「---来ました、アルティメギルです!!」
あの襲撃から、まだ2日。
思った以上の速さで、襲撃が…
「やはり、無理だったか」
桜川先生が、そう溜め息を漏らす。
愛香は起き上がるどころか、意識を取り戻すことはなかった。
ヴァイタルサインが正常であることから、死に至ることはないのだが…
「愛香…」
ただ虚しく、虚空を見上げる。
彼女に対してできる事は、祈りだけだ。
「行きましょう、観束君」
慧理那が優しく、俺の手を握った。
小さいながらも、ほのかに温かい。
(愛香を心配しているのは、俺だけじゃない。慧理那も桜川先生も、トゥアールだって…)
愛香がいない今、俺達ができる事はなんだ?
待ち続ける?
いや、違う。
俺達がツインテイルズだからこそ、できることは…
アルティメギルから、俺達の居場所を守ることだ。
「---あぁ。行くぜ!!」
やっと、決心がついた。
ツインテールだけじゃない、俺達自身のためにも---
「場所は富士山頂付近。フェニックスギルディ、及びテイルホワイトから連絡はありません!!」
先ずは、俺達で何とかしろってか…
あまり期待できないメンバーではあったが。
『テイルオン!!』
…落ち着け。
すべきことは、変わらない。
覚悟を決め、俺達は転送ゲートへと入った。
「やはり---
「待っていたぞ、ツインテイルズ」
どうやら、ケリをつける時が来たようだ。
アルティメギル四頂軍の一角・
昆虫をモチーフとした、エレメリアンの集団。
「これが我等の、最後の戦いだ。気を引き締めろ!!」
クワガタムシのエレメリアンの鼓舞に、エレメリアンは気合いを入れる。
背水の陣は、あちら側も同じか…
「---ム、テイルブルーはいないのだな?」
「彼女はわけあってな。別に、いなくても十分」
「なめられたものだ。いや、ここまでツインテールの運命に転がされてきたのか」
だが、隊長格以外ならできるはず。
「俺は、俺のツインテールを信じる!!」
「ならば、我等はそのツインテールを奪うまでだ!!」
ブレイザーブレイドを取り出し、一気に片を付ける。
そう思ったが、カブトムシのエレメリアンは片手で防ぐ。
「忘れるところだった。俺はビートルギルディ。この
俺の体が弾かれる。
斬撃に対して、まともにダメージを負っていない。
どれだけ固いんだ、アイツは!?
「その軟弱な剣では、俺の体は斬れぬ!!」
「あぁそうかい。だったら---」
今更出し惜しみはしない。
全力で、こいつらを倒す!!
「ライザーチェイン!!」
プログレスバレッタ―を起動し、強化形態へと変える。
コイツには、本気を試してみたい。
「これが… 面白い!!」
互いに距離を詰め、俺達は戦い続ける。
ドラグギルディに見せた、ツインテール。
それ以上の力を、出して見せる!!
「パワーはなかなか。だが、それではつまらん」
「---言われなくても!!」
限界時間22秒が、迫っている。
どのみち、出し惜しみができる状況じゃない。
フォーラーチェインへと変え、今度こそ---
「今度はスピード勝負ときたか。なるほど、アラクネギルディが倒されるわけだ」
何静観してやがる!!
余裕だ、ってのか。
だったら、一気に---
「捕まえてしまえば、その速さも無意味」
ブレイザーブレイドを振った。
だが、その軌道にビートルギルディの腕があった。
俺の腕を捕まえることで、斬撃を止めた!?
「テイルレッド。幼子故の過ちだ。」
俺を、地面へ押し倒した。
その瞬間、不味いと感じた。
俺の掴まれた右腕に、嫌な感覚を感じたからだ。
「ガハッ---!!」
「愚策だな」
…体の感覚が。
全部の神経が途切れたような誤解。
金縛りとは、違う。
「そこでしばらく、寝ていろ」
…感覚が戻ってきた。
それと同時に、激痛が走る。
(最悪だ)
腕が、折れていやがる。
もうまともに、動かせない。
幸いにも、片方だが。
(…蒼いな)
身体も、自由が効かない。
俺はただ、見上げるしかできない。
…こうしてみると、意外と見ていなかったのかもな。
もしかしたら、俺は見ているようで見ていなかったものがあるかもしれない。
(伊織先輩だってそうだ。ただ一方的に言っているだけで、彼女を理解しようとしなかった)
それは、後悔。
今気付いたからといって、どうしようもない。
---彼女がいないのだから。
怪物と化し、俺達を認識してすらいなかった。
(…頼りきり、だった)
彼女に寄り添ってきたつもりが、そうじゃなかった。
ただ、彼女を頼っていた。
互いに支え合うはずだった。
「…"テイルグリーン"に会ったのは、いつだったかな」
---忘れた。
それほどまでに、彼女との付き合いは濃いものとなったいた。
勿論、ブルーやイエロー、仮面ツインテールとの付き合いがある。
「もし今の俺を見たら、どう言うんだろうな…」
『弱い』とも、『立てる?』とも言うかもしれない。
テイルグリーンとしてなら前者、伊織先輩なら後者だろう。
まぁ、どちらにおいても情けないんだが。
(せめて、一人で立ち上がるくらいはしねぇとな)
まだ、激痛がある。
だけど、それを怠惰の理由にはできない。
いつまでも寝てんじゃねぇ、俺!!
☆☆☆
「早いですが、メリークリスマスですわ!!」
クリスマスプレゼントを、乱暴に渡すテイルイエロー。
渡された方は、たまらず倒れていく。
イエローの装甲は次々と外れていく。
だがそれでも、全員にプレゼントを行き渡らせることはできるのか?
「イエローの首、貰ったぁ!!」
横から、飛び掛かるエレメリアン。
あまりの大群に、反応が遅れた。
「きゃあああ!!」
ヴォルティックブラスターは、まだ正面を向けている。
そうしなければ、前にいる
その間にも、横から迫ってきていた。
「---なんて、言うとお思いですか?」
嗤った。
その時、エレメリアンは衝撃を受けた。
たまらず地面へと無様に落下した。
「何だと…!」
そして前進していた
テイルイエローの周りには、
まるで、お嬢様を守る
「…撃ち切った、とでも思いまして?」
散開し、再び攻撃を開始する武装。
それはまるで、荒れ狂う花吹雪のよう。
その圧倒的な力に、
(ここまで行けば、牽制とはなるでしょう。ですが---)
この能力は、集中力をかなり要する。
トゥアールによる、テイルギアの
いかに優れた能力といえど、使いこなさなければ意味がない。
「お下がりなさい、下郎が!!」
浮遊武装による、広範囲砲撃。
戦場が、爆発に包まれる。
だが、それはあくまで地上での話。
彼女の頭上を、影が通り過ぎる。
「不味いですわ!! 上空はノーマーク---ッ!?」
完全にガラ空きとなった。上部。
そこから、
「ハハハハ!! 俺は
手にあるのは、大鎌。
ダークグラスパーほどではないが、当たれば大ダメージは避けられない。
イエローの攻撃に対してもひるむ様子がなく、こちらへ接近戦を仕掛けてくる。
「さっきまでの威勢は、どぅしたぁ!? 腰が引ぃてるぞぉ?」
浮遊武装を駆使して、攻撃を防ぐ。
マンティスギルディの鎌使いは、凄まじい。
刈るだけでなく、突く、叩く、斬る。
大よそ鎌の本来以上の力を引き出している。
今、彼女の頬を鎌がかすめる。
一瞬でも気が抜ければ、一気に刈られてしまう。
「おらよ---っと」
そして、最後の1つが損傷した。
もうテイルイエローを守るものは、何もない。
「さぁ、終わりだ!!」
今度こそ、終わる---!
「---ありゃ??」
鎌は、彼女に届かない。
刃先に、黒い渦がまとう。
不思議に感じたマンティスギルディは、一度鎌をしまう。
そして再び振るも、テイルイエローには届かない。
「どぅなってンだ!?」
「…?」
死を覚悟していたテイルイエロー。
目の前の光景に、しばし混乱していた。
(渦? なぜ、私の前に…)
「ったく、しゃーないわ」
そこへ、何者かの声が。
その気配が、ゆっくりと近付く。
「…貴様!!」
「
テイルホワイト。
ツインテールではなく、ポニーテール属性を持つツインテイルズ。
(とすると、あの渦は空間操作の---)
彼女がいれば---
「イエロー、今のうちに態勢を整えるんや!」
「---勿論ですわ」
ホワイトの叱咤に、イエローはようやく我に帰った。
今、自分のなすべきことをするのは---
「ヴォルティック・フォートレスを」
『転送、開始します』
テイルイエローの周囲を覆うように、再び装備される。
そのそばへ、ホワイトは降りてきた。
「イエロー、ちっとばかしトリッキーにやるで」
「---楽しみですわ」
事前に打ち合わせをしたわけではない。
彼女たちが、自分の判断で動き出す。
テイルホワイトは、上空に幾多もの渦を作りだす。
それは、空間の裂け目。
「今度は、裏メニューですわ!!」
その裂け目へ、イエローは撃ちまくる。
見た目では、爆発が起こらない。
そのために、生き残りの
「さぁ、召し上がれ♪」
彼等の頭上に、新たな裂け目ができる。
そこにあるのは---
彼等の悲鳴だ。
「即興にしては、上出来やな」
先に生じた空間の裂け目には、弾丸が吸い込まれた。
吸い込むと言う事は、その裂け目自体にエネルギーを含むという行為。
いつまでも膨大なエネルギーを蓄えることができるのか?
答えは、否だ。
「馬鹿で、助かった」
"吸い込む"の対義語は、"吐き出す"。
裂け目に対しても、その定義が覆ることはない。
それ故にホワイトは、新たな裂け目を『捌け口』としたのだ。
「参った参った。まさか、一気に劣勢になるとは---」
「舐め過ぎていた。これはボクの失態でもある」
あの銃撃の雨を生き残った者は、少数。
マンティスギルディ、スタッグギルディ、そして少数の
「さぁ、決めるで」
「はい!!」