帰国から2日後。朝日も上っていない時刻に理空は星導館へ向かっていた。
———『明日のこの時間に星導館へ来てください』
昨日の夜クローディアから送られてきたメールだ。
今回の用件は全く見当がつかないので断ろうかと思ったら同じ内容のメールが何回も送られてきたので諦めて今向かっているという状態だ。
星導館の校門が見えてくる。クローディアが立っていて、こちらに気が付いたらしく歩いてくる。
「わざわざこちらまで来ていただきありがとうございます」
「行かなきゃまたメールを連発されるからな」
「まあそのつもりでしたね」
皮肉に対して満面の笑みで返すクローディア。やはり腹黒い。
が、
「とりあえず生徒会室に案内します」
そう言ってクローディアが空間ウィンドウを操作すると理空の端末に入校許可証が送られてきた。
歩いて行き、生徒会室に入ると他の4人がソファに並んで座っていた。端にスペースが空いているのでそこにクローディアが座るのだろう。
「そこにかけてください」
テーブルを挟んで同じようなソファにかける。
クローディアが無言で全員分の紅茶を注ぐ。
「.......何の用だよ」
「珍しく予想がついていないのですね」
「心当たりがなさすぎてな」
「では、
(複数あんのかよ)
別に眠いとは言わないがこんな時間にわけもわからず呼ばれるのは癪だ。
「オーフェリアとはどういう関係だ?」
「......そんなこと聞くためにわざわざ呼んだのかよ」
ユリスがムッとしかけるがその前に綾斗がするりと入り込んでくる。
「だってあの時、お互いに下の名前で呼び合っていたよね?」
「...........」
オーフェリアは綾斗のことをフルネームで呼んでいた。ユリスのように面識がない限り理空もそう呼ばれるはずなのだ。
理空に至っては綾斗たちの知る限り下の名前で呼ぶ存在を知らなかった。
要するに、ある程度交流はあるということだ。
「......別にただの古い知人だよ」
古い知人?ユリスの記憶が正しければ理空はあの孤児院にはいなかったはずだ。ということは———
「お前も《
「まあな」
他の4人も目を見開くが、理空は何でもないことのように返す。
「つっても、生まれつきオレは《
内容は?とは聞かなかった。否、聞けなかった。そこまでの度胸は綾斗達にはない。
「んで?他の用件は?」
ただ1人マイペースにいる理空が問いかけてくる。
用件はこれだけではない。むしろ、今から言う方が本命だ。
「この前の休暇旅行でさ、俺だけ先に帰国したの覚えてる?あの時は誤魔化したんだけどさ......」
この空気の中、どうにか伝わるように言葉を出す。
「俺には姉がいて———」
「ああ、天霧遥のことか?」
「えっ⁉︎」
またも全員の顔が驚愕に染まる。
「......何故お前がハル姉を知っている」
「別に面識はねえよ。見たことがあるだけだよ」
「......どこで」
「《
「......やっぱり姉さんは《蝕武祭》に出てたんだね」
どこか残念そうに呟く綾斗。
「やっぱり?お前そのこと自体は知ってたのか?」
「あ、いや......」
しまったという顔をしているがもう遅い。意を決して正直に明かす。
「...《
「ふーん。で、何を聞かれた?」
「え?」
「あいつがタダで提供するわけねえだろ」
「......マディアス・メサとどういう関係だって....」
「......へぇ」
何故そこでマディアスが出て来るのかは全くわからないが、何か意味はあるのだろう。
「話が逸れたけど、姉さんは5年前に失踪したんだ」
「《蝕武祭》の時期と被るな」
「それで、5日前に見つかったんだ」
「そりゃ良かったな」
(白々しい......)
ユリスは内心不機嫌そうに鼻を鳴らしていた。試合を観ていたということは今の遥の状態も知っているということだろうに。紗夜も同じようなことを考えていたらしい。
「......ハル姉の状態を知っていたのか?」
「ん?ああ」
「なら何故何もしようとしなかった」
「どこにいるのかは知らなかったからな」
「それでも推測したりは出来たはず。でもお前はそれすらしなかったのか」
非難の眼差しを理空に向ける。それに対して理空はどこか冷えたような呆れたような眼を向ける。
「沙々宮って馬鹿なのか?」
「......何?」
「
「.......それは」
「大体お前は何かしたのかよ。天霧からこの件を聞いてなかったって訳じゃないよな?聞いた後にお前は何かしようとしたのか?」
「........でも」
「でもも何もねえだろ。お前は自分や天霧を基準にし過ぎなんだよ。お前がどう考えようと勝手だ。けどそれをオレに押し付けんな」
相変わらずの平坦な声をぶつけてくる。理空自身、紗夜の発言に対してどうこう思ってはいない。苛立ってもこない。心底くだらないものを見たかのような眼をしていた。
「紗夜、落ち着いて」
「綾斗、でも.......」
「理空の言っていることは何も間違ってないよ。これは本来、俺が成すべきことなんだから」
諭すような綾斗の言葉に紗夜は唇を噛む。
紗夜だってその程度のことが分からないわけじゃない。冷静になってみれば理空や綾斗に言われるまでもないことだ。
ただ、自身の幼馴染と自分によくしてくれた姉のような存在が絡んでいたことでいつもと比べて感情的になってしまっただけなのだ。
「姉さんはヤン・コルベルさんって言う人のところにいたんだけど」
「ああ、あの爺さんね」
「理空も知っての通り姉さんは自分の能力————万物を戒める『禁獄』の力で自分自身を仮死状態にしているんだ」
「それで?」
「先生はあらゆる治療法を試したけど無理だったって.....。今も続けてくれているけどね」
「........」
「———理空の能力で『禁獄』の力を消して目覚めさせてくれないかな?」
これは予想外だ。まさかそんなことを頼んでくるほど信用されているとは。
「さっき理空が言ってたことは正しいと思うし、俺は何も見返りは用意出来ない。それでも、やって欲しい.......!」
そう言って頭を下げてくる。
「......顔を上げろ」
ゆっくりとおそるおそる顔を上げてくる。
「正直言うと最近事情が変わったから、これに対して絶対やりたくないとは思わない。むしろ、天霧遥が目覚めてくれればオレにとってもメリットはある」
これは本音だ。別に綾斗が見返りを用意できなくとも、目覚めた遥から提供してもらえそうなものはある。それに魅力は感じている。
「じゃあ.......!」
「————いや」
————それでも。理空の回答は決まっている。
喜びかけた綾斗の顔から、力がなくなる。
「————断る」
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