城南学園スタンド部、その名もジョーカーズ!   作:デスフロイ

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第55話 虹を超えて

「〈ハースニール〉!!」

 

 怒りに燃える文明の放った一撃は、明日見の首を切り飛ばした時計を粉砕し、〈スィート・バイキング〉の胴中に命中した。外骨格がアッサリ削られ、中身が露出する。

 だが、それも一瞬だった。怪物が身を翻して、他の仲間たちの追撃を避けるうちに、〈肉の芽〉が傷口を塞いだ。すぐに日光で溶けるが、溶けきらない端に外骨格が増殖する。残った傷口にさらに〈肉の芽〉そして外骨格が塞がっていき、やがて元に戻ってしまった。

 

「やってくれたねぇ! フレミング、返礼してやんな!」

「分かりました。亜貴恵様」

 

 〈スィート・バイキング〉の首が、離れた文明に向けられた。牙だらけの口が大きく開かれ、その奥に巨大な弾頭が現れた。

 文明が危険を感じて、横に飛んで逃げた瞬間、弾丸が発射された。文明のいた場所に着弾すると、四方八方に鋭い棘が飛び出てきた。その様は、まるで巨大な栗のイガのようであった。

 

「天宮くん!」

 

 体勢を立て直してもう一度、〈ハースニール〉を撃とうとしている文明に、神原が叫んだ。彼自身は、怪物の動きが止まった時に、後ろ足や腹をマントで斬りつけていた。

 

「その技は、あの怪物の反対側にいる味方を巻き込みかねん! 考えずに使ってはならん!!」

「くッ……!」

 

 文明は、心底悔しかった。

 この島での闘いで、自分たちをここまで牽引してきた笠間。自分が恋をした明日見。二人の兄妹の散華を目の当たりにしながら、その仇敵を前に闘いながら、最大の武器を迂闊に使えないこの状況が、歯がゆくて仕方がなかった。

 笠間の、昨日の台詞が、頭の中でこだましていた。

 

『これはな、命も運命もチップに変えての〈ギャンブル〉なんだ。自分のも他人のもゴッチャ混ぜにしての、な。勝てば全てが手に入り、負ければ全て失う』

『お前はママゴトみたいな勝負しかしてきてないから、フワフワした綿菓子みてーな理想論を振りかざして、得意でいられるんだ』

『汚らわしい死神で大いに結構! 目の前で、大切な人が死んでいくのを見るより、よっぽどマシってもんだ!!』

 

(あなたの言う通りだったよ、笠間!!)

 

 心の中で、文明は慟哭していた。

 

(ほんの一瞬の油断で簡単に、つながりのあった人が死んでいく! 何て僕は甘かったんだ。これが……本物の戦いなのか? あまりにも、むごすぎる!)

 

「文明ッッ!!」

 

 京次の怒号が、耳を震わせた。

 その京次は、怪物の前足の、鋭い爪を裂けながら、めまぐるしく動いていた。

 一瞬その目が、文明を確かに見た。その目の意味を、文明は瞬時に察していた。

 

(後悔も反省も後回し! ワムウに託された、戦う心を忘れるな! そういうことか)

 

 文明は、ギリッと歯を食いしばった。

 京次は、怪物の攻撃を凌ぎながら、俯きかけた文明の顔が上がったのを、感じ取っていた。

 

(それでいいんだよ! おめぇは強い男だ。俺が見込んだ男だ!)

 

 ガキッ! と、怪物の前足の爪が、京次の一撃で折れた。そのすぐ側では、隙を見て接近した航希がトンファーを全力で振るい、もう一方の前足が地面で踏ん張っている所を攻撃している。

 愛理も、涙を必死で堪えながら、ワイヤー付きの棘が襲い掛かるタイミングを外しながら、回避している。危ないところは、ユリのガードや、遥音の〈ブラスト・ヴォイス〉の一時的な効果で凌いでいた。

 

「コイツッ!!」

 

 操も、スタンドに剣を振るわせて戦っていた。左右に振るわれる尻尾の薙ぎ払いを避けながら、〈ファントム・ペイン〉の一撃をその尻尾に加えている。『切り離す』能力は、結局尻尾を自由に暴れさせるだけなので、切れ味に限界があるものの、通常の斬撃で攻めるしかなかった。

 

「もうッ! 何グズグズやってるのよ」

 

 未麗が焦れていた。

 

「ババアも聖也もいったん攻撃やめなさい! 私がやるわ」

 

 亜貴恵の舌打ちを聞かなかったふりをして、未麗は叫んだ。

 

「演ぜよ! 我が〈譜面〉を!!」

 

 文明たち全員の。動きが止まった。跳躍していた京次などは、固まったまま地面に転がってしまう。

 

(この姿になったら、敵の行動の指定ができなくなった。羽ペンを持たなくなったからか。だけど、動きを止められるだけでも強力。まずはやはり愛理。私をコケにしたあの小娘は、絶ッッ対に! 生かしてはおかない!!)

 

 ケースの中の振り子が、揺れ始めた。そして、怪物の背中にあった時計が3つ、ふわりと空中に浮き上がった。動けない愛理に、いずれもが迫る。

 が、愛理は動き出した。遥音もユリも、時計を迎え撃とうとしている。

 

(何で!? まだ3秒しか経ってない! この姿になったから、能力が劣化したのか!?)

 

 未麗は、気づいていなかった。

 ケースに開けられた小さな穴。それは、地下室での闘いで、愛理の〈スィート・アンサンブル〉に穿たれたものだった。その時の一撃は、正確に振り子の根元を抉り、傷めていたのだ。完全に破壊するには至らなかったが、地下室での戦いの時に傷ついたまま無理やり動かしたのが災いしたのか、振り子の動きは明らかに悪くなっていた。

 時計の攻撃を必死で回避している三人。時計の一つが、誤って柵に追突すると、甲高く短い音と共に、金属製の柵が切断された。

 迎撃の手段に乏しい三人を見かねて、航希が駆けつけた。

 

「またこの手の攻撃かよ!」

 

 航希は、縦横無尽に動き回りながら、トンファーを振るう。次々と、時計が叩き割られた。

 

「ああもう! ママ、もう一度動き止めて! あとは僕がやるから」

「はぁ? ママってこのヘボ娘の事かい? モヤシ小僧、アンタはこのあたしが産んだんだけどねぇぇ!?」

「え、そうなの? どういうことなのママ?」

「あーうるさい! ババアの妄言はさておいて、能力使えばいいんでしょ!?」

「どっちが妄言吐き散らしてんのさ。ヘボ作曲家の言うことはこれだから」

 

 もはや相手にせず、未麗は再び能力を使った。

 

「演ぜよ! 我が〈譜面〉を!」

 

 またも、全員の動きが止まった。

 

「さぁて……。確実に仕留めていこうか。まずは、操を僕から奪ったアイツだ! さっきから、ウザったいんだよ!」

 

 聖也は、棘を伸ばしていくと、その全てを航希に突きこんでいった。

 航希の頭に、胴体に、足に、棘が突き刺さる。大量の血を吹き出しながら、航希は飛ばされて、愛理たちの足元まで転がっていった。

 

「航希!!」

 

 文明と京次、そして操が、同時に叫んでいた。

 

「こ、航希くんまで……!」

 

 愛理が、変わり果てたその姿を見下ろして、蒼白になっていた。

 その時。

 航希の倒れ伏した姿が、急激に変化していった。

 赤、橙、黄、緑、青、藍、紫。

 七色の、輝く縞模様に彩られたその姿は、〈クリスタル・チャイルド〉の色変わりした姿に似通っていた。

 

「え……!?」

 

 七色の姿が消えていく代わりに、そこにダブって現れた航希の姿が、身を起こしていき、そして立ち上がった。

 その体には、棘による傷など、全くつけられていなかった。

 

「なんかよく分からないけど、助かったみたい!」

 

 航希のトンファーが、空中の棘を次々と打ちのめす。棘が砕かれると、ワイヤーまでもがボロッと崩れていき、やがて消失していった。

 

「こ、これって一体、どういうことなんだよ!?」

「教えてやるよ」

 

 その声に、敵味方全員が振り返った。

 

「笠間さん!!」

 

 愛理が、大きく目を見開いていた。

 そこに立っていたのは、牙の攻撃を受ける前と変わらない姿の、笠間であった。

 傍らには、七色に輝く姿のスタンドが従っていた。その手にした鎌ですら、刃が眩い七色の縞模様となっていた。

 

「これが俺の、新たなステージに到達したスタンド。〈レインボー・チャイルド〉だ」

 

 空から柔らかく降り注ぐ日の光を身に浴びながら、笠間はそう口にした。

 

「身を挺して、人を守る。『死という悲しみの雨』の後には『生という希望の青空』が広がり、そこに『虹』がかかる。柄にもないと自分でも思うが、そういう能力になっちまったものは仕方ない」

「何が仕方ない、だよ!! ふざけるな!」

「あぁ、それから、どうして俺がこうしてノンビリ喋ってると思う?」

 

 笠間が、嘲るように笑っていると。

 違う方向から、明日見が地を駆けて、〈スィート・バイキング〉の正面に回り込もうとしていた。

 

「明日見くん……ッ!」

「二人で、遊びに行くって約束したものね!」

 

 歓喜の声を上げる文明に、明日見は一瞬笑顔を見せた。

 その間に笠間は、手近にいた遥音に駆け寄って耳打ちした。

 

「〈レインボー・チャイルド〉の身代わりは、一度に2人は無理だ。それと、一度身代わりを出すと、インターバルの時間が必要だ。過信するな」

「了解! 〈ウインド・ヴォイス〉でみんなに伝えていくよ!」

 

 明日見は、怪物の正面に回り込んでいった。

 

「〈パラディンズ・シャイン〉ッ!!」

 

 スタンドの槍が突き出された。柄が途中でいくつも分離して、穂先が高みにある振り子を狙う。

 

「何ボヤッとしてるんだよ!」

 

 聖也だけが、明日見の存在に気が付いていた。背中からワイヤーが伸びて、その先の棘が穂先と打ち合わされて、どうにか食い止めた。

 

「そうそう簡単にやらせるとでも思うか!」

 

 未麗は、新たに背中に浮き出てきた時計を、明日見目掛けて飛ばす。

 

「〈クリスタル・チャイルド〉!」

 

 明日見の姿が、笠間と入れ替わった。

 迫りくる時計を、次々と斬り払う。

 そして笠間も、振り子を狙って〈刃の螺旋〉を放った。

 

「調子に乗るな!」

 

 〈刃の螺旋〉の伸びる切っ先に、時計が回り込む。時計を砕きはしたものの、さらに次の時計が回り込んで邪魔をしてきた。勢いを減殺されていた切っ先が弾かれ、ケースまで届かない。

 

「裏切り者のガキの分際で、生意気なんだよッ!」

 

 亜貴恵が吠えて、巨大な顎を開いて笠間をもう一度食い殺そうとしてきた。

 が、慌てて首を上に振り上げてしまう。

 〈ハースニール〉が、避けきれずに顎の下を掠めた。外骨格が、突然バラバラになる。

 剥き出しになった顎の骨に、〈肉の芽〉と外骨格が伸びていき、修復されていった。

 

「く……! 掠めたくらいじゃ、〈ハースニール〉でも削り切れないのか」

 

 厳しい顔になった文明は、地面を蹴って駆け出した。

 笠間のいた場所を奪い取るように、文明は怪物と向かい合った。

 

「正面なら!」

 

 己の背の何倍もあろうかという怪物が、牙を剥き出して咆哮を上げる姿を目の当たりにしながら、文明は小揺るぎもせず睨め付ける。

 〈ハースニール〉を振り子のケース目掛けて放つべく、『ガーブ・オブ・ロード』の両腕が回転を始めた。

 

「そうはさせないよッ!」

 

 時計の一つが、ケースの表面に張り付いた。さらに、4個の時計が、その上にかぶさるように十字に重なる。最後の一つが、さらにその上に重なってガードした。

 〈ハースニール〉の真空刃が、そこに襲い掛かった。一番上の時計が破壊され、さらにその下も砕けていく。

 だが、そこまでだった。左右から伸びてきたワイヤー付きの棘が、文明を襲う。さすがにそれ以上攻めきれず、文明は〈ハースニール〉を中断して逃げるしかなかった。なおも執拗に迫る棘を、笠間が割って入って次々と両断する。

 さらに、残った時計がケースから離れて、攻め手に襲い掛かっていった。その間にも、背中からは新たな時計が生み出されていく。

 

「何をやってるんだい!? 能力で動き止めちまえばいいだろ!」

「黙れクソババア! コッチも、いったん動き止めて集中しないと、能力が使えないのよ! 今、ヤツらへの攻撃止めたら、振り子が無防備になる!」

 

 さすがになるべく小さな声で、未麗は亜貴恵に反論した。

 

「じゃ、どうするつもりだよ!?」

「小刻みに攻撃続けて、ヤツらが受け損なうのを待つ! 振り子を直接攻められるヤツが減れば、能力を使うチャンスができる! そしたら一網打尽よ」

 

 一方、攻めあぐねているのは、文明たちも一緒だった。

 

「笠間さん!!」

 

 文明の呼びかけに、一瞬笠間はギョッとした。

 

(アイツが、この俺を『さん』付けした……!?)

 

 意識しないまま、そう呼びかけていた文明は、さらに言葉を続けた。

 

「〈ハースニール〉は、最大火力を出すのに時間がかかる! ガードされた上に、棘で牽制されると、ケースまで破壊するのは難しい!」

「分かってる! 未麗もやってくれるぜ」

「僕に、考えがある!」

 

 時計と棘が、しつこく二人を襲う。二人は、それを回避しながら、

 

「考えってぇ!?」

「あの鎌の螺旋攻撃だ! あれを、〈黄金の回転〉で打ち込むんだ。僕が、螺旋の回転を導く!」

 

 笠間は、一瞬息を飲んだ。

 

「〈ハースニール〉の力の源泉はそれか……! だがお前が、死神と呼ばわった俺と、組んで攻撃しようなんてな!」

「あんな派手に輝く死神が、どこの世界にあるんだよ!!」

 

 言葉に詰まる笠間。

 

「今なら僕にも分かる。あなたの精神は、すでに死神ではありえない」

 

 文明は、時計を回避しつつも、言葉を続けた。

 

「あのスタンドは、『人を守る』その崇高な精神を発現しているからこそ、光り輝いている……!」

「……返す言葉が思いつかねーぜ。どうすればいい?」

 

 文明は、振り子を見据えた。

 

「一瞬でいい。ヤツの動きが止まった時に、あなたの螺旋と、僕の布の螺旋を狂いなく重ね合わせて放つ。僕の動きに合わせてくれれば、〈黄金の回転〉を実現できる!」

「あたしが、お二人をサポートします!」

 

 離れたところから、愛理が呼びかけてきた。

 

「そうか、攻撃の始動も、動きそのものも、愛理のサポートがあればいけるかも……!」

 

 笠間も、成算を感じ始めていた。

 

「仕掛けるぞ!」

「分かった!」

 

 笠間と文明は、肩をぶつけ合うように密着した。

 

「アイツら、何かやるつもりだよ! 未麗!」

「分かってるわよ。聖也も攻撃中止! ヤツらの動きを止めるッ!」

 

 未麗も、勝負に出る覚悟を決めた。

 〈レインボー・チャイルド〉の右手の鎌と、〈ガーブ・オブ・ロード〉の左手が、振り子目掛けてピンと伸ばされた。

 それを見た仲間たちは、このギリギリの状況下で戦う者として、直感で悟った。二人が、何かを狙っていることに。

 何の打ち合わせもしていないにも関わらず、それぞれの判断で、即座に動き出した。

 

「〈ブラスト・ヴォイス〉!!」

 

 遥音が、棘を操るワイヤーに音撃を放った。

 ほぼ同時に、明日見が槍の柄を分離して、高々と飛ばした。未麗たちの顔のある頭部目掛けて。

 体の動き全般を制御していた亜貴恵は、反射的に怪物の首を逸らしていた。瘤を守る角に弾かれて、穂先が弾かれた。

 

「演ぜよ! 我が〈譜面〉をッ!!」

 

 未麗が気迫を込めてそう口にした、それと全く同時に。

 

「〈パラディンズ・シャイン〉ッ!!」

 

 弾かれた穂先から、ストロボのような強い光が放たれた。

 

「う!?」

 

 予測していなかった光の目潰し。亜貴恵たちは、それぞれの目からの視界を共有しているため、死角なく四方を見ることができるが、それが却ってアダとなった。文明と笠間の方向の視界を潰されてしまい、未麗は虚を突かれて、時計で攻撃し損ねてしまった。聖也も棘を繰り出そうにも、音撃のために棘の動きが一時的に止まってしまっていた。

 3秒の、〈スィート・バイキング〉のアドバンテージは、空振りに終わってしまった。

 文明と、笠間。

 二人の視線の先は、ひたすらに、振り子一点だけ。そのため、光の影響はほぼ受けていなかった。

 そのケースに穿たれていた、小さな穴。激闘の中で、愛理が打ち込んだ穴。その結果、死につながる6秒を、3秒にまで縮めた穴。振り子の支点に正確に開けられ、狙うべき標的を示している穴。

 二人が見つめている穴は、自ら戦う意志を強く持った、愛理の〈覚悟〉の表れだった。

 

「〈スィート・アンサンブル〉……!」

 

 愛理のスタンドの、指揮棒が動き出した。

 〈ガーブ・オブ・ロード〉の布、それに合わせて〈レインボー・チャイルド〉の鎌が、寄り添うように螺旋を描いて、速く鋭く伸びていった。虹の輝きを、煌めかせながら。

 笠間はスタンドの動きを、文明のそれに合わせていた。呼吸も、心音も、一致させるほどの心をもって。自分を捨てて、文明に完全に合わせなければ、〈黄金の回転〉は到底不可能だということを、理解していた。

 亜貴恵は 足を踏み変えて逃げようとしたが、京次と航希が同時に仕掛け、前足をしたたかに打ち据えていた。

 

「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔!!」

「臨兵闘者、皆陣列在前!!」

 

 身をよじらせて切っ先を避けようとしても、螺旋の先端は標的の動きを完全に追尾している。

 

「時計……ッ!!」

 

 未麗は、まだ光の残像が残る目を当てにはしなかった。時計が、今度は6枚全てがケースの上に重ねられていく。それを笠間は見据えながら、思っていた。

 

(そんなものは通用しないぜ。俺にも分かる。この一撃は、〈黄金の回転〉を実現している!)

 

 螺旋を描きながら、鎌の切っ先が鋭く襲い掛かっていった。

 バキィッ!!

 ガードの一番上の時計は、瞬時に貫かれた。勢いは全く減じることなく、時計は次々と打ち抜かれていく。

 虹色に輝く鎌の先端は、ついにケースを突き破り、振り子の支点を正確に破壊した。振り子が折れて、ケースの中で落ちた。

 それでも螺旋は止まらない。怪物の体内をさらに突き破り、ついに、先端が背中の外骨格をも内側から弾き飛ばし、貫通した。

 

「ギャアァァーッ!!」

 

 その苦痛に、亜貴恵も他の二人も悲鳴を上げた。

 

「〈オーバー・ザ・レインボー〉……!」

「え?」

「今、頭に浮かんだ。この技の名前だ。お前のおかげで、俺は〈虹〉すら超えられた……」

 

 笠間のわずかな笑みに、文明は小さく頷いた。

 

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