学戦都市アスタリスク 消失の魔術師   作:ネタバレOK派

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〜《鳳凰星武祭》
星導館の転入生


 

「つっまんねえな......」

 

 そう呟く紺色の髪をした少年、雲崎理空。紺色の髪に大きな金色の瞳と中性的な見た目で整った顔立ちをしているが怠そうな雰囲気で全て台無しになっている。

 

「そう言うなって。楽しくやろうぜ、楽しくよお!理空!」

「長居する気もなかったってのに仲良くもない奴に声かけられてここに留まる羽目になったんだぞ?楽しくなんかやれねえっての、ロドルフォ」

 

 愉快そうに理空と会話するのはレヴォルフ黒学院の序列二位ロドルフォ•ゾッポ。《砕星の魔術師(バサドーネ)》の二つ名を持っている。

 歓楽街(ロートリフト)最大のマフィアである『オモ・ネロ』のトップのロドルフォはいつものごとく歓楽街に来ていたわけだが理空は時々カジノに遊びに来る程度で今日は少し稼いで帰ろうととしたところロドルフォと鉢合わせして引き止められてとある建物近くで雑談(になっていない雑談)をしているという最中であった。

 

「そもそもお前仲良い奴とかいないだろ?友人0だしな」 

「人のこと言えないだろ。というかうちで友人とか求めること自体間違っている」

「はっはー!違いねぇ!ところでお前序列戦とか申し込まねぇの?少しは時間潰れるぜ?」

「お前含めてあと3人しか上がいないしな。オレは戦闘狂じゃないし」

 

 理空も同じく序列四位の《消失の魔術師(ヴェイカント)》の二つ名を持つ学生である。適当に過ごすつもりが成り行きで決闘を当時の四位から挑まれ勝ってしまったため《冒頭の十二人(ページワン)》になってしまった。特権が大きいから返上もしていないのだが。

 

「お前こそ《王竜星武祭(リンドブルス)》とか出ないの?今のところ一番あの絶対王者に勝てる可能性あると思うけど?」 

「気分が乗らなかったからな...けど今度のやつは三連覇を防ぐために各学園から色んなやつが出て大乱戦になりそうだからな。楽しそうなら次回は出る」 

「ふーん。まぁオレは興味ないけど。精々頑張れよ」

 

 そう言って立ち上がる。 

 

「おいおい、もう行くのか?久しぶりに一戦交えようかと思ってたのによ」 

「お前の相手するのは疲れるから嫌。帰ってダラダラする」

 

 周りの万応素(マナ)が吹き荒れた。そう思った時にはもう理空はロドルフォの視界から消えていた。 

 

「相変わらず便利な能力だぜ」 

 

 そう呟いたロドルフォの声は誰にも聞こえなかった。

 

 

 言葉通り寮の一室でダラけてニュースを見る理空。ハプニングでも起きてないかと期待して端末を弄くる。

 

(何か面白い話題はないのかねぇ——おっ)

 

 早速面白そうな記事が見つかった。 

 

『転入生、初日から《華焔の魔女(グリューエンローゼ)》の胸を揉む⁉︎』

 

 別に知り合いというわけでもないのだがそれでもあのお姫様が転入生と決闘をしている事に興味が湧いてきた。 

 動画を再生してみると中々見応えのある勝負が繰り広げられている。

 転入生は《魔術師(ダンテ)》ではない様だがそれなりの剣術を持っている。

 

(にしても反応速度と身体の動きがアンバランスだな。何か制限でもかかっているのか?)

 

 楽しみながらも違和感を感じてしまう。

  

(転入生の名前はと...天霧綾斗か。天霧?聞いたことあるような...)

 

 そう思った途端タイトル通りのシーンが出る。普通の生徒ならここに注目するのだろうが、理空が注目したのはその前だった。 

 

(第三者の横槍か。にしてもこんなあからさまにやるとはな)

 

 自分の学園の生徒を潰したところで何のメリットもない。時々上に上がりたいがためにやる人間もいるかもしれないが今回の場合は違うようだった。

 

 この他にも気になる記事があった。

 

『《華焔の魔女》、謎の襲撃犯を撃退!』

 

 星導館学園では確か《鳳凰星武祭(フェニクス)》に出る有力選手が怪我をするという事故が相次いでいる。偶然というには少し出来過ぎでいると感じていた。となると考えられるのは他校の介入ということになる。 

 世間の目を気にする聖ガラードワース学園とクインヴェール女学園は論外。となると、残るはレヴォルフと界龍(ジェロン)第七学院とアルルカント・アカデミーのどれか。

 

 

(この3つの中で一番怪しいのは——)

 

 

 理空は思考する。界龍はそもそもそういう勝負を仕掛けるタイプではないため可能性は低いと言える。レヴォルフは怪しいが得意とするのは《王竜星武祭》であるためタイミングがおかしい。

 よって今回の黒幕はアルルカント・アカデミー。

 

 

(何を企んでんだか)

 

 特に何か思うところがあるわけでもないが、純粋に疑問が湧いてきた。卑怯だのなんだのと言うつもりもない。

 やられる方、嵌められる方が間抜けなだけ。

 それが理空の考え方だった。

 一通り思考したところで今日はもう寝ることにした。

 

「明日久しぶりに出掛けてみるか。運が良ければ実物を見れるかもしれんし」 

 

 

 翌日。腹の音を鳴らしながら目を覚ます。時計を見てみるとすでに11時半を回っている。予想以上に眠りすぎたためもう朝飯はいいやと思い外の飲食店で済ますことにした。変装をして外に出る。

 

 ファストフード店でバーガーを齧る。星導館の近くに行って天霧綾斗が寮から出てくるのを待つつもりがまさかの寝坊で頓挫してしまった。

 今日は諦めようと思った時である。 

 

「それにしてもユリスって本当にお姫様?」

 

 穏やかな声が聞こえてくる。なんとなく視線を向けてみると天霧綾斗とユリス・アレクシア・フォン・リースフェルトが一つ間を挟んで昼食を食べていた。 

 

(マジか、ラッキー)

 

 そう思いながら改めて観察してみる。

 星辰力(プラーナ)の総量はかなり多い。ただ漏れ出ている量が少な過ぎる。意図的に抑えている可能性もなくはないが.....

 

(やっぱ何かしら制限がかかってんな。誰が?何のために?制限が完全に外れた時の強さは?純星煌式武装(オーガルクス)は適合していないの——)

 

「いいから俺と戦えって言ってんだよ!」 

 

 大声で思考が途切れる。

 筋骨隆々な大男がユリスに突っかかっている。

 

(うるせえな)

 

 内心毒付きながら無視して食事を進めようとする。 

 

「ふざけんな!俺様が卑怯者だと⁉︎だったらテメエから叩き潰してやるよ!」

 

 大男は煌式武装出して地面に叩きつける。 

 チッと小さく舌打ちをする。さすがに耳障り過ぎる。どうにかしてあの男を追い出したいところだが、こんなくだらないことで能力を使うのは馬鹿らしい。取るとしたら別の手段だが、煌式武装を使ってしまえば警備隊が駆けつけてきて面倒になる。なら取れる選択肢は一つだ。  

 

「俺様を卑怯者呼ばわりしておいて逃げるっての————っ⁉︎」

「「「「⁉︎」」」」

 

 殺気を一瞬向ける。それだけ。特に証拠も残らない。

 大男が理空の方に顔を向ける。 

 

「おっ、お前......!」 

「何だよ?オレが何かしたか?関係ないオレまで巻き込むな。そもそもここは飲食店なんだから騒ぐな。飯食わないならさっさと帰れ」

「ぐっ、くく.....」

 

 唸りながら睨む大男。

  

「レ、レスター!もうよそうよ!レスターが正々堂々戦うのは知ってるから!」

「そうですよ!決闘の隙を伺う様な卑怯なマネ、レスターさんがするはずがありません!」

 

 取り巻き二人が大男を宥めながら出て行く。

 どうにか上手くいった様である。 

 

「ありがとう。助かったよ」 

 

 綾斗が声をかけてくる。 

 

「何の話だかさっぱりだな」 

「とぼけるならそれでいいけど」

「助けてくれと頼んだ覚えはないのだがな」 

「ちょっ、ユリス.....」

 

 噂以上にプライドが高いお姫様である。なんて能天気なことを考えながらわかりきっていることを聞いてみる。

 

「例の星導館の転入生か?お前」

「あ、うん。そうだよ。えっ、知ってるの?」 

 

 こいつ記事見てないのか?と疑問を持ちながら悪戯心が同時に湧いてきた。 

 

「ああ、なんせそこのお姫様の胸を揉んだってことで有名だからな」

 

 爆弾を落とす。 

 二人ともみるみる顔が赤くなっていく。 

 

「そ、その話を思い出させるな!」 

「あっ、あれは違くて!」 

「いやいや、転入早々やるなと感心したぞ。ラノベの主人公みたいだなお前」 

「そっ、そんなつもりじゃなくて!」

 

 反応を楽しんだところで質問してみる。

 

「で、お前らは何してたんだ?デート?」

「違う!」 

「随分と必死だなぁ、オイ」 

「だから.....!」 

「真面目な話、何してたんだよ?大して深い関係でもないだろ?」 

 

 深い関係でないことがわかっているならデートでないことは分かっているだろう、という文句は飲み込んでさっき助けてくれたのは事実なので教えることにした。コホンと咳払いをして答える。

 

「街の案内だ。こいつのな。その件での礼でな」 

「胸揉まれた礼に?」

「そんなわけがないだろう!」

「じゃあ何の礼?映像しか見てないからわかんないんだけど?」

「そっ、それは......」 

 

 二人とも口籠る。横槍での件だと言うことは予想が付いていたがわざと聞くあたり理空も相当性格が悪い。

 目を合わせて話し始める。

 

 

 結論から言うと、ほとんど予想通りだった。決闘の横槍から庇ってくれた礼として学園内と街の案内を頼まれたらしい。 

 ただこの様子だと黒幕がアルルカントということには気付いて無さそうだった。

 教えてやるかどうか迷ったがやめにした。さっきの奴らに不可解なことを言っていた奴がいたことにユリスも気付いている様子だったから。 

 これで潰れるようならそれまでの奴らである。

 そう結論付けた。

 

「改めて、天霧綾斗だよ。よろしくね」 

 

 自分から自己紹介をしてくるあたり律儀な人間であることが伺える。

 

「雲崎理空だ。レヴォルフ高等部1年」

 

 適当に返しておく。

 

「綾斗。早く行くぞ。少し長居し過ぎたからな」 

「あ、うん。理空も良かったら一緒にどう?」

「あ?あー....」

 

 綾斗を観察できるのは願ってもないことではあるが....

 ユリスが警戒心剥き出しでいるためどうするか迷う誘いである。 

 

「んじゃご一緒するわ」

 

 ユリスを揶揄うのも楽しそうだったため同伴することにした。 

 

「何かご不満でも?お姫様」 

「....別にそんなものはない。それとお姫様と呼ぶのはやめろ。私にはユリス・アレクシア・フォン・リースフェルトという名前がある」 

「いやお前だけ自己紹介してなかったからだけど」 

「んぐっ...う、うるさい!早く行くぞ!」

 

 

「これで一通り案内は終わったな」

「あ、うん。ありがとう」

「礼には及ばん。借りを返しただけだ」

「........」

 

 あれから観察してみたもののわかったことは少なかった。これ以上は時間が進むか戦っているのを見るほか無さそうだった。

 

「理空も付き合わせちゃってごめんね」 

「ん?ああ、別にいい。暇だったからな。そういやリースフェルト、お前《鳳凰星武祭》に出るのか?」

「ああ」 

「パートナーは?そっちの序列一位か?」

「う.....それはだな...」 

「...まさかまだ決まってないのか?」 

「あ、ああ。いない....」

「実力以前の問題だな。エントリーすら出来ないぞ?」

「分かっている。何とかしないとな....」 

 

 普段の凛々しい姿とは一転、弱々しい声を出す。新鮮に感じていると近くから武器の音と罵声が聞こえてきた。

 

「あれって....レヴォルフの生徒?」

「...まずいな.....嵌められた」

「えっ?」

「よくある手だ。乱闘に見せかけてターゲットを痛めつけるんだ。金さえ積めばすぐやろうとする」

「じゃあユリスを狙ってたのはレヴォルフだったってこと?」

「さあな。まぁ、これは明らかに正当防衛だな」

「あはは...ミディアムレアくらいで勘弁した方が良いよ」

 

 

 あっという間にユリスが全員黒焦げにしてしまった。実質前シーズン最弱の学園とはいえ《冒頭の十二人》をこの程度の腕で倒そうとする自分の学園の生徒に呆れてしまう理空だが、金を積まれたのならば一応動機は理解できる。

 

「おい、誰の指示だ?」

「ヒィッ!雲崎理空⁉︎なんでこんなところに⁉︎」

「いちいちビビんな。別にお前らなんて興味ねえよ。で、誰なんだよ?」

「あ、あんたを狙えって言われたわけじゃない!そこの2人を痛めつければ金をくれるって!」

「顔は見てないのか?」

「見てない。本当だ!フードを被っていて顔は見えなくて....ってあいつ!あいつに頼まれたんだ!」

 

 チンピラが指を刺した先で、黒ずくめの男(?)がこちらを茂みから覗きこんでいた。直後ユリスが走り出した。

 

「ユリス!深追いは危険だ!」

 

 綾斗が制止しようとするも間に合わず、綾斗も追いかける。 

 

(血気盛んな奴らだな)

 

 理空は黒ずくめの男(?)ではなく綾斗が見える距離を保とうとする。

 直後。矢が飛んでくる。冷静に回避するも別方向からも飛んでくる。銃型煌式武装を起動して撃ち落とす。何発か撃ち牽制すると、黒ずくめの男(?)達は撤退した。

 

「集団で行動していたのか」 

 

 ため息をつき、綾斗とユリスの方に行くと二人とも怪我はないようだが、綾斗の服は所々破けている。

 

「大丈夫か?綾斗」 

「何とかね」

「全く....少し油断しすぎではないか?」

「あれが俺の全力だよ」 

「一対多は苦手なのか?...」

「そんなことより早くここから離れた方が良いぞ。警備隊が駆けつけてくる」

「ああ、そうだな」

 

 理空は、綾斗に近づき、綾斗にしか聞こえない声で。

 

「反応と身体の動き、星辰力(プラーナ)の流れが不安定だな」

「っ⁉︎」

 

 綾斗の表情が強張る。

 

「安心しろ。別に口外はしない」

「そうしてくれると助かるな」

「んじゃ、二人とも精々気をつけて帰れよ」

 

 能力を使い二人の視界から消える。

 

「消えた....?」

「二つ名通りの能力ということか」

「え?」 

「いや、何でもない。帰るぞ」

「う、うん」

 

 ユリスも綾斗も理空に助けられたわけだが、ユリスは理空の能力を見たことで、綾斗は自分の秘密を見抜かれたことで警戒の気持ちが拭えなかった。

 

 

 

 

 

 

  

 

 




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