スクールアイドルアニメで見たような二人が、銀河の深宙域を駆けまわります!【とりあえず完結!】 作:ひいちゃ
今回はちょっとした箸休め、筆休めのお話。
のんびりまったりとお楽しみください^^
「ワープアウト。やっと、レーヴェに到着ですわ。ハナマルさん、動力炉のほうはどうですか?」
レーヴェ星域の外縁に超光速航法終了(ワープアウト)したわたくし……ダイヤ・ブラックウォーター……は、後ろのシートのハナマルさんに声をかけました。あともう少しというところで、動力炉がお陀仏になったら大変ですもの。漂流することになるならまだしも、暴走して宇宙の藻屑になったら大変です。
コンソールを見ていたハナマルさんがわたくしの問いにすぐさま答えてくれました。
「うん。出力が不安定になってきてるけど、まだ大丈夫だよ。ただ……」
「ただ?」
「この分でいくと、レーヴェⅢまでは持つにしろ、レーヴェⅣまでは絶対にもたないと思うずら……」
そうでした。今は公転軌道の関係から、ⅢよりⅣのほうが、わたくしたちからは遠くなってしまっているのです。航法ディスプレイに映った各惑星の位置表示でも、Ⅳはかなり遠ざかっています。
「仕方ないですわね……。鋼の月(スタルモンド)で修理してもらおうと思ったのですが、止むをえません。レーヴェⅢで修理してもらうことにしましょう」
「それしかなさそうね。でもそれなら、骨休みになっていいんじゃないかしら? Ⅲにはダイヤの実家もあるんだし」
「あ、そういえばそうですわね。たまには、実家に里帰りするのもいいかもしれませんね」
そう言いながらも、わたくしはレーヴェⅢへとAquaS(アクア)の進路をとりました。そして。
「ひぃぃぃぃ~~! 動力炉の出力がめっちゃ不安定になってるずら~!!」
「お願いです、もってくださいまし……!」
「大丈夫なの、ねぇ大丈夫なの!?」
「は、はやく脱出ポッドの用意をしなくっちゃ!」
「まだ沈むとわかったわけではありませんわよ!! 縁起でもないことを言わないでくださいまし!」
そんなこんなで大騒ぎになりながらも、なんとか船はレーヴェⅢに到着したのでした。
* * * * *
「ふぅ……。なんとか着陸できましたわね……」
「ずら……ちょうど今、動力炉が動かなくなっちゃったずら……」
「本当にここまで、自爆しなくてよかったわ……」
そんな会話を交わしながら、わたくしたちは疲れた様子で、レーヴェⅢの宇宙港に着陸したAquaSを降りました。本当に、ここまでもってくれてよかったです。寿命が数年縮むかと思いましたわ。
そして、カウンターで、修理の手続きをした後、わたくしたちは宇宙港を出ました。
「うーん、久しぶりの外ね。空気がDeliciousだわ!」
「久しぶりって、2週間前、アーペンハイルⅢで船外活動したではありませんか」
「それはそれ、これはこれよ♪」
「もう、マリさんったら……」
そうわたくしが呆れながら話す横では、ヨシコさんとハナマルさんが、目を輝かせてました。
「ここがレーヴェⅢ……本当に都会って感じで素敵だわ……!」
「うん。都会ずら~!」
本当にはしゃいでるところが素敵ですわね。これで仕事の時には凛々しくなってるのですから反則ですわ。妹のルビィと引き合わせたら、どんな風になるでしょう? ああ、わたくしも、早くルビィに会いたいですわ。
そう思いながら、わたくしはタクシーを呼んだのでした。
* * * * *
レーヴェⅢの中心都市・サイントの郊外にひっそりと建つ、サイントの中心街に乱立するビルとは大違いの和風の屋敷。そこがわたくしの実家、ブラックウォーター家です。その前に、タクシーは止まりました。
「へぇ~。いいところの出身っていうから、どんな豪華な建物かと思ったけど、とっても和風でいい感じじゃない」
「うん。和風ずら~!」
「……ずら丸、あんた、感動するものにいちいち、何々ずら~と言いそうなんじゃない?」
そんな微笑ましい会話をしてる二人を見ながら、わたくしは門の呼び鈴を押しました。少しして、門が開き、美しく輝く赤毛をとても愛らしいツインテールにした、美少女という表現では収まらないくらいの美少女が姿を現しました。
そう、この超絶美少女こそ、わたくしの最愛の妹、ルビィ・ブラックウォーターです。
「あ、お姉ちゃん! お帰りなさい!!」
そう言ってまばゆいほどの笑顔を見た瞬間、わたくしの何かが一気に吹き飛びました。
「ただいまですわ、ルビィ!! ああ、ずっとずっとずっと会いたかったですわ!!」
そう言って、ルビィを抱きしめてしまうわたくし。ああ、だってとってもかわいいんですもの。言葉では言い表せませんわ。
「ピギィ!? ちょ、ちょっとお姉ちゃん。みんな見てるよぉ~」
ルビィにそう言われて、はっと気が付くわたくし。後ろを見ると、マリさんはやれやれというような苦笑を浮かべ、ヨシコさんは呆れた目で見つめてきて、ハナマルさんは、冷たい視線を送っています。
それを言われて、わたくしは我に返りました。いけませんいけません。ブラックウォーターの娘として、こんなところを見せるわけにはいきませんわ。
「こ、こほん。失礼いたしました。こちらはわたくしの妹、ルビィですわ」
「ピギィ! る、る、ルビィ・ブラックウォーターですっ。よ、よろしくお願いしまふっ!」
あらあら、まだ人見知りは治ってないようですわね。そういうところもとても愛らしいですが。
* * * * *
さて、屋敷に入って着替えたわたくしは、ルビィやマリさんたちがくつろいでいるお座敷に行きました。
そのとたん、皆さんから感嘆の言葉がもれました。
「Oh! It's Wonderful~!」
「おぉ、ダイヤさん、とてもきれいずら~!」
「本当、仕事の時の服よりもずっと似合ってるわ……」
ブラックウォーターの娘ですもの。当然ですわ。ちなみにわたくしが身にまとっているのは、赤をメインとした振袖です。和服を着るのは、子供のころから、ブラックウォーターの者として厳しく教わってきましたから。
我が妹ルビィも、わたくしの和服姿を見て、憧れに近い視線を向けています。
「本当……お姉ちゃん、とてもきれい……」
あまり見ないでくださいまし。くすぐったいですわ。わたくしは皆さんに優雅に一礼すると、これまた優雅に、ルビィの隣に正座しました。
「それでは改めまして、あいさつさせていただきますわ。このブラックウォーター家の次代当主、ダイヤ・ブラックウォーターと申します」
「妹のルビー・ブラックウォーターです。よろしくお願いします」
と、姉妹そろって正座で丁寧にあいさつ。ルビィも芯がしっかりしてるとはいえ、ちゃんとあいさつできてよい子ですわ。成長しましたわね。
そのわたくしたちのあいさつを受けて、AquaSの三人もぺこりとあいさつしてきます。
「マリー・フィールダーよ。こちらこそ、改めてよろしくね♪」
「堕天使ヨハネよ。どうぞよろしくね、リトルデーモンルビィ」
「ピギィ、り、リトルデーモン!?」
「リトルデーモンになる必要はないし、彼女は別に堕天使じゃないから安心していいずらよ、ルビィちゃん」
「どういう意味よ!」
「マルはこのヨシコちゃんの幼馴染で侍女のハナマルです。よろしくずら……あ、ずらって言っちゃったずら……」
「話聞きなさいよっ!!」
* * * * *
さてさて。ルビィとヨハネ(本名ヨシコ)さん、ハナマルさんの三人は、やはり年が近いこともあって、まるで数年来の幼馴染のようにすっかり仲良くなったようです。とてもよかったですわ。マリさんとも姉妹のように仲良くなったみたいです。
そしてわたくしたちAquaSの面々は、わたくし、ダイヤ・ブラックウォーターの実家で、楽しくものんびりした時間を過ごしてリフレッシュしたのですわ。
でも、そこであった出来事が、事態が動くきっかけになるとは思っていなかったのです。
そう、それは、実家に帰ってきた日の真夜中……。
さぁ、一体何が起こったのか!?
次回から一気に、第一期ラストに向けて、急展開していきますよ!
次回もお楽しみに!