相変わらず、平凡だわ…
「この問題は、この方程式を使って---」
「うわあああぁ! わっかんない!!」
この、忌々しい『数学』さえなければ…!
本当に手強いわ、エレメリアンよりも。
「他の教科は問題ないでしょ?」
「それでも、中の下なんだけれど…」
まぁ、自分の頭である程度は理解はできる。
でも、数字を見るとダメなのよ…
よくあれで、この高校受かれたよね。
「中学はどうだった?」
「クラスメイトに教えてもらったの。おかげで何とかできたけれど」
あの時は、大変お世話になりました。
どうしているんだろう…?
「後は何とかできる?」
「大体は。もう少し、頭の回転が良ければねぇ…」
こればっかりはどうしようもない。
クラスメイトは用事があるからと、先に帰ってしまった。
私もここに残る理由はないよね。
「さてっと---」
荷物をまとめる。
今日もハードな時間割だった。
大量の教科書のお蔭で、カバンはパンパンに膨れていた。
「重くはないんだけど… これじゃ、カバンが音を上げるね」
そう呟く私の手は、震えていた。
正確には、カバンの紐だ。
何度も使っているうちに、擦り切れてしまった。
そしてタイミングを図ったかのように、床へ落ちた。
(私のテイルギアの力も、ちょうどこんな感じかな?)
前にリンに聞いたことがある。
力をどう制御するのか、と。
その時、彼女はこう答えた。
『アンタの体は、言わば--- そのカバンやな。いかにテイルギアの力が強大であれ、それを有するは自分の体や。アンタは運よくカバンのサイズは大きい。せやけど、使いすぎればカバン--- つまり体が音を上げる。ちょうど、紐が切れてカバンの意味をなさないようにな』
その言葉は、確かに的を射抜いたものだ。
あの戦いは確かにそう。
テイルギアを限界突破させてまでエレメリアンを倒した。
その反動が、あの生々しい傷だ。
「(つまり--- 私も、テイルグリーンとしては短いのかな?)」
「何が短いって??」
ぎゃあ!?
後ろから、声をかけちゃダメ!!
「! あらら、カバンが… ご苦労様でした」
合唱して、そう苦労を募る。
「これじゃ、確かに帰れないよね… よし、一皮脱ぎますか!!」
「ぇ!?」
急に思い立ったのか、私のカバンと腕を取った。
そして、無理矢理学校の外まで連れて行った。
…まさか。
「買いに行くわよ!!」
マジか。
用事があるんじゃないの?
「それは、次に回せば良いのよ。こっちの方が、よっぽど重大だもん」
「まぁ… 確かに」
カバンの予備は持っていない。
まさか、カバンを抱えて投稿するわけにもいかないか。
そんなわけで、クラスメイトと共に新しいカバンを探しに行くこととなった。
☆☆☆
「まったく、何やねんアレは!? ホンマ、腹立つで」
「…」
その廊下にて、メガ・ネは憤慨していた。
それは、先程の会話について。
『ガハハハハ!! 遂にやりやがったか、あのキザ野郎!!』
だが、言い得て妙ではある。
仲間が倒されたと言うのに、悲しみすら出ない。
寧ろ、喜びさえ感じられた。
(歴戦の戦士であれば、喜ぶなどどいうふざけた態度は取らぬはずじゃ)
だからこそ、
"怒り"がその身体に宿す
加えて、彼自身が戦闘狂であることは周知している。
(そもそも、感情の
あの水晶が、そうだ。
後で情報部に確認したところ、"怨み"が倒された直後にあの水晶が現れたそうだ。
何かしらの因果関係を孕んでいるに、違いない。
だがその前に、すべきことがある。
「メガ・ネ。奴にお灸を据える必要があるぞ」
「やられっぱなしは、イースナちゃんらしくないからな。ウチも全力で手助けしたるさかい」
☆☆☆
「ツインテイルズの回収に失敗… 何をやってた、貴様ら!!」
机に激しい怒りを叩き付ける。
その衝撃音は凄まじく、部屋の外まで響くほどだ。
「軍人であれば、任務完遂は当然のことだ」
「ですが、それは他国も同様です。我々のみに通ずることではありません」
すかさず、
「ならば、その他国どもを出し抜けば良いだけだろう!? 何故、その思考に辿り着かない?」
「最初はそう考えられたのでしょう。ですが、その後事態が変化したようで」
未だ怒りが収まらない上司に、彼はボイスレコーダーを差し出す。
上司は鼻を鳴らし、そのスイッチを入れる。
『作戦は失敗した。 ---突然、白いツインテイルズが我々を… う、うわっ、わぁぁぁ!!』
「…これが、その報告です。紙切れでは、到底信用されまいと思いまして」
再生が終了すると、劉はレコーダーを取り上げる。
恐らく、証拠隠滅を回避させるためであろう。
「白いツインテイルズ… 未だマスコミは愚か、裏世界ですら姿を現すことがない戦士か」
「日本での、関西広域連合の一員ではとの報告が上がっていますが、信憑性は薄いでしょう」
ボイスレコーダーを取られたことに苛立ちながらも、冷静さを保つ。
「白いツインテイルズ--- まるで白虎だな」
そのあだ名は、ある意味適している。
テイルホワイトの武器は、ディメンションクロー。
姿は白虎そのものに等しい。
「では、お前たちには『虎狩』をしてもらえるか?」
標的はツインテイルズ。
しかし、それはテイルホワイトへと絞られたものへ変化する。
☆☆☆
「これはどうかな? ぁ~…、これも似合いそう」
今私は、とあるお店へ来ている。
カバンをメインに取り扱うお店、しかも高級感漂っているし。
「別に無理する必要ないよ? デパートとかの安物でも良いから---」
「ダメダメ!! そう言って、いっつも安物なんだから。女子ならオシャレしなきゃ!!」
千切れたカバンを抱えてそう諭すも、彼女は
しかも、私のじゃなく彼女の財布から出すらしい。
「これ、すっごく似合うと思わない!?」
喜々として私に見せてくれる。
冷静にそれを取り、付いているタグを見てみる。
(うげ---)
正直、彼女でも出せそうにないと思う。
どうしてこうも、ファッションになると糸目をつけないんだろうか…
「これ… 買うの?」
「? そだよ」
…駄目だコイツ、何とかせねば。
「失礼します」
「えぇ!? 行っちゃうの~!?」
「…ありがとうございました」
腕をつかみ、無理矢理店の外へ連れ出す。
ここまで来ると、一種の嫌がらせに思えてくる。
やっぱり、彼女に任せるべきではない。
「…いおおしゃ!!」
「結局、こーなるのね…」
私は、目的のカバンを手に入れた!!
脳内でメロディーが流れる。
「アンタの節約術、下手すると貧乏と変わらないよ?」
「あのねぇ… こうしないと、生活できないのよ」
少しは、一人暮らしの苦労を理解してよ。
「前のカバンよりも、収納が良くなった。それで6000円は安い!!」
おどっちゃうよぉ♪
これ程までに満足できる買い物は久し振りだ。
「ファッションは二の次なのね…」
クラスメイトが呆れてはいたが、もうムシムシ。
いくらファッションが優れているとしても、長持ちしなきゃ意味がない。
(!?)
ふと気付いた。
カバンが壊れるなら、新しいのに変えればいい。
でも、私の身体は一つ。
どうやって、打開するべきなんだろう。
「どした、いおりん? 喜びすぎて狂ったか??」
不味い。
いずれ、限界は来る。
それまでに、テイルグリーンとしての責務を全うしなきゃ。
それか、抜け道を作って、凌ぐか。
(今までは外傷だけで済んだ。でも、今度は内外。下手すれば、後遺症が出る可能性も---)
「しっかりしなさい!!」
背中にバシンと痛みが。
振り向けると、右手を抑えるクラスメイトが。
恐らく、彼女が叩いたんだろうな。
「グダグダ考えるなっての! それよりも、今なすべきことがあるでしょうに」
「…あ」
未来の事よりも、今日の晩御飯。
「だあああ!! 冷蔵庫の中身が空だったあああ!! 悪いけど、ここでオサラバ!!」
勿論、新しいカバンに教科書を詰めておいたぞ。
空になったカバンを、脇に抱えていざ進め。
「…相変わらず、忙しいなぁ」
おいてけぼりにされたクラスメイトは、ただ一言もらすだけ。
デパートで色々と使ったらしいが、私は知らない。
そういうことにしておこう。
☆☆☆
「…潮時が来たらしい」
「何を弱気な!! 兄さんらしくないじゃないか」
アルティメギル前線基地。
ここへ、突如
それに対し、ここのエレメリアンは通常通りに動かなかった。
明らかな動揺を曝し、彼等に嘲笑われた。
これこそ、
「だが、ツインテイルズとの決着はつけねばならん」
「そうだね。