「さて、今日も無事に終わったな……」
結城が背伸びしながら呟いた。
そして、【クロス・トエルブ】の方に近づくと、
「で、この後なんだけど……」
今からの話を始めた。「多分知ってると思うけど、人を探してるんだ」
「うん、ここは広いから多くの人もいるし、いなくても情報が入ってくるし」
【
まさか気づかなかった訳じゃないよね等と思いつつ、
「でも、一体どんな人なんです。情報を探るにも、外見が分からないとどうにも……」
「あ~、そうか。えっと、写真写真……」
結城と
見せられた方も確認して、
「あ~それそれ。……ちょっと待て
驚きながら尋ねた。
「いえ、
「盗撮って知ってるか?」
狙ったのならついでにストーカーも、と余罪が増えていく。
「いえ、知り合いに頼んでしてもらったものの一枚で……」
「これ以上犯罪行為を頼むな!!ってか、まだあるのか!?」
「消しませんよ!!」
「消さんでいいから少し貸せ!!」
そのまま奪い取るように武美からD-モバイルを借りると、
「この黒と白の髪のやつが俺たちが探してる灰原黒音ってやつだ」
そこには言われた通り黒と白と言うかなり特殊な髪を持つ青年が写っていた。
特殊というのは通常男性は黒ともう一色、女性は白ともう一色という具合の髪の色となる。
このような髪になるのは大抵男女の双子という限定された条件下でしか生まれないらしい。
つまりとてもレアケースな為、滅多にお目にかかれないはずだが、
「「……うん?」」
どこかで見覚えのあるような感じがした。
くおん、黒と白のツートンカラーの髪……。
『『
「「あぁ!!」」
そうだ、入学式の日のニュースに映っていた人間と一緒なのだ。
目の色が若干違う気がしなくもないが、それは些細なところだ。
「一体どうした?いよいよおかしくなったか」
が、それどころではないのでそれを無視しつつ、
「
「えぇ、できますけど……」
「第4の月の1日。多分朝の所」
はい、分かりましたと答え、すぐにカバンからD-NPCを取り出し操作を始める。
「一つ聞きたいんだけど、“くおん”ってどんな漢字なんだ?」
「えっと……、黒に音だけど?」
「オレがニュースで見たのと、漢字が違うけど同じ読みの人間が補導されたってニュースに出てたんだ」
『外見もほぼ一致してる、多分あってると思うけど』
ブイモンも頼りなさそうにそう言った。
無論他人の空似、とまではないだろうが世の中には同じ顔をした人間が3人いるという。
あった事がない以上、絶対とは言い切れないのだ。
「あっ、これですか?」
天知がそのページにたどり着いたらしい。
結城と次元院がそのページ、黒原空音の写真を見て、
「……合ってるな」
「……そうだね」
苦々しくそう呟いた。
「誰だよ、現地まわれば見つかるって言ったの!!」
「自警団に捕まってるって計画するわけないだろ!!」
まぁ普通自警団に捕まっている等と全員思ってもみなかったのだろう。
と言うか、刑務所に放り込まれている時点でセントラルを歩き回るだけ無駄だった訳だ。
「……全員聞こえるか?」
結城がこちらと少し距離を取ってから、連絡を取る。
どうやら複数と同時に連絡を取っているらしい。
「今日以降捜索はしないって話にしていたと思うけど、今日から捜索しなくていい。多分見つかった」
結城のその声に次々と付いていきたい、と言う声が上がるが、
「お前ら、行き先は自警団だぞ?」
の一言で黙り込んだ。
多かれ少なかれ自警団とは仲が宜しくないのが伺える。
「それに、あくまで多分だ。別に勝手に探し回ってても構わん」
そう言って連絡を終え、結城がD-モバイルを仕舞いながら、
「ところで、舞衣はどこ行った?」
「走って行ったよ?」
「多分自警団のところ」
友嬢と
好きな人の為に、健気なんだからなどと言っている。
「……詰所、あっちなんだけど」
そんな中、幻中は一本の道を指差した。
それは武美が走って行った方向とは真逆だった。
【超新星】メンバーはそっちを一旦見た後、武美の走って言った方を見る。
そして、結城が再びD-モバイルを取り出すと、画面も見ずに操作し、
「舞衣、戻ってこい。お前逆走してる」
シンプルに言って操作を終える。
普段は冷静、だが動揺しやすく、揚句に暴走。
そんな矛盾だらけの行動を起こしまくる武美に苦笑してると、
「なぁ、ちょっと親父さんに電話した方が良くないか?」
結崎が幻中にそう言った。
幻中はなるほどと思いながら、距離を取って電話を掛ける。
「なぁ、今のは一体?」
「あぁ、そういえば知らなかったね。アイツの親、自警団なんだ」
後ろのほうで納得するするような声が聞こえた。
『ん、どうかしたのか竜希?事件か?』
「半分当たり。第4の月初めになんか西方人が事件を起こしたっての分かる?」
『あ~、いや。厳密には違うんだがな……』
「違う?」
ニュースとはまた異なる事実が流れていたようだ。
よくある事ではあるし、西方人が乱暴な性格で広まっていることと相まって非常に面倒な事となった。
『あれは起こしたんじゃなくて、巻き込まれたらしいんだよ。セントラルに入った直後に』
それは災難だ、事件が起きる可能性が(比較的)低いこのセントラルで、それも入った直後に……。
「ん?それって拘束しておく必要がないんじゃ……」
『あぁ、今目の前にいるよ。たった今釈放だが?』
「……え?」
『それより、その子がどうかしたのか?』
「いや、ソイツの顔見知りがいるみたいで合わせようと思って」
『そうか……。だったら急いで来なさい、
そう言って電話を切る。
取りあえず今分かった事はただ一つ。
時間がない、と言う事だけである。
振り返ってみれば、もう戻ってきたのか息を切らせて肩で呼吸をしている武美を含め、全員が心配そうな表情をしていた。
「……たった今釈放になったみたい。急ごう!!」
そう言うと全員早足で中央自警団詰所へと向かった。
だが、通行人が多かったが為、最短ルートを突っ切って来たが、それでも15分程かかってしまった。
親父はすこしバツが悪そうな表情をしていた。
そこには既に黒原の姿はなかった。
「すまない、少しでも止めようとはしたのだが」
どうやら全く聞く耳を持たなかったらしい。
すぐに歩き出していったのだという。
「すいません、それでどっちの方に行きましたか?」
結城がそう尋ね、親父は指差した。
それを確認すると、
「舞衣、先に行って抑えて来い。俺たちもすぐに行く」
それを言い終わる前に武美は走った。
ただ我武者羅に街を駆ける。
すれ違う人一人ひとりの髪を見る。
帽子でもかぶってなければ見間違えるはずも無い、黒と白のツートンカラーの髪を持つ青年を。
いた。間違えなく彼だ。
「ちょ、ちょっと待って!!」
武美が声を上げる。
彼は振り返ると、
「誰?」
信じられない言葉を投げかけた。
見間違えた、いやありえない。
自分が他人と灰原を見間違えるわけがない。
「な、何を言ってるんですか灰原黒音。私を忘れて……」
「忘れた。消え失せろ」
そう言うと、また歩き始める。
そのまま放っておけば彼は道を間違えると武美は悟った。
が、それを止める術を私は持たない事も悟った。
2つの事を同時に悟った無力な自分は地面に膝を着き、ただただ嘆く事しか出来なかった。
前書きにも記したとおり、無印としての「デジタルモンスターDW」は終わります。
次話からは2章として「D-NET編」として話を続けます。
この話の後半にて登場した「黒原黒音」も本編に絡み、軽いカオス状態となりますのでぜひお楽しみください。
そして、ここまでシリアスになるんだなぁなどと考えながら投稿しました。
実はここまでシリアスにするつもりは毛頭なかったのですが、書き換えてるうちにこんな形になってしまい「これはこれで」とヤケ気味にしてしまいました。
最後に、気づいている方も多い(おそらく全員気づいている)と思いますが、無印の【クロス・トエルブ】組が戦ったデジモンのほとんどは本編にて『初めて進化した時の相手』と戦っています。どのように戦っていたかは本編を見直すなりして、調べてみるのも面白いですよ?
それでは、また機会があればお会いしましょう。
追加用語
D-NPC……この世界のノートパソコンです。D-モバイルよりも値段が張り、持ち運びが大変になりますが、容量もその分多くなります。