突然ですまないが、今俺は殺風景な荒野の真ん中で虫を殴っていた。虫を殴っていた(大事な事なので2回)
何故虫を殴っているのかと言うと、それは少し前……そう、あれは今から36万、いや、1万4千年前だったか。
俺は友達に誘われ、最近有名なアークナイツと呼ばれるVRMMOにログインした。そして友人のハロに言われるままに武器ガチャをガチャガチャし、見事ウィンチェスターM1887をGETだぜ!した訳だ。そして、勢いのままに初めてのクエストに行ったのだが……
「弾薬を買い忘れるとか言う初歩的なミスをするとは、我も未熟………」
そんな事を呟きながら、俺は目の前のナメクジみたいな虫、オリジムシをウィンチェスターで殴り殺す。つーか、買う金が無いからクエスト行ってんだわ。ごめんなウィンチェスター、弾薬が買えるようになるまでお前は鈍器だ。
にしても、結構愛らしいフォルムをしているこの虫を殴り殺すのは少々気が引けるかもしれない。いや、恐らく無駄にリアルなエフェクトのせいだろうね。だってコイツ等、結構脆いのか、殴れば派手に砕けて死ぬ。コレが割とグロいのだ。しかもなんか黒と黄色が混ざった体液が飛び散るし。畜生!色んな意味で殴りたくねぇ!
「何やってんの?スムーズにやんないと報酬減るぞ?」
「いやね、初歩的なミスして来た挙げ句、こんな可愛い虫をグチャグチャに潰すとかアレだよ?見ろよこのウィンチェスターを!グリップとかそこら辺がオリジムシの体液塗れだわ!」
「安心しろ、戻ったら綺麗になってる」
そう言いながら、アイツはオリジムシ数匹を纏めて殴り潰した。素手で。一応ナックル付けてるけど……えぇ…(困惑)。
「あぁそうそう、オリジムシって感染生物だから、体液とか浴びたらもしかしたら感染するかもな」
「先言えよソレェ!」
俺はそう叫びながら、最後の一匹をウィンチェスターで殴り殺した。
因みにだが、コレはゲームなので、別に感染してもそんな影響ある訳じゃ無い。変わる事と言ったら、アーツユニットと呼ばれる武器を持たなくてもアーツが使える等のメリットと、ごく一部のクエストの受注が出来なくなるデメリットだったり、ステータスが上がったり下がったりする位である。
「成果結構あるなオイ」
「もう一回行きます?」
「嫌です」
もう俺はオリジムシを殴り殺したくないです。可哀相じゃないか、殺す方も殺される方も。
「もっと他の手っ取り早く大量に手に入るクエストにしようぜ」
「え〜、そう言うの割と難易度高いヤツしか無いぞ?お前のレベルが足りないっての」
「お前が全部殺れば大丈夫だ、問題ない」
「じゃあ報酬全部俺のな」
基地で殴り合い中………暫くお待ち下さい。
「それじゃあ戦闘以外のヤツで良いだろ。ホラ、このライン生命関連のヤツとか報酬美味しいし……」
「止めとけ死ぬぞ」
「えぇ…(困惑)でもホラ、サイレンスとか言うNPCが可愛いとか聞くし」
「止めとけ死ぬぞ」
「えぇ…(困惑)」
結局、地道にコツコツやる事になったのであった。ごめんなウィンチェスターとオリジムシ、また君達にお世話になってしまうよ。
それからと言うもの、オリジムシを潰し、ペンギン急便とか言う宅配業者を手伝い、オリジムシを潰し、チェルノボーグと呼ばれる移動都市で発生した暴徒の鎮圧を手伝い、オリジムシを潰し、気晴らしにシエスタで飯を食べ、オリジムシを潰し、天災が起こりかけている地域のど真ん中を荷物を積んだトラックで爆走し、オリジムシを潰し、ロドス製薬会社の見学などに行ったりした。
「おめでとう。これで君も、晴れて連盟の仲間入りという訳だ」
「おう、じゃあ鉄兜落とせや」
そんな事を言いながら、二人で今日の成果を確認する。アケトンや異鉄、源石岩などの何に使うか謎のアイテムや、戦闘記録と呼ばれる経験値的な何かと、このゲームの通貨である龍門弊が大量に………
「因みに、その量だとレベルアップとか弾薬購入とかで一瞬で溶けるから」
どうやら少量らしい。ちくせう。
「つか、この戦闘記録ってのが経験値なのか?」
「そそ。ソレをテレビにセットして、戦闘を振り返ったり出来るのよ」
「え、それだけ?」
「うん、見てれば勝手にレベルアップしてく」
「おお!」
「だけど正直喰ったほうが速い」
「いやなんでだよ!?」
因みに、今回手に入れた入門戦闘記録と言う経験値は抹茶チョコレートの味がしました。戦闘記録が抹茶チョコレート味とはこれ如何に。それと、一個だけ戦闘記録を再生してみたんだけど、結構上手く編集とかされてて笑っちゃいますよ。何時こんなわかり易くて参考になる戦闘記録作ったし。
「さて、そんじゃ早速弾薬買うか」
「おう」
ハロと俺はロビーからエレベーターに乗り込み、地下へと向かう。俺達は向かい合った状態で壁に背中を預け、到着を待つ事にした。
ふと、何故に地下に向かってんの?と言う事を思い出した。
「ねぇ、なんで地下に行ってんの?売店なら上にあるぜよ?」
「チッチッチッ(指を振る音)上のNPCがやってる店より、もっと安いのが下にあんのさ」
「なる程」
「それに、お前まだ下に行った事無いだろ。プレイヤー共の繁華街って奴を見せてやろうと思ってな」
「繁華街あんのかよここ」
「繁華街みてぇな所だがな」
そんな会話をしていると、出入り口の向かい側が突然明るくなった。どうやら、ここの壁だけガラス張りになっているらしく、エレベーター内から下の方を眺める事が出来る様になってる様だ。
折角なんで、繁華街なるものが見えないかなと思い、下を眺めようとしたのだが……
「………どう見ても工場なんだが、何作ってんだコレ?」
「地下一階はな。言ってなかったか?」
「聞いてねぇよ」
「HAHAHA!それはすまんな!お目当ての繁華街はもう一個下だ。因みに此処で何作ってるかは知らん」
「あっそう……(呆れ)」
なんか暇なので、もう一度地下を眺める。
「……なんか奥の方にエヴァ仮設5号機見えるんだけど?」
「………」
「………」
「………疲れて幻覚でも見てると思うよ」
「んな訳あるか」
一応確認の為にもう一度見ようとしたが、ガラス張りゾーンが終了してしまった。上がる時にもう一度見てみよ。
「で、ここが繁華街みたいな場所だ」
「oh………(ペニーワイズ)」
さっき上から見たけど、予想以上に繁華街みたいな場所だった。地上で見るともっと繁華街みたいっポイ(夕立)。にしてもめっちゃ混んでるなオイ。なんだコレ、本当に施設の中か?一つの町出来てんじゃねぇの?ノアの方舟はキッザニアだった?
「コレ一つ一つがプレイヤーが営業してる店だ」
「マジかよ」
「因みに初心者が一人で来るのはオススメしないぞ。搾り取られる」
「物理的に?」
「両方だ」
マジかよ気をつけよ。
「ホラ、さっさと行くぞ」
「わかってるっつーの…………あいてっ」
先々行くハロに急いでついて行こうとした瞬間、前から来た人にぶつかってしまった。ったく、アイツ先々行きやがって。取り敢えず謝らねば。
「すまん、大丈夫か?」
「………あぁ、問題ない」
それだけ言うと、彼女はエレベーターの方へ歩き出した。めっちゃ口数少ないなオイ。種族は恐らくフェリーン族。顔も可愛いタイプの仏頂面だ。コミュ症か?とも思ったが、どうやらNPCらしい。こんな所にもNPCいるんやなぁ………つか服やべぇな、大胆過ぎるだろ。
ふと、彼女が足を止めて此方に振り返った。
「何をしている。帰るぞレッド」
「レッド?」
「わかった」
「ファッ?!」
後ろから突然声がしたかと思うと、赤いコートを纏った少女が俺の後ろからひょっこり出て来て、彼女の元へシュタタタ〜と走って行った。何時から俺の背後にいたのよ?ビックリして変な声出ちゃったじゃないの。
「なぁにボサッとしてんだコノヤロウ」
「グェっ」
こっちはこっちでハロに首を鷲掴みにされて拉致られた。めっちゃ苦しいんだけど離せよ。アヒルみてぇな声出たじゃんか。
そのままハロにドナドナされ、裏路地らしき場所に連れて来られた。コレ事案でしょ。ムキムキのヴィーヴル男にドナドナされる童顔天使(自称)って事案でしょ。
「センジ!お客様を連れてきたぜ!」
そう言いながら、裏路地にポツンとあった扉を開け、ズガズガと入って行く。お客様を強引に連れて来るんじゃありませんよ。迷惑なのもわからんのかこの筋肉達磨は。
「あァん?お客様だァ?…………またテメェかハロ。毎度毎度他人を無理矢理連れてきやがって、テメェの脳味噌は筋肉か?」
もっと言ってやれ店の人。そう思いながら、店の奥から出てきた店主らしき人物を見る。赤いボサボサな髪に、自己主張の乏しい控えめな二本の角。その容姿、声と共に、Fateに出てくる正義の味方リリィを連想させる。つかめっちゃ似てんな。でも喋り方的には村正なのだろう。プレイヤーネームがセンジですし。
「しかも連れて来たのがサンクタと来た。帰れ帰れ!ウチは銃なんざ扱っちゃいねェよ!」
門前払いされたよ………。会話からするに、このセンジとハロは知り合いなのだろうが……まさかコイツ、いっつもこの人に迷惑掛けてるとかじゃねぇだろうな?あ、コレ掛けてるわ(確信)
「まぁ聞けって。コイツ、俺の知り合いでさ、今日入ったばかりでな。で、コイツは見た目通りのサンクタ族だ。つまりそう言う事だな」
「巫山戯んな阿呆が。ウチは便利屋じゃねェっつってんだろ」
「いいだろ?使いもしない弾丸を山程持ってんだし」
「あのなァ……」
「あ〜もうなんかごめんなさい」
もうなんかゴメンネホント。本当に申し訳無いよ色々と………それでそこの脳筋はいつまで他人に迷惑掛けてるんですか帰りますよ。
「……ハァ、なんでオメェが謝ってんだよ。ったくしょうがねェ。今回だけだかんな」
「あ、ありがとうございます……」
「やっぱ優しいじゃないかセンジ!」
「テメェは黙ってろ」
なんだこの人優しいかよ。取り敢えずこんないい人に迷惑掛ける筋肉は後でオリジムシ食べようか。
そんな事を思っている間に、センジは店の奥へと消え、少ししてから、手に何かの箱を持った状態で奥から出てきた。
「ほれ、この弾でいいんだろ」
そう言って、手に持っていた箱を投げ渡して来た。俺は危なげなくキャッチし、中身を確認する。箱の中には、12ゲージ弾が20発入っていた。マガジン4個分である。
「25万だ」
「高ッ?!」
一発12500円とか高杉ィ!たった20発で俺の必死に貯めたお小遣いが一瞬で瀕死状態になる額とか頭可笑しすぎるでしょ(真顔)
「ちなみにNPCの店だとこの弾で2万位だな」
「その要らない情報今言うの?」
「まぁ待て。グレンギウスだったか?お前さん、この世界に来たのは初めてなんだろう?特別に20万にしといてやるよ」
「ハァッ?!」
「マジですか」
めっちゃ優しいじゃんこの人。最高かよ。それに比べて………
「何故なんだ?!俺がこのゲームに来た時には1円も安くしてくれなかったと言うのに!」
「うっせェ!テメェ自身の心に聞いてみやがれ!」
駄目だこの筋肉、早くなんとかしないと。
取り敢えず、先ずはハロの尻に千年殺しをブチ込み、ノックダウンさせたコイツを引きずって店を後にする。
あ、お礼も言っとかなきゃ。
「ありがとうございました、センジさん」
「おう。よかったらソイツ抜きでまた来てくれよ」
「お、おう……」
どんだけ嫌われてんだコイツ?まぁいいや。
俺はハロを引き摺りながら、今度こそ店を出ていった。
「あ、おかえりなさい!ケルシー先生」
「……アーミヤか」
ロドス・アイランドに帰ってきたケルシーを、アーミヤが出迎えた。
「契約の方はどうでしたか?」
「方舟が協力すると言ってくれたよ。余りにも呆気なくな」
ロドスの廊下を歩きながら、二人は会話を続ける。
「方舟………ノアの方舟ですか?主に危機契約を中心に活動している組織と聞いていますが………」
「アーミヤ、一応念を入れて言っておくが、方舟の行動には十分に注意しておけ。奴らは何が目的かもわからんからな」
「そ、そこまでですか?」
「あぁ。なにせ奴らはロドスが提示する見返りも何もかも要らないと言ったんだ。いち企業が報酬を必要としない契約を結ぶのは、普通に考えてあり得ない事だ。何か企んでいるとしか考えられないだろう」
「……確かに。親切な企業と言うには可笑しすぎます」
「それに、方舟の戦力はロドス以上……もしかしたら一つの移動都市を軽く潰せる位はあるとわかった………今回のドクター救出作戦、気をつけるんだぞアーミヤ」
「………わかりました」
最大レベルが昇進1レベル80のホシグマしかいないロドスでどうやって危機契約をやればいいんだ(危機契約初心者)