Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.89【背水の陣】

「---来ました、アルティメギルです!!」

 

あの襲撃から、まだ2日。

思った以上の速さで、襲撃が…

 

「やはり、無理だったか」

 

桜川先生が、そう溜め息を漏らす。

愛香は起き上がるどころか、意識を取り戻すことはなかった。

ヴァイタルサインが正常であることから、死に至ることはないのだが…

 

「愛香…」

 

ただ虚しく、虚空を見上げる。

彼女に対してできる事は、祈りだけだ。

 

「行きましょう、観束君」

 

慧理那が優しく、俺の手を握った。

小さいながらも、ほのかに温かい。

 

(愛香を心配しているのは、俺だけじゃない。慧理那も桜川先生も、トゥアールだって…)

 

愛香がいない今、俺達ができる事はなんだ?

待ち続ける?

いや、違う。

俺達がツインテイルズだからこそ、できることは…

アルティメギルから、俺達の居場所を守ることだ。

 

「---あぁ。行くぜ!!」

 

やっと、決心がついた。

ツインテールだけじゃない、俺達自身のためにも---

 

「場所は富士山頂付近。フェニックスギルディ、及びテイルホワイトから連絡はありません!!」

 

先ずは、俺達で何とかしろってか…

あまり期待できないメンバーではあったが。

 

『テイルオン!!』

 

…落ち着け。

すべきことは、変わらない。

覚悟を決め、俺達は転送ゲートへと入った。

 

 

 

 

「やはり---美の四心(ビー・テイフル・ハート)でしたか」

「待っていたぞ、ツインテイルズ」

 

どうやら、ケリをつける時が来たようだ。

アルティメギル四頂軍の一角・美の四心(ビー・テイフル・ハート)

昆虫をモチーフとした、エレメリアンの集団。

 

「これが我等の、最後の戦いだ。気を引き締めろ!!」

 

クワガタムシのエレメリアンの鼓舞に、エレメリアンは気合いを入れる。

背水の陣は、あちら側も同じか…

 

「---ム、テイルブルーはいないのだな?」

「彼女はわけあってな。別に、いなくても十分」

「なめられたものだ。いや、ここまでツインテールの運命に転がされてきたのか」

 

戦闘員(アルティロイド)に混じって、エレメリアンもいる。

だが、隊長格以外ならできるはず。

 

「俺は、俺のツインテールを信じる!!」

「ならば、我等はそのツインテールを奪うまでだ!!」

 

ブレイザーブレイドを取り出し、一気に片を付ける。

そう思ったが、カブトムシのエレメリアンは片手で防ぐ。

 

「忘れるところだった。俺はビートルギルディ。この美の四心(ビー・テイフル・ハート)の隊長だ」

 

俺の体が弾かれる。

斬撃に対して、まともにダメージを負っていない。

どれだけ固いんだ、アイツは!?

 

「その軟弱な剣では、俺の体は斬れぬ!!」

「あぁそうかい。だったら---」

 

今更出し惜しみはしない。

全力で、こいつらを倒す!!

 

「ライザーチェイン!!」

 

プログレスバレッタ―を起動し、強化形態へと変える。

コイツには、本気を試してみたい。

 

「これが… 面白い!!」

 

互いに距離を詰め、俺達は戦い続ける。

ドラグギルディに見せた、ツインテール。

それ以上の力を、出して見せる!!

 

「パワーはなかなか。だが、それではつまらん」

「---言われなくても!!」

 

限界時間22秒が、迫っている。

どのみち、出し惜しみができる状況じゃない。

フォーラーチェインへと変え、今度こそ---

 

「今度はスピード勝負ときたか。なるほど、アラクネギルディが倒されるわけだ」

 

何静観してやがる!!

余裕だ、ってのか。

だったら、一気に---

 

「捕まえてしまえば、その速さも無意味」

 

ブレイザーブレイドを振った。

だが、その軌道にビートルギルディの腕があった。

俺の腕を捕まえることで、斬撃を止めた!?

 

「テイルレッド。幼子故の過ちだ。」

 

俺を、地面へ押し倒した。

その瞬間、不味いと感じた。

俺の掴まれた右腕に、嫌な感覚を感じたからだ。

 

「ガハッ---!!」

「愚策だな」

 

…体の感覚が。

全部の神経が途切れたような誤解。

金縛りとは、違う。

 

「そこでしばらく、寝ていろ」

 

…感覚が戻ってきた。

それと同時に、激痛が走る。

 

(最悪だ)

 

腕が、折れていやがる。

もうまともに、動かせない。

幸いにも、片方だが。

 

(…蒼いな)

 

身体も、自由が効かない。

俺はただ、見上げるしかできない。

…こうしてみると、意外と見ていなかったのかもな。

もしかしたら、俺は見ているようで見ていなかったものがあるかもしれない。

 

(伊織先輩だってそうだ。ただ一方的に言っているだけで、彼女を理解しようとしなかった)

 

それは、後悔。

今気付いたからといって、どうしようもない。

---彼女がいないのだから。

怪物と化し、俺達を認識してすらいなかった。

 

(…頼りきり、だった)

 

彼女に寄り添ってきたつもりが、そうじゃなかった。

ただ、彼女を頼っていた。

互いに支え合うはずだった。

 

「…"テイルグリーン"に会ったのは、いつだったかな」

 

---忘れた。

それほどまでに、彼女との付き合いは濃いものとなったいた。

勿論、ブルーやイエロー、仮面ツインテールとの付き合いがある。

 

「もし今の俺を見たら、どう言うんだろうな…」

 

『弱い』とも、『立てる?』とも言うかもしれない。

テイルグリーンとしてなら前者、伊織先輩なら後者だろう。

まぁ、どちらにおいても情けないんだが。

 

(せめて、一人で立ち上がるくらいはしねぇとな)

 

まだ、激痛がある。

だけど、それを怠惰の理由にはできない。

いつまでも寝てんじゃねぇ、俺!!

 

☆☆☆

 

「早いですが、メリークリスマスですわ!!」

 

クリスマスプレゼントを、乱暴に渡すテイルイエロー。

渡された方は、たまらず倒れていく。

イエローの装甲は次々と外れていく。

だがそれでも、全員にプレゼントを行き渡らせることはできるのか?

 

「イエローの首、貰ったぁ!!」

 

横から、飛び掛かるエレメリアン。

あまりの大群に、反応が遅れた。

 

「きゃあああ!!」

 

ヴォルティックブラスターは、まだ正面を向けている。

そうしなければ、前にいる戦闘員(アルティロイド)に押されるからだ。

その間にも、横から迫ってきていた。

 

「---なんて、言うとお思いですか?」

 

嗤った。

その時、エレメリアンは衝撃を受けた。

たまらず地面へと無様に落下した。

 

「何だと…!」

 

そして前進していた戦闘員(アルティロイド)も、足を止める。

テイルイエローの周りには、解除(パージ)されたはずの武装が浮遊していた。

まるで、お嬢様を守る護衛(ガーディアン)の様だ。

 

「…撃ち切った、とでも思いまして?」

 

散開し、再び攻撃を開始する武装。

それはまるで、荒れ狂う花吹雪のよう。

その圧倒的な力に、戦闘員(アルティロイド)は消えていく。

 

(ここまで行けば、牽制とはなるでしょう。ですが---)

 

この能力は、集中力をかなり要する。

トゥアールによる、テイルギアの強化(アップデート)の1つ。

いかに優れた能力といえど、使いこなさなければ意味がない。

 

「お下がりなさい、下郎が!!」

 

浮遊武装による、広範囲砲撃。

戦場が、爆発に包まれる。

だが、それはあくまで地上での話。

彼女の頭上を、影が通り過ぎる。

 

「不味いですわ!! 上空はノーマーク---ッ!?」

 

完全にガラ空きとなった。上部。

そこから、属性力(エレメーラ)の光線が降り注ぐ。

 

「ハハハハ!! 俺は破れ服属性(ダメージウェア)のマンティスギルディ。お前の属性力(エレメーラ)、刈り取らせてもらうぜ!!」

 

手にあるのは、大鎌。

ダークグラスパーほどではないが、当たれば大ダメージは避けられない。

イエローの攻撃に対してもひるむ様子がなく、こちらへ接近戦を仕掛けてくる。

 

「さっきまでの威勢は、どぅしたぁ!? 腰が引ぃてるぞぉ?」

 

浮遊武装を駆使して、攻撃を防ぐ。

マンティスギルディの鎌使いは、凄まじい。

刈るだけでなく、突く、叩く、斬る。

大よそ鎌の本来以上の力を引き出している。

今、彼女の頬を鎌がかすめる。

一瞬でも気が抜ければ、一気に刈られてしまう。

 

「おらよ---っと」

 

そして、最後の1つが損傷した。

もうテイルイエローを守るものは、何もない。

 

「さぁ、終わりだ!!」

 

今度こそ、終わる---!

 

「---ありゃ??」

 

鎌は、彼女に届かない。

刃先に、黒い渦がまとう。

不思議に感じたマンティスギルディは、一度鎌をしまう。

そして再び振るも、テイルイエローには届かない。

 

「どぅなってンだ!?」

「…?」

 

死を覚悟していたテイルイエロー。

目の前の光景に、しばし混乱していた。

 

(渦? なぜ、私の前に…)

「ったく、しゃーないわ」

 

そこへ、何者かの声が。

その気配が、ゆっくりと近付く。

 

「…貴様!!」

英雄(ヒーロー)は、遅れて登場する」

 

テイルホワイト。

ツインテールではなく、ポニーテール属性を持つツインテイルズ。

 

(とすると、あの渦は空間操作の---)

 

彼女がいれば---

 

「イエロー、今のうちに態勢を整えるんや!」

「---勿論ですわ」

 

ホワイトの叱咤に、イエローはようやく我に帰った。

今、自分のなすべきことをするのは---

 

「ヴォルティック・フォートレスを」

『転送、開始します』

 

テイルイエローの周囲を覆うように、再び装備される。

そのそばへ、ホワイトは降りてきた。

 

「イエロー、ちっとばかしトリッキーにやるで」

「---楽しみですわ」

 

事前に打ち合わせをしたわけではない。

彼女たちが、自分の判断で動き出す。

テイルホワイトは、上空に幾多もの渦を作りだす。

それは、空間の裂け目。

 

「今度は、裏メニューですわ!!」

 

その裂け目へ、イエローは撃ちまくる。

見た目では、爆発が起こらない。

そのために、生き残りの戦闘員(アルティロイド)は困惑する。

 

「さぁ、召し上がれ♪」

 

彼等の頭上に、新たな裂け目ができる。

そこにあるのは---

彼等の悲鳴だ。

 

「即興にしては、上出来やな」

 

先に生じた空間の裂け目には、弾丸が吸い込まれた。

吸い込むと言う事は、その裂け目自体にエネルギーを含むという行為。

いつまでも膨大なエネルギーを蓄えることができるのか?

答えは、否だ。

 

「馬鹿で、助かった」

 

"吸い込む"の対義語は、"吐き出す"。

裂け目に対しても、その定義が覆ることはない。

それ故にホワイトは、新たな裂け目を『捌け口』としたのだ。

 

「参った参った。まさか、一気に劣勢になるとは---」

「舐め過ぎていた。これはボクの失態でもある」

 

あの銃撃の雨を生き残った者は、少数。

マンティスギルディ、スタッグギルディ、そして少数の戦闘員(アルティロイド)

 

「さぁ、決めるで」

「はい!!」

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