アサルトリリィ instrument   作:レイラレイラ

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ラスバレはいいぞぉ




三話

 気の弱いリリィなら怯んでノックすら躊躇うであろう理事長室、事実として紅巴は室内の厳粛な雰囲気を感じ取ったのか小刻みに震えてしまっている。

 

 それに対し、叶多は別の意味で入るのを躊躇っていた。

 

 あの叶多が顔を俯かせ、動けずにいることに紅巴は自らの震えも忘れるほどに驚いていた。

 

 紅巴が意を決したように全身に力を込め、強引にでも身体の震えを止める。

 

「叶多様っ!」

 

「え…………?」

 

「えいっ!」

 

 そして、叶多の色白で柔らかな手を紅巴の手で包み込んだ。

 

 叶多の手のぬくもりに若干の羞恥心に苛まれるが、それと同時に安心感がある。

 

「わたしがいます。叶多様が一人で行けないと仰るなら何処までもお供します。ですから…………その…………わたしをもっと頼ってくださると嬉しいです」

 

「…………うん。ありがとね、紅巴ちゃん」

 

 緊張が解れたのか、朗らかな笑顔を取り戻した叶多は紅巴の頭を優しく撫でる。

 

 紅巴は相貌を崩し、もうすっかりデレデレになってしまっている。

 

 その状況を作り出した叶多も同様で、愛しの後輩の愛らしい表情にすっかりデレデレになっている。

 

 完全に二人の世界が生まれてしまっており、史房は蚊帳の外状態だ。

 

 話が進まないと史房は咳払いして二人を現実に戻しつつ、扉を軽くノックする。

 

 

 

「入りなさい」

 

 

 

 百合ヶ丘女学院理事長────正確には理事長代行の男性、高松咬月が答える。

 

「失礼します」

 

 叶多と紅巴を引き連れ、史房は理事長室に入室する。

 

 

「留学生の今叶多、土岐紅巴をお連れしました」

 

「ご苦労史房君」

 

「…………」

 

「息災でなりよりだよ、叶多君。いきなりの呼び出し、すまなかったね」

 

「いえ、そもそも強引に今回の留学を通させたのは私です。理事長代行が謝ることでは…………それに、逃げた(・ ・ ・)私がこうして百合ヶ丘の土を踏んでいることが本来は許されないこと。謝らなければいけないのは私の方です」

 

 一度は晴れた叶多の表情は再び影が射し、罪悪感に覆われてしまっていた。

 

「私は逃げたとは思っていないよ。二年前の甲州撤退戦でアルトラ級ヒュージの単独討伐、ギガント級ヒュージの四割を壊滅。充分すぎる成果…………」

 

 

 ドガン!! 

 

 咬月の言葉は叶多のマギによって強化された拳が壁を叩き響いた轟音によって遮られ、ひび割れた壁からパラパラと落ちる砂塵の音がはっきりと聞こえるほどの静寂が舞い降りた。

 

 そして、その静寂を破るように激昂した叶多の叫びがこだまする。

 

「親友のお姉様も守れなかった私に、そんなものを成果なんて突きつけないでください!!」

 

「叶多様…………」

 

「失礼しました…………つい、頭に血が昇ってしまって……」

 

「いや、こちらも無神経だった。許してほしい」

 

「お気になさらず。それよりも、本題は今回の留学についてなのでは?」

 

「ああ。神庭女子藝術高校の方から君の三年分の単位取得の件は聞いている。なので今回は、どこかしらのレギオンに仮入隊する形でノインヴェルト戦術を実戦形式で学んでもらう。もっとも、君には必要ないかもしれないが」

 

 淡々と告げられる学習内容に、叶多は嘆息しつつも頷く。

 

 紅巴は入学して間もなく留学してきたので、ノインヴェルト戦術については勉学の上でしか知らない。

 

 何より百合ヶ丘女学院は、九人一組で行うノインヴェルト戦術の教育に関して世界中から注目を受けている。

 

 叶多にとっても紅巴の成長は喜ばしく、是非もない。

 

「ご心配なく。私がいた頃よりもノインヴェルト戦術は洗練されているでしょうし、初心に帰るつもりで学ばせていただきます!」

 

 明るく答える叶多に、咬月が頷く。

 

「それから、留学期間の間だけとはいえども百合ヶ丘で学ぶ以上はここの生徒だ。荷物と一緒に制服は寮の君たちの部屋に置いてある、明日からはそれを着て登校するように」

 

「了解です~。それでは失礼しました」

 

 叶多が笑顔で退室するのに合わせ、お辞儀をしてから紅巴も理事長室を出た。

 

 

 

 理事長室の壁に刻まれた、クモの巣のような罅だけを残して…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食堂で昼食を済ませ、叶多は校舎内を紅巴に案内していた。

 

 甲州撤退戦の直後に転校したとはいえ、勝手知ったる母校に違いはないのだ。

 

 明るく振る舞う叶多に紅巴も何も言わず、百合ヶ丘女学院校舎の把握に務めた。

 

 百合ヶ丘女学院の敷地は広く、案内を終えようというときには夕方になろうとしていた。

 

 最後に検疫室の前を通ろうとしたとき、見知った少女が頭を膝に押しつけ蹲っていた。

 

「…………楓ちゃん?」

 

 名を呼ばれて初めて叶多達の存在に気付いたのか、楓がゆっくりと顔を上げた。

 

 顔には擦り傷や土汚れが目立ち、タイツも所々破けている。

 

「あ、あなたは…………叶多様!? 何故神庭女子藝術高校のリリィであるあなたが百合ヶ丘にいらっしゃるのですか!? いいえ、それよりもこのようなみずぼらしい格好で申し訳ありません!!」

 

(あはは…………やっぱり私に気付いてなかったんだね)

 

「気にしないで。私は留学で百合ヶ丘女学院にやってきたんだ~。ついでに梨璃ちゃんがしっかりとやっていけるのか、見に来たんだよね」

 

「梨璃さんの? あの、失礼ですがお二人のご関係は?」

 

「あ~…………先輩と後輩……かな?」

 

 嘘はついていない。

 

 一瞬言い淀んだ叶多に訝しむ様子を見せる楓に、どうしたものかと思案していると検疫室の硬質的な音を立てて扉が開く。

 

 その中から梨璃と夢結が姿を見せた。

 

「梨璃さん!」

 

 梨璃の姿を確認すると同時に、楓は梨璃を一度は失くした宝物を取り戻した子供のように抱きしめた。

 

「楓さん!?」

 

「本当によかったですわ。梨璃さんがいなくなったらと思うと私…………」

 

「心配してくれてありがとう楓さん。あと、さっきは突き飛ばしちゃってごめんなさい」

 

「気にする必要はありませんわ! 梨璃さんからされるのでしたら、罵倒でも平手打ちでもご褒美ですわ!!」

 

「えぇ!? あ、あの…………それよりも楓さん…………手が……!!」

 

「あら、ごめん遊ばせ」

 

 さりげなく梨璃のお尻に触れる楓を見ていると、叶多は懐かしい気持ちになる。

 

 亜羅椰とともにたくさんの女の子に手を出していた時期、黒歴史というほどではないがあまり公にはしたくない過去。

 

「…………」

 

「夢結ちゃん…………」

 

 何をするでもなく、無言で立ち去る夢結。

 

 大きく変わってしまった親友(・ ・)に、叶多は顔を伏せることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────百合ヶ丘女学院講堂前。

 

「入学式、もう終わっちゃいましたね…………」

 

「ん~。そんなことはないと思うな~」

 

「え? それはどういう…………」

 

「梨璃さん。叶多様が仰るのですから大丈夫です。扉を開けてみてください」

 

「う、うん。それじゃあ…………あっ!!」

 

 

 

「居た────────────ッ!!」

 

 

 

 

 講堂の中では生徒全員が待っており、一部の生徒も駆け寄ってきた。

 

 あの理事長代行のことだ、一番の功労者の梨璃のために時間をずらすぐらいはするだろう。

 

「梨璃!」

 

「結梨ちゃん!」

 

 一番に梨璃に飛びついたのは、義理の妹である結梨であった。

 

 結梨は二水に連れられ、体育館に避難していた。

 

「入学式はこれからですよ!」

 

「二水ちゃん!!」

 

「今日一番の功労者のためにって、理事長代行が時間をずらしてくれたんです!!」

 

「お、おう…………有名人。初陣でCHARMと契約してヒュージを倒すとはやらかしおる。まあ…………妹のほうはもっとやらかしてくれたがの…………」

 

 亜羅椰に連れていかれそうになるのを止めたり、自分も戦いたかったと駄々をこねる結梨を宥めるミリアムは『もうワシはおもりはせんぞ!!』後に語る。

 

 

 

 

 

 




うちの楓さんは若干マゾ要素が多いです。

叶多様は現在こそ紅巴ちゃん一筋ですが、昔は亜羅椰さん同様にたくさんの女の子を食っちまってました()

次話は叶多様の過去話が多くなるかも
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