スクールアイドルアニメで見たような二人が、銀河の深宙域を駆けまわります!【とりあえず完結!】   作:ひいちゃ

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#12

レーヴェⅡが通常空間に戻ってきた!

 

 ……と喜んでばかりもいられません。

 その至近に巨大な肉塊……超生物・ベヘモスも出現したからです。

 

「あ、あれが……」

「ベヘモス……」

「きょ、巨大ずらぁ~……」

「Oh……」

 

 しばらくの間、わたくし……ダイヤ・ブラックウォーター……も、他のAquaSクルー……マリさんことマリー・フィールダー、ヨハネ(本名・ヨシコ・ダークエンジェ)さん、ハナマル・カントリアさん……も、絶句していました。

 だってそれぐらい圧倒的でしたもの。

 

 ですが、わたくしたちに、圧倒される時間も、また与えられませんでした。

 AquaSのブリッジに、警報が鳴り響いたからです。

 

「何事ですの!?」

「ベヘモスの開口部に多数のエネルギー反応! 何かがたくさん出現してくるずら!」

 

 見ると、ベヘモスの大きく開いた口から、何か……肉塊でできた戦艦らしきものが多数出現してきました。

 なんでしょう……? 何か嫌な感じがするのですが。

 

 ヨハネさんの肩に乗ったちびバハムートが言いました。

 

「ふむ……あれは、カトブレバスの細胞から作った戦艦サイズの生物兵器か。奴らめ、そんなものまで生み出す力を持っていたとは」

「カトブレバスですって!?」

 

 それは、アーヴァンク所長から処分を頼まれていた細胞の元となった超生物ではありませんか! ああ、なんてことでしょう……。

 

「案ずるな。最終的にあの生物兵器群が全て破壊されれば、問題はなかろう。結果的に処分したことになるのだからな」

「そ、そうですわね」

 

 バハムートの言葉に、わたくしは気を取り直しました。そうですわね、バハムートの言う通りです。それに今は頭を抱えている場合ではありませんもの。

 ……報酬に手を付けておかなくてよかったですわ。

 

* * * * *

 

 そうこうしている間に、戦艦サイズの生物兵器……マリさん命名・生体戦艦の艦隊と、ウミさん率いる防衛宇宙軍の艦隊とが接敵し、艦隊戦が始まりました。

 

 生体戦艦はその口から放つレーザーや、肉塊でできたミサイルを放って攻撃してきます。威力は防衛宇宙軍のものより上ですが、ウミさんはその攻勢を、たくみな艦隊運動で受け流しながら、敵戦力を削っていきます。さすが『黒髪の勇将』。若くして中将まで上り詰めたのは伊達ではありませんわね。

 

「ダイヤ、感心している場合じゃないわよ! こちらにも駆逐艦サイズの生体戦艦が接近してきてるわ!」

「了解ですわ! お二人とも、しっかりつかまっててください!」

「ずらぁ~!!」

 

 わたくしはAquaSを急旋回させ、生体駆逐艦のビームを回避しました。さすがは駆逐艦サイズ。その高い機動力で、しっかりとこちらの後ろに食いついてきます。

 なかなかやりますわね……ですが!

 

 わたくしは遮光シールドを展開すると同時に、恒星レーヴェのほうへと船を向けました。生体駆逐艦は、恒星レーヴェのまばゆい光に目がくらんだのか、ひるんだような動きを見せます。

 その隙を見逃すわたくしたちではありません! わたくしは再び、船を急旋回させて、生体駆逐艦を照準に収めます。そして。

 

「マリさん!」

「OK! ロック・オーンッ!!」

 

 AquaSのブラスターが連射され、生体駆逐艦に次々と光の矢が突き刺さります。そして穴だらけになった生体駆逐艦はたちまちどす黒い体液をまき散らしながら砕け散ったのでした。

 

「ふぅ、なんとかなりましたわね。お見事でしたわ、マリさん」

「まぁ、ざっとこんなものね。それに、ダイヤの操縦があったからよ」

 

 そう言ってわたくしとマリさんは、ハイタッチします。でも、その明るい雰囲気を、ハナマルさんが一変させました!

 

「た、大変ずら! ベヘモスの開口部に、再び高エネルギー反応ずら! しかも、今度はとても大きいみたい!」

「なんですって!?」

 

* * * * *

 

 レーヴェ防衛宇宙軍、第9艦隊旗艦・アースグリム。

 その艦橋で指揮をとるウミ・プレイスは、その巧みな指揮で、敵との戦線を拮抗させていた。それだけではなく、拮抗させつつも、別動隊を巧みに動かして、攻勢に転じるチャンスを着実に作っていた。しかし!

 

「た、大変です! ウミ中将! 巨大肉塊の開口部に高エネルギー反応、高出力ビームがきます!」

「なんですって!? ただちに全艦散開! 戦隊ごとの散開が無理なら、各艦の判断でかまいません! 急いで!」

 

 艦隊が散開する中、ついにベヘモスから尋常ではない太さのビームが放たれた! そのビームは逃げ遅れた一部の戦隊を飲み込み、残骸から残さず消滅させたのだった。

 

 アースグリムは無事だったが……。

 

「くっ……。まさか、こんな手を打ってくるとは……。コトリ、被害状況は?」

「うん……。第3、第7戦隊が壊滅。第4、第5戦隊も半壊状態だって」

「なんて奴らでしょう……。『鋼の月(スタルモンド)』に備えられていた、という雷神の槌(トゥールハンマー)まで撃てるとは、まさに化け物ですね……」

「ホノカちゃんが見たら喜びそうだけどね……。でも、そう言ってばかりもいられないみたい。今の一撃で陣形が崩れたうえに、各戦隊に動揺が走っちゃってるみたいだよ……」

 

 コトリの報告を受けて、ウミは苦々しい表情を浮かべた。それがこの現状を如実に物語っていた。

 

「できれば再編したいところですが、この機を逃す奴らではありませんよね……」

 

 その通りだった。生体戦艦艦隊は、このビーム攻撃によって、宇宙軍艦隊が崩れたのを見逃さず、一気に攻勢をかけてきたのである。

 動揺し、十分な迎撃態勢をとれずにいた艦隊の各戦隊は、その隙を突かれ、大苦戦を強いられていた。勇将として知られる彼女の部下たちだけあって、なんとか渡り合えているが、このままではいずれ、崩されて殲滅されるのは目に見えている。

 

「敵艦、急速に接近!」

「!!」

 

 アースグリムに一隻の生体戦艦が接近してくる。そして、アースグリムにとどめの一撃を撃とうとしたところで……なぜかその生態戦艦はUターンして飛び去って行った。

 

「何があったのでしょう……?」

「さぁ……。でも、助かったね」

「あの生体戦艦だけではありません。他の生体戦艦も、なぜか統率を乱しているようです」

「そうですか……。何が起こったのかわかりませんが、これでなんとか再編の時間が稼げそうですね」

 

 そこに、士官の一人がある報告をしてきた。

 

「AquaS号が接近してきます」

 

* * * * *

 

「どうにか間に合いましたね……」

 

 飛び去っていく生体戦艦を見ながら、わたくしはそうため息をつきました。

 そのわたくしに、ちびバハムートは、安堵とは違うため息をついて言いました。

 

「ふぅ……さすがに疲れたぞ。いくら私が全能に近いとは言っても、疲れないわけではないのだからな。それに、今度は向こうも対策はしてくるだろう。もうこの手は使えないと思っておけ」

「わかりましたわ」

 

 そう、あのビームと敵の攻勢で防衛宇宙軍が崩れてやばいのを見たわたくしは、バハムートに頼んで、彼らの動きをバハムートのテレパシーのようなもので乱してもらったのです。

 ちびバハムートによれば、上位の超生物のそれは、下位の者にとっては強い畏怖を与えるものだそうですわ。

 

「でも、安心してばかりもいられないわね。再編できたとはいえ、今ので艦隊もかなり被害を受けているみたいだし、次ぶつかれば十中八九勝てないわよ」

「むぅ……」

 

 マリさんがそう指摘します。この戦いでの敗北、それはレーヴェの人たち、いや、この深宙域の破滅につながるというのはわたくしにも予測できました。それに、ウミさんやコトリさんにも死んでほしくないですし……。何か一発逆転の良い手はないものでしょうか。

 

「我らがベヘモスの内部に突入して、彼の正気を取り戻してやるしかあるまいな」

 

 ちびバハムートがそう言いました。それは大きなばくちですわね……。わたくしもそれを考えてなかったわけではないですが……。

 

「確かにそれしか手はないでしょうけど……そんなことが可能なのですか?」

「あぁ。内部に突入して、我の思念波を、ヨハネを通してベヘモスに送れば可能なはずだ。奴の思考中枢にたどり着くまでがまた大変だろうがな」

「このまま戦っても勝てない以上、それしかないようね。やっちゃいましょう、ダイヤ」

[そうですわね。ヨハネさん、アースグリムに回線をつないでください」

「わかったわ」

 

 そしてヨハネさんが機器を操作すると、通信スクリーンにウミさんの姿が現れました。かなり疲れているようですわね。

 

* * * * *

 

「ダイヤさん、ご無事で何よりです。こうして通信を送った、ということは、何か逆転の一手を持ってきてくれたのですか?」

「普通ならここで『そんなものはない』というのがパターンですけど、幸か不幸かそんなことはありませんわよ。ちょっとバクチっぽいですが……」

 

 そしてわたくしは、ちびバハムートが話してくれたプランを彼女に説明しました。ウミさんはそれを真剣に聞いてくれました。そして。

 

「なるほど……。確かに、今のままぶつかれば勝てないと私も思います。その作戦しかありませんね。かなり危険ですが、お願いできますか?」

「えぇ。この件にはずっと関わってきましたもの。ここでさよならというわけにはいきませんわ」

「ありがとうございます。それでは再編ができ次第、私の艦隊が突破口を開きます。その後に突入をお願いします」

「わかりましたわ」

 

 そう答えて、わたくしはあることを思い出しました。

 

「あ、それから一つお願いがあるのです。ハナマルさんを、そちらのアースグリムで預かってもらえませんか?」

「ず、ずら!?」

 

 驚くハナマルさんに向きなおり、わたくしは話し始めます。

 

「ベヘモスの体内……おそらくは敵の中枢への突入です。ヨハネさんは、バハムートの件があるから仕方ないとしても、さすがに今回はハナマルさんの身の安全は保障できません」

「……」

「船の中に残ったとしても、隠れている超生物教(グレイツ・ブラザーズ)の奴らが船内に潜入して、あなたに危害を加えないとも限りませんし……わかってくださいまし」

「うん、それはわかるずら……でも……」

 

 わたくしの話を理解しつつも、それでもためらいを抑えきれないハナマルさん。まぁ、気持ちはわかりますわ。

 そこにヨハネさんが助け船を出してくれました。

 

「大丈夫よ、ずら丸。この堕天使ヨハネが、そう簡単にやられるわけないわ。安心なさい」

「ヨシコちゃん……」

「大丈夫、絶対に生きて戻ってくるわ。帰ってきたら、ルビィも入れて三人で、レーヴェⅢのアイスを食べに行きましょ」

「うん、わかったずら。ヨシコちゃん、くれぐれも気を付けてね」

 

 ヨハネさんの説得を受けて、ハナマルさんはかすかに微笑んでうなずきました。よかったですわ。

 でもヨハネさん、それってフラグ……。

 

 そしてハナマルさんは、アースグリムからやってきたシャトルに乗り込み、アースグリムへと移乗していきました。

 ウミさんには、彼女の身の安全をお願いしておきましたから、多分大丈夫でしょう。

 

 ……さぁ、いよいよ大勝負の始まりですわね!

 

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