城南学園スタンド部、その名もジョーカーズ!   作:デスフロイ

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第9話 危機迫る部活動 後編

 クラシックバレエの練習場に、榮倉は入って後ろ手に扉を閉めた。

 旧校舎の一角で、元は和風の道場だったその場所は、床こそ板張りだが、奥の壁には一面に鏡が張られていて、バレエの動きを自分でチェックできるようになっている。

 榮倉は忌々しそうに、部屋の隅に置かれていたゴミ箱に、ビニール袋を叩き込んだ。

 

「くそ! 天宮め。あれだけカマしたのに、いきなり怒鳴り込むなよ……! 僕のところにまずは相談しろって、あれほど言ったのに」

「へー。何の相談?」

 

 ギョッとして振り向いた榮倉が見たのは、いつの間にか入口の前にいた、豊かな胸の下で腕組みして、薄ら笑いを浮かべるユリであった。

 取り急ぎ、榮倉も笑顔を取り繕う。

 

「え、あ、城田くん? どうしたの一体? もしかしてこの前話した、クラシックバレエ部への転部の件、考えてくれたのかな? 君には才能あると思うんだよね」

「そんなのノーサンキューよ。誤魔化そうったって無駄だからね」

 

 榮倉が自分を誘ったのは、才能よりもっと下世話な理由であることを、ユリは察していた。実のところ、男どもの下心丸見えの声掛けを受けるのは、一度や二度ではない。

 

「見当はついてるのよ。京次くんや遥音に、タバコの罪をなすりつけようとしてるんでしょ? 証人が必要だから、風紀委員の文明くんにその役をさせようとした。詳しいことまでは分からないけど、どうやらアテが外れたみたいね?」

 

 榮倉の笑みが消えていた。図星なのは明白だった。

 

「それって困るのよね。遥音が痛い目見るのは、正直ザマアだけど、下手すると同じ部員の私まで巻き添え食うじゃない? だけど、今日見聞きしたことは、ひとまず黙っておいてあげる。その代わり、さ。こないだ先生の方でやったテスト、私って調子悪くってさ。ちょっと加減……うあっ!?」

 

 突然、背後から突き飛ばされて、ユリは数歩たたらを踏みながら、床に倒れこんだ。

 振り返った背後にある入口の扉。大きめのガラスが埋め込まれている。そのガラスから、二本の透明な腕が突き出していた。

 腕が縮み、それぞれの手が窓枠を内側から掴んだ。その中間、ガラスの中央から、円錐状の尖った透明な物体が突き出てきた。みるみる大きくなり、現れ出たのは、人間と同じ大きさの、水滴状の頭部だった。造形はほとんどないが、目と口だけが、赤い半透明に形作られている。頭部に続いて肩が、腕が、胴体が、そして窓枠を跨ぐように足までが出てきた。

 

「こ、これって」

「ほう……これが見えるってことは城田、お前もスタンド使いか。まずます生かしてはおけないな」

 

 榮倉は普段のヘラヘラした笑いを捨て、冷酷な表情を浮かべていた。

 スタンドが、入口のすぐ傍の棚に乗せられていた手鏡を引ったくった。

 ぶら下げた手鏡の表面から、見るからに鋭利な刃が生え、三日月のように歪曲して伸びていった。

 

「僕の〈フィッシュ・ダイヴ〉は、ガラスを操るスタンド。形の変化もさせられるし、表面に望みの映像も映し出せる。振動させて、音声も出せるのさ。もっとも、ガラス越しのようなくぐもった音が精一杯だがね。そして、鏡はガラスの裏面を加工して作られている……」

 

 そこまで喋った榮倉の目が、殺意で光った。

 〈フィッシュ・ダイヴ〉が、鋭く踏み込んだ。反射的に後ずさるユリ。

 背後から、その腕を榮倉がブレザーの上から掴んだ。予想以上の筋力で、ユリの腕が中空に持ち上げられる。

 

「このままリストカットで自殺してもらおう。僕が殺したとか思われるのはとても迷惑だ」

「こ、殺そうとしてるじゃ」

 

 〈フィッシュ・ダイヴ〉の刃が、横向きに構えられた。明らかにユリの手首を掻き切るつもりだ。

 

(冗談じゃないっ!!)

 

 ユリは即座に、自分の体を取り巻くように〈エロティクス〉を出現させた。半透明の、不定形のスタンドが、榮倉にまとわりつこうとする。

 

「うわっ!?」

 

 榮倉は仰天して、ユリの腕を離して後ずさった。

 〈フィッシュ・ダイヴ〉が一瞬遅れて刃を振ったが、ユリは必死に腕を後ろに振って避ける。

 刃は腕を外したが、ユリのブレザーを掠めた。分厚い生地があっさりと切り裂かれ、その下のシャツの胸元まで裂いていた。白いブラジャーが、その隙間からわずかに覗いている。

 あまりの切れ味に、ユリの背中に冷や汗がドッと噴き出た。急いで立ち上がり、〈フィッシュ・ダイヴ〉と榮倉に挟まれないよう横に逃げる。

 〈フィッシュ・ダイヴ〉は踏み込んで、今度はユリの喉元を狙った。突きこまれた鋭い切っ先を〈エロティクス〉が包み、本体であるユリをガードする。

 切っ先が大きく縦横に振られて、振りほどこうとするが、それだけはユリもさせない。

 

「甘い!」

 

 榮倉が滑り込むように放ったスライディングが、ユリの足元をすくった。たまらず転倒し、慌てて起き上がろうとした時、背中に木の壁が当たった。いつの間にか、部屋の壁際まで追い詰められていたのだ。

 〈フィッシュ・ダイヴ〉が、後ろに逃げられないユリを壁に押さえつけるように、切っ先を喉に突きこもうとしてくる。〈エロティクス〉で先を包んでいるものの、ジリジリ切っ先が迫ってくる。

 

「いつまで粘れるかな? そのスタンドが耐え切れなくなった時が、お前の最期だ」

「だ……黙ってるって言ったじゃない!? なんでこんなことを……!」

「僕はね、国際的なバレリーナになりたかったのさ。だけど、運が味方せず、引退を余儀なくされた。僕にはそれだけの才能があったのに!」

 

 悔しげに、床を踏み鳴らす榮倉。

 

「こうなればせめて、バレエの指導者として大成したい。それが叶った時にお前が現れて、今回のことを暴露するとか言われると、とても困るんだ。さっきみたく、弱みに付け込んであれこれ要求してくるのが目に見えている。ここで始末するのが、後腐れがないというもんさ」

「だ……黙ってないわよ。か、か……」

「ああ、神原か? あいつは前から気に入らなかった。クラシックバレエ部の部員にも、道理の分からない馬鹿もいてね。僕より神原に、この部の顧問になってほしいとか抜かしてやがるのさ! 奴が僕よりイケメンだからとか、頼りがいがあるとか。バレエの指導能力が肝心なのにな!」

 

 その嫉妬に歪んだ表情を、ユリはヘドが出そうな気分で見やった。

 それと同時に、

 

(こいつ、笠間さんが差し向けたスタンド使いじゃない!? 私が、神原先生のことを言い出したとしか思ってない! 同じ穴のムジナだから、交渉に応じると思ってたのに!)

 

 それに気づいたものの、今はこの場を何とかしなければならない。切っ先はさらに押し込まれ、〈エロティクス〉でいつまでも耐えられないのは見えていた。

 

(……そうだ!)

 

 追い詰められたユリの脳裏に、閃きが走った。

 即座に、〈エロティクス〉の一部を、自分の脛から足先まで包み込んだ。

 その足で、半分しゃがんで開いている、〈フィッシュ・ダイヴ〉の股間を蹴り上げた。

 

「うっ!?」

 

 スタンドが他のスタンドから受けた攻撃は、本体にも影響を与える。予想しない反撃に、榮倉は股間を抑えてうずくまった。しかし、不自然な体勢からの蹴りでは、決定的なダメージとはいかなかった。

 しかし、〈フィッシュ・ダイヴ〉の押し込む力も緩んだ。体を横に滑らせて、ユリは必死で逃げつつ立ち上がる。

 

「甘い!」

 

 ユリの背後の壁には、大鏡があった。〈フィッシュ・ダイヴ〉が駆け寄り、刃を持っていない左腕を大鏡に吸い込ませる。

 大鏡から、ユリのすぐ傍に左腕が生えた。ユリの腕が、ブレザー越しに掴まれる。引っ張られたブレザーのボタンが弾け飛び、先にできていた裂け目が大きく開かれ、破れる音が短く鳴った。

 ユリは咄嗟に、ブレザーを肩から脱いで、腕から離れるように動いた。ズルッ、とユリの腕がブレザーから滑って抜けた。

 〈フィッシュ・ダイブ〉の左腕は、脱がれたブレザーの袖を放り出すと、大鏡に引っ込んだ。

 瞬時に、左腕がユリのすぐ背後から出現し、ワイシャツの襟首を掴んで一気に引き寄せた。

 ゴン! と音を立て、ユリの後頭部が大鏡にぶつけられる。ワイシャツの胸元のの裂け目が、わずかに大きくなった。

 ユリは横目で、〈フィッシュ・ダイヴ〉が左腕を鏡に突っ込んだまま、刃を高く差し上げて、近づいてくるのを見た。逃げるのに夢中で、刃の切っ先を放してしまっていたのだ。

 

「手こずらせやがって……。だけどここまでだな!」

 

 少し離れた所に立って、勝ち誇る榮倉。

 ユリの手にはまだ、ブレザーの袖が握られていた。

 

「このッ!」

 

 ブレザーの袖を大きく振って、反対側の袖を〈フィッシュ・ダイヴ〉に叩きつけた。

 

「効くかよ、そんなものが!」

 

 余裕で、〈フィッシュ・ダイヴ〉の刃が袖を受け止める。

 が。

 受け止めた袖口から、細長く伸ばされた〈エロティクス〉が伸びた。ユリが握っていた袖口から侵入して、反対側の袖口まで伸びていたのだ。ブレザーの中を通して振り込むことで、〈エロティクス〉のスピードのなさを補い、かつ目くらましとしていた。

 〈エロティクス〉の先端が伸びる、その先にはゴミ箱。引っかけるようにして、横に跳ね飛ばした。

 ゴミ箱が、榮倉の顔面へと飛んだ。

 

「何!?」

 

 慌てて榮倉は、自分の手でゴミ箱を防ぐ。

 その時、ゴミ箱の中から、先ほど榮倉自身が捨てたビニール袋が飛び出した。タバコの吸い殻にまとわりついていた灰が、榮倉の目に入った。

 たまらず、目を押さえて呻く榮倉。

 ユリは襟元の手を無理やり振り払うと、駆けた。向かうのは、入口とは別の、部屋の隅にある、ガラスのない扉。幸い鍵はかかっておらず、引き開けると中へ滑り込んだ。

 だが、中の明かりをつけた時、ユリは蒼白になった。

 そこは、更衣室だった。本来窓があったらしいところも、板が打ち付けられていて完全に塞がれている。大小のダンボールが更衣室の隅に置かれ、両側の壁は縦長のロッカーが並んでいた。

 

「……逃げられると思うか? その部屋には脱出口はないぞ」

 

 涙で目を洗い、どうにか視界を取り戻した榮倉は、ゆっくりとした足取りで更衣室へと向かう。

 扉を開けると、床にはバラバラに放り出されたダンボールが山のようになっていた。

 そのダンボールをジロリと見やった榮倉は、やがてニヤリと笑った。

 

「なるほどな。この掃除道具入れのロッカーか。人間一人なら隠れられそうだな……」

 

 ロッカーに手をかけようとして、ピタリとその手が止まった。

 

「と見せかけてそっちか! 見えてるんだよ馬鹿が!!」

 

 〈フィッシュ・ダイヴ〉が、ダンボールの山に斬りつけた。そこから覗いている、黒髪の頭部目掛けて。

 が。

 グシャッ、と、大した手ごたえもなく、頭部が潰れた。

 いや。黒髪の頭部と思っていたのは、黒いモップのパイル部分だった。小さいダンボールに被せて偽装していたのだ。

 勢い良く、掃除道具入れのロッカーが開いた。

 

「〈エロティクス〉!!」

 

 ユリの声と共に、半透明のスタンドが、榮倉にまとわりつく。

 

「なっ……う……うあぁぁ、な、なんらこれぇぇぇぇ」

 

 虚を突かれて驚いていた榮倉の声が、すぐに上ずったものに変わっていった。恍惚の表情を浮かべ、床に倒れこみ、仰向けにのたうち回る。すでに〈フィッシュ・ダイヴ〉は消滅していた。

 

「フェ、フェイントかけるんじゃないわよ! バレたかと思ったじゃない」

 

 助かったことを自覚し、ユリは安堵でへたりこみながら、悪態をついていた。

 

(だけどこれからどうしよう? 〈エロティクス〉はそんなに離れては使えないし、ここから出ていくために解除すれば、正気に戻っちゃう。そしたらまた襲い掛かってくるし……)

 

 ユリが困り果てていると。

 

「何? 更衣室開けっ放しじゃない。……え!? 何よこれ!」

 

 入ってきたのは、ユリも顔見知りの、学校きっての女傑で知られる、クラシックバレエ部の部長だった。

 ユリは身を震わせたが、女の悪知恵が瞬時に発動した。

 

「こ、怖かったぁぁっ。先生が、榮倉先生が、無理やりぃぃっ!」

 

 いつでも出せるのが密かな自慢の涙を、ボロボロ流すユリ。部長は、ワイシャツの胸元が裂かれているのに気づくと、顔色を変えた。

 傍らで見悶えている榮倉に、部長が視線を移す。〈エロティクス〉は部長には見えないが、その代わりに、ズボンの上からでも分かりやすく変化した、下半身がしっかり見えていた。

 部長の悲鳴が、更衣室に響き渡った。

 

 

 

 

 

「ったく、そンなわけねーじゃン!」

 

 コーヒーカップをソーサーに叩きつけるように置く遥音の前には、少し困った表情の神原がいた。

 

「アタシはタバコの匂いが、本ッ当に大嫌いなんだよ! そンなモン、好んで口にするかよ」

「そう怒らないでもらいたいな。ソーサーが割れたらどうするのかね、ショップの方のご迷惑になる」

「アタシだけじゃないよ。京次にしたって、『それで強くなるんなら迷わず吸うけどよ、そうは思えねぇからな。肺活量が落ちそうだしな』って言ってたよ。アイツは怒るっていうより呆れてたよ」

「それは分かった。ただ、天宮くんの身にもなりたまえ。幻とはいえ、目の前で見せられてはな」

「……ま、アイツも平謝りしてたからね。今回は、ラーメンの奢りで勘弁してやった」

 

 ニカッ、と笑って見せる遥音。

 

「そンでさ。その幻のことだけど。やっぱ、スタンド使いが絡んでるって、センセは思ってるわけ?」

「……可能性は濃厚だ。天宮くんが、榮倉先生からタバコの件を聞かされた次の日に、喫煙の場面の幻を目撃したという。しかも私がいないことが事前に分かっている日にだ。タイミングが良すぎる」

「つまり……榮倉が、スタンド使いだったってこと?」

「そうとは限らない。スタンド使いは別にいた可能性も捨てきれない」

「だけど、榮倉が一枚噛んでたとしか思えないよね? アイツ、どうなるわけ?」

「仮にも自校の教師をアイツ呼ばわりは、いかがなものかね?」

「アイツ呼ばわりでも、まだ気を使ってるつもりだよ! ……ユリの身にもなってみなよ」

 

 さすがに台詞の後半は、遥音も声をひそめた。

 

「君の気持はよく分かる。私も一瞬呆れ果てたがね」

「一瞬かよ!?」

「冷静に考えると、これまたタイミングが良すぎる。タバコの一件とほぼ同時に起こった事件だ。どちらにも榮倉先生が関係している」

「ってことは……この二つの事件には、関係があるってこと?」

「ただ、どのような関係性なのかが、よく分からない。我々の知らない事実があるとしか思えない。ましてや、キーマンである榮倉先生が、学校から去っていくとあってはな」

「やっぱクビなんだ! ザマアこの上ないね!」

「もう少し声を抑えたまえ。内容が不穏であることだし」

 

 遥音を窘めて、神原は続けた。

 

「形としては、自主退職だよ。学校としては、今回のことを表沙汰にはしたくない。全国コンクールを目指すクラシックバレエ部に、辞退しろとは言いたくないということだ。何しろ、部員たちには何の落ち度もないのだからな」

「それでいいのかよ? アタシは納得したくないね」

「これは、城田くんの要望でもあるのだよ。大事にしないでくれ、とね。確かに、事が公になれば、彼女に浅からぬ傷がつくのは間違いないからな」

 

 そう言われて、遥音も仕方なさそうに口を噤んだ。

 まさか、神経の図太いユリが、学校公認で一週間の休みをもらったのをいいことに、自室のベッドでのんびり寛いでいるなどとは、二人とも想像もしていなかった。

 

「ただ、今回の件で副産物がなかったわけではない。実は部活動の縮小を念頭に置いた再編が検討されていてね。我が軽音楽部も含めた小規模の部は、廃部の対象になりかけていた」

「何だってぇ!? 冗談じゃないよ!」

「話は最後まで聞きたまえ。しかし、今回のことの後で、再編を執り行えば、生徒たちの動揺が大きくなりかねない。あげくに事件が白日の下に晒されれば、学校の名に傷がつきかねないということで、再編は白紙となった。軽音楽部も存続が決定だ」

「ああ良かった。驚かせるなよなぁ」

「それより、だ」

 

 神原は、姿勢を改めて述べた。

 

「敵の攻撃は、直接的なものばかりではない。心理攻撃を含めた、搦め手もありえるということだ」

 

 そうした策略を得意とする、笠間の仕掛けであろうと、この時神原は考えていた。

 

「言いたいことは分かるよ。そっちの方も用心しろ、って言いたいンだろ?」

「うむ。対策としては、やはり互いの絆を強固なものにしていくしかあるまい。普段からコミョニケーションを密にして、互いのことをよく知っておくことだ。そうすれば、隙をついて入り込もうとする者など、寄せ付けるものではない」

「その通りです!! 神原先生!」

 

 突然、横から会話に割り込んできた大声に、神原も遥音も目を丸くした。

 そこにいたのは、クラシックバレエ部の部長だった。

 

「先生、我が部の顧問になるお話、もう聞いておられますか!?」

「あ……打診があったのは確かだよ。しかしだね、私は既に軽音楽部の顧問もやっているし、兼任とは荷が重い。第一、私はバレエの鑑賞経験くらいはあるが、自らやった経験はゼロだ。君たちに技術指導しろと言われても無理だ」

「そちらの方は、別に外部から招聘すればすむことです。ですが、先生方の中からも、顧問をお出しにならないといけないはずですよね?」

「まあ、その通りなんだが……」

「だったら先生にぜひ引き受けていただきたいです! 前から私は、神原先生が顧問にふさわしいと思っていました。いえ先生は、練習に時々顔を出していただければ、それだけで結構です! いえ時々どころか毎日でも! 他の部員たちのモチベーションも大きく上がります!」

「いやあの毎日はさすがに」

「先生もおっしゃてたじゃないですか! コミュニケーションを密にして、絆を強くしていこうと! そうすれば、私たちの間に割り込むものなど、誰もいやしませんッ!」

 

(分かりやすいにも程があるよなぁ。どンだけ肉食なんだよこの部長さんは)

 

 遥音は、吹き出しそうになるのを必死でこらえていた。

 


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