新戸緋沙子が仕えた男 作:主義
秘書子目線です。
私があの方と会ったのはたった一回だけ…その一回だけなのにあの方は私にとって大きな存在になってしまっていた。生まれて二度目の衝撃と言っても良いかもしれない。
私があの方が初めてお会いしたのはえりな様にお仕えしてから一週間ぐらい経ったある日だった。その日は珍しく『薙切家』の方々が一堂に会する日。この日はえりな様もお忙しく色々と多忙なため私はほぼ一日中付き添っていた。
えりな様は仙左衛門様とご一緒に挨拶回りをしてくると言う事で私は会場の端っこにいた。私にとって初めての大きな舞台であり、緊張していた。段取りの事やこれからの事などやらなければならない事が色々とあるため顔は多分、強張っていたのだと思う。それを感じ取ったのか、雨音様は私に話しかけてくれた。これが私が雨音様と初めてお話したタイミングだった。
雨音様の存在は知っていたけどえりな様のお近くにいる事が多いためお話する機会がなかった。それにあの時は失礼だけど雨音様の事を少し怖いと思っていた。それは噂だったり人相だったりがあったからだ。
あまり寡黙で人と話す事をせず、料理以外の事は興味がない人。
話してみると自分が思っていたイメージと雨音様はかけ離れている事に気付いた。話せば面白いし、笑顔だって見せてくれる。まあ、それでも笑う事は少ないですけど。
でも、私の事を気遣って雨音様は私に話しかけてくれた。その行為、一つで私はとても嬉しかった。えりな様の秘書である私にまで気を使ってくれる。普通は『薙切家』の方々が使用人である私に気を使う事はない。それはそれで良いし、それが当たり前だと私は思っていた。なのに雨音様はそんな事が関係ないように普通に話しかけてくれたのが何よりも嬉しかった。
この集まりが終わると自然と雨音様の動向に気を配るようになっていた。普段はえりな様と一緒にいる事などないし、アリスお嬢のお兄様だから住む場所も全然違う。気を配ると言ってもえりな様にさりげなく雨音様がどこにいるのかを聞いたりするぐらい。それ以上の事は私にはできない。
だって私はえりな様の事もお慕いしているがそれと同じくらい私は……雨音様の事をお慕いしている。慕っている人に恋だの愛だのという感情を持つことはその人に対して不敬。
『薙切家』の方々が集まって以来、私は雨音様とお会いする事はなかった。後にも先にも『薙切家』の方々が集まったのはあの一回だけだった。だから私は雨音様が遠月学園に入学すると聞いた時は飛び上がりそうなぐらい嬉しかった。また、一緒にいる事が出来るのだから。こんなに嬉しいことは人生でもそんなにないと断言できる。
でも、いざ手の届く範囲にいると声を掛けるのが難しいのだと分かってしまった。『私の事なんて忘れているかもしれない』だとか『迷惑そうな顔をするかも』と思ってしまうと声を掛けられない自分がそこにいた。話しかけたいと思えば思うほど話しかけられない。
そして気が付くと遠月学園に入学して三年の月日が流れて高等部一年に上がっていた。その間、ほとんど話しかける事はなかった。
もう後、二年したら雨音様は卒業してしまう。卒業してしまったらもう二度と会う事がないかもしれない。
「今年は……勇気を出して話しかけよう!!!!!!」
後悔だけはしたくないから…
この中で一番出番を多くして欲しいのは誰ですか?
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ベルタ
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シーラ
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新戸緋沙子
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薙切アリス
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一色慧