学戦都市アスタリスク 消失の魔術師   作:ネタバレOK派

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六花園会議

 

 とあるホテルの屋上にて各学園の生徒会長が集まっていた。

 聖ガラードワース学園生徒会長 アーネスト・フェアクロフ

 レヴォルフ黒学院生徒会長 ディルク・エーベルヴァイン

 界龍(ジェロン)第七学院生徒会長 范星露(ファン・シンルー)

 アルルカント・アカデミー生徒会長 左近州馬

 そして、

 

「皆さん、ごきげんよう」

「ようこそ、ミス・エンフィールド。相変わらず時間通りだね」

 

 星導館学園生徒会長 クローディア・エンフィールド

 ()()()()()()()()ため六花園会議を始めようとするアーネスト。

 

「それじゃあ全員揃ったね」

「おや?まだ一人来ていないようですが....」

「ああ、彼女は欧州ツアーの真っ最中だよ」

「流石は世界の歌姫、多忙のようですね」

 

 そう、クインヴェール女学園の生徒会長は芸能活動を行なっている。そのためこういった仕事を休むことが多いのだ。今回も委任状を預けていた。

 

「ふん。どうせいてもいなくても大して変わんねぇだろうが、あんな小娘」

 

 悪態をつくのはディルク。非《星脈世代(ジェネステラ)》の身ながら生徒会長の座についた男である。カリスマ性もリーダーシップも無いに等しいが人を使うことに関しては悪魔的才能を持つ人間である。ありとあらゆる人間に嫌われていて非星脈世代にも関わらず《悪辣の王(タイラント)》の二つ名を持っている。

 

「他学園の生徒を侮辱するのは控えてくれるかな?双剣の総代」

「侮辱だぁ?笑わせんな。あの女、これで何回目の欠席だ?クソの役にも立ってねぇよ」

 

 アーネストが注意をするも、ディルクの言葉は止まらない。

 

「ま、見た目だけで選ばれた人間に期待をし過ぎるのも野暮なもんだが——」

「やめたまえと言ったはずだよ?」

 

 ディルクの喉元に剣が突きつけられる。クローディアは思わず感嘆してしまった。煌式武装(ルークス)をホルダーから抜き放ち、起動し、振り抜くまでの所作が恐ろしく滑らか。

 それでいて速い。

 

「ほほぉー、面白ぇ。やってみるか、《聖騎士》殿?その瞬間ガラードワースは終わりだぜ?」

 

 しかし、ディルクは気圧されるどころかさらに挑発する。

 

「だろうね」

 

 直後、首に白い刃が差し込まれる。———が

 

「ふん、子供騙しの玩具だな」

 

 首元からは一滴の血も流れない。

 

「ほほ、相も変わらずお主らは仲が良いのう。ようも毎回、飽きもせずそうじゃれ合えるものじゃ」

 

 そこへ声を掛けたのは、星露。金髪の青年の左隣にちょこんと座った少女だ。いや、少女というよりは、童女と言った方が正しいだろう。愛くるしい顔立ちに黒髪を蝶の羽のように丸く結わえ、あどけない笑みを浮かべている。しかしその立ち居振る舞いには、どこか老成された落ち着きさえ感じられる。

 

「じゃが戯れもそのあたりにしておくが良いぞ、小僧ども。でないと儂も混ざりたくなってしまうからのう」

 

 アーネストはため息をつき、剣をしまう。

 

「ふふ、公主の調停ともなれば仕方ありませんね」

 

 クローディアが笑うと、ディルクは大袈裟に肩を竦める。そしてすぐに駆け引きを始める。

 

「そういや面白れー話を耳にしたんだがよ、クローディア」

「なんでしょう?」

「星導館とアルルカントが新型煌式武装(ルークス)の共同開発に合意したって話なんだが?その前にはうちの《消失の魔術師(ヴェイカント)》と接触もしたそうじゃねぇか」

「ほう?」

「へぇ....」

 

 星露とアーネストもその話題に食い付く。共同開発の件についてもだが、今までほとんど得られなかった理空の情報だ。そんな人間に他校の生徒会長が接触したとなれば無視できるものではない。

 しかし、クローディアとて馬鹿正直に答えるつもりもない。

 

「あら、流石と言いますか.....耳が早いですね」

「てこたぁ本当なんだな?」

「ええ。ですが、その件はあくまで我が星導館学園とアルルカント・アカデミー間の話です。皆様とは関係ない話だとおもいますが」

「そうはいかねーな、女狐。学園同士の密約は星武憲章(ステラ・カルタ)違反だ。ましてやあの雲崎理空と接触しておいて他の学園が黙って見ていると思ったか?」

「まあ、確かに奇妙ではあるね。細かい条件が分からないから何とも言えないけど、普通に考えればアルルカントにメリットが無さすぎる」

「そもそもにおいて、学園としての正規の煌式武装ルークス開発施設を備えているのはアルルカントだけじゃろ?うちも含めて他の学園は全て統合企業財体から提供された物を使っておるのじゃからな」

「ええ、ですから今回はうちの技術者がアルルカントに出向して、共同開発にあたることになります」

 

 これには流石に驚いたのか、一同が目を丸くした。

 

「おいおい、それじゃ共同開発どころか最早一方的な技術提供じゃねーか」

「確かに。こう言ってはなんだけど、好きなだけ技術を盗んでくださいって言ってるようなものだね、それは」

「アルルカントも太っ腹じゃのう」

「これは是非とも、もう片方のご当人に話を伺いたいもんだな。なぁ、アルルカントさんよぉ?」

「いや、僕は何も聞かされていないというか、承認サインをしただけで、その、はい。詳しいことはさっぱりでして....」

 

 今まで一言も発していなかった左近は狼狽えるように返答する。

 

「聞いていないって....本当かい?」

「はぁ.....」

「いくらアルルカントといえど、それでは生徒会長としての立場があるまいて。大丈夫なのかえ?」

「まあ、それはその.....」

「皆さん何か勘違いしていらっしゃる様ですが、これは密約でも何でもありません。我が星導館学園とアルルカント・アカデミーが取り交わした正式な提携です。《消失の魔術師》とは偶然会っただけですよ」

 

 半分嘘で半分本当である。サイラスの件を公にすればアルルカントにダメージは入るが、星導館側に旨みはない。そこでこの件を公表しないことを引き換えにこの約定を取り付けた。理空については本当に偶然会っただけだが。

 

「あくまで対等の取引だってーのか?」

「勿論です。我々はアルルカントの施設を借り受ける代わりに、研究開発費の七割を負担するのですから」

 

 そこへ星露が何気ない口調で入ってくる。

 

「そうそう、星導館といえば先頃何やら学内で小さからぬ揉め事があったようじゃのう。わざわざ《影星》まで動かしたようじゃが、もしかして今回の件と何か関係でもあるのかの?」

「さて、何のことでしょう」

「ふん。腹黒女が」

「では、この話はここまでということで」

 

 にっこりと微笑み、この話題を打ち切る。

 

「ふむ......確かに発表内容は吟味してからでも遅くはないだろうからね。うん、それじゃ改めて今日の案件だけど——」

 

 ところがアーネストが仕切り直そうとしたところで、再び声が割って入った。

 

「あのぉ、すいません。ちょっといいでしょうか?」

「おや、今度はそちらか。なんだい?」

「ええっとですね、実はその、急な話になりますが、今日の議題に挙げさせて頂きたい案件がありまして」

「ほうほう、何事じゃ?」

「えー、皆さんにご提案させて頂きたいのは、アスタリスクにおける人工知能の取り扱い及びその権利についてです」

「人工知能だと?」

「はい。落星工学が発展したことで、人間に近い自我を持った人工知能の誕生は間違いありません。ですが《星脈世代》がそうであったように、人工知能に対する法整備は難航することでしょう。そこでまずは我々が、モデルケースのような形で人工知能を受け入れる態勢を作れたらと.....」

「それはつまり、自我ともいえるものを持ちえた機械を、アスタリスクの学生として受け入れるということかい?人間と同様の権利を与えて」

 

 どこか呆れ果てたような顔でアーネストは言った。

 

「はい、出来れば《星武祭(フェスタ)》への参加にも.......」

「アホか、論外だ」

 

 ディルクも白けた表情で切って捨てる。

 

「てめーのとこが機械を学生扱いするってのなら知ったこっちゃねーが、そいつらを《星武祭》に出そうってんなら話は別だぞ」

「そうですね。幾ら何でも無理がある提案だと思います。少し考えただけでも問題が多すぎですから。例えば星武憲章(ステラ・カルタ)の年齢規定はどうクリアするおつもりなのです?十三歳から二十二歳までという制限に当てはめるのであれば、彼らが参加する頃には旧式にも程があるようになってしまうのでは?」

「第一自我の有無はどうやって判定するんだい?まずはその基準から整備しなければならないんじゃないかな。まあ、確かに将来的には何らかの規定が必要になるとは思うけどね」

「なんじゃ、主ら皆反対か。つまらんのう」

 

 ぷくーっと頬を膨らませた星露は、腕組みをして一同を見回した。

 

「あん?界龍は賛成なのか?」

「無論じゃ。その方が面白いからの」

 

 クイーンヴェールは多数派につくように委任状を預かっているため反対が四票。賛成が二票である。よってこの案は否決となる。当然のことではあるが、左近は大袈裟に落ち込む。

 

「そうですか......残念です」

 

 左近はがくりと肩を落とした、が。

 

「でしたら.....自我のある無しに拘らず、それらはあくまで武器として扱う、ということでよろしいですね?」

 

 俯きながら左近が呟いたその言葉に、場の空気が僅かに張り詰めた。

 

「それは、どういうことかな?」

「だってそうでしょう?学生としての権利は与えない、自我の有無に拘らず機械としてみなす——先程皆さんがそう仰ったじゃありませんか。それが例え人の形をしていたとしても機会は機械、つまり道具です。そして星武憲章には道具の、武器武装の使用に関して、形状でそれを制限するような項目はありません」

「.....つまり自立型擬形体を武器として使おうってーのか?」

「ふむ。確かにそれを制限するような項目は星武憲章にもないのう」

 

 それは当然だ。人間が操作する戦闘用擬形体(パぺット)ならともかく、単純作業しか出来ないような自動制御の擬形体を舞台に上げたところで、《星脈世代》の相手になるはずもない。あっという間にスクラップだ。だが、もしその擬形体に人間と同じような判断力を持たせることが出来たとしたらどうだろうか。

 

「なるほど、つまりここからが本番ということですね」

「はぁ...確かにこれは本腰を入れて話し合わないとね」

「ありがとうございます。これで僕も怒られずに済みそうですよ」

 

 怒られずに済む。つまりこれは左近が考えた意見ではないということだ。誰からのものかと考えながらも各学園の生徒会長は話し合いを進めた。

 

 

 星導館のトレーニングルームにて。綾斗とユリスが模擬戦の後休憩していた。

 

「やっぱりユリスの技は多彩だよね」

「そ、そうか?それほどでも....今日だって一本も取れなかったではないか」

「最後のは危なかったよ。《鳳凰星武祭(フェニクス)》のパートナーとして頼もしいよ」

「そ、そうか....だが、そう簡単に制することは出来ないだろうがな....」

「ユリスの強さを持ってしても?」

「私を買ってくれているのは嬉しいが、私より強い人間は両手の指じゃ数え切れないくらいはいるぞ」

「そんなに?」

「他学園から《冒頭の十二人(ページワン)》も多く来るだろうしな」

「他学園の《冒頭の十二人》かぁ、ほとんど知らないしなぁ」

「一人知っているだろう?雲崎がそうだ」

「えっ?理空ってレヴォルフの《冒頭の十二人》なの?」

「ああ、序列四位の《消失の魔術師》と呼ばれている。変装していたからレスターは気づいていなかったようだがな」

「理空はユリスよりも強い?」

「記録映像を見る限りでは相性が悪いのは間違いない。....それにどこか普通の生徒にはない危うさがある気がするな」

 

 サイラスの一件の時、理空は平然とサイラスの両足を地面にはめた後に無理矢理引っこ抜いて両足をズタズタにした。いくら逃がさないためとはいえ些か残虐過ぎる気もした。

 

「雲崎にはお前の封印も見られてしまっているしな」

「あー、それなんだけど最初に会った時から気づいていたみたいだよ」

「そうなのか?」

「うん、口外したりはしないって言ってたから大丈夫だと思うよ」

「お前はもう少し人を疑うことを覚えろ.....。とはいえ今はそれを信用するしかなかろう」

 

 どの道いずれはバレることである。その時の対策についても話し合った。

 

 

 

 

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