければ良かったのか。

ダークグラスパーの相棒として、イースナのおせっかいなオカンとして。

メガ・ネは、わからなかった。

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