Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.88【待つ、それだけ】

「…またか」

 

もう何度目?

そんなツッコミすら、もう出ない。

変化がなさすぎで、つまらない。

あの時の悪夢?

 

「…やっぱり夢?」

 

自分の頬をはたいても、痛みが感じられない。

だけれど、今回は少し違う。

これが『夢』だと、ハッキリしていることだ。

 

「夢なら、勝手に覚めてくれる」

 

誰に言ったのか。

自分に言ったのか。

それすらも、あやふやで。

私は歩き続ける。

燃え盛る車、森。

オイルか水たまりか、地面が濡れている。

そんなこと、私にはほとんど興味ない。

足裏に、ジワリと感触がある。

そんな妙な感覚に、初めて違和感を感じた。

 

(私、こんな服持ってたっけ?)

 

でも窮屈どころか、フィットしている。

愛香さんにとっては、ぶかぶかなんだろうな。

姿を確認しようと、壊れた車へ近づいた。

運転席に近いガラスを見て、ハッとした。

 

「これ… もしかして」

 

もしかして、じゃない。

夢の中で見た、幼い私が着ていた服だ。

サイズこそ違うが、このワンピースは間違いない。

でも、何で…

 

「それが、分岐点だからさ」

 

わわわ!?

誰なの、と問いかけるも姿は見せない。

 

「君は今、迷いがある。それが君自身をここへ導いた」

「その声は--- "怨み"!?」

 

正体がわかったとき、初めて彼は私の前に来てくれた。

でもそれは、エレメリアンではなく『擬態』した姿で。

 

「酷いなぁ。ここでは『ユウ』と呼んでほしいな」

 

おちゃらける彼だけれど、私の頭(?)はパニックだ。

私の夢であるなら、どうして彼がここにいるの?

 

「私は---」

「ポニーテールに自身がない、そう言いたいんだろう?」

 

そうかもしれない、でもそうじゃない。

テイルブレスは、私に答えてはくれなかった。

それは恐らく、私自身のポニーテール属性に問題がある。

でも本当にそれだけなのか?

『テイルグリーン』に変身できない時から、残っている。

 

「確かにそうかもしれない。でも、私はもっと別にあると思う」

「ふぅん」

 

彼は興味なさげに返答する。

予想通りの回答が得られず、少々不機嫌になったか。

 

「---1つ、聞きたいの」

 

一呼吸置いた。

もしかしたら、彼は呆れるかもしれない。

でも、これで疑念を払拭できるなら---

 

「"感情"って何?」

 

そう。

ユウ---"怨み"もそう。

属性力(エレメーラ)は、人間の心から生じた物。

そしてそれは母性のような当たり前では、生まれにくい。

今までに出会ったエレメリアンは、曲がっていた。

それは、一言でいえば『趣味』だ。

でも、彼は違う。

この地球で、人間のみが持つことを許された。

それが、感情。

 

「何でエレメリアンは、その属性力(エレメーラ)を持てるの!?」

 

不思議でしかなかった。

 

「…さぁね」

 

ユウは、あっけなかった。

私の真剣な質問に、軽くあしらわれてしまう。

 

「それは、君が一番知っていることだと思うが---」

「はぁ…」

 

あやふやにされて、今度は私が不機嫌だ。

 

「もし取り込まれそうなら、今度は逆に取り込んでしまうことだ。それが感情を知る第一歩(スタートライン)だ」

 

…ものっそい、わからん。

何を言いたいんだか。

 

☆☆☆

 

ツインテイルズ基地。

医務室には、テイルブルーが---

いや、愛香が横になっている。

桜川先生が率先して、面倒をみると言ってくれた。

たぶん、大丈夫だとは思うが。

 

「今回確認されたものですが---」

 

トゥアールは、画像解析に勤しんでいた。

初めはぼんやりとしたものだが、やがて鮮明になっていく。

それがハッキリしたとき、正体がわかる。

 

「エレメリアンではなく、何らかの亜種かと」

 

そうとしか思えない。

エレメリアンでも、意思疎通ができるほどの知能はあった。

でも、コイツにはそれがなかった。

ただ、目に見えるものを破壊している。

それを『怪物』と呼ばずに、どう表現できるか。

 

「5kmも離れた場所でも、威圧感を感じました。とてもエレメリアンが出すものでは…」

 

俺も同意見だ。

人を襲い、属性力(エレメーラ)を奪う。

それを目的とするアルティメギル。

そのメンバーたるエレメリアンが放つには、不合理だ。

あれでは俺達はおろか、一般人ですら逃げ出すだろう。

 

「さて、別の意見も取り込みたいところですね」

 

トゥアールは椅子を回転させ、俺達とは別方向を向く。

そこには、俺達と同じように立っているリン先輩。

そして、壁にもたれかかっている唯乃がいた。

彼女は本来はツインテイルズ基地へ招待させないのだが、リン先輩がいれば大丈夫か。

 

「ウチは知らんで。どこぞの芋虫が、勝手に湧いただけやろ」

「えげつないな、先輩…」

 

だが、この戦闘には関与はしていない。

たった一言で、それをわからせる。

ある種、凄すぎる。

 

「そもそも、エレメリアンと尺を計るのはアカンわ。ちょいとしか見てへんけれど、あの凄み… ただもんやあらへん」

 

呆れつつも、正確な視点を挙げてくれた。

俺もそこはわかっている。

でも、何か引っかかる。

テイルブルーがあっさりと倒されたのも、だ。

あれ程の強者が、重体を負うだなんて。

何か別の理由があるとしか思えない。

 

「唯乃さん、いえ--- フェニックスギルディさんはどう思われますの?」

 

テイルギアを解除し、本来の姿へと戻った慧理那。

たとえエレメリアンでも臆する事無く問い詰めるその姿は、もはやあの時とは違っていた。

俺とは違う場所で、彼女もまた成長しているんだと実感した。

 

「知ってるぜ」

 

回答は簡単だった。

自分が特権を得ているかのように、彼女は嗤う。

 

「なっ---」

「ただし、俺様の作戦がある。それに従うんなら、バラシてもいい」

 

…交渉か。

しかし、『俺様の作戦』だと?

場合によっては、俺達が不利に立たされることもある。

テイルブルーが再起不能である今、大博打を打てるのか?!

 

「総二様…」

「…」

 

トゥアールは、俺の顔を覗き込む。

この様子じゃ、不安げなのは隠しきれないか…

横目でリン先輩を見ると、姿勢を崩していない。

まるで、練習を厳しく見るトレーナーのようだ。

…俺自身の決断が、全てか。

 

「---わかった。条件を呑もう」

 

 

 

 

「…マジ!?」

「この俺様が、この期に及んで冗談を言うと思うか?」

 

トゥアールですら、信じられないといった表情だ。

事実、俺も驚きを隠せない。

 

「あの怪物は、伊織なの?」

 

慧理那も、両手で口に当てている。

リン先輩は、それでも動じない。

まさか、これを予測していたのか…

 

「簡単に言えば、『テイルギアの暴走(オーバーロード)』だ」

 

伊織先輩が行方不明になる以前から、不調だった。

だから、俺達が出撃しても来ることはなかった。

まさか、そんな理由があっただなんて…

 

「リン、てめぇが作った一級品の模倣だ。どこかでガタが来てもおかしくなかったろ?」

「さてね。ウチが作ったテイルブレスには、何の不備もあらへん。むしろ、あっちには別の問題があるんと違うか??」

 

今、サラリと大事なこと言わなかったか?

リンと唯乃、トゥアールが揉めに揉めてくれた。

お蔭で最後は会議じゃなくなったよ。

 

「えぇ、つまり… 今はすることは無いと?」

「アルティメギルは必ず仕掛けてくるはずだ。でなきゃ、ここまでする理由もないしな」

 

お互い、肩で息をしながらそうまとめる。

いい加減、良い感じでまとめようぜ…

 

「それまでに、愛香さんの回復とテイルギアの強化を急ぎます」

「愛香さんは私が」

 

トゥアールはそう言い残し、モニタールームから出ていった。

慧理那も、医務室に向かう足音が聞こえた。

やがて、その足音も消えていく。

さて、これで別の話題に切り替えることができる。

 

「お前らに聞きたい。俺達と手を組まないか?」

「はぁ!?」

「…」

 

俺が聞きたいのは、これだ。

唯乃は驚き、リン先輩は無反応のままだ。

 

「それは、『線』の関係を築きたいという意味?」

 

その質問へは、返答しない。

する理由がない。

俺達ツインテイルズと、リン先輩達は奇妙な位置にいる。

仲間でもあり、敵でもある。

最近になって、伊織先輩が味方となってくれた。

だが、彼女は純粋にそうしたのか?

今回の暴走(オーバーロード)においても。

ある時を境目に、彼女との繋がりが途切れたように思える。

それが余計に、俺を迷わせる。

 

『本当はどうなんだ!?』

 

俺が求めるもの。

それは---

 

「そうだ、とすれば?」

 

出来る限りの、スマイル。

これが、通用するのか?

 

「くだらねぇ!!」

 

壁を激しく叩く音が聞こえた。

 

「今回は俺にも落ち度がある。だが、それ以上のなれ合いは危険だ」

「…」

「それでも、俺達にからもうってのか、えぇ!?」

 

唯乃は、俺に異常なまでに、近づいてきた。

顔が整っているだけに、凄みがある。

どうやら彼女には、ハッタリだと思われたらしい。

 

「お前は、一匹狼だ」

「あぁ!?」

「アルティメギルの反逆者。そうやって、お前は独りで戦い続けるのか?」

 

ずっと、孤独だった。

もちろん、俺達が知ったことではない。

どれだけ苦しく、辛いかなんて…

 

「…ケッ」

 

捨て台詞を残し、唯乃は去った。

結局、俺の質問には答えてはくれなかった…

 

「ウチなら、大丈夫」

「ありg---」

「これも、1つのビジネスやからな」

 

…純粋に、喜べないなぁ。

正直と言えばそれまでなんだが、もう少しオブラートに包んでくれないかな?

 

「今は待つ。それだけ」

 

そうだ。

戦うには、まだ早い。

テイルブルーが---愛香は、当分目を覚まさない。

アルティメギルも、あの怪物---テイルグリーンに対して何らかの策を講じるだろう。

今はまだ---

 

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