Which do you love ?   作:ズケズケ

85 / 89
Episode.85【カバンの中身は?】

相変わらず、平凡だわ…

 

「この問題は、この方程式を使って---」

「うわあああぁ! わっかんない!!」

 

この、忌々しい『数学』さえなければ…!

本当に手強いわ、エレメリアンよりも。

 

「他の教科は問題ないでしょ?」

「それでも、中の下なんだけれど…」

 

まぁ、自分の頭である程度は理解はできる。

でも、数字を見るとダメなのよ…

よくあれで、この高校受かれたよね。

 

「中学はどうだった?」

「クラスメイトに教えてもらったの。おかげで何とかできたけれど」

 

あの時は、大変お世話になりました。

どうしているんだろう…?

 

「後は何とかできる?」

「大体は。もう少し、頭の回転が良ければねぇ…」

 

こればっかりはどうしようもない。

クラスメイトは用事があるからと、先に帰ってしまった。

私もここに残る理由はないよね。

 

「さてっと---」

 

荷物をまとめる。

今日もハードな時間割だった。

大量の教科書のお蔭で、カバンはパンパンに膨れていた。

 

「重くはないんだけど… これじゃ、カバンが音を上げるね」

 

そう呟く私の手は、震えていた。

正確には、カバンの紐だ。

何度も使っているうちに、擦り切れてしまった。

そしてタイミングを図ったかのように、床へ落ちた。

 

(私のテイルギアの力も、ちょうどこんな感じかな?)

 

前にリンに聞いたことがある。

力をどう制御するのか、と。

その時、彼女はこう答えた。

 

『アンタの体は、言わば--- そのカバンやな。いかにテイルギアの力が強大であれ、それを有するは自分の体や。アンタは運よくカバンのサイズは大きい。せやけど、使いすぎればカバン--- つまり体が音を上げる。ちょうど、紐が切れてカバンの意味をなさないようにな』

 

その言葉は、確かに的を射抜いたものだ。

あの戦いは確かにそう。

テイルギアを限界突破させてまでエレメリアンを倒した。

その反動が、あの生々しい傷だ。

 

「(つまり--- 私も、テイルグリーンとしては短いのかな?)」

「何が短いって??」

 

ぎゃあ!?

後ろから、声をかけちゃダメ!!

 

「! あらら、カバンが… ご苦労様でした」

 

合唱して、そう苦労を募る。

 

「これじゃ、確かに帰れないよね… よし、一皮脱ぎますか!!」

「ぇ!?」

 

急に思い立ったのか、私のカバンと腕を取った。

そして、無理矢理学校の外まで連れて行った。

…まさか。

 

「買いに行くわよ!!」

 

マジか。

用事があるんじゃないの?

 

「それは、次に回せば良いのよ。こっちの方が、よっぽど重大だもん」

「まぁ… 確かに」

 

カバンの予備は持っていない。

まさか、カバンを抱えて投稿するわけにもいかないか。

そんなわけで、クラスメイトと共に新しいカバンを探しに行くこととなった。

 

☆☆☆

 

「まったく、何やねんアレは!? ホンマ、腹立つで」

「…」

 

王室の茶会(ロイヤル・ティー・パーティ)

その廊下にて、メガ・ネは憤慨していた。

それは、先程の会話について。

 

『ガハハハハ!! 遂にやりやがったか、あのキザ野郎!!』

 

だが、言い得て妙ではある。

仲間が倒されたと言うのに、悲しみすら出ない。

寧ろ、喜びさえ感じられた。

 

(歴戦の戦士であれば、喜ぶなどどいうふざけた態度は取らぬはずじゃ)

 

だからこそ、(つか)えがある。

"怒り"がその身体に宿す属性力(エレメーラ)上、好戦的ではある。

加えて、彼自身が戦闘狂であることは周知している。

 

(そもそも、感情の属性力(エレメーラ)自体が稀有であるはず。それ故に、ただ倒されたとは思えん)

 

あの水晶が、そうだ。

後で情報部に確認したところ、"怨み"が倒された直後にあの水晶が現れたそうだ。

何かしらの因果関係を孕んでいるに、違いない。

だがその前に、すべきことがある。

 

「メガ・ネ。奴にお灸を据える必要があるぞ」

「やられっぱなしは、イースナちゃんらしくないからな。ウチも全力で手助けしたるさかい」

 

☆☆☆

 

「ツインテイルズの回収に失敗… 何をやってた、貴様ら!!」

 

机に激しい怒りを叩き付ける。

その衝撃音は凄まじく、部屋の外まで響くほどだ。

 

「軍人であれば、任務完遂は当然のことだ」

「ですが、それは他国も同様です。我々のみに通ずることではありません」

 

すかさず、(リュウ)はフォローに入る。

 

「ならば、その他国どもを出し抜けば良いだけだろう!? 何故、その思考に辿り着かない?」

「最初はそう考えられたのでしょう。ですが、その後事態が変化したようで」

 

未だ怒りが収まらない上司に、彼はボイスレコーダーを差し出す。

上司は鼻を鳴らし、そのスイッチを入れる。

 

『作戦は失敗した。 ---突然、白いツインテイルズが我々を… う、うわっ、わぁぁぁ!!』

「…これが、その報告です。紙切れでは、到底信用されまいと思いまして」

 

再生が終了すると、劉はレコーダーを取り上げる。

恐らく、証拠隠滅を回避させるためであろう。

 

「白いツインテイルズ… 未だマスコミは愚か、裏世界ですら姿を現すことがない戦士か」

「日本での、関西広域連合の一員ではとの報告が上がっていますが、信憑性は薄いでしょう」

 

ボイスレコーダーを取られたことに苛立ちながらも、冷静さを保つ。

 

「白いツインテイルズ--- まるで白虎だな」

 

そのあだ名は、ある意味適している。

テイルホワイトの武器は、ディメンションクロー。

姿は白虎そのものに等しい。

 

「では、お前たちには『虎狩』をしてもらえるか?」

 

標的はツインテイルズ。

しかし、それはテイルホワイトへと絞られたものへ変化する。

 

☆☆☆

 

「これはどうかな? ぁ~…、これも似合いそう」

 

今私は、とあるお店へ来ている。

カバンをメインに取り扱うお店、しかも高級感漂っているし。

 

「別に無理する必要ないよ? デパートとかの安物でも良いから---」

「ダメダメ!! そう言って、いっつも安物なんだから。女子ならオシャレしなきゃ!!」

 

千切れたカバンを抱えてそう諭すも、彼女は本気(マジ)モードだわ。

しかも、私のじゃなく彼女の財布から出すらしい。

 

「これ、すっごく似合うと思わない!?」

 

喜々として私に見せてくれる。

冷静にそれを取り、付いているタグを見てみる。

 

(うげ---)

 

正直、彼女でも出せそうにないと思う。

どうしてこうも、ファッションになると糸目をつけないんだろうか…

 

「これ… 買うの?」

「? そだよ」

 

…駄目だコイツ、何とかせねば。

 

「失礼します」

「えぇ!? 行っちゃうの~!?」

「…ありがとうございました」

 

腕をつかみ、無理矢理店の外へ連れ出す。

ここまで来ると、一種の嫌がらせに思えてくる。

やっぱり、彼女に任せるべきではない。

 

 

 

 

「…いおおしゃ!!」

「結局、こーなるのね…」

 

私は、目的のカバンを手に入れた!!

脳内でメロディーが流れる。

 

「アンタの節約術、下手すると貧乏と変わらないよ?」

「あのねぇ… こうしないと、生活できないのよ」

 

少しは、一人暮らしの苦労を理解してよ。

 

「前のカバンよりも、収納が良くなった。それで6000円は安い!!」

 

おどっちゃうよぉ♪

これ程までに満足できる買い物は久し振りだ。

 

「ファッションは二の次なのね…」

 

クラスメイトが呆れてはいたが、もうムシムシ。

いくらファッションが優れているとしても、長持ちしなきゃ意味がない。

 

(!?)

 

ふと気付いた。

カバンが壊れるなら、新しいのに変えればいい。

でも、私の身体は一つ。

どうやって、打開するべきなんだろう。

 

「どした、いおりん? 喜びすぎて狂ったか??」

 

不味い。

いずれ、限界は来る。

それまでに、テイルグリーンとしての責務を全うしなきゃ。

それか、抜け道を作って、凌ぐか。

 

(今までは外傷だけで済んだ。でも、今度は内外。下手すれば、後遺症が出る可能性も---)

「しっかりしなさい!!」

 

背中にバシンと痛みが。

振り向けると、右手を抑えるクラスメイトが。

恐らく、彼女が叩いたんだろうな。

 

「グダグダ考えるなっての! それよりも、今なすべきことがあるでしょうに」

「…あ」

 

未来の事よりも、今日の晩御飯。

 

「だあああ!! 冷蔵庫の中身が空だったあああ!! 悪いけど、ここでオサラバ!!」

 

(きびす)を返し、私は急いだ。

勿論、新しいカバンに教科書を詰めておいたぞ。

空になったカバンを、脇に抱えていざ進め。

 

「…相変わらず、忙しいなぁ」

 

おいてけぼりにされたクラスメイトは、ただ一言もらすだけ。

デパートで色々と使ったらしいが、私は知らない。

そういうことにしておこう。

 

☆☆☆

 

「…潮時が来たらしい」

「何を弱気な!! 兄さんらしくないじゃないか」

 

アルティメギル前線基地。

ここへ、突如死の二菱(ダー・イノ・ランヴァス)が押し寄せてきた。

それに対し、ここのエレメリアンは通常通りに動かなかった。

明らかな動揺を曝し、彼等に嘲笑われた。

これこそ、美の四心(ビー・テイフル・ハート)の失態を曝してしまった。

 

「だが、ツインテイルズとの決着はつけねばならん」

「そうだね。貴の三葉(ノー・ブル・クラブ)が消えた以上、僕らの存在価値も危うい。---いよいよかも」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。