学戦都市アスタリスク 消失の魔術師   作:ネタバレOK派

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《鳳凰星武祭》編
エルネスタ・キューネ


 《鳳凰星武祭(フェニクス)》開会式当日。理空は会場に足を運ぶ。

 《星武祭(フェスタ)》の開会式では形式じみたものが多く、運営委員長であるマディアス・メサの話くらいしか誰も聞いていないため、理空は普段《星武祭》を見に行く際は開会式が終わってから行くのだが、今回は珍しく開会式から観る。

 理由は出場選手の名前の中にウルサイス姉妹以外で気になる名前があったためだ。

 

 エルネスタ・キューネ

 カミラ・パレート

 

 理空の記憶が正しければ確かこの二人はそれぞれ《彫刻派(ピグマリオン)》と《獅子派(フェロヴィアス)》の会長で実践クラスではなかったはずだ。

 もし、今まで起こしていた事件を《星武祭》を有利にさせるためのものだったとすれば無視は出来なかった。

 この数十分後その意図が明らかになる。

 

 

 開会式が始まった。形式じみた話を聞き流してマディアス・メサが話す時になるのを待つ。

 

『それでは、《星武祭》運営委員長マディアス・メサの演説です』

 

 その言葉が聞こえたので意識を向ける。

 

『諸君、おはよう。こうしてまた今年も君たちの勇壮な姿を見ることが出来て嬉しく思う。そして今年からこのアスタリスクへやってきた者には初めましてと言っておかなければならないね。《星武祭》運営委員会委員長、マディアス・メサだ』

 

 マディアスはよく通る落ち着いた声でそう挨拶すると、人懐っこい笑みを浮かべる。

 

『—— あまりここで長々と話をしても興を削ぐだけだろうから、あと一つだけ諸君に重要なレギュレーションの変更を伝えて終わりにしようと思う。まあ、学園側には通達済みだし、その辺りから一部漏れて伝わっているかもしれないけどね』

 

 そう言って一旦間を取る。相変わらず巧みな話術である。良いところで間を取り、その先の内容に興味を向けさせ観客を飽きさせない。

 

『元来煌式武装(ルークス)にはこれといった制限を設けてこなかったのだけれど、技術の進化というのは目覚しく、色々と不都合な部分が出てきたわけだ。具体的に言うと、()()()()()()()()を武器としてどう扱うか』

 

 その言葉に理空は反応する。自立機動する機械、擬形体(パペット)を一緒に出場させてもいいということだろうか?いや.....

 

『諸君に出来るうる限り自由な場を提供するというのが我々運営の基本理念ではあるのだが、例えばこれを放置する個人が複数の自立機動兵器を武器として持ち込むことも可能になってしまう。これは流石によろしくない。——ああ、もちろんそれが《魔女(ストレガ)》や《魔術師(ダンテ)》の能力であるというなら話は別だけどね』

 

 マディアスは続ける。

 

『かといって武器の数に制限を設けるのは論外だ。自立機動兵器の使用を禁止してしまえば話は早いが、先程述べたように安易な制限は我々の望むところじゃない。それは停滞に繋がり、やがて衰退を招くだろう。そこで、これはあくまで次回以降の議論の参考とするための措置であることを理解してもらいたいのだけれど......今回に限っては『代理出場』という形を取ることにした』

 

 途端に会場がざわめき出した。学生たちだけでなく、観客席も色めき立つ。

 

『賢明なる諸君には、これが特定の学園を有利にするのではなく、むしろ近い将来の平等性を確保するためのものであることは分かってもらえると思う。我々は常に、諸君にとって最善の道を用意するため、全力を尽くしていると信じてほしい』

 

 ざわめきが収まるのを待ってさらに続けると、マディアスは今度は観客席に向かって大きく手を広げた。

 

『そして——《星武祭》を愛し、応援して下さっている諸氏には、これがまた一段階進化した新たな《星武祭》へ繋がるものである事をご期待頂きたい。《星武祭》は常に世界で最高のアミューズメントであり、無二の興奮と感動を生み出すステージであり、そして魂を震わせる至高のエンターテインメントなのだから!』

 

 観客席から爆発的な拍手が送られる。観ている側からすれば盛り上がればいいのだから、面白い試みだと感じるだろう。

 しかし、出場者からすれば迷惑千万な話である。何せ今まで無かったルールをいきなり入れられたのだから。その上、どう考えてもアルルカントに有利な新レギュレーションである。

 随分とよく手を回したものだと理空は感心する。星武憲章(ステラ・カルタ)違反にもなっていないから文句の付けようもない。

 マディアスは挨拶を終えると、にこやかに手を振りながら演壇を降りていく。

 それからもうしばらく退屈な式典が続くのは分かっていたので端末を弄って時間を潰す。

 

『それではこれで第二十五回《星武祭》及び第二十四回《鳳凰星武祭》の開会式を終わります。本日《鳳凰星武祭》に出場されるAブロックからIブロックまでの選手は、規定の時間までに該当ステージへ移動してください。繰り返します。本日————』

 

 開会式が終わったので観客席から立ち、出口に向かう。

 綾斗とユリスはこの会場でやるそうだが、勝敗は目に見えている。なので、綺凛のペアの戦い方とアルルカントの出す擬形体が試合をする会場に向かうことにした。

 

 

「俺たちと当たるまで負けんじゃねえぞ!」

 

 聞き覚えのある声が聞こえる。目を向けると以前ユリスに絡んでいた大男が綾斗達にその言葉を向けていた。そういえば、サイラスの一件の時地面に倒れていたが大した怪我ではなかったようだ。

 そんな呑気なことを考えていると、綾斗が理空に気がついたようで声を掛けてくる。

 

「あれ?理空?久しぶり」

「ああ。そういえば序列一位おめでとさん。随分とトラブルに巻き込まれやすい体質のようで」

「全くだ。こいつのおかげで私の胃に何度穴が空きそうになったか.......」

 

 理空が皮肉まじりに言った言葉にユリスが乗っかってくる。どうやら、相当気苦労が絶えないようだ。まぁ、身内からすればたまったものではないだろう。

 そんなやり取りを見ていた水色髪に小学生くらいの身長の少女が綾斗に話しかける。

 

「.......綾斗、知り合い?」

「あ、うん。ほら、この間話した前に助けてくれた.....」

「ああ、レヴォルフ序列四位の.....」

 

 水色髪の少女は前に出てくる。

 

「綾斗の幼馴染の沙々宮紗夜。よろしく」

「沙々宮?ああ、刀藤とタッグを組んだ奴か」

「うん、そう」

「雲崎理空だ。レヴォルフ高等部1年」

 

 自己紹介をお互い済ますと綺凛が近寄ってくる。

 

「——あの!先日はどうもありがとうございました!」

「......別に気にするな」

 

 あの時も礼を言われたのに、また言われるとは思っていなかった。

 ユリスが不思議そうに理空の方を見ていた。

 

「ん?お前達二人は知り合いなのか?」

「えっ⁉︎いや、それはその......」

 

 ユリスに聞かれると綺凛は顔を赤らめる。綾斗も同様である。下着姿で二人きりでいたところを見られたのだから羞恥心は出るだろう。

 

「前に少しな。.......というか、天霧とリースフェルトもそうだが沙々宮と刀藤は連携の方は大丈夫なのか?時間はかなり少なかっただろ?」

 

 ここでその件を突っつかれるとややこしいことになるので話題転換する。

 

「問題ない。ばっちこい」

 

 紗夜は親指を立ててくる。

 

「私達も平気だ。心配には及ばん」

 

 ユリスも自信満々な表情で言ってくる。綾斗と綺凛は苦笑していてとても対照的だった。

 

「そうか。精々頑張れよ、じゃあな」

 

 そう言って背を向けて歩こうとすると、

 

「....今回は能力を使わないんだね」

 

 綾斗が聞いてくる。理空の能力を四度見ているため内容が気になるのだろう。予想以上に強かな人間だ。

 

「人が多いところで使うと目立つだろ?」

 

 無難な回答をしてその場から離れた。

 

 

「おやおや〜?もしや《消失の魔術師(ヴェイカント)》じゃないかな?」

 

 出口のすぐそばで後ろから声がかけられる。振り返ると褐色肌の女性と天真爛漫な印象の少女の二人組がこちらを向いている。

 

「........誰だ?」

「アルルカント・アカデミー《獅子派》筆頭を務めている。カミラ・パレートだ。いきなり声をかけてすまない」

「カミラ・パレート.......ということはそっちの女はエルネスタ・キューネか?」

「そだよ〜」

 

 見た目通りの性格である。カミラはどこかクールな印象でエルネスタは雰囲気が軽い。

 

「正直、君が出場しなくて安心したよ。君が出てきたら優勝は厳しいだろうからね」

「ほう?余程自分達が出す人形に自信があるんだな」

「ああ、優勝するのに充分な力を持っていると思っている。私もエルネスタもな」

「そうか。で、オレに話しかけた理由は?」

「それは————」

()()()()()()()()()()()()()()()()()《消失の魔術師》を間近で見てみたかったからでーっす!」

「.....そうか」

 

 理空は素っ気なく返すが内心若干驚いていた。今エルネスタは自分で黒幕だとバラしたのだから。エルネスタは理空に近づいて囁く。

 

「....でも、次はそうはいかないぞ?」

「次?オレは《星武祭》に出るつもりはないぞ?少なくとも今のところはな」

「およ?そうなの?」

「ああ。まあ、仮に戦うことがあっても結果は変わらないと思うけどな」

 

 エルネスタの笑顔が一瞬消えて真顔になる。

 

「へぇ〜、もしその時が来るのを楽しみにしておこうかな」

「来ないとは思うがな。その前に初戦でこけないように用心しておくんだな。それなりに興味は持っている。ガッカリさせないでくれよ?」

 

 そう言って踵を返す。

 

「ありゃ、もう行っちゃうの?昔《孤毒の魔女(エレンシュキーガル)》と一緒に《大博士(マグナム・オーパス)》のところにいた君とお近づきになれたら嬉しいんだけどな〜」

「断る」

「ちぇ〜、残念」

 

 今度こそ開会式会場から出て移動した。

 

 

 

 

 

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