悪の組織の戦闘員(バイト)は今日も魔法少女と対峙する 作:戦闘員B
そして初仕事の日、老人から制服だと言って渡されたのは真っ黒なコートに顔を覆う蝶のような形の黒い仮面。
やはりヒーローショーのような物だったようだ。保険も怪我や器物破損した場合の保険が多かったし。
そして現場の場所が書かれた地図を元にそちらへ向かう。
交通費は自腹だった。そこは保証しないのか
そして現場となる場所は遊園地だった。
都内ではそこそこ有名な遊園地で今はもう会っていない友人達と一緒に遊びまくった覚えがある。
「確かここのメリーゴーランド辺り…だよな」
しかしどう入れば良いのだろうか、素直にチケットを買えばいいのだろうか…
すると遊園地の入り口から少し離れた所に妙にリアルな怪人の格好をした人が居た。
老人から怪人の格好してる人が居たらその人だからと言われていたのを思い出し、僕は接近した。
「あの、おはようございます」
『アァ、オハヨウダナ』
その人の見た目は異質だった。全身を真っ黒な鎧のような物が覆い、蟹のような巨大な鋏の腕と、そんな全身に反して妙に愛嬌が持てる海老のような頭をしていた。
『サァ、ココカラ入ルゾ』
そう言って鋏で遊園地の柵を切ると怪人さんはズカズカと入って行く。
あの鋏リアルだなぁ…ちゃんと切れるんだ。
入った先には沢山の人がこちらを見ていた。
「キャァァァァァ!?怪人よ!」
その一声で蜘蛛の子を散らすように一斉にその場から離れて行く人々。
そしてポツンとその場に残る僕と怪人さん。
「どうするんですか?」
『予定変更ダナ』
そう言うと怪人さんは徐に鋏を目一杯開けた。
『我ガ水砲撃ノ威力ヲ見セテヤル』
そう言って発射される水鉄砲は遊園地のシンボルであるユニコーン像を貫いた。
「えっ」
『フハハハハ!我ガ水砲撃ハ鋼鉄スラ貫クゾ!』
そう言って水鉄砲を飛ばしまくる怪人さん
「ちょっ、ちょっと待って下さい!?」
僕は水鉄砲を飛ばしまくる怪人を後ろから羽交い締めにする。
『何ヲスル!?狙イガ定マラナイダロウ!』
そう言って僕を振り回す怪人さん
しばらく怪人さんに振り回されていると人影がこちらへ向かって来て居た。
「そこまでよ!怪人!」
そう言って現れたのは
「悪は絶対許さない!」
「私達、愛と正義の!」
「魔法少女が相手です!」
クールそうな見た目のブルー、元気いっぱいなイエロー、優しそうなピンク。
二年前に現れた怪人達を倒すべく現れた魔法少女達だ。
『ヌゥ!現レタナ魔法少女!』
僕を背負った状態で怪人さんは魔法少女と対峙する。
「…って待ちなさい、貴方何背負ってるの!?」
そうブルーが問いかけると胸を張って怪人さんは言った。
『コイツガ我ガ水砲撃ヲカッコイイト目デ訴エテイタカラ撃チマクッタトイウノニ、ストップト言ワレタカラ腹イセニ振リ回シテ居タダケダ!』
「仮面被ってるのに目の訴えが分かるんですか?」
するとピタと止まる怪人。
『ウルサイ!イイダロ夢見テモ!!』
そのまま鋏から先程とは比較にならない程の水を発射する。
しかし魔法少女達はヒラリと躱すと
「「「三位一体!ミルキーウェイ!」」」
3人の杖から放たれた虹色のビームを怪人さんはモロに食らった。
しかし、怪人さんは立っていた。
『フハハハハ…!貴様ラ程度ノ攻撃ナド痛クモ痒クモナイゾ!』
すると魔法少女達を囲むように現れる狼達。
『幾ラ魔法少女トハ言エ、数ノ暴力ニハ勝テマイ!ヤレ!』
狼--–魔獣の中で最も弱く、そして数が異常な程多いものだ
コイツらは基本頭が良くない、と魔獣研究家の偉い人が言っていた。
その理由は、群体性がある事。
コイツらは頭となる個体が敵と認識した者に対して攻撃するしか能がない、その攻撃も噛みつきかたいあたりの2択だ。
しかし数は多い為、大体の人はコイツと遭遇すれば死が待ったなしでやってくる。
しかし今回の相手は魔法少女、きっと魔法攻撃で消し炭にされるだろう。
「モードチェンジ…剣…!はぁぁぁぁ!」
ブルーがそう呟くと杖から剣へと形を変えた武器が大量に居た狼達を薙ぎ払う。
「モードチェンジ!籠手!行くよー!ズドーン!」
イエローも同じ言葉を呟けば、杖から籠手へと形を変えた武器で狼を吹き飛ばす。
君ら魔法少女なのになんで近接戦闘してるんだ。
バラバラに切り刻まれるか、吹き飛ばされて壁や地面に叩き付けられるかの2択をされている狼達。
流石に頭である個体も不利と判断したのか、唯一杖なままのピンクへと襲いかかった。
「こ、来ないで!」
僕は自分の目を疑った。
あの温厚で争いが嫌いに思えるピンクが
杖をフルスイングして頭である個体を撲殺するなんて……魔法少女こっわ…
そして壊滅された狼達はその骸を淡い光に変えて何処かへ飛んで行く。
『フハハ!貴様ラハ充分頑張ッタガ、我ノ究極ノ一撃デ消エ去ル運命ダ!喰ラエ!『魔壊水砲撃』!』
怪人さんは両手をスクリューのように回転させ、そこから氷混じりの水を大量に発射した。
「行くよ!ブルー!イエロー!」
「うん!」
「オッケーだ」
すると武器を杖に戻したブルーとイエローがピンクの元に集まる
「「「三位一体!ピュアル・アロー!」」」
そう言うと、三人の杖からそれぞれの矢の形のエネルギーが現れ発射される。
見た目に反して水を物ともせずに矢は突き進み、遂に怪人さんを貫く。
『オ…オノレ魔法少女…!貴様ラ少女ト付イテル癖ニ、体付キ全ク少女ラシサガナイゾ……!』
そう言い残すと怪人さんは爆発四散した。
確かに魔法少女達の発育は目を見張る物があると思う。でも断末魔がそれでいいのか…
一人取り残された僕は、自分に付いた土埃を払って
「お疲れ様でした」
と頭を下げて帰路に着く
「「「あ、お疲れ様です」」」
丁寧に頭を下げて見送る魔法少女達、礼儀正しいんだなぁ…
「って…そうじゃなくて!」
「そこの仮面の人待ちなさぁぁぁい!」
「はえっ!?あの人敵なの?」
と思ったら見逃してくれなかった。ええい、こうなれば陸上部で培った全力疾走で引き離してやる…!
これなら逃げられる、そう思ってた時期もありました。
何なの魔法少女めっちゃ早いんだけど
ブルーは走りながら杖から魔法飛ばし来るし、イエローはすごーい!とか言いながら今並走してるし、ピンクはまず走らずに空飛んでるし。
なんなんだ魔法少女。
(あぁもう!帰らせろぉぉ!)
そう思って居たら手から謎の紫色の塊が形成された為、理解する事もなくそのまま魔法少女達に投げる。
すると魔法少女達はそれに応戦するように魔法を飛ばした。
が、お互いぶつかり合った為、爆発が凄まじく。僕はそのまま飛ばされた。
爆風のお陰で僕は帰る事が出来た。もう二度と対峙したくない。
その後ニュースでこの騒動が流れ、謎の敵として注目される事になったのを、自宅のテレビで見て萎える事になるがそれはまた別の話という事奴だ。
そして翌日、老人の元へ向かった僕はそのまま老人に詰め寄る。
「死ぬかと思ったんですけど!?というかなんのバイトなんですか!」
すると老人は呆気ない顔でこう言った。
「悪の組織の戦闘員のバイトじゃ、保険の為に君の制服には色んな機能を付けておいたんだが…使わなかったのかね?」
「それを早く説明しろぉぉぉぉ!」
館の中に僕の切実な叫びが響いた。
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