恐怖! チェンソーマン VS 鬼 !!   作:今日は晴れ

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チェンソーマン大好き!


第一話 鬼とチェンソー

「そっか! テメエら全員を殺せばよぉ! 借金はパアだぜ!」

 

 とある寂れた廃工場に笑い声と金属が回る稼働音、そして、血肉を切り裂く鈍い音が響いてた。

 数十人の人間がいる――否、「元」人間だろう。

 

 どの者も目に生気が宿っておらず、うつろな目をしており、肉体が欠けていても痛がる素振りもしない――ゾンビと呼ばれる動く死者の群れだった。

 

 そのゾンビたちが群がっている肉塊を、一体の異形が切り裂いていた。

 

 異形――痩せ細り、アバラが浮き出ている上半身の裸体から伸びる両手の肘から先に、高速回転する刃――チェンソーが突き出ており、その頭はチェンソーをすっぽりと覆い隠していた。胸からは紐――スターターロープが伸びていた。

 

「ギャアーハッハッハッハッ!!!」

 

 楽しげな笑い声を上げ、チェンソーを振り回す。

 頭と両手、計3枚の刃が群がるゾンビの血肉を切り裂き、辺りに飛沫と肉片が飛び散る。だが、脂や血肉で刃は鈍ることなく、それどころか、血を浴びる度に勢いは増していった。

 

 彼こそは、チェンソーマン――悪魔から最も恐れられた悪魔――現在の名はポチタ――の家族――デンジに心臓を渡し、デンジがポチタの力を振るう姿であった。

 

 本来の物語ならば、彼はあと数十分後に訪れるマキマ――支配の悪魔に拾われるのが運命である。だが、この物語には、たった一つの相違点があった。

 

 廃工場の隅から、チェンソーマンを見つめる瞳――悪魔がいた。

 このゾンビたち――ヤクザや重債務者をゾンビにした元凶のゾンビの悪魔ではない。黒い靄のような姿をしている。

 

『ま、まずいまずい! チェンソーマンが復活した! まずいまずい!』

 

 それは、焦った声を出す。

 だが、その声にチェンソーマン――デンジが気付いた。復活したばかりで、頭が回らないデンジは声のする者は全て敵だとばかりに襲いかかる。

 

『わ、わああああ!!』

 

 襲われた悪魔は悲劇であった。

 たまたま獲物を探していたら、廃工場から楽しそうな笑い声がした。

 てっきり、この廃工場を根城にするチンピラだと思い込み、そういった輩を獲物にしている悪魔は乗り込んだ。

 

 だが、居たのはチェンソーを振り回す異形とゾンビの群れ。

 

 そして、もう一つ悲劇であったのは、その悪魔はポチタがチェンソーマンであったとき、その姿を遠くから見てしまっていた経験があったことだろう。

 

 恐るべき速さで、自分が数十体いようとも決して打倒できない悪魔たちをなぎ払うチェンソーマンの勇姿、蛮行を知っていた。

 

 故に、震えが止まらず、立ち竦んでいた。デンジが変身したチェンソーマンとかつて見たチェンソーマンが別物であることに気づけず、ポチタであれば、知覚する前に切り裂かれている事実にも気付けないほどに、悪魔は恐怖に支配されていた。

 

『わ、わあああああ!!?』

 

 その恐るべきチェンソーマンが自身に向かってくる姿を見て、無我夢中で自分の能力を悪魔は振るう。

 

 そして、チェンソーマン――デンジは消滅した。

 

 跡形もなく、さきほどまでいた場所には誰もいない。

 

『やった……? は、はは、はははっ!』

 

 悪魔は笑う。殺してはいない。自身の能力によって、チェンソーマンを遠ざけたのだ。

 あとは、あのふざけた力を持つチェンソーマンが戻ってくるまでに逃げなければ、と廃工場から出て行こうと、出口をみれば、三人のスーツ姿の人間がいる。

 

 うち、一人――赤髪を三つ編みにした女がにっこりと微笑んだ。しかし、目は笑っていない。その顔を見たとき、悪魔は――転移の悪魔は自身の死を悟った。

 

 女は口を開く。

 笑みを浮かべているが、その表情からは凄まじい怒気が感じられた。

 

「――……」

 

 

 

 

 

 

 とある山中、東の空が僅かに明るくなっている明け方、一人の少女が駆けていた。

 息も絶えながら、それでも懸命に、額の汗も拭わず、一心不乱に駆けている。

 

 だが、子供の脚だ。たがが知れている。それでも、駆けていた。

 

「無駄だぁ! 無駄だぁ! 俺は知ってるぞ! 逃げれば逃げる分だけ肉は硬くなるって! だから諦めて食われろ!」

 

 その少女の後ろから、そんな声が掛けられる。

 下卑た声だった。強者のみが持つ声だった。獲物をいたぶって遊ぶ肉食獣の声。

 それでも、諦めずに少女は駆けていたが、木の根に躓き、転倒した。

 

 立ち上がろうとした少女の前に何かが投げられた。

 月明かりが照らす。それは、球体、人の頭だった。

 

 切断された頭部の口からは血がしたたり落ち、目には何も移していない。二十代半ばの男性だった。

 

 少女は恐ろしさがくるだろうが、それよりも少女は夢中でその首を抱きしめる。

 

「おっとぅ――!」

 

 涙が溢れる。

 母を亡くして男で一つで育ててくれた父の首だった。

 

 ――逃げろ! 麓に行って先生を呼んでこい!!

 

 そういって、逃がしてくれた父はもう何も話さない。

 

 そして、少女の逃げる気力も奪ってしまった。

 

「だろう? 無駄だろう?」

 

 少女の前に、父親を殺した下手人が現れる。

 

 脚の肉を食いながら、額から一本の角を生やした異形であった。

 

「逃げた罰だ。お前は特別に痛めつけて食べてやるよ。と思ったが、夜が明けそうだ。残念だぁ」

 

 

 そういって、異形は少女に手を伸ばすが、少女は父親の頭を抱えて静かに涙を流すだけだった。

 

 そうして、本来ならば潰えた命だった。

 

 だが、森の中に音が響いた。

 

 

 ――――ヴヴン

 

 

「!? なんだ」

 

 異形が顔を上げる。

 それよりも速く、何かが少女の間に降り立った。

 

 とっさにその何かをひねり潰そうと、少女に伸ばしていた手を向けるが、何もない。

 

 そこで漸く、己の伸ばしていた手が、二の腕の中程から先が消失し、宙を舞っていることに気付いた。

 

「ああああ!!」

 

 ――奴らだ!

 

 この個体は警戒心が強かった。

 だからこそ、生き延びてきた。

 

 あの方は怠惰を嫌う。だが、生き延びるための戦略は認めてくれる。

 

 よって、あの方に許される戦略を練って、今まで餌を、人を食い、奴らを返り討ちにしてきた。

 

 今夜も、自身が許されている縄張りで、肉食獣を装って山中の家を襲った。もしも奴らがくるようなら、罠を張って待ち構える。だが、はじめての食事場所だというのに、奴らが襲来するのは想定外だった。

 

 とっさに反撃しようとして、自身を襲った者を見て、今度こそ言葉を失った。

 

「な、なんだよ!!? お前も同じじゃねえか!! 同士討ちなんて、とんだ奴もいるもんだ!」

 

 それは、異形だった。

 両手と頭から回転する刃が飛び出ており、異形の姿だった。

 頭からはやかましい駆動音を奏でて、少女を背に、こちらを見ていた。

 一言も、釈明もなにもないので、それが不気味であったが、胸中には不安がよぎる。

 

 もしかすれば、自分が遊びすぎて彼の領域を侵してしまったのではないか、と。

 

 同輩なのは確実だろう。人の姿はしていない。そして、明らかに成り立てではなく、人を数人以上食っている姿であったから、何かの手違いで自分が彼の領域と入り込んだと解釈した。

 

「わ、悪かったな、すまねぇ、お前さんの縄張りだとは知らなくて、食っちまった。でもよ、いくらなんでも腕を飛ばすことも――」

 

 無かったのではないか、そう咎めようとすると、それは再び刃を振るった。

 

「ぎゃああああああ!!」

 

 今度は片腕が宙を舞う。

 

 両手を飛ばされた異形はのたうち回った。

 

「て、てめぇ! わかってんのか!? 獲物の奪い合いはあの方の指示じゃ――」

 

 ねえだろ!? そう続けようとして、声が出なかった。

 

 最期に見た光景は、自身の顔めがけて迫り来る大きな刃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 桑島慈悟郎は自身の目を疑った。

 

 現役を引退し、後継育成のため、育手となって数年、だが、鬼が現れ、そして隊士が間に合わないとなれば再び刀を振るうことにためらいはなかった。

 

 既に半世紀あまりを生きる慈悟郎だが、その豊富な経験からも、はじめてのことだった。

 

 慈悟郎が住む街の山では、数日前から人が襲われていた。警察は熊の仕業だと断定していたし、確かに遺体にはそれらしいあともあった。

 だが、慈悟郎の経験から、奴らだと思った。

 しかし、隊士を送って貰うには、証拠がなさすぎる。

 

 よって、一晩中、山中を歩いていた。

 

 もしも、熊であっても、狩れる。

 片足は奪われ、もう奥義は放てなくても、長年の経験と技で撃退できる。

 

 奴らでも、遅れは取らないだろう。

 

 そうして、夜が明けそうに、東の空が明るみはじめたとき、悲鳴を聞いた。

 

 右足が義足故にあまり走れない。それでも駆けた。

 

 遅かった、鈍った、と後悔しながらその場所にたどり着けば、地獄が広がっていた。

 

 辺り一面、血の海だった。

 血の中に、蠢く肉片があったが、塵のように風が吹けば崩れて消える。

 それが、奴らの肉片だと、慈悟郎は知っていた。

 

 その中に、一人の少女と、一体の異形がいる。

 

 三枚の刃をはやし、ヴヴンヴヴンと音を奏で、こちらをじっと見ていた。

 その異形は、普通に考えれば奴らだろう。

 

 だが、何かが違うと、慈悟郎の直感が訴えていた。

 

 その時、朝日が登り、この一帯に差し込んだ。

 

 広がっていた血は朝日を浴びれば一瞬で蒸発する。肉片も同じだ。

 

 だが、その異形は、ゆっくりと刃と被り物が春雪のように溶け落ちていく。

 被り物の下から、十代中程、金髪の少年が立っていた。

 

 少年が崩れ落ちるように倒れ、気がつけば慈悟郎は少年を抱きとめていた。

 

「お、おい!! お前、一体何が」

 

 問い詰めようとすると、少年は口を開いた。

 

「め、飯……」

 

 飯?と慈悟郎が声を出すと少年は、

 

「食わせて……」

 

 盛大に少年の腹の音が鳴った。

 

 

 




鬼滅の刃大好き!
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