Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.86【変化】

ユウ---"怨み"を倒して、数週間。

世間では、クリスマスが目に見えるところに迫っていた。

 

「それにしても、急にエレメリアンが増えた気がするわ」

「クリスマス、大晦日が近いから、在庫一掃セールってわけか!?」

 

言い方は凄く酷いが、そう思えて仕方ない。

今回だって、現れたエレメリアンはベアギルディだったし。

まぁ、そこまで強くは無かったから助かったけれど。

 

『俺は、ネギを買いに来ただけだ---!!!』

 

いつも思うが、断末魔がそれって…

もう少し、マシな言葉を使ってもらいたい。

 

「たまにだけれど、強いエレメリアンは出てきましたわね」

「ですが、それ以外は特に突出した要素はありませんねぇ」

 

そうだな。

エレメリアンは世界各地で出没し、属性力(エレメーラ)を強奪せんと活動を繰り返した。

それを俺達、ツインテイルズが殲滅する。

いつも通りの流れだ。

観客が逃げていくときもあれば、そのまま観戦するときもある。

 

「立て続けに来ると言うことは、アルティメギルの方針に変化はないかもしれないな」

 

もし、アルティメギルが何かの準備をしているのであれば、休止期間が設けられている。

もしくは、夏休み前のようなスクリーンでの宣言を行うだろう。

いずれにせよ、俺達は満足には戦えないかもしれない。

 

(まだ、左手に痺れがある。無茶な振り方でもしたのか?)

 

ベアギルディとの戦いでも、上手くブレイザーブレイドを振れなかった。

別に剣を落としたとか、攻撃が浅かったとかの話じゃあない。

 

(でも、俺自身の心配をするわけにもいかない)

 

そう、もっと重大な事がある。

 

「結局、テイルグリーンは来なかったわね」

 

彼女はあれ以来参加しなくなった。

どこか、異常でも出たのか?

 

「無理もないです。幹部エレメリアンと、あれだけの戦闘をしたのですから。寧ろ、生きて帰れてホッとしましたよ」

 

トゥアールには散々心配をかけたよな。

いつも俺は、ツインテールしか見ていなかった。

だからこそ、彼女がどう思っていたかなんて気にもしていなかった。

 

「いつもすまないな、トゥアール。俺達が無茶してばっかりで」

「まさか、総二様からねぎらいの言葉をかけられるとは!? これは嬉しい誤算!! さぁ、その感謝の気持ちを私に全力で---」

「させるか、ボケェ!! 調子に乗るとすぐこれだ」

 

トゥアールは白衣を脱ぎながら俺にルパンダイブをしようとした。

だがそれは、愛香のドロップキックに阻まれた。

 

「入るぞ」

 

そんなほのぼの(?)した空気に、割り込んできた。

桜川先生が無表情なあたり、もう慣れっこなのだろう。

 

「尊。職務はもう終えられたのですか?」

「はい。お迎えにあがろうとしたところ、アドレシェンツァにお邪魔していると伺ったため。その様子ですと---」

 

慧理那と軽く済ませると、俺達のもとに来た。

 

「なるほど、山を越えたようだな。顔つきが、微妙にだが違う」

 

顔つき?

そう思って愛香達にアイコンタクトを取るも、彼女達もわからないらしい。

 

「お嬢様。先程、"連合"から連絡がありました」

「わかりました。皆様、わたくしはこれにて失礼します」

 

先生の言葉で、慧理那は何かを感じ取った。

そう思えるが、先生で彼女が見えない。

とりあえず、挨拶だけはしておいた。

慧理那は手を振りながら、基地を後にした。

 

「戦闘の後だってのに… 慧理那は凄いわね」

「あれが、生徒会長だな」

 

☆☆☆

 

「…」

 

"怨み"との戦い。

あれがきっと、物語の節目なのかもね。

何て言えば、いいんだろう?

全身の力が抜けたような、ボーっとしたような…

 

(でも、それだけじゃない)

 

私の中に誰かがいる。

上手いことは言えない。

けれど、それは確かだ。

でも、全く知らない人でもなさそう…

 

(そりゃそうだ)

 

!?

心のつぶやきにしては、タイミングが上手い。

自問自答しているわけには---

 

「---せ、長瀬!!」

「は、はいぃ!?」

 

視界に映ったのは、前の席にいる男子クラスメイト。

見るからに面倒くさいような、怒っているような…

 

「おはよう」

「へっ?」

 

教壇には、先生が立っていた。

黒板には様々な文字が書かれている。

そこまで見渡して、初めてゾッとする。

 

「(---寝てた!?)」

 

イカン。

最近はあまり寝れなかったとはいえ、これでは言い訳できないじゃない!

 

「放っておこうと思っていたが… 寝言が五月蠅いのでな」

「…マジですか」

 

生活リズムが乱れたのか?

でも、どんな寝言を言っていたんだろうか。

気になるけれど、聞いたら赤っ恥だろうな…

 

「医務室に行くか?」

「---いえ、続けてください」

 

姿勢を正し、私は机に向かう。

いかんいかん。

私はまだ、勉強する立場にあるんだ。

 

(それでいい)

 

何かに熱中すれば、忘れられる。

---テイルグリーンに変身できないことを。

 

☆☆☆

 

「こ、これは---」

 

一人の科学者が、目を大きく広げている。

その反応からして、凄まじいものであろう。

 

「どのルートから、このような… 下手すれば、私は投獄の身ですぞ!?」

 

前進が震えている。

それは、自分の見たものを信じられないからか。

 

「心配ない。それはもう上も承知済みさ。おっと、ついでにこれも」

 

紺のスーツを着た中年は、誇らしげに言う。

足元に置いたカバンから、先程とは異なる書類を差し出した。

 

「いくらお前が優秀でも、一人ではできない。各研究機関に連絡を取るんだ」

「…まさか、本気で」

 

怯え顔で見つめる科学者。

手に持っている書類に、しわが入った。

いくら優秀であれど、結局は人間。

恐怖を抱いたとき、木偶に成り下がる。

その光景、彼は何度も見てきた。

 

(実に、滑稽だ。だからこそ、この仕事はやめられない)

 

不自然なまでに、口角が吊り上がる。

彼なりに気持ちを抑えているつもりでも、表情に表れてしまう。

 

「なぁ。もう嫌だろう、こんなところは。家族とは、随分と会っていないそうだな」

 

力なく、その場にへたり込んでしまう科学者。

ここで彼が脅かせば、失禁してしまうだろう。

だが、男性はそこまではしない。

彼はしゃがみ込み、優しく肩に触れる。

 

「お前ひとりに、地獄は渡らせない。いざというときには、私達が何とかする」

「…」

 

その優しい言葉に、科学者は動いた。

目の前が絶望となり、自分自身の価値も危うい。

このままでは、一生光を見ることはないだろうと。

そう思っていた。

 

(こいつなら、本気でできるかもしれない!!)

 

暗闇に光る、僅かな光。

もしかすれば、瞬きなのだろうか。

それでもいい。

進む方向は、これでわかった。

 

「…わかった。出来る限り、やってみよう」

「ありがとう」

 

科学者の顔が変わった。

不安げな様子は、もう見られない。

自信に満ち溢れた顔だ。

そして二人には、固く握られていた。

それは書類のサインだけではない、繋がりを得られた証拠なのだ。

 

☆☆☆

 

「嫌なもんだ」

 

成層圏。

恐らく、誰にも見つかる危険性が薄い場所。

そこに居るのは---

 

「せっかく、"黄金の拳闘士"が止めた歯車を動かしやがって」

 

フェニックスギルティ。

いや、結翼(いわばね)唯乃(ゆの)だ。

人間では生存はできない場所に、あえて人間態でいる。

それは、彼女の気まぐれに過ぎない。

 

(となれば、皇室の茶会(ロイヤル・ティー・パーティ)も黙っちゃいねぇよな)

 

あの部隊は、首領直属部隊とは異なる。

だからこそ、アルティメギル首領の指示を受けずに自由に動ける。

それが、彼女には疑念を置いていた。

 

「アルティメギルの裏切り者じゃ、どうしようもない」

 

死の二菱(ダー・イノ・ランヴァス)は、処刑部隊として知られている。

だがそれは、あの部隊と比較すれば些細なものだ。

各部隊に紛れている、所属エレメリアンを見ればわかる。

 

(かといって、ツインテイルズに頼るのも癪だしなぁ…)

 

ライオギルディは、目的のためならば見境ない。

過去には、エレメリアンを直接葬ったことがあるのだ。

パンダギルディは、掴みどころがない。

飄々としている、だが奥底に何かを隠しているはずだ。

 

「適当なところで、現れるとするか」

 

人間の心から生まれた存在でありながら、彼等に尊敬しない。

むしろ、存在を成り替わろうとする。

アルティメギルの思想としては、非常に危険である。

 

(そうしなきゃ、アイツらに忘れそうだからな…)

 

☆☆☆

 

アルティメギル・前線基地。

|美の四心≪ビー・テイフル・ハート≫が所属するエリアにて。

 

「もう、限界だ」

「兄さん…」

 

二人して溜め息をつく。

 

死の二菱(ダー・イノ・ランヴァス)がここへ来た以上、我々の居場所を失ったも同然だ」

 

しばらく沈んだままだったが、ようやくビートルギルディは動く。

 

「最早、猶予はない。こうなれば---」

 

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