その少年、一応ヤクザなり。   作:エタノールの神様

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僕らは翼を持っている。

なら、飛び立とうではないか。

(意味不明)


プロローグ

無戸籍。

 

 

それは非常に辛いものである。

 

 

学びたくても学校に行けず、怪我をしても秒気になっても病院にも行けず。

 

 

しかも僕の場合未成年だから働くこともできない。

 

 

この世は、非情だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんねサトシ、許してなんて言わないから…」

 

 

僕が母親から聞いた最後の言葉はこれだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は捨てられたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「親分!橋の下の段ボールのなかにガキが入ってますぜ!」

 

「どうしやすか?」

 

「車にのせろ。手厚く歓迎してやれ」

 

 

これが新しい家族との馴れ初めだ。

 

 

 

 

 

 

 

ヤクザ、「浮浪児組」

 

 

 

 

 

無戸籍だとか捨てられたとかそういうガキを手厚く迎えているヤクザだ。

構成員の大人たちは衣食住ちゃんと与えてくれるし、勉強もさせてくれる。夢を叶えようとすれば全力で応援、サポートしてくれる(でも過保護ではないので一旗挙げようとするならそれなりの努力は必要)いい組織だ。

 

 

 

 

ただ、このヤクザの図書館。(なぜヤクザが金にならないのに図書館を構成員と保護した子供のためだけに運営しているかなんて考えてはいけない。)

 

 

 

国立国会図書館もビックリの蔵書量だ。組長さんいわく、「先代やその先代、もとをたどれば創始者までもの歴代組長みんなが本の虫だったから予算繰越金からちょいちょい金を引っ張り出して本買っていったらこうなった、かくいう俺も本の虫だがな」らしい。すごいな歴代組長さん、どんだけ金稼いでるんだ。

 

なかには建物や船、飛行機の設計図や軍の資料なんかもある。設計図なんて値段すんごい高かっただろうに…

 

僕はその中でも日本軍の研究資料をかなり読んでいた。まさかの震電や橘花、天雷や陣風の資料もあった。どっから持ってきたんだよ…終戦と同時に焼かれたなんて噂もあったのに…

 

 

僕はその資料の中でも、「航空機実験用特地イジツ」なる場所の資料をよく読んでいた。

 

そのイジツというのは、空中の磁場とか重力線や放射線などをうんたらかんたらしたあとにズバーンドカーンして三つの輪っかを作り、それを重ねるとできる異次元ワープトンネル、通称「穴」の先にある世界。

 

そこでは新型の航空機の実験や新兵の訓練、更に石油や鉄、銅、ニッケルやボーキサイトなどの軍需物資の採掘、ときどき迷いこんだ米軍機との空戦(ただし日本側の圧倒的優勢)が行われたという。

 

しかし敗色濃厚になり、降伏することが決まって玉音放送の放送日程が決まると、日本軍の研究者などイジツ派遣人員はさっさと帰還した。しかし工場や滑走路、試作機などは置いたままのようだ。持ち帰った記録がない。

 

 

1945年8月14日。その日付より後は、イジツに関する資料は途絶えている。自衛隊の極秘資料(なんでヤクザの図書館にあるのかは知らないが)にも一切それらしいことさえも記載がないことからこの情報は継承されなかったのだろう。

 

しかしその後も航空自衛隊のF86DやF1、F4EJなどが墜落でも亡命でもなく消えている。最近だと青森沖でF35Aが行方不明になったのが記憶に新しい。

 

 

もし、それらの自衛隊機がイジツに繋がる穴に迷いこんだのだとしたら。

 

一応僕も飛行機に乗れさえすればイジツに行けるわけであり、そこには日の目を見ることもなかった帝国陸海軍の航空機があるかもしれない。陣風や火龍、景雲改、はたまた富岳なんてものが見れたらどんなに素晴らしいだろう。

 

いや、妄想に更けるのはやめよう。そんなことをあるわけないか。この資料に書いてあることが本当だったらそれはすごいことだ。

 

「おう!さとんちょ!なに読んでんだ?」

 

ひっ!最近組の経済活動課に入ってきた若いおっちゃんだ!札束で叩かれる!

 

「逃げんなよさとんちょ…で、なに読んでんだ?」

 

「旧帝国軍の資料。」

 

やっぱりこの人苦手だ。

 

「ふーん。イジツについてねえ…」

 

考え込んでる…なにかあるのかな

 

「俺のひいお爺ちゃんさ、イジツで働いてたらしいんだよね。」

 

「え?」

 

「ほんとだよ?」

 

「証拠は?」

 

「うーんとねえ。この写真。」

 

そう言って新入りのおっちゃんは二枚の写真を手帳から取り出した。

 

一枚はアメリカの西部劇を連想させる荒野でおそらく震電と思われる戦闘機の主翼の上にたつイケメンの写真。もう一枚は泣きながら十六条旗と日章旗のかかったおそらく景雲と思われる機体を焼くイケメンたちの写真であった。

 

「俺のひいお爺ちゃんさ、イジツでテストパイロットしてたらしいんだ。」

 

「イジツで?」

 

「そう。イジツで。」

 

「どんな飛行機に乗ってたの?」

 

「さあ。」

 

「さあって…」

 

「でも量産性の限界とスピードの限界を両方追い求めた飛行機に乗ってた、ってだけは聞いてる。」

 

「どんな飛行機だったんだろ…」

 

ドイツのメッサーシュミットより角張った飛行機なのかな?それとも量産性の高い飛行機(日本製)なのかな?

 

「見にいってみれば?」

 

「え?」

 

「それなりの覚悟があるなら、の話だけど。」

 

なんだろう。イジツにいきたくなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーうサトシ!」

 

「ハイ!なんですか!組長!」

 

「ガキがそんなかしこまらなくていいから。もっとガキがらしくしてていいんだぞ。」

 

良かった…いつもの組長さんだ…

 

「あとお前明日から組の女どもと北海道行きが決定したから。荷物まとめとけ。」

 

 

 

 

「へ?」

 

 

 

 

 

唐突な島流しが決まった…




流罪になったサトシくん。さてどうなるのか。
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