BRAVERS   作:しく

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 僕らが通うこの『チェリートン学園』は、肉食草食共学であり、全寮制のエリート学校。ここに通う生徒たちは最近起こったアルパカ食殺事件により、肉食獣と草食獣の溝が深まりつつある。

 不幸にも亡くなってしまったのは、この学校で唯一肉草食合同部活として上手くいっていた『演劇部』所属のアルパカのテム。

 そんな肉草食の共存が上手くいっていた部活での食殺事件だ。その日以来、僕ら肉食は草食獣たちにあからさまな敵意を向けられている。

 

 僕はそんな肉食獣の一匹で『ラーテルのラフリー』って言います。

身長165センチメートルで体重53キログラム。

 肉食棟305号室でイタチ科の仲間と過ごしています。

 

メンバーは全員で六匹で全てイタチ科の動物たち。

 

 まずは『カワウソのゾズ』

この部屋で一番泳ぎが得意で愛嬌のある笑顔が特徴的。イタチのメスから人気。

 

 次に『テンのカシマ』

あんまり喋るのが得意でなく、いつも同室のバランと一緒にいる。

 

 カシマとよく一緒にいる『フェレットのバラン』

バズの次にメスから人気がある。こいつも口下手。305号室で1番背が低いことを気にしてる。身長148センチ。

 

 305の爆弾で恐れられている『シマスカンクのカミヤ』

バランの次に背が低いが、彼自身は気にしてないみたい。傷つきやすく、ちょっとした事で驚き、匂いを漏らしてしまうことが最近の悩み。

身長はギリギリ150センチ。

 

 次はこの部屋で一番大柄で身長170センチの『クズリのレント』

少々大袈裟な動作が特徴的で、がっしりとした体型が特徴的。よく僕とエアコンのコントローラーをめぐってジャンケンしてる。

 

 そして僕、ラーテルのラフリーってメンバーになってるんだ。少しクセがあるけど、みんないいヤツらだよ。

 

 

 「おぉーいラフリー! お前いつまでボーっとしてるんだよ。食堂行くぞー。」

 「え!? もう行くの、早くない? …あぁ!待って!今行くって!」

 

 レントが吠えることで僕は無理やり思考の海から引き上げられる。彼は耳をピンと立てて、顔の黒い毛皮を掻き毟りながら、扉の前で僕を待っている。

 そんなレントに一言謝りながら急いで支度をする。

 

 「ごめんごめん。待った?」

 「待ったよ。てかこのやり取りやめようよ。付き合いたてのカップルみたいで、なんかヤダ。」

 

 え、それは僕もヤダ。

 

 「てか、数分も待ってないのにそんなベタなセリフ使わないでくれよ。“わりぃ”とかの一言でいいんだぜ?」

 「いやぁ、ちょっと僕には難しいかも…。」

 「意味わからん。」

 

 僕とレントはこんなくだらない会話をしながら食堂へと向かっている。基本めんどくさがりのレントだが、頼まれたことを断れない性格で、付き合いは短いながら、僕も困ったことがあれば彼に気軽に頼めるような仲になっている。

 似たような体格で、目元と毛並みが違うだけのように見えて、結構違うのが僕たちだ。

 北国生まれのレントは毛皮が厚くゴワゴワしてて、そのせいで結構な暑がりで常に制服は捲って過ごしている。 変わって僕は暖かい所の生まれだから、毛が短い、彼よりも細身に見える体型になっていて、この程度の暑さなら全然余裕で袖は捲ったことがあんまりない…気がする。

 

 「おい、また自分の世界に入ってるぞ。せめて誰かと一緒にいる時くらいは自分の中に沈んでいくなよな。放置されるのって結構寂しいもんだぜ?」

 「え? あ、ごめん…。」

 「別に怒っちゃいないよ。…ほれ、着いた、みんな待っててくれてる。」

 

 食堂の前で305の仲間たちがメニュー見ながら僕らを待っていた。

 

 「今日はトーストとスクランブルエッグと豆バーグだって。」

 「草食はドーナツあるんだってー、いいなぁ。…バラン身長低いから草食獣に交じって取ってきてよ。」

 「それは俺に対する挑戦とみなすぞ、ゾズ。第一殆どの物が食べれない俺からしたら好き嫌いとかよくわかんないね。」

 「…バラン…牛乳ダメだもんね。」

 

 やっぱり待ってたと言うよりは揉めてるに近いかもね。初めにメニュー見ながら目を輝かせてたのがシマスカンクのカミヤ、ドーナツ食べたがってるのがカワウソのゾズ、怒ってるのがフェレットのバラン、そんでバランのそばにいる奴がテンのカシマ。

 ゾズとバラン仲悪くはないんだけど、ゾズの煽り癖というか、構いすぎちゃうところがあってよく言い合いしてるんだ。

 

 「わりぃ遅れた。中入ろうぜ。」

 「レントもラフリーもおっそい! どうせラフリーがオコジョのレアちゃんで変な妄想でもしてたんだろ?」

 「え!? 待って、待ってよゾズ! 言っていいこととさ!悪いことの区別くらい君にもつくだろう!?」

 「あー…ごめんラフリー。君がレアちゃんのこと好きなのは305のみんなならもう知ってる。」

 「カミヤまで!?」

 

 いったいいつバレたんだ…。とにかく!食堂なんて色んな動物が集まってるところでなんてことを言い出すんだよ!

 

 「お前わかりやすいんだよ。中等部の頃から知ってる奴は知ってる。」

 

 待ってよバラン。君と僕はその頃会話した事も少ないじゃないか…。というか、なんでそんなに早くからみんな知ってるんだよ…。よくみんな弄って来なかったな…優しいかよ…。

 

 「…いやもう…いいよ。中入ろうよ。」

 「あーあ、ゾズ謝っとけよ。ラフリーこうなると長いんだから。…おいラフリー? 牛乳やるから元気出せよ。」

 「悪かったって、な? 豆バーグやるからよ。許して、な?」

 

 それは君たち食べれないものだし、ゾズに至っては嫌いなだけじゃないか…。食べるけど…。

 

 「あぁぁ…。蜂蜜キメたい…蜂蜜に溺れて消えてしまいたい…。」

 「…後で購買行く?」

 

 うん。ありがとうカシマ。

 

 僕はカシマに背中を押されながら食堂に入るも、大声で話してたこともあり、食堂に入ったとたん、色んな動物たちに見られてて落ち着かなかった。その動物たちの中には当然、オコジョのレアちゃんも入っていて、僕に気づいては笑顔で手を振ってくれた。可愛い。

 僕がぎこちなく手を振り返すのを見てか、305のみんなはすぐに茶化してくる。

 いつもこうでは無いが、だいたい僕らの一日の始まりはこんな感じ。今日も素晴らしくいい天気だが、僕の心は通り雨が降ったからかびしょ濡れだ。レアちゃんの笑顔っていう太陽が照りつけたけど、ゾズっていう雷雨が近くにいる限り、今日の僕の平穏は失われたままだって言うことが僕にはわかる。

 彼は僕のテンパリ方が好きなのだろうか、それとも無自覚でやってるのか、同じ部屋の仲間たちの中でも僕がダントツで弄られている気がするんだ。

 

 不貞腐れながら豆バーグを口に運んでいると、後ろの方で怒鳴り声と大きな物音がして、僕はむせ返ってしまったのだった。

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