恐怖! チェンソーマン VS 鬼 !!   作:今日は晴れ

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装甲悪鬼村正 魔界編大好き!(でも、この話を書いてるやつは『刃鳴散らす』はもっと好き)


第六話 デンジ修行日記・ーー魔剣の話をしよう。

 唐突な質問であるが、読者諸君は竹光をご存じであろうか?

 竹光とは、竹か、もしくは木片を刀身状に加工。その上に金属片を重ねる、もしくは抜き身のままに柄や鍔をこしらえ、鞘を取り付けた模造刀の一種である。

 その誕生の諸説あり、一説によると宮中に武士が召集された際、雅を重んじる場所に武器を持ち込むのは御法度であった。しかし、常に帯刀していた武士たちは、最早刀抜きに歩くこともままならなかった。故に、木刀に鞘を被せての参向となった、とする説もある。

 上記の真偽を判断する術を筆者は持たない。

 しかし、この説には、ある事実がある。

 

 常に帯刀している者は刀がなくなれば、歩くことすら不便となるのだ。

 現に、竹光が日本史上、最も多くで回ったのは廃刀令が出された明治初期とされている。

 それまで刀を許されていた士族たちは、刀を取り上げられ、しかし、廃刀令で刀を差すことが出来ず、かわりに竹光を重し代わりにしたのである。

 

 馬鹿な、と笑い話に思われるかもしれない。だが、武士の誕生過程からして、至極当然であった。江戸時代に形成された武士とは、刀のみに特化した異能集団であったからだ。これほど、一芸のみに秀でた武装階級も存在しない。というのも、江戸時代以前の武士、すなわち、戦闘を主とする人々は刀を重んじなかった。なぜなら、刀は弱いのである。

 弱いとは殺傷力ではない。言い方を変える――刀は非常に使いづらい。刀の攻撃は刃による斬撃であろう。しかし、切っ先三寸(約9センチ)のみが殺傷を可能とする距離であり、それよりも敵が離れたり近すぎると、殺傷力は格段に低下する。もう一つ、攻撃方法としての突きは刀の反りが引き抜きを阻害する。骨に当たれば折れるか曲がり、臓器を貫けば、固定されてしまう。こうなれば、棄てるしかない。

 事実、刀が多く使われたのは戦場ではない。捕虜の処刑や切腹における介錯であったとされている。

 そもそも、戦場では、射程の圧倒的に長い弓矢が、戦国時代末期には鉄砲火器が用いられた。しかし、主力である足軽や農民たちは、高度な技術を必須とする弓矢と、高価な鉄砲を使えなかった。彼らが使用したのは槍である。

 槍は間合いが当時の平均身長ほどであり、その長さは恐怖を薄れさせ、攻撃は棒での殴打か、穂先の刺突と、シンプル。しかし、それ故に初心者でも扱いやすい武器であった。

 つまり、刀とは脇役に近かったのである。

 

 だが、利点があった。

 その利点こそが、江戸時代の武士たちが刀を重んじた理由である。

 刀の利点は、メンテナンスが安価であることだ。

 

 弓矢や鉄砲の遠距離武器は、矢や火薬の消耗品を求められる。また、鉄は錆びてしまい、強度を必要とする鉄砲の長期保存は、高温多湿な日本では悩みの種であった。

 槍も同じく、軽量を求められているために柄は木製である。しかし、これも経年劣化で弱くなり、また、当時の日本の森林は、築城に多くの木材を使用したためはげ山が殆ど、槍に使用できる木材の値段は跳ね上がった。

 その点、刀は安い。

 鉄であるが、その鉄を何十、何百にも折り曲げており、錆びてしまっても研げばある程度は戻るし、見た目は変わらない。強度が下がろうと、折れ曲がりやすくなっても、そもそも戦がなくなれば、一応の体裁さえあればその心配も無い。

 また、装飾品は、鍔などは刀身に比べ遙かに安価であり、個性を出しやすい。

 

 故に、太平が続く江戸時代の武士たちは、刀に特化していった。

 武士――戦場での主役で存在でありながら、平和が彼らの飯の種を奪い、貧困に陥れられた。士官できず、海外にいった者たちもいるが少数であり、武士の大多数は、安価な刀以外の武具防具を売り払って、糊口をしのぐしか道が残されていなかった。

 幕府や全国の藩も全ての武芸を推してはいたが、御前試合では、刀をつかった試合が一番重んじられた。ようは、上流階層も武士たちの貧困を認めながら、職を与えられず、しかし、非常時に武力を求めているために刀のみに特化させることを黙認していたのだ。

 

 そのような事情から、江戸時代の武士は刀が主力という、歴史上、異質な武装階級となった。

 しかし、裏を返せば、江戸時代は他の時代の武士たちよりも、刀の武芸に励み、その技術水準は高かった。刀をそばに置き、刀こそが最も信頼する武具であり、その刀を他の誰よりも使えるように、他者よりも、刀という道具に貪欲になった。よって、彼らが、刀を自分たちに合わせるのではなく、刀を使えるように、刀のみを使えればいいとして、日常生活の姿勢や歩行すらも変革させたのだ。

 

 故に、突如、手放せと命令された武士たちは、日常生活もままならなくなったのは、当然の帰結だった。

 そんな武具である刀、その刀に最も近い模造品である竹光。

 つまり、竹光を扱えるようになれば、刀も扱える。武具として使用するのではない。その同様の形、長さと重さをもった練習品としてだ。

 

 そんな竹光を、じっと見つめる一対の視線を注ぐ男がいた。

 黄色の胴着を着た金髪の少年――デンジである。

 デンジはあぐらをかいて、手の中に握りしめた竹光を見つめていた。

 

 デンジが両手で竹光を持っている。恐る恐る片手を放し、柄のみを握った。

 竹光はなんともないようであるが、数秒後、中程から折れ曲がり、音を立てて地面に刀身が転がった。折れた断面には、茶色い液状の物が塗られていた。

 

「あー、やっぱ、泥じゃ駄目か」

 

 デンジは転がった刀身と残された柄を見比べ、どうするべきか、眉間に皺を寄せて悩ましげにうなっている。

 そんなデンジは肩を叩かれる。

 後ろを振り返ると、座っているデンジと同じくらいの高さに顔がある、低身長、というより、老化で身長が縮んでしまった老人、デンジの師匠である慈悟郎が立っていた。

 

 慈悟郎はにっこりと笑う。

 デンジもつられて笑った。

 

「また折ったんかっぁぁぁぁ!」

 

 慈悟郎の絶叫とデンジの頭に拳骨が直撃するのは同時であった。

 

 ☆

 

「いてぇな! ジジイ!! なにすんだ!?」

 

 頭を押さえながら、デンジは立ち上がるが、慈悟郎は全く気にする様子はなく、デンジが持っていた竹光がいつの間にか慈悟郎の手の中にあり、折れた竹光を眺める。

 

「師範と呼べと言っているだろうが、デンジ。で? 今度はどこに当てた?」

 

 デンジは釈然としないように顔をしかめつつ、指を差す。

 そこには、糸がつけられた桃がつるされている木がいくつもあった。そのうちの一つは枝が途中で消失し、その下に桃のついた枝が転がっていた。

 

「それはいい。これは何本目だ?」

 

それにデンジは指を8本立てて無言で答える。

 

「少ない」

 

 嘆息が混じった言葉を慈悟郎に、デンジは余計に顔の皺を深めた。

 

「いや多いだろ? それに木の間は余裕で30メートルは離れてんだし、その間を一瞬で、桃だけ狙って走り抜けろって、滅茶苦茶だぞ、じじい」

 

 ふてくされてあぐらの姿勢から寝転んで落ちた桃をかじるデンジに、慈悟郎は折れた枝の断面を見て思案に暮れる。

 

 デンジの修行は、いよいよ技の型を教えるまでになった。

 基礎身体能力の問題は無くなった。

 現在、デンジが打ち込んでいる修行こそ、雷の呼吸、その基本となる壱ノ型『霹靂一閃』であった。

 これは、原作を読んだ者には説明不要であるほど、知られた技であろう。

 否、雷の呼吸で詳細が判明している唯一の技だ。

『霹靂一閃』

 竈門炭治郎の友人にしていくつもの死線をくくり抜けた戦友の善逸が使用していた雷の呼吸。

 しかし、終盤まで、善逸は一つの技しか使えなかった。そして、その技もいたってシンプルな物だ。

 呼吸を駆使し、一瞬で神速にて敵の間合いにまで侵入、鬼の首を両断し駆け抜ける、居合いであった。

 

 現在、デンジは『霹靂一閃』を修得するためにひたすらに修練に励んでいる。

 半年前、身体能力は問題なしと許しを得られたので、お祝いで振る舞われた料理は美味であったし、ちゃんと約束通り内弟子として女子校にも連れて行ってもらい、女学生と接することができた。

 女学生とふれ合えた機会は、デンジにとって人生最高の時間であった。

 

 しかし、次回は技を習得して以降だと告げられる。

 

 よって、デンジは技を習得するため、修行に打ち込んでいるのだ。

 

 と、言っても、やることは簡単である。

 

 最初はひたすらに居合いの型を修得する。

 連日連夜、竹光を抜刀し、納刀の動作を朝から晩まで行った。

 その間、何本の鞘を割り、慈悟郎に殴られたか、馬鹿らしくなるほどであった。それを数ヶ月ほど行い、一応の許しがでたあとは刀を持って山の中を駆け巡った。

 

 そして、現在、更に修行は進んで、走りながらの抜刀および納刀である。

 標的は、木々の枝に等間隔で吊り下げられた桃。地面すれすれまで糸が垂らされた桃もあれば、デンジの遙か頭上にまでの桃など、その吊り下げられた位置はバラバラであった。

 共通しているのは、糸に吊され、どれも熟れすぎて、もう皮が腐っている実ばかりだ。

 

 その実を走り抜けながらすれ違いざまに竹光に当てる練習であった。桃の実は腐りかけのため、竹光に当たれば簡単に潰れてしまう。

 だが、デンジが使っている竹光、これが難物であった。

 本来竹光は竹だけでなく、樫など、固く、折れない木を使用する。しかし、この竹光は柔らかい果物がなる種類の木材を使用していた。

 そのため、力任せに桃以外の箇所に当てれば、簡単に折れてしまう。

 

 そもそも、呼吸を駆使し、常人を超えた速さで竹光を使用しているので腐った桃といえど種は硬い。よって、10個程度当てれば竹光は折れてしまう。それは慈悟郎も承知しているのか、代わりの竹光は用意されているが、最低でも30個は当ててから次の竹光を使え、が慈悟郎からの教えであった。

 

 そのことに、デンジは不満を漏らす。第一に山間で足場は不安定かつ、武器は脆い。剣術の修行がはじまって二ヶ月が経つが、いまだに30個の桃に当てる前に竹光を別な場所に当てて折れてしまうか、仮に当てて続けても10個程度しか竹光は保たない。そんな不条理のまえに、デンジはかじっている桃と同じく腐りかけていた。だが、慈悟郎は許さない。寝転んでふて寝したデンジの脳天に再び慈悟郎の拳が落ちようとして、気がついたデンジは頭を傾け、避けようとする。が、拳が頭の横を通過して方向を変えて、側頭部を殴りつけた。

 

「口答えはできるようになってからしろ」

 

 藁を剥がされた蓑虫のように、頭を押さえて悶絶するデンジを慈悟郎は放置する。

 慈悟郎が視線を注いでいるのは、デンジが折った竹光の断面であった。

 

 これをみながら、慈悟郎には確信があった。

 

 ――デンジには、雷の呼吸は適していない。

 

 呼吸、ひいては技にはそれぞれに特化した長所がある。

 

 例えば、水の呼吸は敵の攻撃をいなし、反撃に転ずる受け身の呼吸、炎の呼吸は剣術を基礎とし、地に足をつけての威風堂々たる呼吸など、様々だ。

 しかし、裏を返せば、水の呼吸では攻め手に欠け、炎の呼吸は同じく基礎ができあがった剣術や格闘技であれば、純粋な技量が勝敗の結果に繋がってしまう。

 

 しかし、これらの共通事項は全集中の呼吸であろう。

 

 全集中の呼吸――鬼狩りである鬼殺隊秘伝の身体能力を向上させる御技。

 正しい呼吸と正しい動きをすることにより、常人を超常の存在である鬼と同じ土俵に立たせることを可能とする。

 

 その呼吸を駆使し、ただ斬首するために特化させた異質な剣術体系。

 

 基礎が同じ呼吸方法を行っているが、どれも独自の発展を遂げており、使う流派に合わせて呼吸と体を特化させる。

 

 流派が別では、基礎が同じでも使用してる呼吸は最早、別物である。

 

 デンジが習っているのは、雷の呼吸。

 雷の呼吸の長所は速さであった。

 

 僅か数十メートル、長くても数百メートルを一瞬で駆け抜ける。

 その間に、6つの型から正しい技を選択し、多くても十手以内に鬼の首をあげる。

 

 一刀のもとに切り伏せる。

 長期戦闘ではなく、超短期決戦の呼吸であった。

 

 故に、全ての呼吸の中で最も死にやすい。

 

 ――一刀のもとに切り伏せる、と先ほど説明したが、それはつまるところ、使い手も技の前に一撃を受ければ防御はもとより、反撃する間もなく、死ぬのだ。更に、最初の一撃、もしくはその型が防がれれば、全くの無防備になった使い手と鬼が残される。あとの結果はいわずもがな。

 

 だが、それでも、雷の呼吸とは速さは異質であった。

 

 鬼の反応速度を上回る速さなのだ。

 

 故に、それ以外を切り捨てた。

 

 炎の呼吸のような術理を保たず、

 水の呼吸のような受け手ではなく、

 岩の呼吸のような反復動作も必要なく、

 風の呼吸のような持久力と数を絶対とせず、

 

 ただ、一刀が全てを分かつ『速さ』の呼吸、それが雷の呼吸であった。

 

 全集中の呼吸、ひいては、雷の呼吸は、『魔剣』の域に到達している。

 魔剣――才気溢れる者が、恵まれた環境に生まれ、秀でた師を持ち、再帰可能な死合いを重ね、ただひたすらに一生涯を剣術に捧げ続けた剣豪――それでも多くの者は到達できずに生涯を終える中、ごく一部の者、剣聖と呼ばれる者だけが到達できる境地の御技。

 

 ――魔剣とは理論的に構築され、論理的に行使されなければならない。

 

 慈悟郎は考える。

 デンジは全集中の呼吸でも独特な、雷の呼吸は身につけている。

 その身体能力の動きや反応、生み出される速さも申し分ない。それは、数ヶ月の稽古で実証済みだ。

 抜刀や納刀などの基本的な動作も稽古で、なんとか形となった。

 

 しかし、届かない。

 雷の呼吸には不完成である。

 

 技と同じ動きを覚えただけでは舞踊と同じであり、身体能力を高めただけでの鬼との殺しあいはただの自殺である。

 

 だが、教えられたところでも、実行はできない。

 

 慈悟郎はうなる。

 

 デンジは、デンジには、雷の呼吸は適していない、と考えたが、まだ届いていないのだ。正確には、素養がない。

 

 そして、素養が無い者に欠けている要素を教えられたところで成し遂げられるか、と言われれば無理だ。

 

 だが、このまま最終選別に送っても死ぬだけだ。

 

 どうするべきか、出口のない袋小路に迷い込んだような悩みを抱えている慈悟郎の頭上で烏が声を上げた。

 現在は昼間なので、烏がいるのは不自然ではないが、夜闇でも動き回れる特殊な烏であることを慈悟郎は知っていた。

 慈悟郎が腕を差し出すと、鷹師とその鷹のように烏が腕にとまる。

 

 烏の足には、筒がついていて、その筒をあけると紙――文であった。

 その文に目をやった途端、慈悟郎の動きが完全に止まり、汗が溢れた。

 

 忘れていたわけではなかった。しかし、デンジのことで頭から抜け落ちていた己を内心で罵る。

 

「デンジ、起きろ。山を下りるぞ」

 

 悶絶していたデンジに声を掛けた。

 デンジは山を下りると聞いて、顔を輝かせたが、慈悟郎の表情は対照的に暗い。

 

「ジジイ、また学校から鍛錬つくけてくれって来たのか!?」

 

 満面の笑みであるデンジの脳天に拳が落ちた。

 再び、悶絶するデンジを見下ろしながら、

 

「阿呆、これからお前の処遇が決まるんだ」

 

 しょぐう? と聞き返したデンジに、もう身支度を片付け始める。あっという間に慈悟郎はデンジの荷物もまとめ、荷物のつまった背負い子を投げつけた。

 

「一週間後に、鬼殺隊の幹部である柱が集まる――柱合会議が開かれる。そこでお前をどうするか決めるのだ」

 

 慈悟郎の顔は悲壮感に満ちていた。

 こんなジジイ初めて見たな、と流石のデンジもなんとなくまずいのだと察した。

 




 大正チェンソーこそこそ話

 デンジくんは女学校に行ったとき、思いっきり鼻の下を伸ばしたけど、親切だし、それに力仕事など、慈悟郎さんの足が不自由でできない雑用もやってくれたので、女学生からの評価も良いです。
 良かったね!
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