学戦都市アスタリスク 消失の魔術師   作:ネタバレOK派

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時間が空きすぎてしまい申し訳ありません。クオリティが落ちまくっているかもしれません。それは先に言っておきます。



《華焔の魔女》

「.......綾斗、どっちが勝つと思う?」

「えっ?」

 

 歩いている途中、少し離れて前を歩くユリスと理空には聞こえない音量で来た唐突な紗夜の問いに綾斗は間抜けな声を漏らす。そして、考える。

 

「俺個人の感情で言えばユリスって言いたいところだけど......」

 

 理空の強さは未知数。

 わかっているのはレヴォルフで序列四位をキープし続けていること、これは本人談だが《覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)》持ちのイレーネ相手なら圧勝ということ。

 能力的な相性を考えるならば、ユリスにとって理空は最悪の相性だ。

 それらを加味するとなると......

 

「......理空の方が有利だと思う」

 

 綾斗にしては珍しく明言した。

 

「私も同意見ですね」

「あんまり言いたくないですけど、正直、わたしも........」

 

 クローディアと綺凛もそれに同意する。

 

「........そう」

 

 認めたくないが、紗夜も同じ見解だった。

 紗夜はどうしても理空のことを好きになれない。単純に気に入らないというのもあるだろうが、そもそも根本的に相容れないところがあるのかもしれない。

 数少ない友人と比べてどちらを応援したいと思うかは言うまでもない。

 内心厳しいと思ってはいても、紗夜はユリスの勝利を期待していた。

 

 

 

 

 

「......煌式武装(ルークス)、変えたんだな」

 

 《冒頭の十二人(ページ・ワン)》専用のトレーニングルームの中に理空の声が響く。その視線の先には宙に浮かんでいる6本の煌式武装がある。

 

「ああ、煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)といってな。まだ使い始めてから日は浅い。だが、こいつのおかげで《鳳凰星武祭(フェニクス)》に比べて格段にパワーアップしたと自負しているぞ?」

「......へぇ」

 

 ユリスは感情的になりやすいが、冷静なときは大言壮語をする人間ではない。余程自信があるらしい。

 とはいえ、《鳳凰星武祭(フェニクス)》を見る限りではそこまで期待は出来ないが。

 理空も煌式武装を起動する。

 理空のスタイルが気になるのか、ついてきていた4人の間にも緊張感が走る。

 

「いつでもいいぞ」

「そうか。なら、遠慮なく行かせてもらおう!咲き誇れ!————鋭槍の白炎花(ロンギフローラム)!」

 

 飛来する炎の槍を躱す、躱す。

 『相互移動』でまとめて対処してもいいがこんなところで星辰力(プラーナ)を無駄遣いしたくない。いくら燃費が良くしたからといって、星辰力が少ないのは変わりはないのだ。

 

「むっ.......」

 

 あっさりと全て躱されたことにより眉を顰めながらも新たに技を展開するユリス。

 

「咲き誇れ!———赤円の灼斬花(リビングストンデイジー)!」

 

 20個近くの戦輪が浮かび全方向から理空へと襲いかかるが、隙間を縫って躱す。

 

(あれも躱し切るとは....何て身体能力と動体視力だ!)

 

 ユリスが感じているように、理空の身体能力はアスタリスク内でもトップクラス。第2段階状態の綾斗よりも上だろう。

 理空は躱しながら前に出て短剣型煌式武装を振るう。

 

「間合いを潰しに来ましたか......」

「でも、今のユリス先輩には.....!」

 

 観ている人間達が呟くのと同時に6本の煌式遠隔誘導武装が理空の短剣を捌き、身体に攻撃を加える。

 だが、ユリス自身は特に何の仕草もしていない。

 

(.......思考で操作できるってわけか)

 

 自分より接近戦に優れている使い手相手でもこれならば少なくともある程度は対処ができる。

 煌式武装の動きを誘導しようと足を踏み出すと、足元に魔法陣が浮かび上がる。

 

「綻べ———栄裂の炎爪華(グロリオーサ)!」

 

 いつの間にか設置型能力が準備されていたようだ。巨大な炎の爪が理空の足元から吹き上がる。それをバックステップで回避する。

 改めてユリスを正面から見据える。

 確かに、《鳳凰星武祭》に比べるとレベルアップしている。接近戦への対処はもちろん、技の展開速度が上がっている。

 そんなことを考えていると、下がる理空を追うかのように炎の竜が出てくる。

 

「咲き誇れ———!吞竜の咬焔花(アンテリナム・マジェス)!」

 

 この煌式武装は本格的に導入されればロドルフォあたりが使い始めそうだ。あの身体能力とバトルセンスなら充分に使いこなせるだろうし、ものによっては能力の欠点を補える。

 だが、思考で操作するというのであれば穴もある。

 足元の地面の一部に対して『指定移動』を使う。飛ばす先はユリスの頭上。

 

「がっ⁉︎」

 

 脳天に瓦礫が直撃する。勿論、この程度では大抵の《星脈世代(ジェネステラ)》はダメージを負わない。だが、虚をつかれれば集中は切れる。

 炎の竜は誰もいない方向へと逸れていく。

 逸れた竜を『相互移動』で消しとばし、『瞬間移動』で背後に回り込んで足を払って転ばせる。

 ユリスの目が見開くがもう遅い。顔に短剣を突きつける。

 

「はい、終わり」

「ぐっ.......」

 

 全体的にユリスの動きはそこまで悪くはなかったが、いかんせん正直すぎる。

 大技、小回りの効く技、設置型。幅は広い方ではある。だが、『万能』とまで言われているシルヴィアのそれには敵わないだろうし、火力に至ってはユリスより上の人間はそれなりの数がいる。実際、レヴォルフの《冒頭の十二人(ページ・ワン)》下位にもいる。

 しかしこの馬鹿正直さをどうこうしたところでオーフェリアには勝てないだろう。火力という最も大きな難題がある。理空や《黒炉の魔剣(セル=べレスタ)》のような特殊な能力ならともかく、ほぼ全ての攻撃はあの無限に等しい星辰力に阻まれる。

 

「.....もう何本か頼めるか?」

 

 何か手応えを感じたからか、それとも何も感じられなかったからなのか、ユリスの眼は真剣そのものだ。

 

「......あと15分だけな」

 

 再度最初の位置につく2人であった。

 

 

 

 

「......もう1本だけ頼む」

「もう時間だから終わりだ」

 

 結局合計で10本やり、理空の全勝だった。それだけでなく、回数を重ねるにつれて負けるまでの時間が短くなっていた。

 単に理空が観察をやめて実力差が出たというのもあるが、原因はそれだけではない。

 

「というかお前、何回同じような手に引っ掛かれば気が済むんだ?学習能力がないのか?」

 

 1番の問題はそこだった。瓦礫投げ、目潰し、落とし穴、そのような搦め手にいくらなんでも弱すぎる。いや、弱いだけならまだいい。だが警戒しようともしないのは流石に理解に苦しむ。

 

「う、うるさい!自覚はある!」

「じゃ直せよ」

「ぐっ........」

 

 ぐうの音も出なくなってしまった。

 界龍(ジェロン)の双子と戦った時やディルクに嵌められた時からその手のことがまるで成長していないのだ。

 

「まあ、そういう戦い方を知らないってのもあるだろうけどよ」

 

 そう言って一旦切る。

 

 

 

 

「———“知る”ことよりも“()()()()()()”ことの方が遥かに難しいぞ?」

 

 ユリスの目が見開く。思い当たる節があったからだ。

 最たる例はオーフェリアの一件だろう。あんなことになった1番の原因にあの時何も気がつこうともしなかった。孤児院の借金にも、自分の国の現状にも。

 そして、今の自分にもだ。力や技を磨くしかないと躍起になっていた。視野が狭くなっていた。

 

「.......助言、感謝する」

「..........」

 

 そのまま何も言わずに理空は消えた。『瞬間移動』で帰ったのだろう。

 ユリスは理空の言葉を深く、深く噛み締めた。

 

 

 

 

 

「———“知る”ことよりも“知ろうとする”ことの方が遥かに難しいぞ?」

 

 この言葉は4人の方まで聞こえていた(勿論その前のやり取りまである)。

 紗夜は露骨に顔を顰めていた。

 今、はっきりした。紗夜は理空のこういうところが気に入らないのだ。他人を、現状を、何もかも見透かしているかのような雰囲気を醸し出すのが。そんな風に言ってくるのが。

 もしかしたら、これは単なる自分だけの被害妄想かもしれない。だが、これだけははっきり言える。

 

 

 

 

 

 

 

 ——————嫌いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




理空と紗夜は最後まで拗れて終わるかもしれませんね。
紗夜のキャラ、ブレてませんよね.........?

もしよかったら感想、評価、よろしくお願いします。

理空の過去編欲しい?

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