城南学園スタンド部、その名もジョーカーズ!   作:デスフロイ

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第56話 フィナーレ!

 未麗によって、攻め手の動きを止められなくなった〈スィート・バイキング〉は、より激しく暴れ始めた。時計を飛ばし、棘をうねらせ、離れた相手に弾丸を吐き出し、巨大な両腕を次々振りかざしてくる。時に巨体を生かしたダッシュ攻撃に、その場で全身をグルン! と横旋回させ、尻尾を振るう薙ぎ払い。

 

「グッ!」

 

 遥音が、尻尾に弾かれて跳ね飛ばされた。柵に叩きつけられ、首がダラン、と横に折れた。

 が、それは〈レインボー・チャイルド〉の身代わりであった。首の折れた遥音の姿が虹色に変化していき、そこから残像がズレるように、無傷の遥音が立ち上がった。倒れていた虹色の姿が、消滅する。

 

「過信するなと言っただろ!? 気をつけろ!」

「笠間さん!」

 

 遥音が、逆に呼びかけてきた。

 

「〈ブラスト・ヴォイス〉のために接近してるのは、ヤバそうだ。アタシ、歌うよ!」

「……!? やってみろ」

 

 何か考えがあるのか、と感じた笠間は任せることにした。

 遥音は、マイクを構えると、歌い始めた。

 激しく、勇壮な歌唱が、戦場に響き渡っていった。

 

(何だ……!? 怖れも、焦りも消えていく。胸の奥から、熱くなってくる……!)

 

 笠間は、他の面々を見ていった。明らかに表情が生き返り、動きが俊敏に、かつ力強くなっている。

 遥音の歌唱効果の一つ、〈高揚〉であった。

 

(こんなこともできたのか! まったくコイツらは、イチイチ俺の予想を超えてきやがる……!)

 

 笠間の顔に、笑みが浮かんでいた。

 ふと見上げると、蒼天に太陽が輝いている。

 

(俺の人生は、ずっと『曇り、時々大荒れ』だった。今だって、そうかもしれん。だが、俺の気分は、結構『晴れやか』だ。あの空のように!)

 

「コッチも効いてるみたいだねぇ! 一気に蹴散らしてやるさぁ!」

 

 亜貴恵が吠える。未麗も聖也も、時計と棘を乱舞させる。怖れはしないものの、怪物を取り囲む者たちは回避を余儀なくされる。

 が、目まぐるしく動く時計と棘の中には、時にぶつかりあうものもあった。そんな時は、両方が砕けてしまう。

 

「何やってるの聖也!?」

「それは僕の台詞だよ! 邪魔しないでよママ!」

 

 怒鳴り合う姉弟に、フレミングは戦況の悪さを感じ取っていた。

 

(ヤツらはこの戦いを続ける中で、着実に連携が強化されてきている。こちらは、勝手に自分の攻撃をしているだけだ。俺も、砲撃しようにも体が動きまくるから、的が定まらん。これでは、互いに足を引っ張り合っているだけだ……)

 

「チッ! あの娘、何ドヤ顔で歌ってるんだ、調子コキやがって! フレミング、一発ブチこんで黙らせてやりな!」

「……分かりました。亜貴恵様。ただし、一度足をお止めくださいますか? 狙いがブレますので」

「ク……必ず当てるんだよ!」

 

 不承不承、亜貴恵は突進も旋回も止め、未麗と聖也に迎撃を任せた。

 首が遥音を向き、大きく口を開けた。弾頭が、喉の奥から顔を覗かせた。

 だが、遥音はなおも歌を止めようとしない。

 

(ハハン! 今のアタシは、ノッてきてるんだよ。自分でも不思議なくらい、アンタらの攻撃が読める! 撃つなら撃ちやがれ!)

 

 弾丸が、撃ちだされた。その直前、遥音は身を翻して、横に跳ね飛んでいた。

 遥音が元いた場所に、弾丸は着弾した。まったく危なげなく、遥音は回避していた。

 

「何やってるんだい、外れてるんじゃないか!」

 

 亜貴恵は苛立ちながら、背後に回り込んでいる操に、尻尾を上から叩きつけていった。

 

(見切った!)

 

 操は軽妙なステップでそれをかわし、地面に尻尾が叩き込まれる瞬間に合わせて、無言の気合を乗せて斬りつけた。

 遥音の歌唱のために、操の剣も鋭さが増していた。その一撃で、尻尾がついに両断された。

 

「ウガァァッ!!」

 

 悲鳴を上げる亜貴恵。

 その隙に、神原が笠間の元に駆け寄っていた。なるべく小声で声をかける。

 

「柳生くんから提案があった! 尻尾が切れたら、仕掛けたいことがあると。ヤツの動きを止められるかもしれん!」

「というと?」

「彼女がヤツの背中に乗って攻撃をかける! スタンドで身代わりを作れるか?」

「できるが、一度身代わりになれば、インターバルが必要だ」

「一度で構わないそうだ。私が口火を切る。ヤツを、正門まで誘き寄せる!」

「……了解だ!」

 

 笠間も、神原と操の策に乗る気になった。流れに乗った方が得策、と歴戦の勘が告げていた。

 航希や明日見が、怪物の足を止めている間に、神原は正門前まで駆けていった。

 そして、〈スィート・バイキング〉に向き直ると、大声で呼びかけた。

 

「城之内亜貴恵! もはや、貴様は追い込まれている。ここまでと知るがいい!」

 

 その声に気づいた亜貴恵が、ギッと憎しみの目を向けた。

 

「貴様らは、先ほどから見苦しくいがみ合うだけではないか! 体を一つにすれば、我らに勝てると思うのが大きな誤りだ。本当に一つにせねばならぬのは、〈心〉だというのに! しかも、体も能力も、全てが借り物ではないか。貴様自身が、何を掴んできたというのか!?」

「何ィ?」

「我らは〈黄金の精神〉の元に、それぞれが己の手に掴んだものを、一つに結集した。だからこそ、我らは貴様より強いのだ!」

「ふざけるな!」

 

 代わりに、未麗が怒鳴り返していた。

 

「何が〈黄金の精神〉よ!! 〈ジョジョ〉を気取るか! 取るに足らないザコ集団の分際で!!」

「確かに我らは誰一人として、〈ジョジョ〉たる資格を有してはいない」

 

 神原が、一歩も退かずに言い返した。

 

「我らは所詮、数には含まれぬ道化師達(ジョーカーズ)かもしれぬ。なれど! 光を求め、己の身が傷つくことを怖れずに、己の足でひたむきに進む。〈ジョジョ〉とは、まさにそうした存在だ。我ら一人一人はそれに及ばずとも! 我らは一つとなって、〈ジョジョ〉と同じく光に向かうのだ!!」

 

 未麗が、歯ぎしりしながら言い返す言葉を探していると、

 

「そんな世迷い言に、付き合ってやる謂れはないんだよ!! あたしが手に入れた、『人間を超えた力』ってヤツを思い知るがいい!!」

 

 亜貴恵の怒鳴り声と共に、猛然と〈スィート・バイキング〉が神原に突進していった。

 神原は、その姿を決然と見つめている。

 もう少しで跳ね飛ばされる、というところまで怪物が迫った時。

 

「〈ノスフェラトゥ〉!」

 

 神原の背後に出現したスタンドが、マントを広げた。それは翼となり、神原の体を空中に舞い上がらせる。その真下を走り抜けた怪物は、正門の側の鉄柵に、激しい音を立てて激突した。ぶつかった所の鉄柵が、グニャリと曲がる。

 眼下を見下ろしながら神原は、怪物の頭へと、手の中から何かを放り出した。

 それは、手首だった。落下していったそれは、顔面の並んだ瘤を守る、4本の角の一つを掴んだ。

 

「〈ファントム・ペイン〉ッ!!」

 

 操が叫んだ瞬間、手首に吸い寄せられて、体全体が怪物の頭上に瞬間移動した。手首と体が、結合する。

 その手で角を掴み、怪物の頭上に立った操は、足元で仰天してる聖也の顔をギッと睨んだ。

 

「お前だけは、一太刀浴びせないと、ボクの気が済まないんだ……ッ!!」

 

 〈ファントム・ペイン〉の剣先が、聖也の顔面を斜に斬りつけた。血を吹き出しながら、悲鳴を上げる聖也。

 

「よ、よくもやったなッ! この僕の、王の顔に傷を!!」

 

 怪物の背中から、全ての棘が飛び出した。それが、一斉に操の体を貫いた。

 が、操の姿は、虹色に輝いて薄れていく。そこから、残像のような操の姿が、無傷で出現した。

 

「それを狙ってたんだ!!」

 

 〈ファントム・ペイン〉の剣が翻り、全ての棘のワイヤーを両断した。ただし、『切り離す力』でもって、内部的に結合させたまま。

 

「!?」

 

 操の意図が分からないまま、聖也は分離させられた棘を、操に再び撃ち込もうとした。

 が。

 操の姿が、瞬時にすり抜けて消えた。棘は操のいたはずの場所に集中し、互いにぶつかり合った。

 

「『切り離した』手は、一つだけじゃない!」

 

 操はあらかじめ、離れた柵にもう片方の手を握らせていた。そこへと、自分の体を戻させて退避したのだ。

 

「〈スィート・アンサンブル〉……!」

 

 愛理のスタンドが、指揮棒を振っていた。

 操とちょうど入れ替わるタイミングで、神原が怪物の頭上に降り立った。一か所に集まっている棘を、マントを振って弾き飛ばした。一回転、二回転。次々と、棘が弾かれていく。

 

(クラシックバレエ部で、ターンを眺めていたのが、役に立ったか……!)

 

 弾かれた棘は、次から次へと柵の向こう側へと落ちていく。

 

「落とし物注意!」

 

 柵の際に滑り込んでいた航希が、手前に落ちそうな棘はトンファーで弾き、柵の向こう側へと叩きだしていた。

 

「……全て、元に戻す!!」

 

 操がそう口にした。

 航希が、スケートボードに切り替えて、その場を高速離脱する。神原もスタンドの翼を広げ、空に飛び上がった。

 『切り離した』棘と、ワイヤーが、一斉につながっていった。ただし、柵の向こう側の地面に落ちた棘と結合したワイヤーは、縦の格子状に作られた柵の隙間に入り込んでいた。

 

「何!?」

 

 聖也はワイヤーを引き寄せようとしたが、棘は全て、柵の隙間で引っかかってしまっている。

 

「何やってるモヤシ! 動けないだろうが、何とかしろッ!!」

「ぬ、抜けないッ!」

 

 棘がアンカー代わりとなって、怪物の体は、ワイヤーで柵と固定される形となってしまっていた。

ジタバタともがき、必死で引っ張っているが、棘が外れる気配がない。

 

「なら時計でッ!」

 

 未麗が、空中で迎撃に使っていた時計全てを、ワイヤーに向かわせた。

 

「そう来ると思った!」

 

 航希が、トンファーで時計の一つを叩き壊した。

 

「〈レインボー・チャイルド〉!」鎌が一閃。

「〈パラディンズ・シャイン〉!」槍が貫通。

「〈ノスフェラトゥ〉!」マントの一振り。

「〈ファントム・ペイン〉!」剣で両断。

 

 ワイヤー近辺に集結していた4人のスタンドが、一つずつ時計を破壊した。

 残り一つは、

 

「もうホントにこれで最後なんでしょうねぇぇぇッ!」

 

 ユリの〈エロティクス〉が受け止めて、動きを封じ込めた。

 遥音の歌は、まだ続いている。高揚をもたらす歌が、サビを迎えようとしていた。それに合わせるように、〈スィート・アンサンブル〉の指揮棒が、愛理自身ですら気づかないうちに、リズムを取って振られていた。

 指揮棒が向けられたその先で、京次が空中の〈足場〉を駆けていた。

 怪物の背中に降り立ったその時、頭にはすでに〈ダンス・マカブヘアー〉が復活していた。

 その姿を、瘤の背中側に顔を突き出させていたフレミングは、じっと見つめた。

 

「もう、頭は元に戻ったか」

「この能力を身に着けてから、髪の毛が伸びるのがやたらと早くてな! ……フレミング、そんな姿になってまで、なんでそんなヤツに尽くすんだ?」

 

 真剣な眼差しの京次に、フレミングは静かな口調で答えた。

 

「俺は、元は亜貴恵様の飼い犬だ。今でもそうだ。犬は、飼い主以外には吠えるのだ。たとえ、飼い主に非があろうとも、な」

「何言ってるんだよフレミング!? 飼い主のあたしを侮辱するのかい!?」

 

 亜貴恵の金切り声に、フレミングは応えた。

 

「事の是非くらいは、吠えるだけの犬とて分かります。ですが亜貴恵様、このフレミング、命尽きるまで、あなたと共に参ります」

「縁起でもないこと言ってるんじゃないよッ! このバカ犬!」

 

 京次は、そこから目を背けるように、構えた。

 

「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔!!」

 

 下へと打ち下ろされる両の拳が、〈ダンス・マカブヘアー〉が、新たな時計を作り出そうとしていた円形の台座を、次々と打ち砕いていった。時計ごと、潰れ、割れていく。そこに、〈振動〉が送り込まれていた。

 

「台座が安定しない! これでは損傷が再生しない! 新たな時計が作れないッ!」

 

 未麗が、悲鳴に似た声をあげた。

 京次は、〈足場〉を作りながら、怪物の頭部へと駆けた。瘤を回り込み、亜貴恵の前へと回り込む。

 

「小癪な! 食い殺してくれる!」

 

 怪物の顎が大きく開かれ、牙が剥き出しとなって、京次へと迫った。

 

「悪あがきしてんじゃねぇ!!」

 

 拳の連打が、顎に次々と叩き込まれていった。牙が飛び、顎が砕かれていく。亜貴恵が、叫び声をあげていた。

 そして京次は、その亜貴恵の眼前に、駆け上がった。

 

「ヒイィ……ッ!!」

 

 怯えた表情で、鬼のような形相で自分を睨みつける、京次を見る亜貴恵。

 

「どの口で、バカ犬とか言いやがった? フレミングは、てめぇにゃ勿体ねぇ忠犬だぜ」

「あ……あ……」

「〈波紋〉が、一回だけてめぇにブチ込めるだけ回復してる。今の俺ができる、全力でお見舞いしてやるぜ。全ての元凶ババア!!」

「ヒアァァァーッ!! や、やめ……」

 

 京次の拳が、構えられた。

 

「〈山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)〉ッ!! 邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ァーッッ!!」

 

 万感を込めた、全力の拳の連打が、亜貴恵の顔面に叩きつけられた。亜貴恵のみならず、同じ瘤に顔がある、未麗も聖也も悲鳴をあげていた。フレミングだけが、じっと無言で耐えていた。

 〈波紋〉が、外骨格の下に潜り込んでいる、聖也の〈肉の芽〉を急速に溶かしていく。今や、怪物の肉体は滅びつつあった。

 京次は、〈足場〉を蹴って、空中に高く飛びあがった。

 

「やれ!! 文明ィーッッ!!」

 

 その大声に合わせるように、〈スィート・アンサンブル〉が指揮棒を振り出した先には、噴水の前に仁王立ちしている文明がいた。〈ガーブ・オブ・ロード〉が、真っすぐに両腕を前に突き出している。狙いは、怪物の頭部。

 

「人間を『超えた』? 違う! お前は、人間を『諦めた』んだ!!」

 

 文明は叫んでいた。

 〈ガーブ・オブ・ロード〉の両腕が回転を始め、旋風を巻き起こしていった。

 ボコボコの顔の亜貴恵は、それに気づき、小さく悲鳴を上げた。〈ハースニール〉の威力は、まともに食らいはしてこなかったとはいえ、すでに体感済みであった。

 フレミングが、怪物の潰れた顎を、どうにか開いた。喉の奥から弾丸が迫り出し、狙いを文明に定めた。

 

「人間であることに、お前は耐えきれなかったんだ! 僕たちは、諦めなかった。だから今、ここに立っている!! これがッ!」

 

 二筋の旋風が、怪物の頭部に襲い掛かった。怪物の喉の奥の弾丸が、そのままの位置で棘が四方に飛び出してしまった。頭部が内側から串刺しになり、亜貴恵たちの悲鳴が上がる。

 

「これがッ!」

 

 旋風の間に、無数の真空波が生み出された。頭部が、4つの顔が集まる瘤が、ズタズタに切り裂かれていく。

 

「これが『人間の力』だッッ!!」

 

 文明の、魂を振り絞るような裂帛が発せられた瞬間、怪物の頭部が、瘤もろとも、粉砕されて消滅した。

 勢い余って、〈ハースニール〉は正門をも破壊していた。門が大きく穿たれ、外へと通じる〈道〉が現れた。外側を走っていたジェットコースターも、消失していた。

 ゆらり、と、怪物の巨体が傾ぎ、そして地面に倒れ伏した。それと同時に指揮棒が小さく円を描いてピタッと止められ、遥音の歌が終わった。

 巨大な肉体を覆っていた外骨格が脆く崩れていき、その下に潜り込んでいた〈肉の芽〉で構成されていた中身が、太陽に晒されて溶け去っていった。

 全員が、その情景を、無言のまま肩で息をしながら眺めていた。

 やがて。

 愛理が、正門の前まで、歩を進めていった。

 そして、仲間たちを振り返ると姿勢を正し、まるでステージの上であるかのように、深々と礼をした。

 

「ありがとうございました……。皆さんのお力のおかげで、あたしはこの先の〈道〉に、胸を張って進んでいくことができそうです。皆さんと出会えて、今この場にいることを、あたしは一生忘れません」

「君の、力でもある」

 

 笠間が、優しく応えた。

 

「君だけじゃない。この場にいる……10人。誰一人欠けても、勝てなかった」

「笠間さん……!」

 

 愛理は、笠間に駆け寄り、その胸に飛び込んでいった。

 困ったように、笠間は自分にすがりつく愛理を見下ろしていたが、やがてその手が、愛理の肩をそっと引き剥がそうと動いた。

 その時笠間は、愛理の向こう側にいる、明日見と目が合った。

 明日見の口元が、声を出さずに動く。何を言いたいのか、その動きで笠間は理解した。

 

(『女の子の気持ち』、か……。俺のような男で、本当にいいのか? 彼女を受け止めてしまって)

 

 その心の声が伝わったように、明日見が頷いた。

 笠間の腕が、愛理の背中を、しっかりと抱きしめた。愛理が、微かに喜びの声をあげた。

 その場の全員が、微笑みを湛えて、二人を眺めていた。

 文明も、自然とそうしていた。

 

(そうだな。10人の誰が欠けていても……あッ!!)

 

 文明の記憶から、天に昇っていった炭三の言葉が蘇った。

 

『いにしえの聖なる者は、天と語り合い、約定を取り付けたと聞く。10人の心正しき者があらば、世界を決して滅せぬと。志ある10人の正しき力を有する者、共に集うべし』

 

 文明は、仲間たちを見回した。

 笠間光博。間庭愛理。神原史門。武原京次。服部航希。須藤遥音。城田ユリ。柳生操。笠間明日見。そして自分、天宮文明。

 

(いつの間にか、10人が揃っていた……。炭三。あなたが見守ってくれたおかげだ。最後には、その存在を投げうって、僕らに〈道〉を作ってくれた……)

 

 空を見上げ、文明は炭三の面影をそこに見ていた。

 青い空に浮かぶ、小さな影。ヘリコプターか、と文明はチラリと思った。

 

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