Z23がファイターズに配属されてから早八日。彼女はエンドウに課せられた訓練として、ベルファストの指導の元で
「そちらの角、ゴミが拭き取れていませんよ」
「はいッ! すぐにやり直しますッ!」
ベルファストの叱咤を受け、直ぐ様取りかかる
何故、このような事になったのか。Z23は一週間前…自分が配属された次の日の出来事を思い返した。
『家事、ですか…?』
『そう。今日からZ23には義手を着けてもらうから、家事をしてそれに慣れてくれ』
『義手に慣れるのは分かります。しかし、何故家事なのですか? 戦闘訓練の方がよろしいのでは?』
『そう簡単じゃねぇの。ニーミは最初から右腕がない。つまり、右腕があるときの感覚を知らない。そんな奴がいきなり腕を与えられても使える可能性は低い。だからこその家事だ。とある特撮の言葉に『暮らしの中に修行有り』って言葉がある。普通生活が出来ないと腕を使いこなすことは出来ないの』
(──そう言われ、あの時は納得しましたが、何故メイド服を…あ、ベルファストさんのせいでしたね)
『私の指導の元で家事をこなすのです。完璧なメイドにして見せましょう。まずは形から。これを来て作業を行うように』
(言われるがままに着たけど、これって着る意味があったのかしら?)
「ニーミ様、考えるよりも手を動かして下さい」
「は、はいッ!(ううぅ…指揮官がくれた義手はすごいけど、本当に訓練になってるのぉッ!?)」
Z23は与えられた義手を懸命に動かし、モップを手に奮闘するのだった。
(だいぶ手際が良くなりましたね)
テキパキと掃除するZ23を見て、心の中で称賛するベルファスト。そんな時、耳に着けていたイヤホンマイク型無線機に通信が入る。
『お疲れ~。どう? ニーミの様子』
「お疲れ様です、指揮官様。ニーミ様は順調…というよりも順調過ぎる程成長していますよ。はじめの頃は鉄だろうとガラスだろうと握り潰していたニーミ様が、今ではモップを巧みに操っております」
エンドウが作った義手は接続部に最も近い神経とを繋げ、神経が脳からの指示を伝達する際に流れる僅かな信号を元に動かし、通常の腕と同じ動きが出来る……まあ、身も蓋もない言い方をするなら『ハ◯レン』の義手である。
ここで問題となるのが使用者だ。戦闘等で腕を無くした者の場合、元あった腕の感覚を覚えている為、そこまで期間を置くことなく扱える。だが、Z23のような先天的に無い場合、その感覚を知らないために上手く扱えない。これが戦闘になれば大きな支障となる。
故の家事である。
多彩の道具を使う家事は使う道具、行う行動によって力加減が変わる。これを利用して義手の力加減を覚えてもらおうとしているのだ。
「本日で一週間。これなら次のステップに進んでもよろしいかと」
『オッケー。なら昼食後、マギィさんの所でメディカルチェック。その後にシミュレーションルームへ』
「かしこまりました」
通信が終わり、ちょうど掃除を終わらしたZ23の元に行くベルファストだった。