スクールアイドルアニメで見たような二人が、銀河の深宙域を駆けまわります!【とりあえず完結!】 作:ひいちゃ
シーウォーターⅢでの仕事、三日目。今日も気を引き締めていきましょうか。
昨日と同じように、AquaSに乗り込んで衛星軌道上に飛んでいきます。そうそう、もちろんカナタさんは縛り付けたままで。
ですが、昨日までと比べ、カナタさんはいくらか大人しいように感じました。どういうことでしょう? もしや、私たちを安心させて、その隙にヨハネさんをさらう気なのでは?
……いえいえいけません。そうすぐに決めつけてしまうのはよくありませんわ。
ブラックウォーター家家訓第二条・『油断しすぎず、疑いすぎず』。最初から疑うようなことをせず、でも気を許しすぎずにいきましょう。
* * * * *
そしてこの日も、カナタちゃんはあのハンターたちの船のブリッジで、ヨシコちゃんの仕事ぶりを眺めていたのでした。
くぅ~。ヨシコちゃんが目の前にいるのに~。
でも、目の前でモニターに目を走らせ、キーボードをたたき、時にはあのハンターたちに通信を送っている彼女は、とても真面目に作業にいそしんでいる。その様子に、洗脳されている様子は一切なさそう。
最初のほうこそ、あの二人は極悪ハンターで、ヨシコちゃんは彼女たちに洗脳されていたのでは? と思っていたけど、こうして彼女が一生懸命真面目に仕事をしているところを見ると、もしかしたらそれは誤解だったのかも。
だって、もし洗脳されただけだったら、こんなに一生懸命に熱意をもって仕事しただろうか。
「ん、どうしたのよカナタ?」
「いや~、ヨシコちゃん、とっても真面目に仕事してるな~って。レーヴェⅡにいた頃、変な配信してたころからは想像もつかないよ~」
「ヨシコじゃなくてヨハネ! それにその配信のことは黒歴史なの、忘れてちょうだい! ……ふ、配信してたころの私は、恒星レーヴェに捨ててきたわ」
やっぱり根は変わらないヨシコちゃんを見て、つい笑みが漏れてしまう。ふふふ。やっぱりヨシコちゃんはかわいいなぁ。
……あれ?
「ねぇ、ヨシコちゃん。あそこの、惑星のほうに向かっている光点はなんだろう?」
「え……? あ、も、もしかして……!」
カナタちゃんの言葉に、その光点に気づいたヨシコちゃんは、表情を変えてキーボードをたたきだす。モニターに流れていく情報を必死に読み取り、そして血相を変えた!
「い、いけないわ! すぐにダイヤたちに連絡をとらなきゃ!」
そして、手早くキーボードを叩くヨシコちゃん。そんな中、カナタちゃんはあることに気づいたのだ~。
「ヨシコちゃん。そのデブリの近くに誰かいない? そこのところも録画したほうがいいと思うよ~」
「あ、う、うん、わかった! ありがとう、カナタ!」
「どういたしまして~」
* * * * *
そのころ、私たちがデブリ回収の作業を続けていると、突然、AquaSから通信が入りました。どうしたのでしょう?
通信回線を開くと、聞こえてきたのは、慌てふためいたヨハネさんの声でした。
「た、大変よ、ダイヤ! 衛星軌道上座標445-XZ-2265にある衛星が、シーウォーターⅢに落下しようとしているの!」
「なんですって!?」
ヨハネさんから送られてきたデータを見てみると、確かに一基の人工衛星が、惑星に落下しようとしていました。
いけませんわ、あの大きさだと、もし海に堕ちたら、海中にあるセイレーナ族の里に甚大な被害が発生してしまいます!
しかし、この距離では宇宙服で向かっても、間に合いそうに遭いません。
「ダイヤ、AquaSに戻ろう! そして船のブラスターで衛星を破壊するんだよ!」
「えぇ、それが今できる最善の手ですわね。そうしましょう!」
カナンさんの提案にうなずくと、私は大急ぎで、彼女とともにAquaSに戻ったのです。
* * * * *
そして船に戻ると、宇宙服を着替えるのももどかしく、私はブリッジに飛び込みました。そして、パイロットシートにつくと、エンジンに火を入れます。
「それではいきますわよ! ヨハネさん、あの衛星をスキャンして、破壊するのにベストなポイントを割り出してくださいまし!」
「わかったわ、任せて!」
「行きます!」
アフターバーナー全開で、件の人工衛星に急行します。
「くっ……!」
「くうぅぅぅ……!」
「ずらぁ~!!」
「あわわ~」
カナンさん、ヨハネさん、ハナマルさん、そしてカナタさんの悲鳴をBGMにしながら……。
* * * * *
そして加速のおかげあって、なんとかAquaSは、人工衛星に追いつくことができました。
「ヨハネさん、計算のほうは!?」
「ばっちりできてるわよ! 今、カナンのほうに送るわね!」
「よし、受け取ったよ! ……」
そう言って、ブラスターのトリガーを握り狙いを定めるカナンさん。でも、心なしか、その手は震えているようです。
「……緊張しているのですか?」
「うん。私の一撃に、シーウォーターⅢの命運がかかってるんだよ。当然じゃない」
そう言いながらも狙いを定めるカナンさん。緊張しながらも自分のするべきことを成そうというその姿は、まさに一流のハンターのものでした。
私はそっとその手に、自分の手を重ねます。
「……え、ダイヤ?」
「大丈夫です。カナンさんならやれますわ」
「……ありがとう……」
そして再び狙い始めます。その身体からは震えが止まっていました。
そして、永遠のような一瞬が過ぎて……。
「発射!」
カナンさんがトリガーをひき、AquaSからブラスターが放たれました! それは狙いあやまたず、衛星の破壊ポイントを貫通!
さらにブラスターを発射! 衛星をバラバラにしていきます。
あれだけの大きさなら、壊滅的な被害が及ぶことはないでしょう。多少の被害は出るかもしれませんが。
こうして、なんとかシーウォーターⅢの危機は免れたのです。
* * * * *
私は一つ見逃していたことがありました。
確かにシーウォーターⅢの危機は免れたのですが、両種族の危機はまだ続き、そして今、爆発の時を迎えていたのです!
私たちがあの衛星の破壊に成功したことで、確かにセイレーナ族の里には壊滅的な被害が及ぶことはありませんでした。それでも、ある程度の被害はあったのです。少数ですが亡くなった方もいたとか。
そして、それを待ち構えていたかのように、セイレーナ族の宰相から声明が出されたのです。
曰く、「この事故はマーメイ族の工作である。我が種族はマーメイ族と断交、そして宣戦布告する」と!
そして、ついに、セイレーナ族の軍隊が陸に上がって、マーメイ族の里に押し寄せてきたではありませんか!
そして、なぜかこの混乱を収拾すべきである長官府は沈黙を保ったままなのでした。
ですが、この沈黙が、ある陰謀の実行を物語っていることを、この時の私たちはまだ知る由もありませんでした……。
読んでくださり、ありがとうございました!
次回の更新は、10/30 12:00の予定です。お楽しみに!