特殊艦隊の指揮官はやっぱり特殊だった   作:メンツコアラ

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Episode 1 出会い

 すべての命の始まりの場所、海。今も多くの命が住まうその場所は暗雲が立ち込み、硝煙と鉄の焦げる匂いが充満していた。

 唯一小破で済んでいる戦艦の中では、男たちが焦りや恐怖、もしくはその両方を顔に浮かべながら忙しなく動いている。

 

「三番艦、四番艦大破ッ! 二番艦轟沈ッ!」

 

「艦長ッ! このままでは我々もやられますッ! 急いで撤退をッ!」

 

「バカもんッ! ここで撤退すれば、本土が危険だッ! まもなくアズールレーン本隊のKAN-SENか到着するッ! それまで───」

 

 次の瞬間、艦が衝撃と轟音と共に大きく揺れた。

 

「左側面被弾ッ! 次、攻撃を受ければ「レーダーに反応ッ! 敵艦載機接近ッ!」何だってッ!?」

 

「急いで迎撃しろッ! 対空射撃用意ッ!!」

 

「駄目ですッ! 先程の攻撃で機関砲やミサイルがイカれてしまい……」

 

「くッ…ここまでかッ……!」

 

 艦長と呼ばれていた男は悔しさに唇を噛む。

 そうしている間にも艦に艦載機は近づき、ついに爆弾をミサイルを発射。黒塗りのミサイルはまっすぐに艦へ飛び、艦と共に中に居る者たちの命を刈り取ろうとする。

 男たちは来るであろう衝撃や痛みに耐えるため、ギュッと目を固く閉じる。

 数秒後。男たちの耳が爆音を捉える。

 ……だが、

 

「───……え?」

 

 男たちは無事だった。間違いなく、ミサイルは自分達に命中する筈だったのに。突然起きた状況に困惑する男たち。そんなとき、艦の通信機から男の声が流れる。

 

『よく耐えてくれた。後は任せてくれ』

 

「な、なんだと…? 貴様、何も「レーダーに反応ありッ! 何かが本土から高速で接近ッ!」な、なにッ!? ミサイルかッ!?」

 

「分かりませんッ!」

 

「接触まで3……2……1……来ますッ!!」

 

 次の瞬間、艦の上を何かが高速で通り過ぎた。艦長は急いで窓から確認する。そんな彼の目が捉えたのは、

 

「紅い……軌跡……?」

 

 空に縦横無尽に描かれた紅い軌跡。

 恐らく、敵艦載機の物だろう。その軌跡が通った後には爆発が起こっていた。

 軌跡は空の敵を片付けると敵艦隊に突撃。

 男たちが撤退する間も無く、あれだけ苦しめた敵が壊滅した。

 爆煙が立ち込める中、宙に浮かんでその光景を見つめる紅い軌跡を描いた何か。その戦い方、その姿から艦長はその何かをこう呼んだ。

 

 ──(くれない)の彗星、と。

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 大航海時代。ロマンを求めて大海原へと進出した人類は、やがて大海の覇権を我が物とするために争い始める。だが、真の敵は海の向こうからではなく、世界の外から現れる。

 

 その敵の名はセイレーン。当初の人類の技術を遥かに超える力を持ったこの敵は瞬く間に世界の制海権を奪い、海に人類の居場所は無くなった。

 

 しかし、人類も黙っているだけではなかった。世界は陣営を越えた大連合『アズールレーン』を直ぐ様結成。メンタルキューブより造られた人の形をした兵器『KAN-SEN』を従え、人類は海を取り戻した。

 

 だが、セイレーンの侵略はまだ続いている。

 一度は分裂を起こし、ユニオンとロイヤルを中心とした『アズールレーン』と重桜と鉄血を中心とした『レッドアクシズ』とで対立していたが、今は互いに手を取り合い、セイレーンの脅威に立ち向かっている。

 そして、今日も一人のKAN-SEN…『Z23(ニーミ)』が大本営から他の艦隊に配属される事になった。

 

 ───だが…

 

「……どうして…──どうして待ち合わせが太平洋のど真ん中なんですかぁぁぁぁぁッ!!!?」

 

 Z23は叫ぶが、大海原のど真ん中でそんな彼女の叫びを聞く者は無く、ただ虚しさだけが残る。

 

(普通、こういった場合は港ではないのですか…なんで海のど真中で…はぁ……せっかくファイターズに異動することになったのに…)

 

 Z23がこれから配属される先は大本営直属の特殊艦隊『ファイターズ』。かつて、たった3日で大海の一部の制海権を取り戻した凄腕の艦隊。曰く、そこに所属したKAN-SENは例え駆逐艦でもたった一人で一艦隊を相手出来るようになるだとか。曰く、拠点を持たないだとか。曰く、最前線の大型鎮守府の本隊に完全勝利しただとか。

 無論、ただの噂でしかないのだが、それでもZ23はその噂を信じたかった。

 

(ようやく異動届けが受理されたんだ。こんな私でも強くなれるチャンスが──)

 

 突如、Z23の聴覚が風を切る音を捉え、彼女は咄嗟の判断で回避。次の瞬間には、先程まで彼女が立っていた場所に水柱が立つ。

 

「セイレーンッ!」

 

 先程までの位置から南方向に20㎞。大海に浮かぶ黒い影の群れ。その先頭にタカアシガニを彷彿とさせる武装を纏い、海面に立つ白い人影。間違いなくセイレーンだった。

 

「くッ……!」

 

 こんな距離になるまで気づかなかった自分に後悔しながら、直ぐ様距離を取ることを選択。だが、雨のように降り注ぐセイレーンの砲撃からは逃げられず、幾つか被弾してしまう。

 沈む事はないが、海面の上で転んでしまうZ23。

 そんな彼女に、無慈悲にも止めを差そうと人型のセイレーン『スマッシャー』が砲口を向ける。

 立ち上がろうとするも()()()()()()バランスが取りづらく、尚且つ揺れる水面だと更に立ち上がるのが難しくなってしまう。

 

(あ…───)

 

 Z23の聴覚が拾った砲撃音。視線だけでも向けてみれば、砲弾がまっすぐに向かってきている。

 ここで終わりか…。そう彼女が諦め、目を閉じた時だった。

 

 

 

 

 ───失礼します。

 

 

 

 

 

「───……え?」

 

 女性の声。そして、水に着弾した時に聞こえる轟音。だが、痛みはいつまで経ってもやってこない。恐る恐る目を開けてみると、そこには一人の女性が立っていた。

 

「鉄血の1936A型駆逐艦Z23様ですね? 御迎えが遅れてしまい、申し訳ございません。私、ファイターズ所属のベルファストと申します。以後、お見知り置きを」

 

 『ベルファスト』。Z23はその名に聞き覚えがある。実際、彼女が元居た鎮守府でも同じKAN-SENがいた。恐らく、目の前に立つ女性はロイヤル・エディンバラ級軽巡洋艦二番艦ベルファストの数ある同位体の一人なのだろう。

 だが、Z23は彼女がベルファストであると、どうしても信じきる事が出来なかった。

 

(なに…あの艤装、普通じゃないッ…!?)

 

 彼女が纏う物。元はメイド服なのだろう。ロイヤル艦では良く見かけるものだ。だが、その上に纏っている鎧が彼女の知るベルファスト…いや。KAN-SENの物ではなかった。

 一部破損したアーマーヘッド。背中左側に寄せられた一対の翼に、右側にマウントされた身の丈ほどの大型ライフル。胸部と胴体を包む追加装甲。両肩のショルダーアーマーは左右非対称で、左肩のアーマーからはたなびく透明ピンクのマント。脚部のレッグアーマー背面には掌サイズの小さなバーニア。

 どれもこれも、Z23の知る艤装ではなかった。

 

「そこでじっとしていて下さい。すぐに片付けますので」

 

「ま、まさか一人でッ!? そんなの「不可能と?」ッ……」

 

「不可能ではありません。可能だからこそ、私はここに居るのです」

 

 彼女…ベルファストは左肩のマント『ビームマント』と同じ光を刀身に宿す武器『ビームレイピア』を構える。

 

「ベルファスト。ウイングフェニーチェ──参りますッ!!」

 

 

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